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番外編
執事にもわからない事はある ②
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「今日は、修也と出かけてくるから……絶対に付いてくるなよ」
「っ……」
一緒に行くと言おうとして、先に来るなと言われてしまって黙り込む。
外出の用意をしている時に、煌麻様の部屋にノックの音が響いた。
「煌麻~? まだぁ?」
この声は修也だ。
煌麻様が入室の許可を出せば、修也はガチャリとドアを開けて入ってきた。
「お。今日の煌麻の格好も似合ってるね」
「あ、ありがとう」
ちょっと照れた煌麻様を見て、苦い思いをする。
お前に見せるために着せているわけじゃない。
「その服、駅前のビルの隣にある店のでしょ?」
「ああ。良くわかるな。あそこに置いてある物はほとんど気に入っているんだ」
それはそうだろう。
その店は、煌麻様が好きそうな服や靴、小物を作って売っている煌麻様の為に開いた私の店だ。
わざわざその事を伝えはしないが、煌麻様がこうやって喜んでくれるのでそれだけで嬉しい。
「僕も時々行くんだよね」
出入り禁止にしてやろうか……。
「修也、無駄話はいい。行くぞ」
「はいはい」
「お二人ともお気をつけて行ってらっしゃいませ」
お辞儀をして顔を上げる前に修也が私の肩に腕を回してきた。
「た、か、お、み」
語尾にハートが付きそうな修也の声音に顔が引きつりそうになるのを我慢する。
肩に回された腕が重い。煌麻様の血縁じゃなきゃ、その腕を捻り上げてやりたい。
「修也様……離れて頂けますか? 服が乱れてしまいます……」
「すぐに行くよ。崇臣に謝ろうと思って」
「何を──でございますか?」
「ごめんねぇ、煌麻の事、僕が独り占めにしちゃって」
修也は、クスクス笑いながらそんな風に囁いてきた。
「滅相もございません……」
「僕が手取り足取り面倒を見てあげるから、崇臣は心配しないでね」
楽しそうに笑う修也に表情筋が崩れないように耐える。
「よろしく……お願い……致します……」
どうにか振り絞った言葉に修也は吹き出した。
「ふはっ。お前、結構限界? 楽しいぃ~」
こいつ……殴ってやりたい……。
「おい! 修也! 崇臣に構うな。行くって言ってるだろう」
「はーい」
煌麻様が怒ってくれた事で修也は離れてくれたが、煌麻様は私を睨んできた。
まさか……修也が私に触れたのがそんなに気に入らない……とか?
修也よりも煌麻様に与えられたダメージの方が大きい。
修也は、フッと意味ありげに笑ってから煌麻様と部屋を出て行った。
誰もいなくなった部屋で大きく息を吐き出した。
……──気に入らない!
修也のやつ!
煌麻様に手を出していたら、ギャンブル漬けにして多額の借金を背負わせて天野宮家から追い出してやる!
煌麻様は、修也の後を追いかけようとするだろうか……ならば、あいつの性癖を暴露して──こうしてはいられない! 後を付けなければ!
と、勢いよく煌麻様の部屋を出た所で、零亜と鉢合わせした。
「零亜さん? なぜあなたがここに?」
「崇臣さんはどこかに行こうとなさっていますか?」
後をつけようとしているなんて言えるはずもない。
「い、家の仕事を致します……」
「霧久さんは、煌麻様達について行きました。今日は私が崇臣さんのお手伝いを致します」
「……──ありがとう……ございます……」
まさにありがた迷惑だ。
これでは、出掛けられない。
もしかして──これも、修也の命令か?
あいつ……本気で殴ってやりたい。
◆◇◆
零亜は、私の仕事を手伝っている時に、修也から連絡が来て帰って行った。
煌麻様は、それと入れ替わりに帰ってきた。
「お帰りなさいませ」
「ただいま……」
煌麻様は、なぜだかちょっと照れていて視線を逸らしている。
なぜそんなお顔をしているのか……。
「崇臣、お前に用がある。時間ができたら僕の部屋に来い」
「かしこまりました」
用──とはなんだ!?
悶々と考える。
『修也と付き合う事にしたから別れてくれ』
『崇臣よりも修也の方が好きだ』
『修也といる方が楽しい』
思考が最悪の方向へ行くな……。
そうなる前に修也をどうにかしておくべきだった。
そうなったとしても──もう一度取り戻すまで……。
どうしたって私は煌麻様のもので、それが覆る事はない。
覚悟を決めて、煌麻様の部屋のドアを開けた。
待っていた煌麻様は、私の元へやってきて、私の目の前にズイッと小箱を差し出してきた。
「これ……お前に……」
「え……?」
驚いて言葉が出ない。
「受け取ってくれないのか?」
「あ……もちろん……受け取ります……」
煌麻様からもらった小箱を受け取って眺める。
「開けてみてもよろしいですか……?」
ほぼ無意識にそう呟いていた。
コクリと頷いた煌麻様を確認して、綺麗に包装された小箱を開けて中に入っていた物を取り出す。
「懐中時計……?」
「そうだ。この前、止まったって言ってただろ?」
視線を逸らして赤くなりながら、そんな風に言われてしまった。
「これを……私に……?」
驚きすぎると人は言葉をあまり発せられないらしい。
確かに止まってしまった懐中時計を買い替えようと思っていた。
でも、それは煌麻様が修也の家に行くと言った最初の日だ。
それなら煌麻様は、もっと前から私に懐中時計を贈ろうと思ってくれていた?
前に止まってしまったと呟いたのはいつだったのか……その時からずっと気にかけてくれていたのか?
ジワジワと胸の奥から熱いものが込み上げてくる──。
「修也にアルバイトがしたいって相談したんだ。そうしたら、僕がその辺の店で働くのは難しいと言われた。修也の手伝いをすれば、それなりに給料を出すって約束してくれたんだ」
「煌麻様が……アルバイトを?」
色々と頭が追いついて来ないな……。
修也と毎日一緒にいたのはその為か。
「金ならたくさんもらってるが……自分で稼いだ金じゃないと……僕からの贈り物にならないだろ……」
そんな風に思ってくれていたなんて……。
煌麻様が初めて稼いだお金を私の為に使ってくれるなんてこんな贅沢な事はない。
煌麻様が私のためにアルバイトだなんて……めちゃくちゃ嬉しいじゃないか……。
「それならそうと言って下されば……」
「それじゃあサプライズにならないと修也に言われた。贈り物というものは、サプライズされると嬉しいと言っていた」
修也のやつ……わざとだな……。
まんまとぐるぐると考えさせられた分、こうやってサプライズされた事で嬉しさが止まらない。
クスクスと笑う修也が思い浮かんで気に入らないが、今はあいつを許せる。
懐中時計が私の手の中で時を刻む。
煌麻様からの……贈り物……。
ジワジワと熱かった胸の奥が、ぶわっと一気に熱くなって震えそうになる。
実感が湧いてきた──。
「煌麻様、本当にありがとうございます……」
「喜んでいるようで良かった……」
視線を逸らして少し照れる煌麻様が愛おしい。
「少し懺悔してもよろしいですか?」
「懺悔?」
「はい。私は煌麻様が、私より修也様が良くなってしまったのかと思っておりました……」
そんな風に思ってしまうほどあなたに夢中だ。
「バ、バカか! そんな事有り得ないだろう!」
そう言い切ってくれる煌麻様に笑顔がこぼれる。
「ふふっ。そうですよね。煌麻様を疑ってしまった事、大変申し訳ありませんでした」
「いいか? 良く聞いておけ。僕はこの先、どんな事があったとしても、お前以外を好きになる事はない。信じられないなら──ずっと隣で見ていればいい……」
プロポーズみたいだ……。
ずっと隣にいる許可をもらえた……。
「私は少し離れただけで、不安になってしまうくらい煌麻様をお慕い申し上げております」
「僕だって、お前の全部が欲しい。過去はどうにもならなくても、未来は全部僕に寄越せ」
──ゾクゾクッ。
こんなにも欲しがってくれるようになった煌麻様が愛おしい。
「過去だって──全てあなたのものですよ」
私の全ては煌麻様のもの──。
もらった懐中時計を内ポケットに仕舞う。
心臓に一番近い場所に煌麻様からの贈り物がある事に浮かれる。
煌麻様に手を伸ばせば、私に手を伸ばしてくれるようになった。触れ合わせた唇は、熱を伝え合って溶けてしまいそうだ。
ポスッと私の腕の中に収まる煌麻様を優しく抱擁しながら、窒息するぐらいキツく抱きしめたいとも思う。
煌麻様の事を想うと、いつも私の欲望を抑えるのに必死だ。
「……修也に……あまり気軽に触れさせるな……」
煌麻様は、私の胸の中で軽く顔を押し付けながらボソリと呟いた。
修也が私に触れる?
もしかして……今日、修也が私を挑発した時の事を言っているのか?
あの時の煌麻様は……修也に気軽に触らせていたから怒っていた……って事か?
なんだよ……なんなんだよ……っ!
「た、崇臣!? く、苦しい……! 離せっ……!」
「申し訳ありません。今しばらく我慢して下さい」
優しくしたいのに、そうさせてくれない。
私をこんな風にするのは煌麻様だ。
しばらくぎゅうぎゅうと抱きしめてから離してやれば、煌麻様は私に向かって怒り顔だ。
「お前はどうしていつもそう勝手にするんだ!」
「何の事でございますか? 夜の事でございますか? それは、煌麻様が大変お可愛らしい反応を──」
「う、うるさい! やめろっ……!」
照れて真っ赤になる煌麻様が可愛くて可愛くて仕方がない。
「……いつも崇臣が僕を訳わかんなくさせるんだ……今日は、お前の勝手になんかさせないからな。か、覚悟をしておけっ……!」
ビシッとなんて宣言をするのか。
私は今、どんな顔をしているのか……。
今すぐにお願いしたいぐらいゾクゾクが止まらない。
胸にある懐中時計に手を当てて、永遠の愛を煌麻様に誓った。
「っ……」
一緒に行くと言おうとして、先に来るなと言われてしまって黙り込む。
外出の用意をしている時に、煌麻様の部屋にノックの音が響いた。
「煌麻~? まだぁ?」
この声は修也だ。
煌麻様が入室の許可を出せば、修也はガチャリとドアを開けて入ってきた。
「お。今日の煌麻の格好も似合ってるね」
「あ、ありがとう」
ちょっと照れた煌麻様を見て、苦い思いをする。
お前に見せるために着せているわけじゃない。
「その服、駅前のビルの隣にある店のでしょ?」
「ああ。良くわかるな。あそこに置いてある物はほとんど気に入っているんだ」
それはそうだろう。
その店は、煌麻様が好きそうな服や靴、小物を作って売っている煌麻様の為に開いた私の店だ。
わざわざその事を伝えはしないが、煌麻様がこうやって喜んでくれるのでそれだけで嬉しい。
「僕も時々行くんだよね」
出入り禁止にしてやろうか……。
「修也、無駄話はいい。行くぞ」
「はいはい」
「お二人ともお気をつけて行ってらっしゃいませ」
お辞儀をして顔を上げる前に修也が私の肩に腕を回してきた。
「た、か、お、み」
語尾にハートが付きそうな修也の声音に顔が引きつりそうになるのを我慢する。
肩に回された腕が重い。煌麻様の血縁じゃなきゃ、その腕を捻り上げてやりたい。
「修也様……離れて頂けますか? 服が乱れてしまいます……」
「すぐに行くよ。崇臣に謝ろうと思って」
「何を──でございますか?」
「ごめんねぇ、煌麻の事、僕が独り占めにしちゃって」
修也は、クスクス笑いながらそんな風に囁いてきた。
「滅相もございません……」
「僕が手取り足取り面倒を見てあげるから、崇臣は心配しないでね」
楽しそうに笑う修也に表情筋が崩れないように耐える。
「よろしく……お願い……致します……」
どうにか振り絞った言葉に修也は吹き出した。
「ふはっ。お前、結構限界? 楽しいぃ~」
こいつ……殴ってやりたい……。
「おい! 修也! 崇臣に構うな。行くって言ってるだろう」
「はーい」
煌麻様が怒ってくれた事で修也は離れてくれたが、煌麻様は私を睨んできた。
まさか……修也が私に触れたのがそんなに気に入らない……とか?
修也よりも煌麻様に与えられたダメージの方が大きい。
修也は、フッと意味ありげに笑ってから煌麻様と部屋を出て行った。
誰もいなくなった部屋で大きく息を吐き出した。
……──気に入らない!
修也のやつ!
煌麻様に手を出していたら、ギャンブル漬けにして多額の借金を背負わせて天野宮家から追い出してやる!
煌麻様は、修也の後を追いかけようとするだろうか……ならば、あいつの性癖を暴露して──こうしてはいられない! 後を付けなければ!
と、勢いよく煌麻様の部屋を出た所で、零亜と鉢合わせした。
「零亜さん? なぜあなたがここに?」
「崇臣さんはどこかに行こうとなさっていますか?」
後をつけようとしているなんて言えるはずもない。
「い、家の仕事を致します……」
「霧久さんは、煌麻様達について行きました。今日は私が崇臣さんのお手伝いを致します」
「……──ありがとう……ございます……」
まさにありがた迷惑だ。
これでは、出掛けられない。
もしかして──これも、修也の命令か?
あいつ……本気で殴ってやりたい。
◆◇◆
零亜は、私の仕事を手伝っている時に、修也から連絡が来て帰って行った。
煌麻様は、それと入れ替わりに帰ってきた。
「お帰りなさいませ」
「ただいま……」
煌麻様は、なぜだかちょっと照れていて視線を逸らしている。
なぜそんなお顔をしているのか……。
「崇臣、お前に用がある。時間ができたら僕の部屋に来い」
「かしこまりました」
用──とはなんだ!?
悶々と考える。
『修也と付き合う事にしたから別れてくれ』
『崇臣よりも修也の方が好きだ』
『修也といる方が楽しい』
思考が最悪の方向へ行くな……。
そうなる前に修也をどうにかしておくべきだった。
そうなったとしても──もう一度取り戻すまで……。
どうしたって私は煌麻様のもので、それが覆る事はない。
覚悟を決めて、煌麻様の部屋のドアを開けた。
待っていた煌麻様は、私の元へやってきて、私の目の前にズイッと小箱を差し出してきた。
「これ……お前に……」
「え……?」
驚いて言葉が出ない。
「受け取ってくれないのか?」
「あ……もちろん……受け取ります……」
煌麻様からもらった小箱を受け取って眺める。
「開けてみてもよろしいですか……?」
ほぼ無意識にそう呟いていた。
コクリと頷いた煌麻様を確認して、綺麗に包装された小箱を開けて中に入っていた物を取り出す。
「懐中時計……?」
「そうだ。この前、止まったって言ってただろ?」
視線を逸らして赤くなりながら、そんな風に言われてしまった。
「これを……私に……?」
驚きすぎると人は言葉をあまり発せられないらしい。
確かに止まってしまった懐中時計を買い替えようと思っていた。
でも、それは煌麻様が修也の家に行くと言った最初の日だ。
それなら煌麻様は、もっと前から私に懐中時計を贈ろうと思ってくれていた?
前に止まってしまったと呟いたのはいつだったのか……その時からずっと気にかけてくれていたのか?
ジワジワと胸の奥から熱いものが込み上げてくる──。
「修也にアルバイトがしたいって相談したんだ。そうしたら、僕がその辺の店で働くのは難しいと言われた。修也の手伝いをすれば、それなりに給料を出すって約束してくれたんだ」
「煌麻様が……アルバイトを?」
色々と頭が追いついて来ないな……。
修也と毎日一緒にいたのはその為か。
「金ならたくさんもらってるが……自分で稼いだ金じゃないと……僕からの贈り物にならないだろ……」
そんな風に思ってくれていたなんて……。
煌麻様が初めて稼いだお金を私の為に使ってくれるなんてこんな贅沢な事はない。
煌麻様が私のためにアルバイトだなんて……めちゃくちゃ嬉しいじゃないか……。
「それならそうと言って下されば……」
「それじゃあサプライズにならないと修也に言われた。贈り物というものは、サプライズされると嬉しいと言っていた」
修也のやつ……わざとだな……。
まんまとぐるぐると考えさせられた分、こうやってサプライズされた事で嬉しさが止まらない。
クスクスと笑う修也が思い浮かんで気に入らないが、今はあいつを許せる。
懐中時計が私の手の中で時を刻む。
煌麻様からの……贈り物……。
ジワジワと熱かった胸の奥が、ぶわっと一気に熱くなって震えそうになる。
実感が湧いてきた──。
「煌麻様、本当にありがとうございます……」
「喜んでいるようで良かった……」
視線を逸らして少し照れる煌麻様が愛おしい。
「少し懺悔してもよろしいですか?」
「懺悔?」
「はい。私は煌麻様が、私より修也様が良くなってしまったのかと思っておりました……」
そんな風に思ってしまうほどあなたに夢中だ。
「バ、バカか! そんな事有り得ないだろう!」
そう言い切ってくれる煌麻様に笑顔がこぼれる。
「ふふっ。そうですよね。煌麻様を疑ってしまった事、大変申し訳ありませんでした」
「いいか? 良く聞いておけ。僕はこの先、どんな事があったとしても、お前以外を好きになる事はない。信じられないなら──ずっと隣で見ていればいい……」
プロポーズみたいだ……。
ずっと隣にいる許可をもらえた……。
「私は少し離れただけで、不安になってしまうくらい煌麻様をお慕い申し上げております」
「僕だって、お前の全部が欲しい。過去はどうにもならなくても、未来は全部僕に寄越せ」
──ゾクゾクッ。
こんなにも欲しがってくれるようになった煌麻様が愛おしい。
「過去だって──全てあなたのものですよ」
私の全ては煌麻様のもの──。
もらった懐中時計を内ポケットに仕舞う。
心臓に一番近い場所に煌麻様からの贈り物がある事に浮かれる。
煌麻様に手を伸ばせば、私に手を伸ばしてくれるようになった。触れ合わせた唇は、熱を伝え合って溶けてしまいそうだ。
ポスッと私の腕の中に収まる煌麻様を優しく抱擁しながら、窒息するぐらいキツく抱きしめたいとも思う。
煌麻様の事を想うと、いつも私の欲望を抑えるのに必死だ。
「……修也に……あまり気軽に触れさせるな……」
煌麻様は、私の胸の中で軽く顔を押し付けながらボソリと呟いた。
修也が私に触れる?
もしかして……今日、修也が私を挑発した時の事を言っているのか?
あの時の煌麻様は……修也に気軽に触らせていたから怒っていた……って事か?
なんだよ……なんなんだよ……っ!
「た、崇臣!? く、苦しい……! 離せっ……!」
「申し訳ありません。今しばらく我慢して下さい」
優しくしたいのに、そうさせてくれない。
私をこんな風にするのは煌麻様だ。
しばらくぎゅうぎゅうと抱きしめてから離してやれば、煌麻様は私に向かって怒り顔だ。
「お前はどうしていつもそう勝手にするんだ!」
「何の事でございますか? 夜の事でございますか? それは、煌麻様が大変お可愛らしい反応を──」
「う、うるさい! やめろっ……!」
照れて真っ赤になる煌麻様が可愛くて可愛くて仕方がない。
「……いつも崇臣が僕を訳わかんなくさせるんだ……今日は、お前の勝手になんかさせないからな。か、覚悟をしておけっ……!」
ビシッとなんて宣言をするのか。
私は今、どんな顔をしているのか……。
今すぐにお願いしたいぐらいゾクゾクが止まらない。
胸にある懐中時計に手を当てて、永遠の愛を煌麻様に誓った。
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