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「……ぷはっ。あは、はははっ」
締まらないし、ロマンチックになれない私達に笑いが止まらない。
もう変態でいいや。変態でも好きなんだもん。
変態ランドルフが泣きそうな顔で確認してくる。
「俺はアリーを愛している。アリーも俺が好きなんだよな?」
「あははっ、ごめ、止まらな……す、好き、よ」
「両想いなんだよな?」
「あは、うぐっ、そう、そうね」
「結婚してくれるんだろ?」
「そ、それは早くない?」
「なんでだよ。二年も一緒にいたじゃないか。早くないだろ?それとも俺はいずれ捨てられるのか?」
あれ?こんな面倒な発言をする人じゃなかったはず。
「やるだけやって、捨てるつもりなんだろ?俺を弄ぶつもりだな?まさか若い男に乗り換えるつもりかっ!?そうはいくか!絶対に離れてやら――」
「ちょ、ちょっと待って!好きよ!ランドルフが好き。弄ぶつもりなんてないわ。でも、まさか両想いになれると思ってなかったから、先のことは少し待って欲しいの」
不満そうな顔をしているが、これ以上はキャパオーバーだ。
「……わかった。まだ指輪も出来上がってないから、今日は我慢する」
まさか、注文しているの?
一日で色々あり過ぎて、先の話まで考えられないわ。濁流に流されている気分だもの。
「今日はこれを渡したかったんだ。渡せてよかった。明日つけて欲しい」
ジャケットのポケットから出した物を受け取る。
ベンチに並んで座り、綺麗にラッピングされたリボンを取る。
ゆっくりと開けたケースに、ランドルフがいた。
まるで神秘的な湖に太陽の光が反射するように金の散ったルースだ。
ランドルフの瞳をそのまま宝石にしたみたい。お揃いのイヤリングも同じ石だわ。
どちらも華やかで美しいが、ツタのようなデザインの土台がナチュラルさを演出している。
「デザイン画を見せられた瞬間にこのツタにしたんだ。俺の色を身にまとってアリーの首に絡まるツタがいいだろ?」
発言が怖い。全然ナチュラルじゃ無かったわ。
「マーガレットに思考を読まれていて、すでに土台が出来ていたのは、気持ち悪かったけどな」
姉弟揃って怖い。どっちもどっちだからね。
「石は二年も前から探すように指示が出ていたらしい。マーガレットって怖いよな」
「二年前から!?」
「そうだ。アリーの色のブラックダイヤと一緒にな。あの魔女には、俺がアリーに惚れたのが筒抜けだったのさ。一言もしゃべってないのに」
二人揃ってオレンジ色になり始めた空を見上げ、マーガレットに思いを馳せる……彼女は本物の魔女かもしれないわ。
やっぱりロマンチックになり切れないが、これが私達なのだろう。
「ありがとう、本当に素敵なネックレスだわ。ねぇ、今つけてみてもいい?つけてくれる?」
ランドルフに箱を渡し、背を向ける。
背後でゆっくりと動き出し、うなじに触れたランドルフの手が震えているような気がした。
見てもらおうと笑顔で振り向いたら、ランドルフが静かに涙を流していた。
「……渡せないんじゃないかと思っていたんだ。ありがとうアリー。幸せだ」
そっと、ランドルフの涙を拭う。
「私の方こそありがとう。大切にするわ」
「似合ってるよ。アリー愛してる」
こみあげて来た涙を我慢していたら、抱き寄せられ、初めてのキスをした――
触れるだけの優しいキスに心が温められる。
硬く冷たそうなランドルフの薄い唇は、柔らかく熱かった。
抱きしめられたまま、ぽつりぽつりと話し出す。きちんと説明しなければ。
「あのね、今朝の事だけど、その女性達に嫉妬して悲しくてやりきれなくて、八つ当たりしてしまったの。彼女達もこんな風にランドルフと過ごしたんだって」
「そいつらの嘘だ。斡旋所の皆も、仕事を探しに来るおっさん達も、街の奴らだって俺がアリーに惚れてるって知ってる。噂になっていたからな」
そう言えば、ランドルフがマスターと呼んでいたあの人が噂のアリーと言っていたわ。一体どれだけの人が……
「気が付いてないのはアリーだけだ。それからその女達だが思い当たる節がある。いや、違うぞ!やってないからな!何度か誘われた女がいたんだ。だがきっぱり断った。だからそいつらがアリーに意地悪をしたんだろう。罰は受けてもらうからな」
涙の止まったランドルフは、厳しい眼差しをしていた。この人に任せたら大事になりそうだわ。
「それは私に任せてくれない?自分で決着をつけたいの」
困った顔をしたが、私の頑固な性格を知っているから渋々了承してくれた。
「なぁキスは初めてか?俺はさっきのが初めてだ」
人の事は言えないが、ランドルフって本当に恋愛した事ないんだわ。
「初めてよ。でもランドルフがキスしたこと無いなんて……」
「そうか!初めてか。嬉しいもんだな。お互い初めて同士だ!それに死ぬまでアリーだけだ。でもジジイになってもするからな」
ランドルフは見た目も良いし、そっちの方は星の数ほどの経験があると思っていたのに。
なかなか衝撃的だわ。
「今晩、抱きたいがどうだろうか?」
「そ、そういう事って聞くものなの!?明日に響くし今日はちょっと」
シュンとしたランドルフにも驚きだ。
「仕方ない、今日は我慢する。はぁ……」
なんかごめんなさい。でも今日は無理です。
もう本当に濁流に流されてる感覚なんです。
チュと短いキスを落とし
「キスで我慢する。風が冷たくなって来たから入ろう」
不意打ちのキスでふわふわしている間に――マーガレットが現れ、気が付けばランドルフの家族と対面していた。
濁流がまだ続いてた!……浮き輪を下さーい!
締まらないし、ロマンチックになれない私達に笑いが止まらない。
もう変態でいいや。変態でも好きなんだもん。
変態ランドルフが泣きそうな顔で確認してくる。
「俺はアリーを愛している。アリーも俺が好きなんだよな?」
「あははっ、ごめ、止まらな……す、好き、よ」
「両想いなんだよな?」
「あは、うぐっ、そう、そうね」
「結婚してくれるんだろ?」
「そ、それは早くない?」
「なんでだよ。二年も一緒にいたじゃないか。早くないだろ?それとも俺はいずれ捨てられるのか?」
あれ?こんな面倒な発言をする人じゃなかったはず。
「やるだけやって、捨てるつもりなんだろ?俺を弄ぶつもりだな?まさか若い男に乗り換えるつもりかっ!?そうはいくか!絶対に離れてやら――」
「ちょ、ちょっと待って!好きよ!ランドルフが好き。弄ぶつもりなんてないわ。でも、まさか両想いになれると思ってなかったから、先のことは少し待って欲しいの」
不満そうな顔をしているが、これ以上はキャパオーバーだ。
「……わかった。まだ指輪も出来上がってないから、今日は我慢する」
まさか、注文しているの?
一日で色々あり過ぎて、先の話まで考えられないわ。濁流に流されている気分だもの。
「今日はこれを渡したかったんだ。渡せてよかった。明日つけて欲しい」
ジャケットのポケットから出した物を受け取る。
ベンチに並んで座り、綺麗にラッピングされたリボンを取る。
ゆっくりと開けたケースに、ランドルフがいた。
まるで神秘的な湖に太陽の光が反射するように金の散ったルースだ。
ランドルフの瞳をそのまま宝石にしたみたい。お揃いのイヤリングも同じ石だわ。
どちらも華やかで美しいが、ツタのようなデザインの土台がナチュラルさを演出している。
「デザイン画を見せられた瞬間にこのツタにしたんだ。俺の色を身にまとってアリーの首に絡まるツタがいいだろ?」
発言が怖い。全然ナチュラルじゃ無かったわ。
「マーガレットに思考を読まれていて、すでに土台が出来ていたのは、気持ち悪かったけどな」
姉弟揃って怖い。どっちもどっちだからね。
「石は二年も前から探すように指示が出ていたらしい。マーガレットって怖いよな」
「二年前から!?」
「そうだ。アリーの色のブラックダイヤと一緒にな。あの魔女には、俺がアリーに惚れたのが筒抜けだったのさ。一言もしゃべってないのに」
二人揃ってオレンジ色になり始めた空を見上げ、マーガレットに思いを馳せる……彼女は本物の魔女かもしれないわ。
やっぱりロマンチックになり切れないが、これが私達なのだろう。
「ありがとう、本当に素敵なネックレスだわ。ねぇ、今つけてみてもいい?つけてくれる?」
ランドルフに箱を渡し、背を向ける。
背後でゆっくりと動き出し、うなじに触れたランドルフの手が震えているような気がした。
見てもらおうと笑顔で振り向いたら、ランドルフが静かに涙を流していた。
「……渡せないんじゃないかと思っていたんだ。ありがとうアリー。幸せだ」
そっと、ランドルフの涙を拭う。
「私の方こそありがとう。大切にするわ」
「似合ってるよ。アリー愛してる」
こみあげて来た涙を我慢していたら、抱き寄せられ、初めてのキスをした――
触れるだけの優しいキスに心が温められる。
硬く冷たそうなランドルフの薄い唇は、柔らかく熱かった。
抱きしめられたまま、ぽつりぽつりと話し出す。きちんと説明しなければ。
「あのね、今朝の事だけど、その女性達に嫉妬して悲しくてやりきれなくて、八つ当たりしてしまったの。彼女達もこんな風にランドルフと過ごしたんだって」
「そいつらの嘘だ。斡旋所の皆も、仕事を探しに来るおっさん達も、街の奴らだって俺がアリーに惚れてるって知ってる。噂になっていたからな」
そう言えば、ランドルフがマスターと呼んでいたあの人が噂のアリーと言っていたわ。一体どれだけの人が……
「気が付いてないのはアリーだけだ。それからその女達だが思い当たる節がある。いや、違うぞ!やってないからな!何度か誘われた女がいたんだ。だがきっぱり断った。だからそいつらがアリーに意地悪をしたんだろう。罰は受けてもらうからな」
涙の止まったランドルフは、厳しい眼差しをしていた。この人に任せたら大事になりそうだわ。
「それは私に任せてくれない?自分で決着をつけたいの」
困った顔をしたが、私の頑固な性格を知っているから渋々了承してくれた。
「なぁキスは初めてか?俺はさっきのが初めてだ」
人の事は言えないが、ランドルフって本当に恋愛した事ないんだわ。
「初めてよ。でもランドルフがキスしたこと無いなんて……」
「そうか!初めてか。嬉しいもんだな。お互い初めて同士だ!それに死ぬまでアリーだけだ。でもジジイになってもするからな」
ランドルフは見た目も良いし、そっちの方は星の数ほどの経験があると思っていたのに。
なかなか衝撃的だわ。
「今晩、抱きたいがどうだろうか?」
「そ、そういう事って聞くものなの!?明日に響くし今日はちょっと」
シュンとしたランドルフにも驚きだ。
「仕方ない、今日は我慢する。はぁ……」
なんかごめんなさい。でも今日は無理です。
もう本当に濁流に流されてる感覚なんです。
チュと短いキスを落とし
「キスで我慢する。風が冷たくなって来たから入ろう」
不意打ちのキスでふわふわしている間に――マーガレットが現れ、気が付けばランドルフの家族と対面していた。
濁流がまだ続いてた!……浮き輪を下さーい!
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