あなたを消すには愛しすぎた

玖保ひかる

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エピローグ

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 ファティアは、母に連れられて辺境にあるの古い邸へやってきた。

 その昔、この土地は曾祖母が治める子爵領だったらしい。

 あちこちを探検気分で歩いていると、ひっそりとした地下室の扉を見つけた。

 取っ手を捻り、扉をそっと押すと、ギギギ、と蝶番が音を立てて開く。

 部屋の中に入ると、部屋の灯りが勝手に灯った。

「えっ!自動点灯装置オートライトがあるの?!」

 自動点灯装置オートライトは、つい昨年、王立研究所が解き明かした失われた技術ロストテクノロジーのひとつで、話題となったばかりだったのだから、驚くのも無理はない。

 部屋の中に目をやると、片隅に黒い四角い箱のような物が置いてあるのに気が付いた。

「何かの魔道具?」

 うっすらと積もった埃を軽く手で払い、側にあった魔導石をセットしてみた。

 ブンっと小さな音を立てて、装置は動き出し、細い緑色の光が右に左に動いた。ファティアは何が起きるか、期待に胸を膨らませた。

「そこにいるのは、リビア?」

 唐突に魔道具から人の声がした。ファティアは鼻の穴を広げて、すぐ側まで顔を近づけた。

「喋ったわ!」

 魔道具はしばし考えこむように黙ると、疑問を投げかけた。

「君はだれ?リビアじゃないね」

「私はファティアよ」

「はじめまして、ファティア。僕は長く眠っていたのかな。ちょっと記憶が混乱しているようだ」

「そうなの?あなたってなんだか生きているみたい」

 魔道具は数秒沈黙して答えた。

「僕は生きているよ」

「え?」

 ファティアは目を丸くした。

「でも、あなた機械でしょう?」

「じゃあ生きているってどういうこと?僕が生きていないって、どうして言えるの?」

 記憶保存装置ハルトの中で、いつまでもリビアとの美しい思い出は生き続けている。
 
 そして新しい出会いが繰り返されていく。

 それは生きているということと何が違うのだろうか。

「そんなこと考えたことがないわ。ねえ、あなたのことを教えて?」

「いいよ」





あなたを消すには愛しすぎた




~~~~~~~~~~~
 あとがき

 本作をお読みいただき、ありがとうございました。 

 短いお話を書いてみたくて挑戦しましたが、難しかったです。

 ショートショートできれいにお話がまとまっている方々って本当にすごいですね。尊敬します。

 もし気に入っていただけましたら、お気に入りをぽちっとしていただけると大変嬉しいです。



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