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後日談3 近衛隊長は愛する人と飲んでいる
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※ 本編終了後、二人の初夜話。
「…では。引越し祝いに、乾杯」
「かんぱーい!!!」
アイザックと仁亜は、お互いのグラスを合わせた。
二人の挙式が終わり、この王都に新しく建てた一軒家がようやく完成したのだ。
「いや~お祝いでこんなに沢山お酒をもらえるなんて、嬉しいですね」
「飲み過ぎには気をつけろよ」
「わかってますって。でもご飯が美味しいから進んじゃうなあ」
なお、料理は完全にアイザックが担当する事になった。…色々あったのだ。
「ただ火を通しただけの物が多いが…そんなに喜んでもらえるなら、作り甲斐があるな」
「もう毎日食べたい!あ、食べられるんだこれからは。やった!あーでもまた太りそう」
「ニアはもう少し太っても良いだろう。今までが細すぎだったのだから」
「いやいや!最近服がまたキツくなって…ってこら!私バカ!アイザックさんの前で言うなっての!」
「………さてはもう酔い始めてるな……」
アイザックは若干呆れつつも、服がキツくなったという仁亜を凝視した。
別に顔も腰回りも特に変わってはいない。強いて言えば胸が……
と思いかけて、慌てて目を逸らした。
「うーん、アイザックさんと一緒に住めるのは嬉しいけど…アンちゃんと離れるのは寂しいなぁ~。もう寝たかな~アンちゃーん」
ここで初登場の名前、アンちゃんとは…小春の子供にして、仁亜の妹である。
仁亜達の結婚式前に生まれたこの子は、たちまちシェパード家のアイドルとなった。
小春とシュルタイス、仁亜は勿論だが、よりベッタリだったのは兄のセイバーだった。
とにかく甲斐甲斐しく世話を焼き、側を離れない。まぁ、彼がいれば妹も安心だろう。
ちなみにアンちゃんとは愛称で、正式にはアンジュ=シュルタイスである。
一応、日本名もあるが「天使」と書くらしい。小春の名付けセンス…なかなかのものであった。
「ああ、アンジュか。
俺は割と子供に泣かれる事が多いのだが…あの子はよく笑ってくれるから、こちらも嬉しくなるな」
アイザックは思い出しながら微笑む。
「そうでしょ?可愛いでしょう?!手も足もムチムチで…あーん食べちゃいたい!ウチにも一人欲しいんじゃー!」
「ブフッ!」
仁亜の突然の子供欲しい発言に、思わず飲んでいた酒を吹くアイザックだった。
「ニア…そ、その言葉の意味は…」
「んー?何か言いましたー?あー頭がボーッとしてきたー熱いんじゃー」
そう言いながら、仁亜はフラフラしながら部屋の窓を開けた…と思ったら突然大声を出した。
「はー気持ちいい!お酒が美味しい!アイザックさんの料理が美味しい!幸せ!アイザックさん強いしカッコいいし優しいし絵も上手いし大好きじゃーーー!!!」
「お、おいニア?!夜だぞ?!」
慌てて仁亜を腕の中に回収し、空いた手で窓を閉めた。彼女は既にウトウトしている。
…明日にはご近所さんに揶揄われるだろう。頭が痛い。
「…はぁ。もう寝た方がいいな。仕方ない、寝室に連れて行ってやるか」
「うーん…好きじゃあ…大好きなのじゃ…」
「…フッ。俺もだよ、ニア」
若干言い方がオッサンだが、愛する妻に好き好き言われて、嬉しくない男はいない。
なんだかんだ上機嫌で仁亜を運ぶアイザックなのだった。
・・・・・・・
翌朝。
「あー…またやってしまった…」
と、起きた途端うなだれる仁亜。
酔っていても頭は覚えている。昨日は窓を開けて叫んでしまった。反省するのはそれだけではない。
「昨日って…初夜ってやつじゃん…?
もうちょっとさ、ラブラブな夜というか…いや、まだその、こ、心の準備とかもあるけどさ…
酔って寝落ちとか、女としてどうなのよ…最悪…」
ベッド上でウダウダ言っていたが、アイザックが隣にいない事に今更気づき、慌てて身支度を整えてキッチンへ向かった。
「ん?ニアか。おはよう。もうすぐ朝食が出来るから待っていてくれ」
「おはようございます、アイザックさん。
あっ、手伝いますね。配膳しかできないけど…」
仁亜はアイザックの隣に立ち、恐る恐る彼の顔を見て言った。
「あの。昨日は酔っ払っちゃって、叫んで迷惑かけちゃって、ごめんなさい」
「ん?ああ、別にいいさ。今後は気をつけるんだな。そんな事よりコレを味見してくれ」
「は、はい…ん!美味しい!」
「そうか!良かった」
そう微笑むアイザック。
お世辞抜きに美味しかったし、何よりアイザックの機嫌がとても良い事にホッとする仁亜だった。
…しかし、それには裏があった。
昨晩、酔った仁亜を寝室に運んだアイザックだったが、寝かせようとする際身じろぎされ…ベッド上であられもない姿になってしまった。
着ていたネグリジェが絶妙にはだけて、所々見えそうで見えない…もどかしい具合になったのだ。
咄嗟に直そうとするアイザックに、悪魔が囁いた。「このまま襲ってしまえ」と。
そんな紳士らしからぬ行為は出来ない…頭を振る彼に、悪魔はさらに囁く。「彼女だって子供が欲しいと言っていたじゃないか」と。
思わず頭を抱えるアイザック。そして無意識に仁亜へと手を伸ばしたその時…救いの神が現れた。
神は言った。「馬鹿なことをするんじゃない。それよりも…その奇跡的な姿とポーズを、絵に描いておくのが先ではないか」と。
その言葉を受け、彼は悪魔の囁きを跳ね返すような勢いで紙と鉛筆を持つ。
そこからは無我夢中で鉛筆を走らせた。確かにこんな姿、本人にいざやってくれと言っても恥ずかしがってやらないだろう。
今がチャンスとばかりに描き進め…鉛筆を置いた時には、珍しく感無量の面持ちだった。
もしこの事を仁亜が知ったら、おそらくこう言うだろう。
―ロクな神が居ないな、と。
「…では。引越し祝いに、乾杯」
「かんぱーい!!!」
アイザックと仁亜は、お互いのグラスを合わせた。
二人の挙式が終わり、この王都に新しく建てた一軒家がようやく完成したのだ。
「いや~お祝いでこんなに沢山お酒をもらえるなんて、嬉しいですね」
「飲み過ぎには気をつけろよ」
「わかってますって。でもご飯が美味しいから進んじゃうなあ」
なお、料理は完全にアイザックが担当する事になった。…色々あったのだ。
「ただ火を通しただけの物が多いが…そんなに喜んでもらえるなら、作り甲斐があるな」
「もう毎日食べたい!あ、食べられるんだこれからは。やった!あーでもまた太りそう」
「ニアはもう少し太っても良いだろう。今までが細すぎだったのだから」
「いやいや!最近服がまたキツくなって…ってこら!私バカ!アイザックさんの前で言うなっての!」
「………さてはもう酔い始めてるな……」
アイザックは若干呆れつつも、服がキツくなったという仁亜を凝視した。
別に顔も腰回りも特に変わってはいない。強いて言えば胸が……
と思いかけて、慌てて目を逸らした。
「うーん、アイザックさんと一緒に住めるのは嬉しいけど…アンちゃんと離れるのは寂しいなぁ~。もう寝たかな~アンちゃーん」
ここで初登場の名前、アンちゃんとは…小春の子供にして、仁亜の妹である。
仁亜達の結婚式前に生まれたこの子は、たちまちシェパード家のアイドルとなった。
小春とシュルタイス、仁亜は勿論だが、よりベッタリだったのは兄のセイバーだった。
とにかく甲斐甲斐しく世話を焼き、側を離れない。まぁ、彼がいれば妹も安心だろう。
ちなみにアンちゃんとは愛称で、正式にはアンジュ=シュルタイスである。
一応、日本名もあるが「天使」と書くらしい。小春の名付けセンス…なかなかのものであった。
「ああ、アンジュか。
俺は割と子供に泣かれる事が多いのだが…あの子はよく笑ってくれるから、こちらも嬉しくなるな」
アイザックは思い出しながら微笑む。
「そうでしょ?可愛いでしょう?!手も足もムチムチで…あーん食べちゃいたい!ウチにも一人欲しいんじゃー!」
「ブフッ!」
仁亜の突然の子供欲しい発言に、思わず飲んでいた酒を吹くアイザックだった。
「ニア…そ、その言葉の意味は…」
「んー?何か言いましたー?あー頭がボーッとしてきたー熱いんじゃー」
そう言いながら、仁亜はフラフラしながら部屋の窓を開けた…と思ったら突然大声を出した。
「はー気持ちいい!お酒が美味しい!アイザックさんの料理が美味しい!幸せ!アイザックさん強いしカッコいいし優しいし絵も上手いし大好きじゃーーー!!!」
「お、おいニア?!夜だぞ?!」
慌てて仁亜を腕の中に回収し、空いた手で窓を閉めた。彼女は既にウトウトしている。
…明日にはご近所さんに揶揄われるだろう。頭が痛い。
「…はぁ。もう寝た方がいいな。仕方ない、寝室に連れて行ってやるか」
「うーん…好きじゃあ…大好きなのじゃ…」
「…フッ。俺もだよ、ニア」
若干言い方がオッサンだが、愛する妻に好き好き言われて、嬉しくない男はいない。
なんだかんだ上機嫌で仁亜を運ぶアイザックなのだった。
・・・・・・・
翌朝。
「あー…またやってしまった…」
と、起きた途端うなだれる仁亜。
酔っていても頭は覚えている。昨日は窓を開けて叫んでしまった。反省するのはそれだけではない。
「昨日って…初夜ってやつじゃん…?
もうちょっとさ、ラブラブな夜というか…いや、まだその、こ、心の準備とかもあるけどさ…
酔って寝落ちとか、女としてどうなのよ…最悪…」
ベッド上でウダウダ言っていたが、アイザックが隣にいない事に今更気づき、慌てて身支度を整えてキッチンへ向かった。
「ん?ニアか。おはよう。もうすぐ朝食が出来るから待っていてくれ」
「おはようございます、アイザックさん。
あっ、手伝いますね。配膳しかできないけど…」
仁亜はアイザックの隣に立ち、恐る恐る彼の顔を見て言った。
「あの。昨日は酔っ払っちゃって、叫んで迷惑かけちゃって、ごめんなさい」
「ん?ああ、別にいいさ。今後は気をつけるんだな。そんな事よりコレを味見してくれ」
「は、はい…ん!美味しい!」
「そうか!良かった」
そう微笑むアイザック。
お世辞抜きに美味しかったし、何よりアイザックの機嫌がとても良い事にホッとする仁亜だった。
…しかし、それには裏があった。
昨晩、酔った仁亜を寝室に運んだアイザックだったが、寝かせようとする際身じろぎされ…ベッド上であられもない姿になってしまった。
着ていたネグリジェが絶妙にはだけて、所々見えそうで見えない…もどかしい具合になったのだ。
咄嗟に直そうとするアイザックに、悪魔が囁いた。「このまま襲ってしまえ」と。
そんな紳士らしからぬ行為は出来ない…頭を振る彼に、悪魔はさらに囁く。「彼女だって子供が欲しいと言っていたじゃないか」と。
思わず頭を抱えるアイザック。そして無意識に仁亜へと手を伸ばしたその時…救いの神が現れた。
神は言った。「馬鹿なことをするんじゃない。それよりも…その奇跡的な姿とポーズを、絵に描いておくのが先ではないか」と。
その言葉を受け、彼は悪魔の囁きを跳ね返すような勢いで紙と鉛筆を持つ。
そこからは無我夢中で鉛筆を走らせた。確かにこんな姿、本人にいざやってくれと言っても恥ずかしがってやらないだろう。
今がチャンスとばかりに描き進め…鉛筆を置いた時には、珍しく感無量の面持ちだった。
もしこの事を仁亜が知ったら、おそらくこう言うだろう。
―ロクな神が居ないな、と。
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