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無理は禁物
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会社に行く用意をして、玄関でたっつんを見送る。
「正親さん、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
チュッとキスしたら、たっつんは首を傾げた。
「あれ? 正親さん……いつもより少し体温が高くないですか?」
「そうか? 普通だろ?」
「そうですか? もう少し確かめさせて下さい……」
抱きしめられてキスされて、ヌルッとした舌が口内に侵入してきた。
生暖かい舌の感触が気持ち良くなってくる。
「ん……んんっ……はっ……お前……んっ……そんなのでわかるか!」
バリっとたっつんを引き剥がす。
「やっぱり体温が高い気がします」
「そんなキスしたら普通に体温上がるわ! さっさと行け!」
「はい……。あまり無理しないで下さいね?」
心配そうに覗き込まれたら照れる。
「大丈夫だからもう行けよ」
「はい。行ってきます」
笑顔を向けられれば微笑んでしまう。
たっつんを見送って、自分も出社する。
この日常に慣れてきていた。
自分のデスクに向かいながらたっつんの事を考えてしまっていた。
同じ会社だけれど、部署が違うと会えない事も多い。
最初は会えない事にホッとしていたのに、今は顔が見たいと思うのだから人の気持ちはわからないものだと思う。
そんな事を考えながら、緩んだ口元を引き締めていたら部長に呼ばれた。
「田杉。マーケティング部の方から頼まれたシステムの変更はどうなった? 明日使いたいそうだ」
「明日ですか⁉︎」
「明日だ」
「無茶苦茶ですよ! もっと早く言えって言ってやって下さいよ!」
「それはもう言っといた。できないか?」
「やりますよ!」
「田杉ならそう言うと思った。だから、できるとも言っておいた。今後の為に貸しを作っておくぞ」
ニヤリと笑う部長にため息をつく。
自分の席に戻って村住のPCを覗き込む。
半分だな……。
「村住……残念なお知らせだ……」
「え⁉︎ なんですか⁉︎」
「その仕事……明日までだってさ……」
「え⁉︎ そうなんですか⁉︎ 残業確定ですね……」
「残業ならまだいい。徹夜にならなきゃいいな」
笑顔で言ってあげたら村住の顔が青ざめる。
「俺も手伝うからやろう」
「はい!」
それからずっと画面と睨めっこをしていた。
定時を過ぎて、残業しながらゼリー飲料を飲む。
隣の村住も必死で手を動かす。
「田杉、村住。こっちの仕事が終わった。俺も手伝う」
「「部長!」」
そう言ってくれた部長がキラキラと輝いて神様に見えた。
すぐさま仕事を分け合った。
仕事の終わりが見えてきたのは9時を過ぎた頃だった。
あと1時間もあれば終わりになりそうだ。
さすが部長だ。仕事が早い。
村住も良く頑張ってくれた。
スマホを確認すれば、たっつんからメッセージが幾つか届いていた。
『残業何時までですか?』
『待っていてもいいですか?』
『差し入れします』
集中しようとマナーモードだったから気付かなかった。
時間的にそろそろくる頃かもしれない。
「あの、白石が差し入れしてくれるそうなんで、お茶入れてきます」
「あ、俺が行きます」
「いいよ。村住は手を動かしとけ」
言うと同時に立ち上がったら、一瞬目の前が真っ暗になった。
よろけた拍子にガタンッと自分のデスクに手をついてどうにか支えた。
立ちくらみ?
「マサ⁉︎」
「田杉先輩⁉︎」
二人に心配そうに見られてしまった。
「やだなぁ、ずっと座りっぱなしだったんでちょっとフラッとしただけですよ。平気です。村住も大丈夫だから座ってて」
笑顔で平静を装って給湯室まで行って、二人が見えなくなったと同時に給湯室の壁にもたれかかった。
自覚したら自分の体温が異様に高いのが今わかった。
仕事に集中していて熱が出ていた事に気付かなかった。
はぁはぁと呼吸も荒い。
それでもまだ仕事が終わっていない。
お茶入れて戻らなきゃ……そう思って体を壁から離そうと、力を入れて一歩踏み出そうとした瞬間に力が入らなくてフラリとよろけた。
これ……やばいやつ?
ボーッとした頭でそんな悠長な事を考えながら床に倒れる瞬間に、ガシッと体を支えられた感触がした。
誰だろう……あとでお礼を言わなきゃ……。
それ以上、何も考えられなかった。
俺はそのままフッと意識を手放した。
「正親さん、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
チュッとキスしたら、たっつんは首を傾げた。
「あれ? 正親さん……いつもより少し体温が高くないですか?」
「そうか? 普通だろ?」
「そうですか? もう少し確かめさせて下さい……」
抱きしめられてキスされて、ヌルッとした舌が口内に侵入してきた。
生暖かい舌の感触が気持ち良くなってくる。
「ん……んんっ……はっ……お前……んっ……そんなのでわかるか!」
バリっとたっつんを引き剥がす。
「やっぱり体温が高い気がします」
「そんなキスしたら普通に体温上がるわ! さっさと行け!」
「はい……。あまり無理しないで下さいね?」
心配そうに覗き込まれたら照れる。
「大丈夫だからもう行けよ」
「はい。行ってきます」
笑顔を向けられれば微笑んでしまう。
たっつんを見送って、自分も出社する。
この日常に慣れてきていた。
自分のデスクに向かいながらたっつんの事を考えてしまっていた。
同じ会社だけれど、部署が違うと会えない事も多い。
最初は会えない事にホッとしていたのに、今は顔が見たいと思うのだから人の気持ちはわからないものだと思う。
そんな事を考えながら、緩んだ口元を引き締めていたら部長に呼ばれた。
「田杉。マーケティング部の方から頼まれたシステムの変更はどうなった? 明日使いたいそうだ」
「明日ですか⁉︎」
「明日だ」
「無茶苦茶ですよ! もっと早く言えって言ってやって下さいよ!」
「それはもう言っといた。できないか?」
「やりますよ!」
「田杉ならそう言うと思った。だから、できるとも言っておいた。今後の為に貸しを作っておくぞ」
ニヤリと笑う部長にため息をつく。
自分の席に戻って村住のPCを覗き込む。
半分だな……。
「村住……残念なお知らせだ……」
「え⁉︎ なんですか⁉︎」
「その仕事……明日までだってさ……」
「え⁉︎ そうなんですか⁉︎ 残業確定ですね……」
「残業ならまだいい。徹夜にならなきゃいいな」
笑顔で言ってあげたら村住の顔が青ざめる。
「俺も手伝うからやろう」
「はい!」
それからずっと画面と睨めっこをしていた。
定時を過ぎて、残業しながらゼリー飲料を飲む。
隣の村住も必死で手を動かす。
「田杉、村住。こっちの仕事が終わった。俺も手伝う」
「「部長!」」
そう言ってくれた部長がキラキラと輝いて神様に見えた。
すぐさま仕事を分け合った。
仕事の終わりが見えてきたのは9時を過ぎた頃だった。
あと1時間もあれば終わりになりそうだ。
さすが部長だ。仕事が早い。
村住も良く頑張ってくれた。
スマホを確認すれば、たっつんからメッセージが幾つか届いていた。
『残業何時までですか?』
『待っていてもいいですか?』
『差し入れします』
集中しようとマナーモードだったから気付かなかった。
時間的にそろそろくる頃かもしれない。
「あの、白石が差し入れしてくれるそうなんで、お茶入れてきます」
「あ、俺が行きます」
「いいよ。村住は手を動かしとけ」
言うと同時に立ち上がったら、一瞬目の前が真っ暗になった。
よろけた拍子にガタンッと自分のデスクに手をついてどうにか支えた。
立ちくらみ?
「マサ⁉︎」
「田杉先輩⁉︎」
二人に心配そうに見られてしまった。
「やだなぁ、ずっと座りっぱなしだったんでちょっとフラッとしただけですよ。平気です。村住も大丈夫だから座ってて」
笑顔で平静を装って給湯室まで行って、二人が見えなくなったと同時に給湯室の壁にもたれかかった。
自覚したら自分の体温が異様に高いのが今わかった。
仕事に集中していて熱が出ていた事に気付かなかった。
はぁはぁと呼吸も荒い。
それでもまだ仕事が終わっていない。
お茶入れて戻らなきゃ……そう思って体を壁から離そうと、力を入れて一歩踏み出そうとした瞬間に力が入らなくてフラリとよろけた。
これ……やばいやつ?
ボーッとした頭でそんな悠長な事を考えながら床に倒れる瞬間に、ガシッと体を支えられた感触がした。
誰だろう……あとでお礼を言わなきゃ……。
それ以上、何も考えられなかった。
俺はそのままフッと意識を手放した。
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