恋の秘密はサファイアの瞳

十人 秋夜

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舞踏会で咲く氷の花は どこまでも青い

伝わらない気持ち

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~それでも好き・・・~

  頭の中が真っ白で、今見たものが何度も頭の中をグルグルと回る。

  そのまま元来た道を戻る。豪華な廊下も綺麗には見えず、改めて自分と彼の差を思い知らされる。ちゃんと分かっていたはずなのに、理解しているつもりだったのに、辛くて、どうにもならない現実が悲しいと思ってしまう。ほんの少し夢見た自分が許せなくて、好きになってしまった自分が許せない。
  きっと今周りから見ればとてつもないくらい、青ざめた顔をしているのだろう。一生懸命、いつもの顔を作る。ここに彼が帰って来たら、なんて言ったらいいだろうか。

「サファイア、待たせたな・・・」

  自分でも怖いと感じるほど、冷え切った視線。さっきまで他の女の人と抱き合ってたなんて全く分からない顔で、そっと手を握られる。握り返す気力なんて無くて、でも嬉しくて・・・

「サファイア・・・」

  熱っぽくて、甘い。この視線と声が惑わせる。こんな顔ずるい。でも、もう惑わせられたりしない。口説かれているだけなのだから、好きになろうがなるまいが好かれることは無い。

「もう、帰りますね。時間もだいぶ遅くなっていますし、帰らないと心配されてしまいますから。」

  これが、一番お互いに良いだろう。国王だって、先ほどの女性も待たせているのだろう。これ以上、惨めな気分になるのも嫌だ。

「待って、少しでいい。 話しがあるんだ。」

  きっとさっきのことが無ければ、期待したのかもしれない。今はただの、口説き文句にしか聞こえない。
  
 切なげな顔も、甘い声音も、全部嘘なのだから。

「ですが、あまり遅くなる訳にはいきませんから。今夜は帰らせていただきます。」

  話しだってどんな内容かも分からないし、甘い言葉を囁かれたところで嘘にしか聞こえない。
  彼は、先ほど姉に落とされた髪飾りを差し出す。  そういえば彼が拾ってくれた。話しとはこのことかもしれない。

「この髪飾り、よく君に似合っている。  だけど、付けて来て欲しくなかった。」

  似合っていなかったり、見っともなければ付けて欲しくなかったというのも分かる。似合っていたのに付けて来て欲しくないと言うのは、矛盾している。また、意図の分からないことを彼は言う。

「そうですか。  私もせめて舞踏会が終わるまで、国王には他の女性と触れ合うことは控えていただきたかったです。」

  他の女性とイチャイチャするのなら、その女性と舞踏会に出れば良いのに何故わざわざ自分なんかを誘ったのだろう。
  やっぱり他にも愛人がたくさんいるのだろうか、どうしてそんな人を好きになってしまったのだろう。

「見てたのか?」

  一気に暗くなった表情を見る限り、見られたくなかったのだろう 。隠したかったということは、やましいことということだ。

「えぇ、その方の元へ行って差し上げたらどうです?  私はどっちみち帰りますから。」

  どんな言い訳をするのだろうか。彼のように責任感の強い人は素直に、受け入れるのだろうか。
  何を言われても、信じない。

「断る、君と居たい。  もし君がそれでも帰るというなら、君の家まで送ろう。」

  また甘い言葉だ。騙されているのに、惑わされているのに、きゅぅと縮む心臓。

(だったら、もっと早く側に居て欲しかった。  あなたと並べるくらい、側に居られたら良かったのに・・・・)

  だけど、彼には頼りたくない。

「いえ、結構です。  夜道を歩くようなことはしませんので、ご心配なされなくても大丈夫です。」

  本当は離れたくなかった。もっと側に居たい。でも一緒にいれば居るほど好きになってしまって、諦められなくなる。

「そんなこと言わないでくれ・・・  」

  絞り出すような切ない声で囁かれ、抱き締められる。

   厚い胸板に押し付けられるように抱かれ、幸せを感じる。この腕から逃れたいのに、そんなことよりも幸せが大きくて抵抗できない。首の辺りに顔を埋められ、彼の髪が頬をくすぐる。
  
  ゆっくりと名残惜しそうに腕を解き、解放される。

「玄関まで、送らせてくれ。」





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