私の執事は王子様〜イケメン腹黒執事は用意周到にお嬢様の愛を乞う〜

玖保ひかる

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第18話 大事な幼馴染

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 パーカー子爵家の屋敷では、一人息子のベンジャミンが父に聞かされた話にショックを受けていた。

「父さん…、その話は本当なの?」

「ああ。残念だが、王都で噂になっている」

「そんな…ルシアがナリス王子殿下の婚約者候補に?」

「ああ。だから、お前もいい加減に諦めなさい」

「ウソだ―――!!ルシアはあんな王子なんかに興味ないんだから!」

 パーカー子爵は大きなため息をついた。

「やめろ、ぎりぎり不敬だぞ。ルシアちゃんの側に興味がなくたって、ナリス殿下がルシアちゃんに興味を持てばあり得るだろうが」

「そんな!ついに世間がルシアのかわいさを発見してしまったのか…!」

「あ~、そうだな。だから、お前にも婚約者を決めることにした。ルシアちゃんと万が一うまくいくかもしれないと、ルシアちゃんの婚約者が決まるまでは待ってみたが、ナリス殿下との縁談話があがったのならもう無理だろうな。もうお前も17だ。婚約者を決めて、領地経営の勉強も本腰を入れなくてはな」

 ベンジャミンは目に涙を浮かべて唇をかんだ。

「父さん、ひどいよ…」

「なにもひどくない。今まで散々待ってやっただろう。お前も見た目だけはかわいいからな、釣り書きはそれなりに届いている。この中から好きな子を選べばいい」

 パーカー子爵はベンジャミンの前にいくつかの釣り書きを置いた。

 ベンジャミンはバッと立ち上がり叫んだ。

「ぼくはルシアとしか結婚しないから―――!」

 そして走り去って自分の部屋に閉じこもった。

 部屋のソファに膝を抱えて座り込むと、ベンジャミンは泣き言をぶつぶつと言い続ける。

「ナリス王子め。僕のルシアを奪おうとするなんて。ルシアはずっと僕のものなんだ。ルシアが他の男の物になるくらいなら、ぼくは、ぼくは、うわーん!!」

 ハラハラと零れ落ちる涙を、グッと腕でこすった。

「そうだ!ルシアに手紙を書こう。ぼくの気持ちを打ち明けるんだ」

 思えば長年ルシアだけを思い続けてきたが、ルシアに思いを告げたことはなかった。

 いや、正確に言うと、思いが伝わったことがなかった。

 好きだ、かわいい、ずっと一緒にいて、と言葉を尽くして思いは語っている。

 しかし、ルシアは冗談だと思って聞き流してしまうのだ。

「便箋、便箋」

 ベンジャミンはさっそく筆を執り、思いの丈をしたためた。


 ◆◆◆


 一方、スチュワート伯爵家にもひと騒動があった。

 王都にいるローガンからナリス第二王子がアンダレジア国へ出立するため、サガンに滞在する、ついては歓待の準備をせよとの便りが届いたのだ。

 一月後、と書かれた手紙が王都から届くのに7日ほど経っている。

 あと20日強で王族をもてなす準備を整えなければいけないため、使用人のだれもが忙しく動き回っている。

 そんな中、リアムは機嫌が悪かった。

 表情には一切出さないけれども、なんとなくルシアにはそれが感じられ居心地が悪い。

「ねえ、リアム。なんでちょっと怒ってるの?」

「怒っていませんよ」

「そう?何かわたくしにいけないことがあったなら教えてね」

 王都で流れている噂。

 スチュワート伯爵令嬢が第二王子ナリスの婚約者候補になった、というもの。

 その噂が一気に広まると同時に、ナリスがスチュワート領へ滞在するとの知らせが来た。

 そこになにがしかの思惑が見え隠れしている。

(第二王子の手が回っているのか、それとも国王か…)

 ナリスはにこりと笑って見せた。

「ルシアお嬢様にいけないことなど一つもありませんよ」

「ならいいのだけど…。リアムとはずっと一緒にいるのだもの。わたくしには気持ちを話してほしいわ」

「申し訳ありません。お嬢様を煩わせるようなことではありませんでした。ナリス王子殿下がお見えになると言うことで、使用人一同、ピリピリしておりました」

「ああ、そうね。アンダレジア国に向かうとか。ほんの数日とはいえ、王族が滞在するのですもの。それはピリピリしてしまうかもしれないわね。わたくしだって緊張しているもの」

「お嬢様はいつも通りにしていれば大丈夫ですよ」

 そう言ってルシアの頭をなでる。

「わたくし、もう子どもではないのよ」

「それは失礼いたしました」

 リアムはサッと手を引きがてら、ルシアの頬をサッと撫でる。

 どうやらリアムの機嫌は回復したようだった。

「そう言えば、お嬢様にお手紙が届いていましたよ」

 ベンジャミンからの手紙をリアムは差し出した。

 封筒の家紋を見て、ルシアは小首をかしげた。

「パーカー子爵家?わたくし宛てなの?何かのご招待ではなくて?」

「お嬢様宛てで間違いありません。ベンジャミン様よりです」

「ベンジャミンから?まぁ、珍しい」

 ルシアは封を切り、手紙を読んだ。

 読み進めて行くうちに、だんだん顔色が悪くなる。

「リアム!ベンジャミンが死んじゃう!」

 ルシアが読み終わった手紙をリアムに見るように渡す。

 冷静沈着なリアムも、さすがに予想だにしなかったセリフに驚き、慌てて文面に目を通す。

 それは遺書に近い内容だった。

「もう終わりだ。ぼくはもう朝を迎えられない。今日父に結婚するように言われたんだ。ルシア、わかってくれ、ぼくの胸のうちを。愛する者と結婚できなければ、ぼくに生きていく意味はない。愛のない結婚など、ぼくには耐えられないんだ…と書いてありますね」

 リアムは心なしかげっそりと嫌そうに手紙をルシアに返した。

「おじさまに意に沿わない結婚を強いられて、命を絶つ気だわ!」

「そうですかね?」

「大変だわ。今すぐにパーカー子爵家へ向かいます。準備をしてちょうだい」

「行ってどうするんです?」

「自殺を止めたいの。大事な幼馴染だもの。どうしても結婚したくないのなら、おじさまと話し合わなくちゃいけないわ。死ぬなんて間違ってるわ」

「…かしこまりました」
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