腹黒執事はご主人様を手に入れたい

おみなしづき

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番外編

執事にもわからない事はある ①

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 とある休日に煌麻様は、こう言った。

「修也の家に行ってくる」

 この言い方だと、私は留守番?

「なぜですか?」
「お前には関係ない……」

 なんだ? この違和感は……。

「何時までですか?」
「わ、わからない!」

 煌麻様の顔には、それ以上聞くなと書いてあって、それ以上の追求はしなかった。

「では、私もご一緒に──」
「だめだっ!」

 やっぱり私は留守番のようだが、それ以上に全力の否定に驚く。
 これ、いつものツンじゃなくて……?

 後を付けさせたいが──修也の邸宅か……。
 セキュリティも万全で、忍び込むのも無理だろう。

「霧久と行くから、霧久を呼んでくれ」

 煌麻様は私から顔を逸らした。
 今度は、これ以上話したくないと書いてある……。

「……──かしこまりました……」

 人生とは、わからないものだ。
 私が動揺する日が来るなんて……。

「煌麻様、送り迎えは──」
「それも修也が手配してくれる。お前は気にしなくていい」
「かしこまりました……」

 めちゃくちゃ気になる。
 何をしに行くのだろうか……。

 そんな疑問を抱いたまま、外出用の洋服に着替えさせれば、修也の家の迎えが本当に来た。
 霧久と一緒に邸宅を出ていく煌麻様を見送った。

 修也の邸宅に行った煌麻様の事が気になったけれど、仕事をして自分の持っている店の報告を聞いて、それなりに忙しく過ごしていた。
 ふと胸の内ポケットにしまっていた懐中時計を出して時間を確認しようとして、時計が止まってしまっている事に気付く。リューズを回しても動く気配はなかった。

「もうだいぶ使ったから……壊れたかな……」

 今は何時なんだろうか。煌麻様は何時に帰ってくるのだろうか……。
 愛用の懐中時計は、今までメンテナンスと修理に出しつつ使っていたけれど、前にも止まってしまった。直した時に店主にそろそろ部品の交換が必要だと言われた。ここら辺で新しい懐中時計に買い替えてもいいかもしれない。

 私は普段、腕時計をしない。何かの拍子に腕時計をぶつけて、家にある物や煌麻様自身に傷をつけたりしたら大変だからだ。
 それだけ大事にしている煌麻様……どうして修也の家になんか……。

 そこでふと思う。
 もしかして──この懐中時計のように新しい物の方が良くなった……とか……?
 私しか知らなかった煌麻様は、新しい男を知ってそちらが良くなって──って、馬鹿な事を考えるな。煌麻様に限ってあり得ないだろう。

 帰ってきたら霧久に聞きだそう。
 ため息をついて、再び内ポケットに懐中時計を仕舞った。

     ◆◇◆

 煌麻様が帰ってきたのは、日が落ちるぐらいの時間だった。
 夕食を済ませて、就寝の時間になりベッドに入る。

「崇臣、おやすみ……」

 いつもなら行かないで欲しいという視線を向けてくるのに、今日は布団の中に潜ってしまった……。

「おやすみなさいませ──」

 布団をぽふっと一度だけ軽く叩いてから部屋を出た。
 顔を下に向けて自然とため息をこぼしていることに気付いて顔を上げる。

 執事部屋に行けば霧久がいて詰め寄った。

「霧久、煌麻様は今日何をしたのですか?」

 言いづらそうな霧久に苛立つ。

「早く言いなさい」
「それが……煌麻様は、修也様と部屋に入ったのですが、零亜さんがいるからと私は部屋に入れてもらえませんでした。零亜さんの仕事を手伝えとのご指示を受けて、仕事をしていただけでした」
「では、何をしていたのか知らないのですね……」
「申し訳ありません」
「いいえ。お気になさらず──」

 霧久のせいじゃない。
 それが仕組まれているのだとしたら、益々怪しい……。

 本当に修也と浮気を……?
 あり得ないと思いつつ、普段の修也の言動が次から次へと蘇ってくる。

『煌麻可愛いぃ』
『天使みたいだねぇ』
『崇臣、そんなに甘やかして、煌麻に好きな人ができたらどうするつもりなの?』
『崇臣みたいにいつもニコニコしてる人って、腹の中は何考えてるの?』
『あははっ。崇臣が慌ててる所、見たいなぁ』

 殴りたくなってきた……。
 煌麻様を可愛いと言っていたのは、私と同じ気持ちだったのか?
 だとしたら、修也には消えてもらおうか──。

     ◆◇◆

 次の日も次の日も、煌麻様は学園から帰ってくると、すぐに修也の家へ行くようになった。
 夕食もそっちで食べてくる。
 いつもは就寝している時間に帰ってきては、その後に入浴してからすぐに寝てしまう。

 それが続いたある日、入浴していた時に大変な事になりそうだった。
 普通の会話をしていたのに、急に煌麻様からの返事が無くなった。

「煌麻様? 煌麻様!?」
「あ……寝ていたようだ……」

 湯船に浸かっていた煌麻様を慌てて出して、タオルで拭く。
 こんなに疲れるまで何をしているのか。
 さすがの私もこれ以上黙ってはいられなかった。

「煌麻様、修也様と一体何をしていらっしゃるのですか?」
「──お前には関係ないと言っただろう……」

 まさか本当に浮気じゃないよな……。

「無理をしていらっしゃるならやめさせます」
「無理はしていない!」

 煌麻様は、ムキになって言い返してくる。

「明日、修也様にご連絡します」
「だめだ! そんな事をしたら、お前とは絶交だからなっ!」

 絶交……小学生かっ! と思うが、真っ赤になりながら怒る煌麻様が可愛く見えてしまう。

 タオルで拭いていた体をそのまま抱き上げて寝室へ。

「ならば、体に聞いて差し上げますよ──」

 白状するまで追い詰めてやる──。

「た、崇臣!?」

 ドサリと煌麻様をベッドに放り投げて、キスをして口内を蹂躙する。
 体を撫で回して、煌麻様の中に指を挿し入れた。
 グチュグチュと音を立てて攻め立てれば、煌麻様は快感に震えた。
 勃ち上がった乳首を舌先で快感を煽るように舐め回した。
 煌麻様は、同時に攻められるのが好きだ。

「んん……っ……あっ! た、崇臣……!」
「何をしているのか教えて下さい」
「だ、だめ……! ……あっ──ああっ!」

 ビクッと体が仰け反って、涙目でこちらを見てくる。
 気持ちいい所を攻められて中イキしたようだ。
 喘ぐ声を聞きながら、指を止める事はなく攻める。
 もう一度問いかけた。

「何をしているんですか?」
「あっ、ん、た、崇臣には……関係ない……っ」
「強情ですね……言うまで指でしかしてあげませんよ」
「ゆ、指だけ……?」

 無意識なんだろうけれど、眉根を寄せながら期待に満ちた顔で見られたら誘惑に負けそうになる。
 煌麻様は、同時に攻められるのも好きだけれど、挿入されるのが一番好きだ。
 ここで欲しいものをあげたら負けだ。それに、疲れている体への負担は最小限にしたい。
 その代わりに煌麻様のモノを握って上下に扱いた。
 しばらくすると、イキそうなのをギュッと握って止める。

「言わないとイかせませんよ?」
「あっ──イキたい……」
「ならば、教えて下さい」
「ん、んぁ……だ、だめ……」
「まったく……」

 どうしてこんなにも強情なのか。
 再び上下に動かして快感へ導いてあげる。

「あ、ああっ──!」

 そのままイッて白濁を撒き散らせば、ぐったりしてしまった。

「それで──? 言う気になりましたか?」
「だめ……崇臣には……教え……ない……」

 そのまま目を閉じて寝息を立ててしまった。
 疲れているからか、眠りについてしまったらしい。

 白状するまで追い詰めようとしたのに、結局はこの人に弱い。
 天使のような顔にため息をついて、こんなにも翻弄される自分に苦笑いした。
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