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舞踏会で咲く氷の花は どこまでも青い
サファイアにはアレルキトの気持ちが分からない
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~サファイアのドレス~
簡素な部屋に椅子が一つ。周りをたくさんの人たちが囲み、走り回る。
舞踏会の準備がここまで慌ただしいとは、思っていなかった。それなのにまだ、ドレスを見ていない。身体を洗われ、香油を塗られ散々だ。ここまで他人に触られることなんて、今まで一回も無い。手袋をつけられたり、イヤリングをつけられたりあちこち飾られる。
気付けばドレスも着せられて、人も減った。そして一人になった。そっとドレスの裾をつまみ立ち上がり、鏡の前まで歩く。揺れる生地がひんやりとして、心地好い。鏡に写る自分が自分で無いようで、それでも口元が緩んでしまう。純粋な真っ青が主で、胸元にはサファイアが煌めきその周りをいくつかのアメジストが飾る。動く度にふわりと揺れるシフォンがすごく気に入った。
彼が選んでくれたのだろうか・・・
~舞踏会~
騒がしかったのが嘘のように静かな廊下。国王に並ぶ自分はどれだけ、不釣り合いに見えるだろうか。国王に恥をかかせないように、できるだけ上品に振る舞わなければならない。彼に気遣われる度に、口説かれているような気がして何処か寂しいような悲しいような気分になる。それは、こんなところにいるからだろうか。それとも、ここにいる時点で口説き落とされているような気がしているからだろうか。
「大丈夫か?」
そんなことを言われるような顔をしていたのだろうか。相変わらず、甘ったるく熱っぽい眼差しだ。悔しいくらいに、彼の持つ美貌とその眼差しは女心を揺さぶる。けれど、絶対にこんな人に惚れたくないということは変わらない。
「その髪飾り、いつもしているんだね。」
優しく髪に触れながら、目を見て笑う。髪飾りと言ったってさほど目立つ訳でも無い、ただ花の形をして真ん中にサファイアのついている普通の髪飾りだ。
「気づいていたのですね。ただ、気に入っているだけです。」
彼も舞踏会に出るので、着飾っている。白い軍服がよく、似合っている。きっと舞踏会だって、彼はたくさんの女性から声をかけられるのだろう。それなら、早く帰れるかもしれない。
「気づくに決まっているじゃないか。だってサファイアのことなら、誰よりも知りたい。」
無意識に顔に熱が集まる。我ながら、こんな簡単な口説き文句に一瞬でも頬を染めた自分が恥ずかしい。
彼の、温かく大きな手の平が頬に触れる。覗き込むように、見つめる彼の熱っぽい視線が胸をえぐるように突き刺さる。
「サファイア・・・ 」
甘ったるい声で言われる。目を逸らしたい。これ以上見つめられたくない。あごの辺りに添えられていた彼の親指が、滑って下唇に添えられる。何故か抵抗できなくて、何をされるかなんてなんとなく分かっているのに彼の熱い視線が絡まって離してくれない。
「その顔、誰かに見せたら許さない・・・」
その言葉と一緒に添えられるていた指が、すっと離れる。悔しくてたまらない。
(からかって、遊んでたのね・・・・っ!)
何をするのだと、国王に突きつけよう思えば嫌な予感が予感でなくなる。
「あら~ フェイルエールじゃない。 こんなところで何しているの~?」
甲高く、人を見下すことしかしない声の主は姉君であるカルノエル。もし自分が国王と舞踏会に出ると知ったら、どんな顔をするのだろう。
「あなたがドレスを持っているとはねぇ。 とぉってもお似合いよ。私はそんなドレス着ないけど。」
腹の立つことを平気で言ってくる。何を返したらいいのか、この人を救ってくれないかと願うばかりだ。
「失礼します。」
これ以上国王を待たせる訳にはいかない。
「まさか、相手も紹介しないつもり? ずいぶんふざけた妹ね、礼儀という言葉も知らない哀れな子。」
無視だ。何も考えず無心になる。こんな人に腹を立てているようじゃ、情けない。ただ静かにしていてくれれば良い。
「何しているのよ!」
真っ赤な扇が頭をかすめる。鈍い痛みが通り過ぎる。カシャンという音を立てて髪飾りが落ちる。
拾おうとしていた視線の先に、自分ではない他の人の手が髪飾りを拾う。拾った人を見て慌てて謝る。
「申し訳ありません・・・」
本来そんなことをしない彼は優しく微笑み、耳元で囁く。「気にしなくて良い」
「へぇ あなたがサファイアの相手? 哀れねぇ」
哀れなのはお前だと言ってやりたい。誰と話しているのかも、知らない。礼儀を知らないのは誰だ。
「失礼ですが、哀れなのはあなたです。あなたよりも彼女の方が、ずっと美しいですよ。行きましょう。」
開いた口がふさがらないとはまさにその通りな顔をした、カルノエル。
まっすぐ歩く彼は何を考えているのだろう。
知りたいと思う私は、すでに彼の手の平の中なのだろうか。
簡素な部屋に椅子が一つ。周りをたくさんの人たちが囲み、走り回る。
舞踏会の準備がここまで慌ただしいとは、思っていなかった。それなのにまだ、ドレスを見ていない。身体を洗われ、香油を塗られ散々だ。ここまで他人に触られることなんて、今まで一回も無い。手袋をつけられたり、イヤリングをつけられたりあちこち飾られる。
気付けばドレスも着せられて、人も減った。そして一人になった。そっとドレスの裾をつまみ立ち上がり、鏡の前まで歩く。揺れる生地がひんやりとして、心地好い。鏡に写る自分が自分で無いようで、それでも口元が緩んでしまう。純粋な真っ青が主で、胸元にはサファイアが煌めきその周りをいくつかのアメジストが飾る。動く度にふわりと揺れるシフォンがすごく気に入った。
彼が選んでくれたのだろうか・・・
~舞踏会~
騒がしかったのが嘘のように静かな廊下。国王に並ぶ自分はどれだけ、不釣り合いに見えるだろうか。国王に恥をかかせないように、できるだけ上品に振る舞わなければならない。彼に気遣われる度に、口説かれているような気がして何処か寂しいような悲しいような気分になる。それは、こんなところにいるからだろうか。それとも、ここにいる時点で口説き落とされているような気がしているからだろうか。
「大丈夫か?」
そんなことを言われるような顔をしていたのだろうか。相変わらず、甘ったるく熱っぽい眼差しだ。悔しいくらいに、彼の持つ美貌とその眼差しは女心を揺さぶる。けれど、絶対にこんな人に惚れたくないということは変わらない。
「その髪飾り、いつもしているんだね。」
優しく髪に触れながら、目を見て笑う。髪飾りと言ったってさほど目立つ訳でも無い、ただ花の形をして真ん中にサファイアのついている普通の髪飾りだ。
「気づいていたのですね。ただ、気に入っているだけです。」
彼も舞踏会に出るので、着飾っている。白い軍服がよく、似合っている。きっと舞踏会だって、彼はたくさんの女性から声をかけられるのだろう。それなら、早く帰れるかもしれない。
「気づくに決まっているじゃないか。だってサファイアのことなら、誰よりも知りたい。」
無意識に顔に熱が集まる。我ながら、こんな簡単な口説き文句に一瞬でも頬を染めた自分が恥ずかしい。
彼の、温かく大きな手の平が頬に触れる。覗き込むように、見つめる彼の熱っぽい視線が胸をえぐるように突き刺さる。
「サファイア・・・ 」
甘ったるい声で言われる。目を逸らしたい。これ以上見つめられたくない。あごの辺りに添えられていた彼の親指が、滑って下唇に添えられる。何故か抵抗できなくて、何をされるかなんてなんとなく分かっているのに彼の熱い視線が絡まって離してくれない。
「その顔、誰かに見せたら許さない・・・」
その言葉と一緒に添えられるていた指が、すっと離れる。悔しくてたまらない。
(からかって、遊んでたのね・・・・っ!)
何をするのだと、国王に突きつけよう思えば嫌な予感が予感でなくなる。
「あら~ フェイルエールじゃない。 こんなところで何しているの~?」
甲高く、人を見下すことしかしない声の主は姉君であるカルノエル。もし自分が国王と舞踏会に出ると知ったら、どんな顔をするのだろう。
「あなたがドレスを持っているとはねぇ。 とぉってもお似合いよ。私はそんなドレス着ないけど。」
腹の立つことを平気で言ってくる。何を返したらいいのか、この人を救ってくれないかと願うばかりだ。
「失礼します。」
これ以上国王を待たせる訳にはいかない。
「まさか、相手も紹介しないつもり? ずいぶんふざけた妹ね、礼儀という言葉も知らない哀れな子。」
無視だ。何も考えず無心になる。こんな人に腹を立てているようじゃ、情けない。ただ静かにしていてくれれば良い。
「何しているのよ!」
真っ赤な扇が頭をかすめる。鈍い痛みが通り過ぎる。カシャンという音を立てて髪飾りが落ちる。
拾おうとしていた視線の先に、自分ではない他の人の手が髪飾りを拾う。拾った人を見て慌てて謝る。
「申し訳ありません・・・」
本来そんなことをしない彼は優しく微笑み、耳元で囁く。「気にしなくて良い」
「へぇ あなたがサファイアの相手? 哀れねぇ」
哀れなのはお前だと言ってやりたい。誰と話しているのかも、知らない。礼儀を知らないのは誰だ。
「失礼ですが、哀れなのはあなたです。あなたよりも彼女の方が、ずっと美しいですよ。行きましょう。」
開いた口がふさがらないとはまさにその通りな顔をした、カルノエル。
まっすぐ歩く彼は何を考えているのだろう。
知りたいと思う私は、すでに彼の手の平の中なのだろうか。
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