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寝不足のまま爽やかな小鳥のさえずりを聞く。
あんなことがあって寝れるわけない。
クローゼットを開け、奥に隠した赤い箱の横に、新たに加わった二つの盗品を置いた。
ニコラス様の部屋から帰ってきた後、はみ出てるアレとか、さらけ出されたアレとかが忘れられず、目が冴えてしまい、ついつい『さくらんぼ姫とチェリー』を読んでしまった。
私だってそういうお年頃なんだもの。
感想としては……描写が丁寧でストーリーはマニアックだった。
始めはマウントを取っていた強気童貞が好奇心旺盛なさくらんぼ姫に快楽堕ちさせられるという、非常に読む人を選ぶものだった。
どこまでがファンタジーなのか経験の無い私には分からないが、男性のアレにそんなことして大丈夫なのかと心配になる内容だった……。
さくらんぼ姫は図書室の分かりにくい場所に返すとして、卑猥パンツはどうすればいいのか。
暫く保管するなら洗った方が良いよね?洗う勇気と干す場所を確保しなければ。
大体、ほんとに穿くなんて思わなかった。穿いたニコラス様が悪い!
盗みに入った自分のことは棚に上げ、ニコラス様を無理やり悪者にしながらお仕着せに着替える。
マーガレット様に今日の指示を聞いてから、重い足取りでニコラス様の部屋に向かい扉をノックする。
顔を合わせづらくていつもより小さなノックになったがすぐに扉が開いた。
「おはよう。おや?今日は顔色が悪いな。寝不足か?」
「えぇまぁ……おはようございます」
あなたの寝ながら脱ぐ悪癖のせいですよ。
あなたは知らないでしょうけど、昨夜またあなたのアレを見てしまったんですよ。
「朝食後、お部屋の片付けをするようにとの事です」
「そうか分かった」
嫌がられるだろうと思ったのに随分あっさりと了承されて拍子抜けした。
運んでもらった朝食を食べながら尋ねる。
「いいんですか?この部屋はニコラス様の聖域かと思っていました」
「そんな大げさな物じゃないさ。散らかっているのは前から気になっていたしパンツと『さくらんぼ姫とチェリー』が行方不明なんだ。片付ければ出て来るだろう」
「ぶっ!」
紅茶を吹き出してしまった。
「大丈夫か?クロエは意外とそそっかしいな」
クロエと呼ばれ、切なそうに囁かれた昨夜の声を思い出してしまう。
「顔が赤いぞ?熱があるんじゃないか?」
あたふたとしている間にニコラス様の美しい顔が近づいてきておでこが合わさる。
「熱は無いようだが、これは……キスしているようだな。どうしてクロエにはキスしたくなるのだろうか?」
「わぁぁ!離れて下さい!女性にむやみに近づいてはいけません」
「誰にでも近づきたい訳ではない。近づきたいと思ったのはクロエが初めてだ」
そ、それはあれだ。あれだよ。
「これほど沢山会話した女性が今までいなかったからです。勘違いしてはだめですよ」
「では、ランドルフの言うようにクロエを愛しているからキスしたいと思うのでは無いのか?」
くぅーー!愛してるとか言わないで!
「女性に免疫がないだけです。今後、他の女性とお話しするようになれば分かりますよ」
「しかしマーガレットが……いやこの話は後にしよう。先に部屋を片付けてから話をしよう」
伯爵家に生まれ、これほどの美貌を持つニコラス様が平凡な私を好きになるはずがない。何もかもが釣り合わない。
「部屋が綺麗になれば気持がいいですよ。頑張りましょうね」
なんとか笑顔を作り、微笑みながらカーテンを開け爽やかな風を入れる。
「うわっ待ってくれ。先に本を片付けないと本が日焼けしてしまう!」
「あははっ、少しぐらい大丈夫ですよ。さぁ張り切って片付けましょう」
使用人たちに本を図書室に戻す作業を手伝ってもらい、何とか床が見えるようになった。
「いいですか、部屋に持ち込んでいい本はこの本棚に入る分だけです。入らなくなったら図書室に戻すんです」
「なるほど。そう決めておけばいいんだな。クロエは整頓も上手だな」
当たり前の事さえも褒めてもらってむず痒い。
寝ながら脱ぎ捨てられたと思わしき衣類を拾う。
「服は脱衣所で着替えて下さいね」
「寝ている間に脱いだ服はどうする?」
悪癖ですね。その悪癖を治してください。
「朝、脱衣所に持って行けばいいでしょ」
「それを忘れるんだ」
いっそのこと素っ裸で寝れば脱ぎようがないのに、毎晩パジャマを着るんだから律儀だわ。
「忘れないで下さいよ。脱衣所の扉に『パジャマ』って紙に書いて貼っておけばいいんじゃないですか?」
何度か繰り返せば習慣付くでしょう。
「それは良い案だ。それにしてもサンプルのパンツはどこに行ったのだろうか?レポートを書かないといけないのに出てこないな」
肩が跳ねたが、落ち着けと言い聞かせ冷静を装う。
「レポートはいらないですってば」
「しかし、あれは世の中に出すべきではない。きちんとレポートで穿き心地の悪さを指摘してやらないと」
確かに穿き心地が悪そうでしたね。しかとこの目で確認しましたよ。
「先ず、陰嚢が収まらないのが問題だ。下部から両方がはみ出るし痛みもある。陰茎も収まりきらないから横か上からはみ出る。リボンをほどいて小窓から出しておけば良いがそれでは下着の役目を果たさないだろう?」
私に聞かないで下さーい。使用人がいない時でよかった。
「いくら私相手でも詳細に話さないで下さいよ。さすがに恥ずかしいです」
誰かに聞かれたら親密な仲と誤解されてしまう。
「クロエは僕の陰嚢も陰茎も見たじゃないか」
息をのむ音が聞こえ瞬時に振り向くと、開けっ放しだった扉の所で若い従僕が口に手を当てわなわなと震えていた。
「違います!誤解です!あ、待って」
なんてこった……
【マーガレット様、ここの使用人って口は堅いですか?】
あんなことがあって寝れるわけない。
クローゼットを開け、奥に隠した赤い箱の横に、新たに加わった二つの盗品を置いた。
ニコラス様の部屋から帰ってきた後、はみ出てるアレとか、さらけ出されたアレとかが忘れられず、目が冴えてしまい、ついつい『さくらんぼ姫とチェリー』を読んでしまった。
私だってそういうお年頃なんだもの。
感想としては……描写が丁寧でストーリーはマニアックだった。
始めはマウントを取っていた強気童貞が好奇心旺盛なさくらんぼ姫に快楽堕ちさせられるという、非常に読む人を選ぶものだった。
どこまでがファンタジーなのか経験の無い私には分からないが、男性のアレにそんなことして大丈夫なのかと心配になる内容だった……。
さくらんぼ姫は図書室の分かりにくい場所に返すとして、卑猥パンツはどうすればいいのか。
暫く保管するなら洗った方が良いよね?洗う勇気と干す場所を確保しなければ。
大体、ほんとに穿くなんて思わなかった。穿いたニコラス様が悪い!
盗みに入った自分のことは棚に上げ、ニコラス様を無理やり悪者にしながらお仕着せに着替える。
マーガレット様に今日の指示を聞いてから、重い足取りでニコラス様の部屋に向かい扉をノックする。
顔を合わせづらくていつもより小さなノックになったがすぐに扉が開いた。
「おはよう。おや?今日は顔色が悪いな。寝不足か?」
「えぇまぁ……おはようございます」
あなたの寝ながら脱ぐ悪癖のせいですよ。
あなたは知らないでしょうけど、昨夜またあなたのアレを見てしまったんですよ。
「朝食後、お部屋の片付けをするようにとの事です」
「そうか分かった」
嫌がられるだろうと思ったのに随分あっさりと了承されて拍子抜けした。
運んでもらった朝食を食べながら尋ねる。
「いいんですか?この部屋はニコラス様の聖域かと思っていました」
「そんな大げさな物じゃないさ。散らかっているのは前から気になっていたしパンツと『さくらんぼ姫とチェリー』が行方不明なんだ。片付ければ出て来るだろう」
「ぶっ!」
紅茶を吹き出してしまった。
「大丈夫か?クロエは意外とそそっかしいな」
クロエと呼ばれ、切なそうに囁かれた昨夜の声を思い出してしまう。
「顔が赤いぞ?熱があるんじゃないか?」
あたふたとしている間にニコラス様の美しい顔が近づいてきておでこが合わさる。
「熱は無いようだが、これは……キスしているようだな。どうしてクロエにはキスしたくなるのだろうか?」
「わぁぁ!離れて下さい!女性にむやみに近づいてはいけません」
「誰にでも近づきたい訳ではない。近づきたいと思ったのはクロエが初めてだ」
そ、それはあれだ。あれだよ。
「これほど沢山会話した女性が今までいなかったからです。勘違いしてはだめですよ」
「では、ランドルフの言うようにクロエを愛しているからキスしたいと思うのでは無いのか?」
くぅーー!愛してるとか言わないで!
「女性に免疫がないだけです。今後、他の女性とお話しするようになれば分かりますよ」
「しかしマーガレットが……いやこの話は後にしよう。先に部屋を片付けてから話をしよう」
伯爵家に生まれ、これほどの美貌を持つニコラス様が平凡な私を好きになるはずがない。何もかもが釣り合わない。
「部屋が綺麗になれば気持がいいですよ。頑張りましょうね」
なんとか笑顔を作り、微笑みながらカーテンを開け爽やかな風を入れる。
「うわっ待ってくれ。先に本を片付けないと本が日焼けしてしまう!」
「あははっ、少しぐらい大丈夫ですよ。さぁ張り切って片付けましょう」
使用人たちに本を図書室に戻す作業を手伝ってもらい、何とか床が見えるようになった。
「いいですか、部屋に持ち込んでいい本はこの本棚に入る分だけです。入らなくなったら図書室に戻すんです」
「なるほど。そう決めておけばいいんだな。クロエは整頓も上手だな」
当たり前の事さえも褒めてもらってむず痒い。
寝ながら脱ぎ捨てられたと思わしき衣類を拾う。
「服は脱衣所で着替えて下さいね」
「寝ている間に脱いだ服はどうする?」
悪癖ですね。その悪癖を治してください。
「朝、脱衣所に持って行けばいいでしょ」
「それを忘れるんだ」
いっそのこと素っ裸で寝れば脱ぎようがないのに、毎晩パジャマを着るんだから律儀だわ。
「忘れないで下さいよ。脱衣所の扉に『パジャマ』って紙に書いて貼っておけばいいんじゃないですか?」
何度か繰り返せば習慣付くでしょう。
「それは良い案だ。それにしてもサンプルのパンツはどこに行ったのだろうか?レポートを書かないといけないのに出てこないな」
肩が跳ねたが、落ち着けと言い聞かせ冷静を装う。
「レポートはいらないですってば」
「しかし、あれは世の中に出すべきではない。きちんとレポートで穿き心地の悪さを指摘してやらないと」
確かに穿き心地が悪そうでしたね。しかとこの目で確認しましたよ。
「先ず、陰嚢が収まらないのが問題だ。下部から両方がはみ出るし痛みもある。陰茎も収まりきらないから横か上からはみ出る。リボンをほどいて小窓から出しておけば良いがそれでは下着の役目を果たさないだろう?」
私に聞かないで下さーい。使用人がいない時でよかった。
「いくら私相手でも詳細に話さないで下さいよ。さすがに恥ずかしいです」
誰かに聞かれたら親密な仲と誤解されてしまう。
「クロエは僕の陰嚢も陰茎も見たじゃないか」
息をのむ音が聞こえ瞬時に振り向くと、開けっ放しだった扉の所で若い従僕が口に手を当てわなわなと震えていた。
「違います!誤解です!あ、待って」
なんてこった……
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