大魔法使いは二度目の人生を〝普通〟に楽しみたい

おみなしづき

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入学後

休み明け

「ディノ! ただいま!」

 勢いよく部屋に入ってきたのはケフィンだ。

「お帰り」
「一人で寂しくなかったか?」
「ははっ。全く平気でした」

 リンゼイは、毎日俺と一緒にいてくれた。
 一人じゃなかった。

「ほら、お土産だぞ」

 手渡されたのは『思い出目薬』だ。
 目薬をさして目を閉じると、ケフィンの見た光景が少しだけ覗ける。
 早速使ってみる。

「へぇ……これがケフィンの家族?」

 母親らしき人と、年の小さい弟と妹らしき人物が見える。
 ケフィンの髪の色は母親譲りらしい。
 みんな笑顔でこっちを見ていた。

「そう! 弟も妹も可愛いだろ?」
「すごい可愛いですね」

 みんなケフィンの事を本当に好きそうだ。
 この光景が見れるのは一瞬だ。

「この目薬って地方の一部にしか売ってないやつですよね?」
「俺らの村の特産品だよ。近くの魔法使いの森で『思い出草』が取れるんだ」
「へぇ。あの植物は、食べると自分の中の思い出を見せてくれるけれど、中毒になりやすいんですよね」
「そうそう。気をつけないと思い出の夢から覚めなくなる」

 取扱注意の上級者向けの植物だ。

「この目薬は成分をごく少量にして、他の人の思い出を覗くことで中毒性を無くしてるんですよね」

 ケフィンは感心しながら頷いた。

「お前、よくわかるな。これ使っても思い出を刻んだ本人には使えないようになってるんだよ。本当なら写真機で見せてやりたいんだけど、まだ一般向けじゃないから、今だに目薬でも売れてるぜ」
「とても素敵な家族でした。エーベルト達にも見せてあげて下さい」
「おう! そのつもりだぜ!」

 ケフィンが嬉しそうに笑顔を見せてくれる。
 自慢の家族なんだろう。
 俺もディノの家族に少し会いたくなった。

     ◆◇◆

 次に帰ってきたのはメルフィスだ。

「ディノ。元気だったか?」
「もちろん」

 俺の事を心配していたのかホッと安心したような顔を見せてくれた。
 俺ってそんなに頼りないイメージなのかな?

 そして、エーベルトが戻ってきて、ケフィンとメルフィスの全員で驚く事になる。

 目の前には、エーベルトの肩を組んでドヤ顔でいるブルーノがいる。
 ほんのりと顔を赤く染めて、ニコニコと嬉しそうにしているエーベルト。
 休み中に何があったのか……。

「まぁ、こういう事だからさ。お前ら、エーベルトに手を出すなよ」
「大丈夫だって言ったでしょ。みんなは僕の大事な友達なんだからね。ブルーノこそ他のやつと浮気したら許さないよ」

 手を出すも何もきっとボコボコにされる……。
 浮気したらブルーノもボコボコにされる……。

「と、とにかく……おめでとう……」
「「おめでとう……」」

 ケフィンが祝福すれば、俺もメルフィスもどうにか言葉が出てきた。
 ブルーノが自分の部屋に戻ると、土産話に花が咲いた。

     ◆◇◆

 目の前で魔法陣学のアンリ先生に紹介されている人物に驚いていた。

「マベル・ハーウッドです。王家からの視察で数日間、君たちの様子を見に来ました」

 教室内はザワザワと騒がしくなっている。

「マベル様がいるだけで緊張するよな!」
「リンゼイ先生ってマベル様と同級生らしいよ」
「すごいよなぁ。あの魔道具を作ったのってマベル様だろ? 魔法使いの憧れだよ」

 すごい人気者らしい……。
 ニコニコと手を振るマベルに顔が引きつりそうだ。

「君たちの邪魔はしません。普段通りの授業の様子を見せて下さいね。今日は挨拶だけでよろしくお願いします」

 リンゼイとは話したんだろうか?

 その日は、やたらとマベルが気になって授業に集中できなかった。

 夜にリンゼイに通話機で連絡しても繋がらなかった。でも、次の日には授業には出ていて安心する。

 二人で話したいけれど、学院ではマベルがいるので警戒する。
 放課後に思い出の場所で待ってはみたが、来る事もなくてもどかしい思いをしていた。

 やっぱりあの時に、腕輪に魔力を込めておくべきだったと思っていた──。


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