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新婚さん?このときはまだ良かった…
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「ご結婚おめでとうございます。姫様?とてもお美しいです」
侍女の声なんて届かない。何せ、外からは歓声の嵐、緊張よりも諦めに近い感情がぐるぐるさせてくる。
「旦那様も大変喜んでいらっしゃって・・・」
「話しかけないでちょうだい」
「申し訳ございません」
なんて自分は冷たい人間なんだろう。つくづくアーシャは思うのだ。自分に『心』というものはないのではないかと。長い付き合いの侍女、リリーだから良いが、こんなに冷たく接していては怯えられてしまう。慣れたことだけれど、決して気分の良いものではないし、時には寂しくもなるのだ。
「ごめんなさい」
「お気になさらないでください」
もとの家では手も出なかった、高級な純白のドレス。夫となる、ホルノ・ビエール第一王子のノアジールが送ってくれた、ブーケが歓声の入り口となっている窓の側に飾られている。彼はまだ何も知らない。仮面を被った愛らしいアーシャを撫でているだけ。自分で言うのも変な話だが、顔は良い方だと思う。ただ、性格はそうは言えない。誰に対しても冷徹で、残酷。ついたあだ名は『氷点下の姫』。さすがに、悲しくなった。日々緩やかな笑顔を向けてくる侍女たちが、自分の見えないところでそんな風に呼んでいるのだ。人間とは恐ろしいものだ。そして自分もその人間の一人で、なおかつ冷酷極まりない。結婚という機会に変わりたいのだ。
たとえそれが偽りでも、ここでは愛らしい姫であり続ける。夫の幸せを一番に願い、一生側に居続ける。後に国王となる人なのだから、愛すべき人が自分だけではなくなるかもしれない。でも、もう氷点下にはならない。
深い青色の瞳と目が合う。
久しぶりに向けられる暖かな視線に、視界が滲んだ。
「それでは、誓いのキスを」
今日、私は、氷点下の姫を卒業します。
侍女の声なんて届かない。何せ、外からは歓声の嵐、緊張よりも諦めに近い感情がぐるぐるさせてくる。
「旦那様も大変喜んでいらっしゃって・・・」
「話しかけないでちょうだい」
「申し訳ございません」
なんて自分は冷たい人間なんだろう。つくづくアーシャは思うのだ。自分に『心』というものはないのではないかと。長い付き合いの侍女、リリーだから良いが、こんなに冷たく接していては怯えられてしまう。慣れたことだけれど、決して気分の良いものではないし、時には寂しくもなるのだ。
「ごめんなさい」
「お気になさらないでください」
もとの家では手も出なかった、高級な純白のドレス。夫となる、ホルノ・ビエール第一王子のノアジールが送ってくれた、ブーケが歓声の入り口となっている窓の側に飾られている。彼はまだ何も知らない。仮面を被った愛らしいアーシャを撫でているだけ。自分で言うのも変な話だが、顔は良い方だと思う。ただ、性格はそうは言えない。誰に対しても冷徹で、残酷。ついたあだ名は『氷点下の姫』。さすがに、悲しくなった。日々緩やかな笑顔を向けてくる侍女たちが、自分の見えないところでそんな風に呼んでいるのだ。人間とは恐ろしいものだ。そして自分もその人間の一人で、なおかつ冷酷極まりない。結婚という機会に変わりたいのだ。
たとえそれが偽りでも、ここでは愛らしい姫であり続ける。夫の幸せを一番に願い、一生側に居続ける。後に国王となる人なのだから、愛すべき人が自分だけではなくなるかもしれない。でも、もう氷点下にはならない。
深い青色の瞳と目が合う。
久しぶりに向けられる暖かな視線に、視界が滲んだ。
「それでは、誓いのキスを」
今日、私は、氷点下の姫を卒業します。
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