収穫祭の夜に花束を

Y子

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10月25日

7.ルーナはサンに教えない

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 サンはルーナのやることに興味があるようだった。

 道具を見たがり、作り方を知りたがり、出来上がったものを触りたがった。

「お前はこんなことが楽しいのかい?」
「はい! とても楽しくて幸せです」
「それはよかった」

 ルーナは満足していた。
 サンが幸せなら全てが上手くいく。

 あとはこの部屋でうっかり殺してしまわないように気をつけなければならない。
 魔法は、魔法を使えない人間にとっては危険なものだ。
 サンは替えのきかない子どもだ。
 ある程度見せたらこの部屋から遠ざけておくべきではないだろうか。

「ルーナ様はすごいですね。魔女の人達はみんなこんな風にものを作ることが出来るのですか?」
「作る能力だけをいうならば、全員できないことはない。だが性格によるな。こういうのを好むものもいれば、嫌うものもいる」
「そうなんですね。すごい……」

 サンは先ほどからずっとすごいという言葉を繰り返していた。
 ルーナたち魔女にとってはごく当たり前のことばかりだ。
 それどころか魔法が使えるならば誰でもできることしかまだやっていない。
 それがこんなにもサンの目を輝かせることができるのか。

「そういえばルーナ様は蛇の魔女と言ってましたよね。他にはどんな魔女がいるのですか?」
「いろいろいるさ。鳥や猛獣、魚、人間だって時に魔女になる」
「みんな名前がないのですか?」
「いや、自分で名前をつけるものもいれば昔の名前を使い続けるものもいる。私に名前がなかったのは私がそれを望まなかったからだ」

 名前は所詮多数のものから個を認識し識別するためのもの。
 自分が自分を認識していればいいのだ。
 だから名前など意味のないものはいらない。

 ルーナはそう思っていた。
 そして今もそう思っている。

「魔女以外に魔法を使える人はいるのですか?」
「もちろん。異界に住む者はみんな使えるしこっちにいるエルフやドワーフ、人魚なんかも使える」
「エルフも人魚も本当にいるのですか!?」
「ああ。人間の前に現れることはほとんどないがな」

 サンの質問がルーナの話から魔女の話へ、そしてそれ以外に変わっていくにつれルーナは気分が悪くなっていた。
 
「この話はもう終わりだ。私は残りの薬を作るからそろそろお前はこの部屋から出ていきなさい」

 ルーナはサンを部屋から追い出した。














 夜、サンが眠りについた後ルーナは鏡に話しかけた。

「子どもの服と靴をよこせ」

 その高圧的な言葉に答えたのは鏡に映るルーナではなく、異界にいる赤髪の魔女だった。

「収穫祭前なのに珍しいね。子どもは男と女どっち?」
「男だ」
「わかった。用意してそっちに送るわ。他に必要なものは?」
「そうだな……子どもの喜ぶものが欲しい。あと魔法に関する本だ。子どもが読めるやつ」
「ずいぶんと要望が多いのね。本は少し時間がかかるけど、明日の夜までには必ず用意するわ」
「いつもの薬草と花は烏に持たせた。すぐにそちらに届くだろう」
「ありがとう。用意できた荷物は烏に持たせるわね」

 要件を聞き終えるとルーナは鏡に布をかけた。
 
 大きく息を吐く。
 あと6日。
 それだけ待てばサンの中で種が定着して芽が出る。

 それまでサンを大事に育てるのだ。
 決して死んでしまうことのないように、泣くことのないように。
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