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バレなければ企みではございません ①
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夜、煌麻様に布団を掛けて、いつものように挨拶をする。
「煌麻様、おやすみなさいませ」
ベッドから離れようとすると、布団を掴んでいた手を掴まれた。
「崇臣……待て」
「眠れませんか?」
そっとその手を握り返す。
「違う。崇臣は……僕が聖蘭と結婚してもいいのか?」
可愛らしい質問をされた。
朝の事を気にしていたらしい。
「煌麻様はどうなんですか? 聖蘭様と結婚したいですか?」
煌麻様は、眉間に皺を寄せながら呟いた。
「今まで……この家の当主になるなら、結婚する事を当たり前みたいに思っていたんだ。でも、僕は……結婚したくない……。聖蘭が嫌とかじゃなくて……結婚は……したくない……」
嬉しくて笑い出してしまいそうなのを堪える。
「どうしてですか?」
「え? そ、そんなのきくな」
「なぜですか?」
「い、いいだろ! なんだって!」
結婚は好きな人とするべきだとでも思っているのかもしれない。結婚に対しての考え方が変わったのは嬉しい。
真っ赤になりながらこれ以上は答えてくれなそうだ。
「まだ仕事が残っております。戻りますね」
「おい? 僕の質問に答えてないだろう?」
眉根に皺を寄せて厳しい視線を私に向ける煌麻様にニッコリと微笑む。
ああ……本当に可愛い。
サラサラの髪を撫でて、少しだけ甘やかしてあげる。
「煌麻様は、私が結婚すると言ったらどうですか?」
「…………別に……」
煌麻様は、不満そうな顔で視線を逸らした。
「煌麻様が今思っている事が、私が思う事と同じだと思いますよ」
「……それって──」
「では、ゆっくりおやすみ下さい」
そっとおでこにキスをして、これ以上は話さないという意志を見せて、布団をかけ直してあげれば中に潜った。
煌麻様は私が結婚するのは嫌だと思ったはずだ。でも、別にと答えた事も気にしている。どちらなのかと悶々と考える煌麻様が想像できて口元がニヤけそうだ。
「さっさと行け……!」
「ふふっ。おやすみなさいませ」
こんなに可愛い人……他にいない。
煌麻様自身が結婚したくないのだと言葉にしてくれて良かった。
◆◇◆
執事服をスーツに着替えて、キッチリとセットしていた髪を崩す。
後を霧久に任せて、夜の街に出た。
とあるホストクラブの裏口から中に入る。
「オーナー! 今日はどうしたんですか?」
ホストである翔が声をかけてきた。
ホストで顔見知りなのは数人しかいない。翔はそのうちの一人だ。
「こんばんは。翔はさぼりですか?」
「違いますよ! 今、指名の子が帰った所なんですよ!」
「暇なら店長を事務所の方に呼んできて下さい」
「は~い」
店の二階にある事務所の椅子に座って待つ。
少ししてやってきたのは、スーツに身を包んでいるけれど、黒髪のホストっぽくないホストだ。
「崇臣さん、お待たせしました」
「峰貞、店の方はどうですか?」
「相変わらずですよ」
それは店の売上は良いという事だ。
「店をあなたに任せて良かったです」
峰貞は、ホストとしてそれなりに稼いでいたけれど、当時の店の同僚に嫌がらせを受けていた。
話してみれば、使えそうなやつだった。自由に店をやりたいと言うので、この店を開いてあげた。
いずれは私からこの店を買うのが目標らしい。
「こちらこそ。やりがいがあって楽しいですよ。それで──今日は例の件ですか?」
「はい。広隆くんは、どうですか?」
ニッコリ笑顔で聞けば、峰貞はニヤリと笑う。
「今の彼女にベタ惚れされて、店をやめろと言われているみたいですね」
「そうでしょうね。プライドの高い彼女には、面白くない職場です」
だから、余計に固執する。
「広隆も満更じゃないみたいで……今日も店にも来ないで会ってるみたいです。店の客にすればいいのに、本気みたいで困ってますよ。遅刻と欠勤ばかりでいい迷惑です」
丁度いい頃合いだ。お互いに恋愛に酔っていて周りが見えなくなっている。
クスクスと笑いながら、峰貞のデスクの引き出しを開ける。
「それじゃ、広隆くんが峰貞に相談に来たら、これ渡してくれていいですからね」
引き出しの中に持ってきた札束を入れておく。
「本当に来ますかね?」
「来ますよ。間違いなく」
「その金あげていいんですか? 勿体無いなぁ」
峰貞は、ため息をついている。
煌麻様の為に使うのなら安いものだ。
「広隆も、店で揉め事を起こしたりするからこうなるんですよ」
峰貞のため息混じりの言葉にクスクスと笑う。
「もうすぐいなくなります。厄介払いができて良かったですね」
「怖い人ですねぇ……出会いから何から仕組んでおいて、最後は──」
「峰貞、人聞きが悪いですよ。仕組んだのは私ですが、選択しているのは彼らです」
そう。選んでいるのは彼女と彼だ。
「彼らがそうするってわかるんだから……怖いって言ってるんですよ」
峰貞の苦笑いにクスクスと笑って返した。
「煌麻様、おやすみなさいませ」
ベッドから離れようとすると、布団を掴んでいた手を掴まれた。
「崇臣……待て」
「眠れませんか?」
そっとその手を握り返す。
「違う。崇臣は……僕が聖蘭と結婚してもいいのか?」
可愛らしい質問をされた。
朝の事を気にしていたらしい。
「煌麻様はどうなんですか? 聖蘭様と結婚したいですか?」
煌麻様は、眉間に皺を寄せながら呟いた。
「今まで……この家の当主になるなら、結婚する事を当たり前みたいに思っていたんだ。でも、僕は……結婚したくない……。聖蘭が嫌とかじゃなくて……結婚は……したくない……」
嬉しくて笑い出してしまいそうなのを堪える。
「どうしてですか?」
「え? そ、そんなのきくな」
「なぜですか?」
「い、いいだろ! なんだって!」
結婚は好きな人とするべきだとでも思っているのかもしれない。結婚に対しての考え方が変わったのは嬉しい。
真っ赤になりながらこれ以上は答えてくれなそうだ。
「まだ仕事が残っております。戻りますね」
「おい? 僕の質問に答えてないだろう?」
眉根に皺を寄せて厳しい視線を私に向ける煌麻様にニッコリと微笑む。
ああ……本当に可愛い。
サラサラの髪を撫でて、少しだけ甘やかしてあげる。
「煌麻様は、私が結婚すると言ったらどうですか?」
「…………別に……」
煌麻様は、不満そうな顔で視線を逸らした。
「煌麻様が今思っている事が、私が思う事と同じだと思いますよ」
「……それって──」
「では、ゆっくりおやすみ下さい」
そっとおでこにキスをして、これ以上は話さないという意志を見せて、布団をかけ直してあげれば中に潜った。
煌麻様は私が結婚するのは嫌だと思ったはずだ。でも、別にと答えた事も気にしている。どちらなのかと悶々と考える煌麻様が想像できて口元がニヤけそうだ。
「さっさと行け……!」
「ふふっ。おやすみなさいませ」
こんなに可愛い人……他にいない。
煌麻様自身が結婚したくないのだと言葉にしてくれて良かった。
◆◇◆
執事服をスーツに着替えて、キッチリとセットしていた髪を崩す。
後を霧久に任せて、夜の街に出た。
とあるホストクラブの裏口から中に入る。
「オーナー! 今日はどうしたんですか?」
ホストである翔が声をかけてきた。
ホストで顔見知りなのは数人しかいない。翔はそのうちの一人だ。
「こんばんは。翔はさぼりですか?」
「違いますよ! 今、指名の子が帰った所なんですよ!」
「暇なら店長を事務所の方に呼んできて下さい」
「は~い」
店の二階にある事務所の椅子に座って待つ。
少ししてやってきたのは、スーツに身を包んでいるけれど、黒髪のホストっぽくないホストだ。
「崇臣さん、お待たせしました」
「峰貞、店の方はどうですか?」
「相変わらずですよ」
それは店の売上は良いという事だ。
「店をあなたに任せて良かったです」
峰貞は、ホストとしてそれなりに稼いでいたけれど、当時の店の同僚に嫌がらせを受けていた。
話してみれば、使えそうなやつだった。自由に店をやりたいと言うので、この店を開いてあげた。
いずれは私からこの店を買うのが目標らしい。
「こちらこそ。やりがいがあって楽しいですよ。それで──今日は例の件ですか?」
「はい。広隆くんは、どうですか?」
ニッコリ笑顔で聞けば、峰貞はニヤリと笑う。
「今の彼女にベタ惚れされて、店をやめろと言われているみたいですね」
「そうでしょうね。プライドの高い彼女には、面白くない職場です」
だから、余計に固執する。
「広隆も満更じゃないみたいで……今日も店にも来ないで会ってるみたいです。店の客にすればいいのに、本気みたいで困ってますよ。遅刻と欠勤ばかりでいい迷惑です」
丁度いい頃合いだ。お互いに恋愛に酔っていて周りが見えなくなっている。
クスクスと笑いながら、峰貞のデスクの引き出しを開ける。
「それじゃ、広隆くんが峰貞に相談に来たら、これ渡してくれていいですからね」
引き出しの中に持ってきた札束を入れておく。
「本当に来ますかね?」
「来ますよ。間違いなく」
「その金あげていいんですか? 勿体無いなぁ」
峰貞は、ため息をついている。
煌麻様の為に使うのなら安いものだ。
「広隆も、店で揉め事を起こしたりするからこうなるんですよ」
峰貞のため息混じりの言葉にクスクスと笑う。
「もうすぐいなくなります。厄介払いができて良かったですね」
「怖い人ですねぇ……出会いから何から仕組んでおいて、最後は──」
「峰貞、人聞きが悪いですよ。仕組んだのは私ですが、選択しているのは彼らです」
そう。選んでいるのは彼女と彼だ。
「彼らがそうするってわかるんだから……怖いって言ってるんですよ」
峰貞の苦笑いにクスクスと笑って返した。
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