腹黒執事はご主人様を手に入れたい

おみなしづき

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恋人としての自覚をお持ち下さい

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 寝入ってしまった煌麻様のおでこにキスを贈り、そっとベッドから抜け出した。
 主人と同じ布団で寝るなんて有り得ない。

 服を着ながら煌麻様の艶やかな姿を思い出して何度もリピートする。

 最高だった──。

 ニヤけそうになる顔を抑え込んで後始末をして、そっと部屋から出た。
 明日の朝は少し早めに起こしにこよう。

     ◆◇◆

 ガチャリと煌麻様の寝室のドアを開けたら、何かが飛んできた。

「っ!?」

 びっくりしつつ飛んできたそれを受け止めてよく見れば、煌麻様の枕だった。
 どうやら煌麻様に枕を投げられたようだ。

「煌麻様? 起きていらっしゃるとは珍しいですね」
「ばかおみ!」

 おっと……新しいあだ名ですね……。

「ご機嫌がよろしくないようで──?」

 物が飛んできたのは久しぶりだな。

「ふざけるな……っ!」
「申し訳ございません。なぜご機嫌が悪いのか心当たりがございません……」

 昨晩調子に乗りすぎたか……。
 体に負担があるのは分かるけれど、無理させてしまっただろうか……。

「なんで──……」

 あ。怒っている顔も可愛い。

「なんで僕の隣で寝ていなかったんだ!?」

 ──……えっと……え?

 またも予想を飛び越えて来たな……。
 予想では、イチャイチャしたがる煌麻様を揶揄う予定だったのだが、どうやら本気で怒っているみたいだ。

「私が隣で寝ていなかった事がご不満ですか?」
「お前は僕で遊んだのか……!?」

 ま、待て待て待て……!

「煌麻様は何か誤解をしていらっしゃるかと思います!」
「起きた時、お前がいないから夢だったのかと思ったんだ! でも……は、裸だし……か、体は痛いから……それで……っ! ぼ、僕の気持ちをもてあそんだんだろう!?」

 つまり……煌麻様が起きた時に私がいなくてがっかりした──という事だ。

 かっっっわいい……──。

「おい! 僕は怒っているんだ! なんでニヤけているんだ!」

 ニヤけ顔が我慢できないとは重症だ。
 何度か深呼吸して、キリッとした顔を作って煌麻様のベッドの脇に跪く。

「煌麻様、私は執事です。主人と同じ布団で寝入るなど有り得ません。ですから、それは勘違いでございます。私がどれだけ煌麻様をお慕い申し上げているのか、昨日たっぷりお伝えしたつもりでしたが……足りなかったのですね?」

 怒り顔だった煌麻様の顔が困り顔に変化した。ニヤけそうになる顔を我慢して見つめていれば、ボッと顔を赤くした。
 昨晩の事を思い出したらしい。

「こ、こっちに来い……」

 立ち上がって煌麻様の側に行った。
 あ。枕持ったままだった。そっと元の位置に戻す。
 近付けば、煌麻様の体に点々と赤い痕が残っていて反省する。
 昨日は煌麻様の初めてを貰ってしまったから、正直浮かれていた──。
 今後は綺麗な体に痕を付けないように気をつけよう。

「そ、それじゃあ……崇臣は……僕の……なんなんだ?」
「執事ですかね」

 間髪入れずに答えれば、じっとりと睨まれた。

「ふざけるなっ……! 執事なのは当たり前だろう!」

 本当にお可愛らしい。

「申し訳ございません。煌麻様の色んなお顔が見たくてつい──」

 微笑めば、ほんのりと顔を赤く染めた。
 特にこうやって、怒りたいのに照れていてグッと口ごもる所とか大好きだ。

「それで……どうなんだ? 僕達は……どんな関係なんだ?」

 これで誤魔化すだなんて野暮な事をしたら嫌われてしまいそうだ。

「恋人──と申し上げてもよろしいですか?」

 煌麻様は、期待に満ちた顔を私に向けてきた。

「い、いいんだな!?」

 ああ……可愛いなぁ……本当可愛い。

「はい。煌麻様は私の恋人ですね」
「そうか──恋人……恋人でいいんだ……へへっ」

 ほんのりと顔を赤く染めて、嬉しそうに顔を綻ばせた。

 ──プツンッ!

 理性の切れる音がした。

「煌麻様……申し訳ございません。先に謝っておきます」

 ガバッとキスをする。

「んっ……はっ……」

 煌麻様の吐息と共にクチュリと音が立てばものすごく興奮する。
 煌麻様は私の腕を掴んできた。そんな仕草すら愛おしい。

「崇臣……」
「今から10分だけ──たくさん甘やかして差し上げます──」

     ◆◇◆

「煌麻様、行ってらっしゃいませ」

 ニッコリ微笑んで見送る。

「…………い、行ってくる……」

 少し下を向いた煌麻様に、私と離れたくないと見てとれて笑顔がこぼれる。

「早く帰ってくるから……な……」

 そんな言葉を掛けてくれた事なんてない! 新婚みたいじゃないですかぁ!

「──はいっ!」

 幸せを噛み締める日々はまだ始まったばかりだ。
 私の人生は煌麻様でできていると言っても過言ではない。

 これからもずっと──あなただけが私の人生そのものだ。




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※お知らせ
本編は終わりですが番外編が少しあります。
最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。
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