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子供のように縦抱っこされたまま部屋に帰って来た。
アルバン君の話には驚いた。
二年前の事は、アルバン君より年上だったにもかかわらず、それほど記憶に残っていない。
アルバン君があれほどはっきりと覚えているという事は、何度も思い返し後悔したのだろう。
「アルバンが怖くないか?」
不思議になるほど
「全然怖くないよ」
「……もう少し怖がってもらった方が、俺としては安心できるんだが」
当時はさすがに怖かった。
「私もまだまだ子供だったのね。今回も同じような状況だったでしょ?知らない人に手を引かれたんだから。でもね、この人は大丈夫って思えたの。少しは人を見る目が養われたのかな」
「どっちの手だ?いや、いい。両方上書きだ」
自分の手で私の両手を擦りながら、なぜか息まで吹きかけている。別に寒くないってば。
「これ。助かった」
差し出されたのは、ハンカチだった。
ランドルフなら気付いてくれるだろうと思って落としたのだ。
「ピンクのチューリップの花言葉は愛の芽生えなんです。きっと今の私達の事を思いながら刺してくれたのだと思います」
「そうか、芽生えたところか。これから何年もかけて愛を育んでいこう」
キザだなと思ったけれど、二人の未来の話が出来ることが嬉しい。
「お誕生会には戻らなくていいの?」
「主役が抜けて来てるってことは、お開き状態ってことだろ。酒が好きな連中はまだ飲んでるだろうが、勝手に帰ってもいいんだ」
よかった。お祝い事がめちゃくちゃになったりしなくて本当によかった。
もう一度二人で踊りたかったけど。
「どうした?」
抱っこしたままソファーに座っていたランドルフに覗き込まれる。
「もう一度ランドルフと踊りたかったなぁって思っただけです」
「踊ればいいさ」
立ち上がって、家具の置かれていない窓際に移動する。
二人でリズムを口ずさみながら緩やかに踊る。
「わっ、ごめっ」
ランドルフの足を踏んでしまった。
「ひゃっ!」
ウエストを持たれ、宙に浮いている状態でクルクルと回される。
力の入らない足が揺れる。
自然に二人のおでこがくっつきクスクスと笑いながらついばむようなキスをした。
「ありがとう、楽しかったです。とっても素敵な夜になりました」
「侯爵家の息子に誘拐されたのに?」
二人の笑みが少し広がる。
「平気よ。侯爵夫人の誘拐を経験済みだったもの」
「なるほどな。アルバンはまだまだだな。マーガレットの方が何枚も上手だ」
ソファーに座り直し、用意されていたお茶を飲む。
「所長達とランドルフのご家族におやすみなさいのご挨拶が出来なかったわ」
「大丈夫さ。俺がアリーに盛って部屋に連れ帰ったと思っているだろうよ」
そ、それは恥ずかしい。次に会う時どういう顔をしたらいいんだろう。
「現実にしちまうか?」
微笑む顔が穏やかだから、本気じゃないのだろう。
きっと疲れているだろうと、今夜は寝させてくれるつもりなんだ。
でも――
「――今夜もらってくれる?ランドルフをもっと感じたいの……」
ごくりと唾をのみ込んだランドルフが捕食者のオーラをまとう。
「いいのか?もっとゆっくり進んだっていいんだ」
そう言いながらも、横抱きにされると、すでに硬くなり始めたものがお尻に当たっている。
セットされたランドルフの髪に手を伸ばし髪型を崩す。
「今夜がいい。ランドルフが足りないの」
抱きしめられ、噛みつくようなキスが降って来る。
いつもの軽いキスじゃない事に驚き、思わず開いた口に舌が差し込まれる。ねっとりと隅々まで探られ、自分の漏らす声と水音が静かな部屋に響く。
「ん、んーぅ、んぅ、はぁ、あっ」
息が上がって来た頃、やっと舌が消え、下唇を甘噛みされ、癒すようにペロリと舐められる。
「この二年、アリーの赤い唇を貪る想像を何度もした。想像をはるかに超える甘さだったよ。ごちそーさん」
口ではふざけるように言いながらも、真剣な目をして、背中の水色のリボンを解いている。
また唇を甘噛みされ、ペロリと舐めた後、吸い付かれる。
水色のリボンを解き終わったランドルフの指が、コルセットの紐に取り掛かる。
「こいつどうなってるんだ。くそっ、かっこ悪いが背中を向いてくれ」
ホッとした。手慣れたように脱がしていくから、ランドルフは経験があると分かっていても……
「ちょうど、あなたが脱がせた女性達に嫉妬してたところよ」
「は?女の服なんぞ脱がしたことねぇ。そんな面倒なことはアリーにしかする価値ねぇよ。アリーの服を脱がすのは、何度も想像したけどな」
どれだけ想像してたんだ。ランドルフの中で私はとんでもない妖婦になっていそうだ。
「なんだこれは。コルセットって拷問器具か?これをちまちま解くのは俺にとっても拷問だ。でもまぁ……そのまま動くなよ」
プツ、プツと小さな音がして少しずつ楽になっていく。
「コルセットを脱がす想像はしていなかったが、下着の紐をナイフで切る想像はしたことあったな」
切ってるの!?明日、メイドになんて思われるか!!
「俺の本来の好みより嗜虐的だが、なかなかいいな。気に入ったよ」
「もう!頂き物なのに、なんでそんなに楽しそうなのよ」
「別にいいだろ。もう貰ったんだから、どう使おうがこっちの自由だ」
そういう問題ではないが、急速に楽になった体の力が抜ける。
背を向けたまま立たされ、ドレスが床に落ちて花のように広がる。
「おいおい、鉄壁の防御だな。いったい何枚むかなきゃいけないんだ」
ぶつぶつ言いながら、指とナイフを使いどんどん床に落としていく。
やっとシュミーズとパンティとストッキングだけになる。
「こっちを向け」
振り返ろうとするが震えて足がうまく動かせない。
胸元を腕で隠したまま、足に力を入れてゆっくりと振り返る。
下を向いたまま、何か言ってくれないかとじっと待つ。
ランドルフの視線に熱を感じる。
「――風呂に行きたいか?五を数える間に風呂場に逃げこまないとこのまま抱く」
数え始める前に、お風呂場に走った。
アルバン君の話には驚いた。
二年前の事は、アルバン君より年上だったにもかかわらず、それほど記憶に残っていない。
アルバン君があれほどはっきりと覚えているという事は、何度も思い返し後悔したのだろう。
「アルバンが怖くないか?」
不思議になるほど
「全然怖くないよ」
「……もう少し怖がってもらった方が、俺としては安心できるんだが」
当時はさすがに怖かった。
「私もまだまだ子供だったのね。今回も同じような状況だったでしょ?知らない人に手を引かれたんだから。でもね、この人は大丈夫って思えたの。少しは人を見る目が養われたのかな」
「どっちの手だ?いや、いい。両方上書きだ」
自分の手で私の両手を擦りながら、なぜか息まで吹きかけている。別に寒くないってば。
「これ。助かった」
差し出されたのは、ハンカチだった。
ランドルフなら気付いてくれるだろうと思って落としたのだ。
「ピンクのチューリップの花言葉は愛の芽生えなんです。きっと今の私達の事を思いながら刺してくれたのだと思います」
「そうか、芽生えたところか。これから何年もかけて愛を育んでいこう」
キザだなと思ったけれど、二人の未来の話が出来ることが嬉しい。
「お誕生会には戻らなくていいの?」
「主役が抜けて来てるってことは、お開き状態ってことだろ。酒が好きな連中はまだ飲んでるだろうが、勝手に帰ってもいいんだ」
よかった。お祝い事がめちゃくちゃになったりしなくて本当によかった。
もう一度二人で踊りたかったけど。
「どうした?」
抱っこしたままソファーに座っていたランドルフに覗き込まれる。
「もう一度ランドルフと踊りたかったなぁって思っただけです」
「踊ればいいさ」
立ち上がって、家具の置かれていない窓際に移動する。
二人でリズムを口ずさみながら緩やかに踊る。
「わっ、ごめっ」
ランドルフの足を踏んでしまった。
「ひゃっ!」
ウエストを持たれ、宙に浮いている状態でクルクルと回される。
力の入らない足が揺れる。
自然に二人のおでこがくっつきクスクスと笑いながらついばむようなキスをした。
「ありがとう、楽しかったです。とっても素敵な夜になりました」
「侯爵家の息子に誘拐されたのに?」
二人の笑みが少し広がる。
「平気よ。侯爵夫人の誘拐を経験済みだったもの」
「なるほどな。アルバンはまだまだだな。マーガレットの方が何枚も上手だ」
ソファーに座り直し、用意されていたお茶を飲む。
「所長達とランドルフのご家族におやすみなさいのご挨拶が出来なかったわ」
「大丈夫さ。俺がアリーに盛って部屋に連れ帰ったと思っているだろうよ」
そ、それは恥ずかしい。次に会う時どういう顔をしたらいいんだろう。
「現実にしちまうか?」
微笑む顔が穏やかだから、本気じゃないのだろう。
きっと疲れているだろうと、今夜は寝させてくれるつもりなんだ。
でも――
「――今夜もらってくれる?ランドルフをもっと感じたいの……」
ごくりと唾をのみ込んだランドルフが捕食者のオーラをまとう。
「いいのか?もっとゆっくり進んだっていいんだ」
そう言いながらも、横抱きにされると、すでに硬くなり始めたものがお尻に当たっている。
セットされたランドルフの髪に手を伸ばし髪型を崩す。
「今夜がいい。ランドルフが足りないの」
抱きしめられ、噛みつくようなキスが降って来る。
いつもの軽いキスじゃない事に驚き、思わず開いた口に舌が差し込まれる。ねっとりと隅々まで探られ、自分の漏らす声と水音が静かな部屋に響く。
「ん、んーぅ、んぅ、はぁ、あっ」
息が上がって来た頃、やっと舌が消え、下唇を甘噛みされ、癒すようにペロリと舐められる。
「この二年、アリーの赤い唇を貪る想像を何度もした。想像をはるかに超える甘さだったよ。ごちそーさん」
口ではふざけるように言いながらも、真剣な目をして、背中の水色のリボンを解いている。
また唇を甘噛みされ、ペロリと舐めた後、吸い付かれる。
水色のリボンを解き終わったランドルフの指が、コルセットの紐に取り掛かる。
「こいつどうなってるんだ。くそっ、かっこ悪いが背中を向いてくれ」
ホッとした。手慣れたように脱がしていくから、ランドルフは経験があると分かっていても……
「ちょうど、あなたが脱がせた女性達に嫉妬してたところよ」
「は?女の服なんぞ脱がしたことねぇ。そんな面倒なことはアリーにしかする価値ねぇよ。アリーの服を脱がすのは、何度も想像したけどな」
どれだけ想像してたんだ。ランドルフの中で私はとんでもない妖婦になっていそうだ。
「なんだこれは。コルセットって拷問器具か?これをちまちま解くのは俺にとっても拷問だ。でもまぁ……そのまま動くなよ」
プツ、プツと小さな音がして少しずつ楽になっていく。
「コルセットを脱がす想像はしていなかったが、下着の紐をナイフで切る想像はしたことあったな」
切ってるの!?明日、メイドになんて思われるか!!
「俺の本来の好みより嗜虐的だが、なかなかいいな。気に入ったよ」
「もう!頂き物なのに、なんでそんなに楽しそうなのよ」
「別にいいだろ。もう貰ったんだから、どう使おうがこっちの自由だ」
そういう問題ではないが、急速に楽になった体の力が抜ける。
背を向けたまま立たされ、ドレスが床に落ちて花のように広がる。
「おいおい、鉄壁の防御だな。いったい何枚むかなきゃいけないんだ」
ぶつぶつ言いながら、指とナイフを使いどんどん床に落としていく。
やっとシュミーズとパンティとストッキングだけになる。
「こっちを向け」
振り返ろうとするが震えて足がうまく動かせない。
胸元を腕で隠したまま、足に力を入れてゆっくりと振り返る。
下を向いたまま、何か言ってくれないかとじっと待つ。
ランドルフの視線に熱を感じる。
「――風呂に行きたいか?五を数える間に風呂場に逃げこまないとこのまま抱く」
数え始める前に、お風呂場に走った。
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