31 / 47
31
しおりを挟む
部屋に戻ると、私の両肩に手を置き、真正面から視線を合わせて来る。
「どんな騎士だった?髪は?性格は?ストーリーを詳細に教えろ。俺は何を殺って来たらいいんだ?ドラゴンみたいな伝説の生き物は無理だが、熊なら何頭でも獲って来てやる」
そんなもの貢がれても困る。
「いりません」
「しかしだな、見た目は近づけるようにするが、そっくり一緒には出来ないだろう。性格は努力する。改めるから教えてくれ。一番手を付けやすいのは強さを証明する事だろう?まずはそこから惚れてもらう」
――――あぁ、この人は本当に私の事が好きなんだわ
彼の両頬に手を当て、音を立ててキスをした。
固まってしまった彼の瞳を見ながら、二年間見て来た姿を思い返す。
何があっても自分を貫き、自信を持って我が道を進む姿。時には周りとの衝突もあったが結果を出し黙らせてきた。
まさか、物語の人物に嫉妬して外見も性格も変えようと、私みたいな平凡な人間に教えを乞うとは。
「もう惚れてるんだってば。変わる必要なんてないわ。それにランドルフを初めて見た時、騎士様にそっくりで驚いたのよ。現実のあなたは口も悪いし粗野だけど、不器用な優しさを知って、ランドルフ自身を好きになったの」
「俺も初めて見た時、俺の理想が現実にいることに驚いた。お前を知っていくにつれ、儚い見た目と違って、自立心があり、頑固で頼ってくれない事にイライラしたが、周りをよく見て、そっと手を差し伸べる優しさを愛してしまった」
もう一度、そっとキスをする。
「ん」
少し長く――
「んっ」
もう一度だけ――
「んぁ、あ、あのぉ、当たってます」
グリグリと擦り付けるのをやめて欲しい。反応に困る。
「あぁ、気持ちいい。くっ!」
いやいや、さらに押し付けないで欲しい。
「今日はダメです。明日踊れなくなったら、協力してくれた皆様に申し訳なさすぎる」
抱きしめられていた手を離してもらって、一緒に風呂に入ろうと誘われたが断固お断りした。
まだ、裸体をさらす勇気も、ホニャララを直接見る勇気もない。
風呂場で出すから先に入れと言われ、急いで風呂場に飛び込んだ。
シャワーを浴びながら、この後ここでランドルフがそんなことをするのかと思うと落ち着かない。
世の中の恋人達はこんなにオープンな会話をしているのだろうか。
別にかまととぶるつもりもないし、男女間で何をするかも知っている。
田舎は動物の営みが収入に直結している家も多い。酪農をしている友達の家に行けば、動物の営みを直接見ることもあった。
恥ずかしいとも思わなかったし自然な姿と受け取っていた。
人間の男女間のことも、私もいつか自然にそういう関係になって、子供を産むのだろうと思っていた。
ただ、人間はもう少し恥じらいがあると思っていたのだけど。
鏡に映る自分を見て、明日の夜、体も大人になるのかなと、少ししんみりしてから風呂場を後にした。
おかずにするから下着を見せろと言い張る変態ランドルフを、無理やり風呂場に押し込むと、ドッと疲れが出て来た。
朝から泣いて、踊って、また泣いて、両想いになって、ランドルフのご家族にも会った。
平民という事で嫌われている様子も、わざと話題にするのを避けている様子もなかったが、この先の付き合いも反対されないだろうか。
末っ子の火遊び相手として見られていなかっただろうかと慎重に会話を振り返る。
大丈夫だった気がする。少なくとも表面上は受け入れてくれていた。
私自身は気軽な関係を楽しめる人間ではない。人間同士だから結果として別れることもあるだろうが、スタートする時は、未来を共にしたいと思える相手でなければ無理だ。
話し合うことがたくさんある。少しでも今夜中に話し合っておきたい。
ボーと天井を見上げながら考えをまとめていると、いつの間にか瞼が下りていった。
「どんな騎士だった?髪は?性格は?ストーリーを詳細に教えろ。俺は何を殺って来たらいいんだ?ドラゴンみたいな伝説の生き物は無理だが、熊なら何頭でも獲って来てやる」
そんなもの貢がれても困る。
「いりません」
「しかしだな、見た目は近づけるようにするが、そっくり一緒には出来ないだろう。性格は努力する。改めるから教えてくれ。一番手を付けやすいのは強さを証明する事だろう?まずはそこから惚れてもらう」
――――あぁ、この人は本当に私の事が好きなんだわ
彼の両頬に手を当て、音を立ててキスをした。
固まってしまった彼の瞳を見ながら、二年間見て来た姿を思い返す。
何があっても自分を貫き、自信を持って我が道を進む姿。時には周りとの衝突もあったが結果を出し黙らせてきた。
まさか、物語の人物に嫉妬して外見も性格も変えようと、私みたいな平凡な人間に教えを乞うとは。
「もう惚れてるんだってば。変わる必要なんてないわ。それにランドルフを初めて見た時、騎士様にそっくりで驚いたのよ。現実のあなたは口も悪いし粗野だけど、不器用な優しさを知って、ランドルフ自身を好きになったの」
「俺も初めて見た時、俺の理想が現実にいることに驚いた。お前を知っていくにつれ、儚い見た目と違って、自立心があり、頑固で頼ってくれない事にイライラしたが、周りをよく見て、そっと手を差し伸べる優しさを愛してしまった」
もう一度、そっとキスをする。
「ん」
少し長く――
「んっ」
もう一度だけ――
「んぁ、あ、あのぉ、当たってます」
グリグリと擦り付けるのをやめて欲しい。反応に困る。
「あぁ、気持ちいい。くっ!」
いやいや、さらに押し付けないで欲しい。
「今日はダメです。明日踊れなくなったら、協力してくれた皆様に申し訳なさすぎる」
抱きしめられていた手を離してもらって、一緒に風呂に入ろうと誘われたが断固お断りした。
まだ、裸体をさらす勇気も、ホニャララを直接見る勇気もない。
風呂場で出すから先に入れと言われ、急いで風呂場に飛び込んだ。
シャワーを浴びながら、この後ここでランドルフがそんなことをするのかと思うと落ち着かない。
世の中の恋人達はこんなにオープンな会話をしているのだろうか。
別にかまととぶるつもりもないし、男女間で何をするかも知っている。
田舎は動物の営みが収入に直結している家も多い。酪農をしている友達の家に行けば、動物の営みを直接見ることもあった。
恥ずかしいとも思わなかったし自然な姿と受け取っていた。
人間の男女間のことも、私もいつか自然にそういう関係になって、子供を産むのだろうと思っていた。
ただ、人間はもう少し恥じらいがあると思っていたのだけど。
鏡に映る自分を見て、明日の夜、体も大人になるのかなと、少ししんみりしてから風呂場を後にした。
おかずにするから下着を見せろと言い張る変態ランドルフを、無理やり風呂場に押し込むと、ドッと疲れが出て来た。
朝から泣いて、踊って、また泣いて、両想いになって、ランドルフのご家族にも会った。
平民という事で嫌われている様子も、わざと話題にするのを避けている様子もなかったが、この先の付き合いも反対されないだろうか。
末っ子の火遊び相手として見られていなかっただろうかと慎重に会話を振り返る。
大丈夫だった気がする。少なくとも表面上は受け入れてくれていた。
私自身は気軽な関係を楽しめる人間ではない。人間同士だから結果として別れることもあるだろうが、スタートする時は、未来を共にしたいと思える相手でなければ無理だ。
話し合うことがたくさんある。少しでも今夜中に話し合っておきたい。
ボーと天井を見上げながら考えをまとめていると、いつの間にか瞼が下りていった。
0
あなたにおすすめの小説
混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない
三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。
いなくなった伯爵令嬢の代わりとして育てられました。本物が見つかって今度は彼女の婚約者だった辺境伯様に嫁ぎます。
りつ
恋愛
~身代わり令嬢は強面辺境伯に溺愛される~
行方不明になった伯爵家の娘によく似ていると孤児院から引き取られたマリア。孤独を抱えながら必死に伯爵夫妻の望む子どもを演じる。数年後、ようやく伯爵家での暮らしにも慣れてきた矢先、夫妻の本当の娘であるヒルデが見つかる。自分とは違う天真爛漫な性格をしたヒルデはあっという間に伯爵家に馴染み、マリアの婚約者もヒルデに惹かれてしまう……。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
竜帝に捨てられ病気で死んで転生したのに、生まれ変わっても竜帝に気に入られそうです
みゅー
恋愛
シーディは前世の記憶を持っていた。前世では奉公に出された家で竜帝に気に入られ寵姫となるが、竜帝は豪族と婚約すると噂され同時にシーディの部屋へ通うことが減っていった。そんな時に病気になり、シーディは後宮を出ると一人寂しく息を引き取った。
時は流れ、シーディはある村外れの貧しいながらも優しい両親の元に生まれ変わっていた。そんなある日村に竜帝が訪れ、竜帝に見つかるがシーディの生まれ変わりだと気づかれずにすむ。
数日後、運命の乙女を探すためにの同じ年、同じ日に生まれた数人の乙女たちが後宮に召集され、シーディも後宮に呼ばれてしまう。
自分が運命の乙女ではないとわかっているシーディは、とにかく何事もなく村へ帰ることだけを目標に過ごすが……。
はたして本当にシーディは運命の乙女ではないのか、今度の人生で幸せをつかむことができるのか。
短編:竜帝の花嫁 誰にも愛されずに死んだと思ってたのに、生まれ変わったら溺愛されてました
を長編にしたものです。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる