48 / 77
入学後
魔法陣学 三年生
教卓の上には箱が置いてあり、魔石がたくさん入っている。
「今日は魔石について学んでもらうぞ。魔法陣と魔石は切り離せないからな」
魔石があれば、魔力がなくても魔法陣が発動する。魔石は便利だ。
「魔石は色んな種類があるが、そのほとんどはここにあるものが主流だ」
魔法陣学のアンリ先生は、箱の魔石を一つ手に取った。
「これらは、生徒達が寮で使っているシャワーなどで使った魔石だ。空になった魔石を交換しにきた人も何人かいるだろう?」
「俺、この前交換に行きました」
寮のほとんどは魔石でできるようになっていた。
授業以外で魔力を使うのは、魔力の少ない人にとっては大変な事だからだ。
「それらの魔石が勝手に魔力が貯まるわけがない。三年生が定期的に魔力の補充をしているんだ」
なるほど。確かにこんな量の魔石に魔力を込めるのは先生だけじゃ足りない。
「もしかして……それ……全部魔力を込めるんですか?」
クラスの一人が言えば、アンリ先生はニヤリと笑う。
「君たちもわかってきたな。魔力のなくなる限界までやれ」
俺の魔力で補充したら、結構な量の魔石に魔力を込められる。
途中で手を抜かないといけない。
気になるのは、俺らの教室の後ろで見ているマベルだ。
やりづらい……。
「全員前に来て初めてくれ」
席から立って前に行き、みんなで教卓の前に集まった。
幾つかの魔石を持ってその場で魔力を込める。
くすんだ薄灰色の魔石が真っ白に変わる。魔力がこもった証拠だ。
それを別の箱に移せば完了だ。
「ほぅ。ディノは、魔力の扱いが上手いじゃないか」
「え……?」
周りをよく見れば、魔力を魔石に込められなくて四苦八苦している生徒が数人いる。
魔石に魔力を込めるのって難しいんだったか!?
「それなのに、なぜ魔法陣に魔力を通すのが苦手なのかわからん……」
「そ、そうですね……あはは……」
腕を組んで悩むアンリ先生に苦笑いだ。
これでも少しは発動時間が早くなったんだけどな。
「ディノ。こっちにも寄越してくれ」
隣にいたメルフィスに幾つか手渡す。
「メルフィスも早いな」
メルフィスがいて良かった。俺だけが目立つわけじゃない。
順調に魔石に魔力を込めていく。
途中で魔力切れになって席に戻って突っ伏してしまう生徒が何人か出てきた。
俺はそこそこ魔力がある設定だから、まだやらなきゃな。
いつの間にか隣がブルーノになっていた。
「俺も魔力はあるかならな。ディノになんか負けないぐらい数こなしてやる」
はいはい。エーベルトと付き合っても俺の事が気に入らないのは相変わらずらしい。
もうこれが普通なんだよね。
箱の魔石も少なくなってきていて、ブルーノが手を突っ込んで魔石を取り出す。
その魔石の色が黒だった。
それを見た瞬間にゾクッと鳥肌が立った。
「あれ? こんな色の魔石初めて見るな。魔力込めていいのかな?」
「ブルーノ! 手を離せ!」
思わずブルーノの腕を握った。その反動でブルーノの手から魔石が落ちて床に転がる。
「おい! ディノ! 何すんだよ!」
「馬鹿っ! あれは普通の魔石じゃない!」
「はぁ?」
「いいから! 触るな!」
ちっと舌打ちされたけれど、ブルーノが手を離して良かった。
魔力の無くなった魔石は、薄灰色が普通だ。
ごく稀に魔石自体に特別なものがある。
リンゼイにあげた腕輪の魔石がそれだった。あの魔石には癖があって、俺以外の魔力を受け付けない。だから強力だったし、他の奴らに弄られる事もなくて安全だった。
黒い魔石は、魔力を込めるとなんらかの魔法が発動する──。
火魔法だったとしたら火傷する。
すると、今まで見ているだけだったマベルがこちらに来て、その石を拾い上げた。
「ディノ・バスカルディ。君はこの魔石がなんの魔石なのかわかるんですね」
「っ……」
今の行動は普通じゃなかったのかもしれない……。
アンリ先生が俺の前に立ってくれた。
「マベル様! その魔石はマベル様のものですか!? 持ち込む許可はあるんですか!? 生徒の安全が第一です! 困ります!」
庇ってくれる背中に感動する。
やっぱりここの先生方はちょっと意地悪だけれど、立派な人たちだと思わずにいられない。
アンリ先生がマベルに説明を求めるが、マベルはニコニコとしている。
「大丈夫ですよ。ほら」
マベルが魔石に魔力を込めると、辺りに風が吹いた。
髪が靡く程度の風が教室に吹いている。
それだけ……。
「これは、暑い時に私が使っているもので害はありません。それに、四つ星以上の魔法使いにしか魔力を込められません。私の私物が生徒の魔石に混じってしまったのでしょう。すみません。以後気をつけます」
マベルの言葉に周りはホッと安心していた。
やられた……。
俺は試された? まさかとは思うが疑われている?
それとも本当に偶然?
マベルは、エルドとリンゼイの同級生で、エルドと話したのなんてマベルが学院を卒業してからだ。
俺がエルドだからってマベルに関係ないはずだ。
もしもあの魔石が風が吹くだけのものじゃなかったらと思うと怖い。
授業でこんな風に試されるのは他の生徒にも迷惑が掛かる。
マベルの目的をはっきりとさせたい。
その日の夜、俺は自分からマベルの部屋を訪ねに行った。
「今日は魔石について学んでもらうぞ。魔法陣と魔石は切り離せないからな」
魔石があれば、魔力がなくても魔法陣が発動する。魔石は便利だ。
「魔石は色んな種類があるが、そのほとんどはここにあるものが主流だ」
魔法陣学のアンリ先生は、箱の魔石を一つ手に取った。
「これらは、生徒達が寮で使っているシャワーなどで使った魔石だ。空になった魔石を交換しにきた人も何人かいるだろう?」
「俺、この前交換に行きました」
寮のほとんどは魔石でできるようになっていた。
授業以外で魔力を使うのは、魔力の少ない人にとっては大変な事だからだ。
「それらの魔石が勝手に魔力が貯まるわけがない。三年生が定期的に魔力の補充をしているんだ」
なるほど。確かにこんな量の魔石に魔力を込めるのは先生だけじゃ足りない。
「もしかして……それ……全部魔力を込めるんですか?」
クラスの一人が言えば、アンリ先生はニヤリと笑う。
「君たちもわかってきたな。魔力のなくなる限界までやれ」
俺の魔力で補充したら、結構な量の魔石に魔力を込められる。
途中で手を抜かないといけない。
気になるのは、俺らの教室の後ろで見ているマベルだ。
やりづらい……。
「全員前に来て初めてくれ」
席から立って前に行き、みんなで教卓の前に集まった。
幾つかの魔石を持ってその場で魔力を込める。
くすんだ薄灰色の魔石が真っ白に変わる。魔力がこもった証拠だ。
それを別の箱に移せば完了だ。
「ほぅ。ディノは、魔力の扱いが上手いじゃないか」
「え……?」
周りをよく見れば、魔力を魔石に込められなくて四苦八苦している生徒が数人いる。
魔石に魔力を込めるのって難しいんだったか!?
「それなのに、なぜ魔法陣に魔力を通すのが苦手なのかわからん……」
「そ、そうですね……あはは……」
腕を組んで悩むアンリ先生に苦笑いだ。
これでも少しは発動時間が早くなったんだけどな。
「ディノ。こっちにも寄越してくれ」
隣にいたメルフィスに幾つか手渡す。
「メルフィスも早いな」
メルフィスがいて良かった。俺だけが目立つわけじゃない。
順調に魔石に魔力を込めていく。
途中で魔力切れになって席に戻って突っ伏してしまう生徒が何人か出てきた。
俺はそこそこ魔力がある設定だから、まだやらなきゃな。
いつの間にか隣がブルーノになっていた。
「俺も魔力はあるかならな。ディノになんか負けないぐらい数こなしてやる」
はいはい。エーベルトと付き合っても俺の事が気に入らないのは相変わらずらしい。
もうこれが普通なんだよね。
箱の魔石も少なくなってきていて、ブルーノが手を突っ込んで魔石を取り出す。
その魔石の色が黒だった。
それを見た瞬間にゾクッと鳥肌が立った。
「あれ? こんな色の魔石初めて見るな。魔力込めていいのかな?」
「ブルーノ! 手を離せ!」
思わずブルーノの腕を握った。その反動でブルーノの手から魔石が落ちて床に転がる。
「おい! ディノ! 何すんだよ!」
「馬鹿っ! あれは普通の魔石じゃない!」
「はぁ?」
「いいから! 触るな!」
ちっと舌打ちされたけれど、ブルーノが手を離して良かった。
魔力の無くなった魔石は、薄灰色が普通だ。
ごく稀に魔石自体に特別なものがある。
リンゼイにあげた腕輪の魔石がそれだった。あの魔石には癖があって、俺以外の魔力を受け付けない。だから強力だったし、他の奴らに弄られる事もなくて安全だった。
黒い魔石は、魔力を込めるとなんらかの魔法が発動する──。
火魔法だったとしたら火傷する。
すると、今まで見ているだけだったマベルがこちらに来て、その石を拾い上げた。
「ディノ・バスカルディ。君はこの魔石がなんの魔石なのかわかるんですね」
「っ……」
今の行動は普通じゃなかったのかもしれない……。
アンリ先生が俺の前に立ってくれた。
「マベル様! その魔石はマベル様のものですか!? 持ち込む許可はあるんですか!? 生徒の安全が第一です! 困ります!」
庇ってくれる背中に感動する。
やっぱりここの先生方はちょっと意地悪だけれど、立派な人たちだと思わずにいられない。
アンリ先生がマベルに説明を求めるが、マベルはニコニコとしている。
「大丈夫ですよ。ほら」
マベルが魔石に魔力を込めると、辺りに風が吹いた。
髪が靡く程度の風が教室に吹いている。
それだけ……。
「これは、暑い時に私が使っているもので害はありません。それに、四つ星以上の魔法使いにしか魔力を込められません。私の私物が生徒の魔石に混じってしまったのでしょう。すみません。以後気をつけます」
マベルの言葉に周りはホッと安心していた。
やられた……。
俺は試された? まさかとは思うが疑われている?
それとも本当に偶然?
マベルは、エルドとリンゼイの同級生で、エルドと話したのなんてマベルが学院を卒業してからだ。
俺がエルドだからってマベルに関係ないはずだ。
もしもあの魔石が風が吹くだけのものじゃなかったらと思うと怖い。
授業でこんな風に試されるのは他の生徒にも迷惑が掛かる。
マベルの目的をはっきりとさせたい。
その日の夜、俺は自分からマベルの部屋を訪ねに行った。
あなたにおすすめの小説
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
悪の策士のうまくいかなかった計画
迷路を跳ぶ狐
BL
いつか必ず返り咲く。それだけを目標に、俺はこの学園に戻ってきた。過去に、破壊と使役の魔法を研究したとして、退学になったこの学園に。
今こそ、復活の時だ。俺を切り捨てた者たちに目に物見せ、研究所を再興する。
そのために、王子と伯爵の息子を利用することを考えた俺は、長く温めた策を決行し、学園に潜り込んだ。
これから俺を陥れた連中を、騙して嵌めて蹂躙するっ! ……はず、だった……のに??
王子は跪き、俺に向かって言った。
「あなたの破壊の魔法をどうか教えてください。教えるまでこの部屋から出しません」と。
そして、伯爵の息子は俺の手をとって言った。
「ずっと好きだった」と。
…………どうなってるんだ?
あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります
【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話
須宮りんこ
BL
【あらすじ】
高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。
二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。
そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。
青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。
けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――?
※本編完結済み。後日談連載中。
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
完結しました!ありがとうございました。
第十王子は天然侍従には敵わない。
きっせつ
BL
「婚約破棄させて頂きます。」
学園の卒業パーティーで始まった九人の令嬢による兄王子達の断罪を頭が痛くなる思いで第十王子ツェーンは見ていた。突如、その断罪により九人の王子が失脚し、ツェーンは王太子へと位が引き上げになったが……。どうしても王になりたくない王子とそんな王子を慕うド天然ワンコな侍従の偽装婚約から始まる勘違いとすれ違い(考え方の)のボーイズラブコメディ…の予定。※R 15。本番なし。