9 / 16
バレなければ企みではございません ①
しおりを挟む
夜、煌麻様に布団を掛けて、いつものように挨拶をする。
「煌麻様、おやすみなさいませ」
ベッドから離れようとすると、布団を掴んでいた手を掴まれた。
「崇臣……待て」
「眠れませんか?」
そっとその手を握り返す。
「違う。崇臣は……僕が聖蘭と結婚してもいいのか?」
可愛らしい質問をされた。
朝の事を気にしていたらしい。
「煌麻様はどうなんですか? 聖蘭様と結婚したいですか?」
煌麻様は、眉間に皺を寄せながら呟いた。
「今まで……この家の当主になるなら、結婚する事を当たり前みたいに思っていたんだ。でも、僕は……結婚したくない……。聖蘭が嫌とかじゃなくて……結婚は……したくない……」
嬉しくて笑い出してしまいそうなのを堪える。
「どうしてですか?」
「え? そ、そんなのきくな」
「なぜですか?」
「い、いいだろ! なんだって!」
結婚は好きな人とするべきだとでも思っているのかもしれない。結婚に対しての考え方が変わったのは嬉しい。
真っ赤になりながらこれ以上は答えてくれなそうだ。
「まだ仕事が残っております。戻りますね」
「おい? 僕の質問に答えてないだろう?」
眉根に皺を寄せて厳しい視線を私に向ける煌麻様にニッコリと微笑む。
ああ……本当に可愛い。
サラサラの髪を撫でて、少しだけ甘やかしてあげる。
「煌麻様は、私が結婚すると言ったらどうですか?」
「…………別に……」
煌麻様は、不満そうな顔で視線を逸らした。
「煌麻様が今思っている事が、私が思う事と同じだと思いますよ」
「……それって──」
「では、ゆっくりおやすみ下さい」
そっとおでこにキスをして、これ以上は話さないという意志を見せて、布団をかけ直してあげれば中に潜った。
煌麻様は私が結婚するのは嫌だと思ったはずだ。でも、別にと答えた事も気にしている。どちらなのかと悶々と考える煌麻様が想像できて口元がニヤけそうだ。
「さっさと行け……!」
「ふふっ。おやすみなさいませ」
こんなに可愛い人……他にいない。
煌麻様自身が結婚したくないのだと言葉にしてくれて良かった。
◆◇◆
執事服をスーツに着替えて、キッチリとセットしていた髪を崩す。
後を霧久に任せて、夜の街に出た。
とあるホストクラブの裏口から中に入る。
「オーナー! 今日はどうしたんですか?」
ホストである翔が声をかけてきた。
ホストで顔見知りなのは数人しかいない。翔はそのうちの一人だ。
「こんばんは。翔はさぼりですか?」
「違いますよ! 今、指名の子が帰った所なんですよ!」
「暇なら店長を事務所の方に呼んできて下さい」
「は~い」
店の二階にある事務所の椅子に座って待つ。
少ししてやってきたのは、スーツに身を包んでいるけれど、黒髪のホストっぽくないホストだ。
「崇臣さん、お待たせしました」
「峰貞、店の方はどうですか?」
「相変わらずですよ」
それは店の売上は良いという事だ。
「店をあなたに任せて良かったです」
峰貞は、ホストとしてそれなりに稼いでいたけれど、当時の店の同僚に嫌がらせを受けていた。
話してみれば、使えそうなやつだった。自由に店をやりたいと言うので、この店を開いてあげた。
いずれは私からこの店を買うのが目標らしい。
「こちらこそ。やりがいがあって楽しいですよ。それで──今日は例の件ですか?」
「はい。広隆くんは、どうですか?」
ニッコリ笑顔で聞けば、峰貞はニヤリと笑う。
「今の彼女にベタ惚れされて、店をやめろと言われているみたいですね」
「そうでしょうね。プライドの高い彼女には、面白くない職場です」
だから、余計に固執する。
「広隆も満更じゃないみたいで……今日も店にも来ないで会ってるみたいです。店の客にすればいいのに、本気みたいで困ってますよ。遅刻と欠勤ばかりでいい迷惑です」
丁度いい頃合いだ。お互いに恋愛に酔っていて周りが見えなくなっている。
クスクスと笑いながら、峰貞のデスクの引き出しを開ける。
「それじゃ、広隆くんが峰貞に相談に来たら、これ渡してくれていいですからね」
引き出しの中に持ってきた札束を入れておく。
「本当に来ますかね?」
「来ますよ。間違いなく」
「その金あげていいんですか? 勿体無いなぁ」
峰貞は、ため息をついている。
煌麻様の為に使うのなら安いものだ。
「広隆も、店で揉め事を起こしたりするからこうなるんですよ」
峰貞のため息混じりの言葉にクスクスと笑う。
「もうすぐいなくなります。厄介払いができて良かったですね」
「怖い人ですねぇ……出会いから何から仕組んでおいて、最後は──」
「峰貞、人聞きが悪いですよ。仕組んだのは私ですが、選択しているのは彼らです」
そう。選んでいるのは彼女と彼だ。
「彼らがそうするってわかるんだから……怖いって言ってるんですよ」
峰貞の苦笑いにクスクスと笑って返した。
「煌麻様、おやすみなさいませ」
ベッドから離れようとすると、布団を掴んでいた手を掴まれた。
「崇臣……待て」
「眠れませんか?」
そっとその手を握り返す。
「違う。崇臣は……僕が聖蘭と結婚してもいいのか?」
可愛らしい質問をされた。
朝の事を気にしていたらしい。
「煌麻様はどうなんですか? 聖蘭様と結婚したいですか?」
煌麻様は、眉間に皺を寄せながら呟いた。
「今まで……この家の当主になるなら、結婚する事を当たり前みたいに思っていたんだ。でも、僕は……結婚したくない……。聖蘭が嫌とかじゃなくて……結婚は……したくない……」
嬉しくて笑い出してしまいそうなのを堪える。
「どうしてですか?」
「え? そ、そんなのきくな」
「なぜですか?」
「い、いいだろ! なんだって!」
結婚は好きな人とするべきだとでも思っているのかもしれない。結婚に対しての考え方が変わったのは嬉しい。
真っ赤になりながらこれ以上は答えてくれなそうだ。
「まだ仕事が残っております。戻りますね」
「おい? 僕の質問に答えてないだろう?」
眉根に皺を寄せて厳しい視線を私に向ける煌麻様にニッコリと微笑む。
ああ……本当に可愛い。
サラサラの髪を撫でて、少しだけ甘やかしてあげる。
「煌麻様は、私が結婚すると言ったらどうですか?」
「…………別に……」
煌麻様は、不満そうな顔で視線を逸らした。
「煌麻様が今思っている事が、私が思う事と同じだと思いますよ」
「……それって──」
「では、ゆっくりおやすみ下さい」
そっとおでこにキスをして、これ以上は話さないという意志を見せて、布団をかけ直してあげれば中に潜った。
煌麻様は私が結婚するのは嫌だと思ったはずだ。でも、別にと答えた事も気にしている。どちらなのかと悶々と考える煌麻様が想像できて口元がニヤけそうだ。
「さっさと行け……!」
「ふふっ。おやすみなさいませ」
こんなに可愛い人……他にいない。
煌麻様自身が結婚したくないのだと言葉にしてくれて良かった。
◆◇◆
執事服をスーツに着替えて、キッチリとセットしていた髪を崩す。
後を霧久に任せて、夜の街に出た。
とあるホストクラブの裏口から中に入る。
「オーナー! 今日はどうしたんですか?」
ホストである翔が声をかけてきた。
ホストで顔見知りなのは数人しかいない。翔はそのうちの一人だ。
「こんばんは。翔はさぼりですか?」
「違いますよ! 今、指名の子が帰った所なんですよ!」
「暇なら店長を事務所の方に呼んできて下さい」
「は~い」
店の二階にある事務所の椅子に座って待つ。
少ししてやってきたのは、スーツに身を包んでいるけれど、黒髪のホストっぽくないホストだ。
「崇臣さん、お待たせしました」
「峰貞、店の方はどうですか?」
「相変わらずですよ」
それは店の売上は良いという事だ。
「店をあなたに任せて良かったです」
峰貞は、ホストとしてそれなりに稼いでいたけれど、当時の店の同僚に嫌がらせを受けていた。
話してみれば、使えそうなやつだった。自由に店をやりたいと言うので、この店を開いてあげた。
いずれは私からこの店を買うのが目標らしい。
「こちらこそ。やりがいがあって楽しいですよ。それで──今日は例の件ですか?」
「はい。広隆くんは、どうですか?」
ニッコリ笑顔で聞けば、峰貞はニヤリと笑う。
「今の彼女にベタ惚れされて、店をやめろと言われているみたいですね」
「そうでしょうね。プライドの高い彼女には、面白くない職場です」
だから、余計に固執する。
「広隆も満更じゃないみたいで……今日も店にも来ないで会ってるみたいです。店の客にすればいいのに、本気みたいで困ってますよ。遅刻と欠勤ばかりでいい迷惑です」
丁度いい頃合いだ。お互いに恋愛に酔っていて周りが見えなくなっている。
クスクスと笑いながら、峰貞のデスクの引き出しを開ける。
「それじゃ、広隆くんが峰貞に相談に来たら、これ渡してくれていいですからね」
引き出しの中に持ってきた札束を入れておく。
「本当に来ますかね?」
「来ますよ。間違いなく」
「その金あげていいんですか? 勿体無いなぁ」
峰貞は、ため息をついている。
煌麻様の為に使うのなら安いものだ。
「広隆も、店で揉め事を起こしたりするからこうなるんですよ」
峰貞のため息混じりの言葉にクスクスと笑う。
「もうすぐいなくなります。厄介払いができて良かったですね」
「怖い人ですねぇ……出会いから何から仕組んでおいて、最後は──」
「峰貞、人聞きが悪いですよ。仕組んだのは私ですが、選択しているのは彼らです」
そう。選んでいるのは彼女と彼だ。
「彼らがそうするってわかるんだから……怖いって言ってるんですよ」
峰貞の苦笑いにクスクスと笑って返した。
1
あなたにおすすめの小説
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
【本編完結】最強魔導騎士は、騎士団長に頭を撫でて欲しい【番外編あり】
ゆらり
BL
帝国の侵略から国境を守る、レゲムアーク皇国第一魔導騎士団の駐屯地に派遣された、新人の魔導騎士ネウクレア。
着任当日に勃発した砲撃防衛戦で、彼は敵の砲撃部隊を単独で壊滅に追いやった。
凄まじい能力を持つ彼を部下として迎え入れた騎士団長セディウスは、研究機関育ちであるネウクレアの独特な言動に戸惑いながらも、全身鎧の下に隠された……どこか歪ではあるが、純粋無垢であどけない姿に触れたことで、彼に対して強い庇護欲を抱いてしまう。
撫でて、抱きしめて、甘やかしたい。
帝国との全面戦争が迫るなか、ネウクレアへの深い想いと、皇国の守護者たる騎士としての責務の間で、セディウスは葛藤する。
独身なのに父性強めな騎士団長×不憫な生い立ちで情緒薄めな甘えたがり魔導騎士+仲が良すぎる副官コンビ。
甘いだけじゃない、骨太文体でお送りする軍記物BL小説です。番外は日常エピソード中心。ややダーク・ファンタジー寄り。
※ぼかしなし、本当の意味で全年齢向け。
★お気に入りやいいね、エールをありがとうございます! お気に召しましたらぜひポチリとお願いします。凄く励みになります!
ずっと好きだった幼馴染の結婚式に出席する話
子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき
「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。
そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。
背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。
結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。
「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」
誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。
叶わない恋だってわかってる。
それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。
君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。
【bl】砕かれた誇り
perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。
「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」
「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」
「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」
彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。
「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」
「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」
---
いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。
私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、
一部に翻訳ソフトを使用しています。
もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、
本当にありがたく思います。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました
あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」
穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン
攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?
攻め:深海霧矢
受け:清水奏
前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。
ハピエンです。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
自己判断で消しますので、悪しからず。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる