【完】白雪姫は魔女の手のひらの上で踊る

三月ねね

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番外編3 前前前日のエドモンド侯爵邸

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――――侯爵邸寝室にて――――

「ねぇマギー、僕達夫婦だろ?教えてくれてもいいんじゃない?」
僕の賢い奥さんは、僕が想像もつかない事を思いつく。でも、なかなか詳細を教えてもらえない。
知らない方が楽しめるでしょって。
「このままじゃ、気になって眠れないよ。なんで脅迫状が来たなんて嘘をつくんだい?」
女神のような微笑(ランドルフ君には魔女に見えるらしいが)を浮かべ、
「あなたは顔に出るからダメよ」
これでも侯爵家の後継ぎとして、今は亡き両親に太鼓判を押されたぐらいには表情を操れるのに、聡明なマギーや勘の鋭いランドルフ君には通用しない。

別にマギーに隠し事をしたい訳ではないが、たまにはサプライズで喜ばせたい時だってあるのに、いつもばれてしまうのは少しだけ残念だ。

「でも気になるよ。ランドルフ君と彼の好きな子を招待するのは、いつものマギーの優しさだよね?でもなんで脅迫状なんて嘘を?」
家族を愛するマギーは彼らの為なら、いくらでも時間と頭とお金を使う。
もちろん僕や息子達にもそうだが、特に二人の弟達には甘い気がする。
だがランドルフ君達はマギーを煙たがっている節があり、こんなにマギーから愛されているのに!と憤慨したこともあったが、マギーの愛情に気が付いたランドルフ君達がマギーを離してくれなくなると、僕がマギー不足で干からびてしまうから、今はこのくらいで丁度いいと納得している。

 微笑んだまま答えてくれない愛妻にキスをしながら、もう少し話を聞き出そうと質問を重ねる。
「じゃあ、なんでアルバンも呼んだの?」
いつもは息子達の休みに合わせて親子四人だけでお祝いをしている。
息子達は堅苦しい格好が嫌いだし、個性的な人が多すぎて年若い彼らは絶好のおもちゃにされるから出席したがらないのに。

「あなた、白雪姫の話は知っているでしょ?」
やっと微笑み以外をもらえて、喜び勇んで答える。
「もちろんだよ。ああいう話ってちょっと怖いよねぇ」
あれ?そういえばマギーは息子達が小さい頃よく童話を読み聞かせていたな。
「ランドルフとアルバンの初恋は白雪姫になったわ」
だから?首をかしげてうんうん唸りながら考えるが、それ以上のヒントはもらえなかった。
結局、頭を使い過ぎてマギーより先に眠ってしまった僕には、
「現実の初恋も同じ人になるとは、なんとも面白いこと」
マギーのつぶやきは聞こえなかった。
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