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丁寧語と隣人
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佐須杜さんの運転は非常に丁寧だった。私は車に乗るのがあまり得意ではなく、タクシーに乗って5分で酔ってしまうことさえある。しかし、丁寧なブレーキのおかけが揺れは全くと言っていいほど無く、そんな私でも後部座席でのんびりと景色を楽しむことができた。
人栄さんは助手席に座っている。彼女も佐須杜さんも全然喋らず、私も当然言葉を発しない。その結果実に静かな室内となっているが、不思議と居心地は悪くない気がした。
30分ほど車に揺られ、到着したのは無数のビルが立ち並ぶオフィス街。こんなところは中々来ないが、もしかして穴場のお店でもあるのだろうか。
「お二人とも、こっちだ」
慣れた感じでコインパーキングに車を停めた佐須杜さんは、私達を先導してくれる。
「あ、まってまって」
ミドルヒールの靴を履き慣れないのか、人栄さんは恐る恐るゆっくりしか歩けないようだ。
「大丈夫ですか?」
流石に放っておくこともできず、私は彼女の隣に立ちその歩幅に合わせるように歩き、話しかける。
「す、すいません……普段はスニーカーばかりなので」
少し恥ずかしそうに彼女はそんな風に言うが、勤め人やよほどお洒落な人でない限り、ヒールのある靴に慣れていないのも仕方ないだろう。
「お気になさらないで下さい。私も今日は格好つけて革靴ですが、普段はスニーカーばかりですよ」
「あ、そうなんですね!」
彼女は仲間を見つけた、とばかりに嬉しそうにはにかむ。実のところ、私は革靴を結構好むのだが、嘘も方便ということにしておこう。
「しかし、それであるならば本日のお召し物はどうしたのですか?」
「いやあ、実は今日のお店も服も全部ナコちゃん……佐須杜さんが準備してくれまして」
なるほど。お店だけでなく、コーディネートも含めた全て、彼女の手配だったのか。
「人栄さん、普段通りの話し方で構いませんし、私に対しても敬語や丁寧語を使う必要はないですよ。会社の先輩後輩というわけではなく、あくまで隣人ですし」
まだ緊張しているらしい人栄さんに多少気を遣ってそんなことを言ってみる。そもそも私の後輩も敬語混じりのタメ口という具合なのだから、後輩、年下=敬語を使わなければならないというわけでもないと思う。礼儀とかそういっったものも大事なのかもしれないが、個人的にはその人物が楽に話せる形が一番だろうと思う。
「むー、そうですかね?」
「そうですよ」
「じゃあ、いつもどおり話すね!普段通りに話したほうが何となく仲良くなれた気がするし!」
そこから調子を取り戻したのか、彼女は大きな身振り手振りで楽しそうに話してくれる。例えば、土曜日に食べたスパゲッティは美味しかったとか、この前のイラストの仕事は自分でも納得できる出来だったとかそういう具合だ。私はそれに対して適宜相槌を打つだけだが、植物のような私にとっては太陽のような彼女の明るさはとても好ましく思えた。
そうやって(主に彼女が)盛り上がっていると、スマートフォンをいじりながら前を進んでいた佐須杜さんが立ち止まった。
「よし、ここだ。じゃあ入りましょうか」
こちらを向きながら彼女が指で指し示す方を見てみると……
「中華料理でしたか」
「ええ、ここの小籠包が絶品なんですよ。本場で食べたのにも全然引け劣らないどころが、ちゃんと日本人用に調整されているのかこっちのやつの方が美味しいまであります」
これから出てくるであろう料理たちに興奮しているのか、佐須杜さんはよだれをこぼしそうなほどだ。
昨日は寿司、今日は中華。外食が続き、何とも贅沢だが、こういうときがあってもよいだろう。しっかり楽しむことにしようじゃないか。
人栄さんは助手席に座っている。彼女も佐須杜さんも全然喋らず、私も当然言葉を発しない。その結果実に静かな室内となっているが、不思議と居心地は悪くない気がした。
30分ほど車に揺られ、到着したのは無数のビルが立ち並ぶオフィス街。こんなところは中々来ないが、もしかして穴場のお店でもあるのだろうか。
「お二人とも、こっちだ」
慣れた感じでコインパーキングに車を停めた佐須杜さんは、私達を先導してくれる。
「あ、まってまって」
ミドルヒールの靴を履き慣れないのか、人栄さんは恐る恐るゆっくりしか歩けないようだ。
「大丈夫ですか?」
流石に放っておくこともできず、私は彼女の隣に立ちその歩幅に合わせるように歩き、話しかける。
「す、すいません……普段はスニーカーばかりなので」
少し恥ずかしそうに彼女はそんな風に言うが、勤め人やよほどお洒落な人でない限り、ヒールのある靴に慣れていないのも仕方ないだろう。
「お気になさらないで下さい。私も今日は格好つけて革靴ですが、普段はスニーカーばかりですよ」
「あ、そうなんですね!」
彼女は仲間を見つけた、とばかりに嬉しそうにはにかむ。実のところ、私は革靴を結構好むのだが、嘘も方便ということにしておこう。
「しかし、それであるならば本日のお召し物はどうしたのですか?」
「いやあ、実は今日のお店も服も全部ナコちゃん……佐須杜さんが準備してくれまして」
なるほど。お店だけでなく、コーディネートも含めた全て、彼女の手配だったのか。
「人栄さん、普段通りの話し方で構いませんし、私に対しても敬語や丁寧語を使う必要はないですよ。会社の先輩後輩というわけではなく、あくまで隣人ですし」
まだ緊張しているらしい人栄さんに多少気を遣ってそんなことを言ってみる。そもそも私の後輩も敬語混じりのタメ口という具合なのだから、後輩、年下=敬語を使わなければならないというわけでもないと思う。礼儀とかそういっったものも大事なのかもしれないが、個人的にはその人物が楽に話せる形が一番だろうと思う。
「むー、そうですかね?」
「そうですよ」
「じゃあ、いつもどおり話すね!普段通りに話したほうが何となく仲良くなれた気がするし!」
そこから調子を取り戻したのか、彼女は大きな身振り手振りで楽しそうに話してくれる。例えば、土曜日に食べたスパゲッティは美味しかったとか、この前のイラストの仕事は自分でも納得できる出来だったとかそういう具合だ。私はそれに対して適宜相槌を打つだけだが、植物のような私にとっては太陽のような彼女の明るさはとても好ましく思えた。
そうやって(主に彼女が)盛り上がっていると、スマートフォンをいじりながら前を進んでいた佐須杜さんが立ち止まった。
「よし、ここだ。じゃあ入りましょうか」
こちらを向きながら彼女が指で指し示す方を見てみると……
「中華料理でしたか」
「ええ、ここの小籠包が絶品なんですよ。本場で食べたのにも全然引け劣らないどころが、ちゃんと日本人用に調整されているのかこっちのやつの方が美味しいまであります」
これから出てくるであろう料理たちに興奮しているのか、佐須杜さんはよだれをこぼしそうなほどだ。
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