旦那サマはドMに目覚る!?

十人 秋夜

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新婚さん?このときはまだ良かった…

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 人前に立つことには慣れた。王位継承権第一位、つまり国王になる。何年も前に実の母親を亡くした。病弱だった母は、静かに息を引き取った。実の母といえど、父親にとっては二人目の妻だ。一人目の妻は政略結婚で、父親としてもな存在だったそうだ。それに加え、なかなか子ができず、晴れて愛する母と結婚できたと聞いた。都合の良いことしか伝えられていないだろうから、本当のことは分からない。
 気づけば二十歳はたちを過ぎ、妻を娶ることとなった。またも政略結婚、父の代の反省で、先に好みに女性と結婚できれば良かったのだが、生憎あいにく自分にはそういった興味はなく、なんとなく良さそうな人を選ぶと聞かされていた。思いの外、可愛らしい女性だと思う。三つほど年下で、薄い金髪に紅い瞳。白い肌なのは、北国の生まれだからだそうだ。可愛らしい見た目は、大事だと思う。あくまで政略結婚なので、彼女を正妻に迎えることになるだろう。人前に出ることが多い上に、異国との交渉も多い、何かと顔が良い方が便利なのだ。
 最後の衣装合わせだ。別に何を着ようがこちらの勝手なのに、一体何度着れば彼らの気がすむのか。今もなお色々弄っている針子たちを、わずかに睨む。
「お似合いですね、陛下?軍服よりもそちらの方が良いのでは?」
 衣装を見に来た近侍が皮肉を言いに来た。ディール、彼は判断力に長け、かつての戦友である。親しい仲であるが故、くすぐったい。
「なんだ、笑いに来たのか?」
「まさか、良い奥様を貰って、羨ましい限りですよ」
 わざとへりくだって見せている。自分だって良い妻がいる。再来月に子が生まれるそうだ。こちらからすれば、自由な生活が羨ましい。地位が高いということは、全てにおいて縛られるということである。結婚だって、なんだってそうだ。心底信じられる人なんていてはいけない。ディールだって、いつ裏切られるか、その裏切りの過程なのか分からないのだ。
「良い奥様、か・・・・」
「何かご不満でもあるのですか?」
「いや・・・・」
 不満ではないけれどなんと言い表したら良いのか、何かが足りない、そんな気がする。何が、と言われても答えられないが、あのニコニコ笑っているところも、優雅で可愛らしい仕草も、なんだか手応えがない。そんなところが嫌というか、足りないのだ。打ち解けていけば、気にならなくなるかもしれない。それなりに結婚後に期待はしている。この退屈な毎日が少しでも、晴れれば良いと思う。
「そう言えば、奥様のご実家は有名な鉱山を持っているそうですね」
「あぁ、それが政略だそうだ」
「国ですら欲する鉱山ですか」
 苦笑とも取れる微妙な笑み、結局は金かと諦めたような笑みにも取れる。彼は金に回されるこの世に嫌気がさしている。
「北国は自治が盛んだ。あの地帯は国よりも領主の方が権力が強いだろう?温厚な気質な民のおかげで今までは問題はなかった。でも今はそうとは言えない。表向きは鉱山や領地の支配の強化だが・・・」
「隣国、フォルノ・ベールが軍事に力を入れ始めた。だから、好機を狙って攻め入るおつもりですか?」
「そうでもしなければ、向こうはすぐにでも攻め入って来るだろう。ここのところ民とフォルノの争いが度々ある。あまり良い状態ではないが、領地も広げたい、武力に頼ることになるだろう」
 結婚前にこんな話、本当はしない方が良いが、外で聞き耳をたてている部下にも示しておきたい。結婚などで浮かれる愚か者でもないし、貧弱な小僧だとも思われたくない。
「そう考えると、奥様は随分優れているのですね。あれだけ、後ろ向きだった結婚をすんなり飲んだ理由がやっとわかりました」
 王侯貴族は本当につまらない人生を送らされると思う。権力や地位に対する欲求と生涯隣り合わせになり続け、死ぬまで自由などない人生。
 明日は式だ。少しは楽しみ、かもしれない。
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