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第28話 兄との再会
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「はい、おめでとさん。いやー、良いものを見せてもらったね」
少し離れて二人を見守っていたエイダンが、悪びれずに声をかける。
その声に、アリステルはエイダンの存在を思い出し、顔から火が出そうなほど恥ずかしくなり、レオンから慌てて離れようとしたが、レオンはアリステルを離さなかった。
「エイダン、お前ならきっと追いついてくれると信じていた。アリスを守ってくれてありがとう」
「どういたしまして。さすがに今回は肝が冷えたぜ」
「悪かった」
三人はテントに戻り、これまでどうしていたのか、互いの情報を交換することにした。
アリステルとエイダンが川下を探してくれたことを聞くと、レオンは胸が熱くなった。
身寄りのないレオンを心から心配してくれる人など、もうこの世にはいないと思っていた。
アリステルとはぐれて、アリステルに危険が及ぶのではないかと心配はしたが、アリステルが自分の心配をしているのでは、という懸念は浮かばなかった。
エイダンにしたってそうだ。
アリステルを守ってくれるだろうとは思ったが、レオンを心配して探してくれるとは、思っていなかった。
二人からの心配の気持ちが、いかにありがたいかをレオンは知っている。
「二人とも、本当にありがとう。心配をかけてすまなかった」
レオンが心こめてそう言うと、アリステルはにっこり笑い、エイダンは照れくさそうに鼻をこすった。
「いいってことよ。それで、お前はどうしてたんだ?」
「俺は、川岸に流れ着いたところを、とある武人に助けられた。目覚めたとき、すべての記憶を失っていた」
「記憶を失って?ああ、それで納得した。お前がアリス嬢の所に戻らないのはおかしいと思っていたんだ」
レオンはアリステルの手を軽く握ると、すまなかったと謝る。
アリステルはプルプルと首を振った。
「それで、その武人に一緒に働かないかと勧められ、雇い主に会いに行ったのだ。ナバランドの伯爵家だ」
「えっ・・・」
アリステルが目を丸くして話を聞いている。
「そこで雇われることになったのだが、雇い主が行方不明の妹を探していると言って絵姿を見せられた」
「え、それって…」
レオンは、いたずらが成功したように笑った。
「そう、アリス、お前の絵姿を見せられたのだ。それで急激に記憶が戻り、こうして戻って来たのだ」
「で、では、雇い主と言うのは…」
「お前の兄上だ」
「まぁ!」
アリステルは驚いて口元に両手を当てたまま、言葉もない。
代わりにエイダンが質問する。
「兄上はスコルト国の研究機関にいるんじゃなかったか?」
「数か月前にナバランドに戻っていたらしい。それでアリスが行方不明になっていることを知って、ずっと探していると言っていた」
アリステルは、やはり兄には無事を知らせる手紙を書けばよかった、と思った。
(心配をかけてしまったわ・・・)
「それで、俺が記憶を取り戻し、アリスと一緒にいたことを話したので、兄上はすぐに迎えに
行くと言って準備をしていた。俺は先に馬で出たが、後を追って来ていると思う」
「お兄様が迎えに来るの…?」
兄に会えるのは嬉しい。
5年間、ずっと会いたいと願っていたのだ。
しかし、ヴァンダーウォール家の屋敷に帰るのは怖い。
自分が死んでいないことをエヴァが知ったら、また命を狙われる。
「アリス、家に帰るのはいやか」
レオンに優しく問われ、アリステルは正直な気持ちを答えた。
「こわいのです」
「そうか。兄上に気持ちを話してはどうだ」
「お兄様に?」
「ああ。兄上はアリスのことを本当に心配していた。会って、話をした方がいい。帰りたくないなら、俺と一緒に来ればいい」
「わたくしが家に帰ることになったら?レオンさんは、どこかへ行ってしまうの?」
「いいや、アリスが家に帰るなら、俺もアリスの家に行くよ。兄上には雇ってもらえそうだし」
レオンが一緒ならば、どこででも生きていける。
ヴァンダーウォール家に戻ることになったとしても、レオンが一緒ならば…。
「わかりました。お兄様と話してみます」
三人はテントを片付けて、ナバランド国ヴァンダーウォール領を目指して出発し、次の日には、無事にハリソンの馬車と出会うことができた。
馬車を止め、扉が開くのも待ちきれない様子で、ハリソンは飛び降りてきた。
「アリス!僕のかわいいアリス!」
「お兄様!」
アリステルはレオンに馬から下ろしてもらって、兄のもとへ駆けつけた。
兄妹はぎゅっと抱き合い、再会を喜んだ。
「アリス、大きくなったね。顔を見せてごらん。ああ、母様にそっくりだ。きれいになったね」
「本当に?わたくし、お母さまに似ているの?」
「とてもよく似ているよ」
記憶の中の母は、いつも優しくほほ笑んでいた。
母に似ていると言われて、とても嬉しかった。
「お兄様もすっかり大人になられて、わたくし少し驚いています」
「最後にアリスに会ったのは、もう5年も前だからね。とにかく無事でよかった。あの女にひどい目に合わされたのだろう?気が付いてやれなくて本当にすまなかった」
「継母さまは、どうしているのです?」
「あの女は伯爵家から追い出すから大丈夫だよ」
聞けば、エヴァの犯した罪―アリステルへの毒物の投与、森への遺棄、御者の殺害、伯爵家の資金の使い込み、ハリソンへの殺害未遂など数多くの証拠がそろっているとのこと。
「父様を王都から呼び戻しているから、父様が帰り次第、すべての片が付く。さあ、家に帰ろう」
馬車に乗るよう促されて、アリステルは待って、と兄を止める。
「わたくし、レオンさんの馬で行きますわ」
「レオン?」
「紹介しますわ。レオンさん!わたくしの大切な人です」
レオンが礼儀正しく頭を下げる。
「ゼロか…。アリスを助けてくれてありがとう」
「レオンだ、兄上」
「そうだったね。僕のアリスの大切な人なのかい?」
ハリソンは美しい笑顔を作ったが、目が笑っていない。
冷気すら漂いそうだが、レオンはひるまず答える。
「俺にとっても、大切な人だ」
「レオンさん…」
アリステルがポッと頬を染める。ハリソンはその様子を苦々しく見た。
「レオンがアリスの大切な人なのはわかったけど、アリスには馬車に乗ってもらうよ。これまでどうしていたのか、話を聞きたいからね」
そう言って、強引にアリステルを馬車に乗せ、さっさと出発させるのだった。
少し離れて二人を見守っていたエイダンが、悪びれずに声をかける。
その声に、アリステルはエイダンの存在を思い出し、顔から火が出そうなほど恥ずかしくなり、レオンから慌てて離れようとしたが、レオンはアリステルを離さなかった。
「エイダン、お前ならきっと追いついてくれると信じていた。アリスを守ってくれてありがとう」
「どういたしまして。さすがに今回は肝が冷えたぜ」
「悪かった」
三人はテントに戻り、これまでどうしていたのか、互いの情報を交換することにした。
アリステルとエイダンが川下を探してくれたことを聞くと、レオンは胸が熱くなった。
身寄りのないレオンを心から心配してくれる人など、もうこの世にはいないと思っていた。
アリステルとはぐれて、アリステルに危険が及ぶのではないかと心配はしたが、アリステルが自分の心配をしているのでは、という懸念は浮かばなかった。
エイダンにしたってそうだ。
アリステルを守ってくれるだろうとは思ったが、レオンを心配して探してくれるとは、思っていなかった。
二人からの心配の気持ちが、いかにありがたいかをレオンは知っている。
「二人とも、本当にありがとう。心配をかけてすまなかった」
レオンが心こめてそう言うと、アリステルはにっこり笑い、エイダンは照れくさそうに鼻をこすった。
「いいってことよ。それで、お前はどうしてたんだ?」
「俺は、川岸に流れ着いたところを、とある武人に助けられた。目覚めたとき、すべての記憶を失っていた」
「記憶を失って?ああ、それで納得した。お前がアリス嬢の所に戻らないのはおかしいと思っていたんだ」
レオンはアリステルの手を軽く握ると、すまなかったと謝る。
アリステルはプルプルと首を振った。
「それで、その武人に一緒に働かないかと勧められ、雇い主に会いに行ったのだ。ナバランドの伯爵家だ」
「えっ・・・」
アリステルが目を丸くして話を聞いている。
「そこで雇われることになったのだが、雇い主が行方不明の妹を探していると言って絵姿を見せられた」
「え、それって…」
レオンは、いたずらが成功したように笑った。
「そう、アリス、お前の絵姿を見せられたのだ。それで急激に記憶が戻り、こうして戻って来たのだ」
「で、では、雇い主と言うのは…」
「お前の兄上だ」
「まぁ!」
アリステルは驚いて口元に両手を当てたまま、言葉もない。
代わりにエイダンが質問する。
「兄上はスコルト国の研究機関にいるんじゃなかったか?」
「数か月前にナバランドに戻っていたらしい。それでアリスが行方不明になっていることを知って、ずっと探していると言っていた」
アリステルは、やはり兄には無事を知らせる手紙を書けばよかった、と思った。
(心配をかけてしまったわ・・・)
「それで、俺が記憶を取り戻し、アリスと一緒にいたことを話したので、兄上はすぐに迎えに
行くと言って準備をしていた。俺は先に馬で出たが、後を追って来ていると思う」
「お兄様が迎えに来るの…?」
兄に会えるのは嬉しい。
5年間、ずっと会いたいと願っていたのだ。
しかし、ヴァンダーウォール家の屋敷に帰るのは怖い。
自分が死んでいないことをエヴァが知ったら、また命を狙われる。
「アリス、家に帰るのはいやか」
レオンに優しく問われ、アリステルは正直な気持ちを答えた。
「こわいのです」
「そうか。兄上に気持ちを話してはどうだ」
「お兄様に?」
「ああ。兄上はアリスのことを本当に心配していた。会って、話をした方がいい。帰りたくないなら、俺と一緒に来ればいい」
「わたくしが家に帰ることになったら?レオンさんは、どこかへ行ってしまうの?」
「いいや、アリスが家に帰るなら、俺もアリスの家に行くよ。兄上には雇ってもらえそうだし」
レオンが一緒ならば、どこででも生きていける。
ヴァンダーウォール家に戻ることになったとしても、レオンが一緒ならば…。
「わかりました。お兄様と話してみます」
三人はテントを片付けて、ナバランド国ヴァンダーウォール領を目指して出発し、次の日には、無事にハリソンの馬車と出会うことができた。
馬車を止め、扉が開くのも待ちきれない様子で、ハリソンは飛び降りてきた。
「アリス!僕のかわいいアリス!」
「お兄様!」
アリステルはレオンに馬から下ろしてもらって、兄のもとへ駆けつけた。
兄妹はぎゅっと抱き合い、再会を喜んだ。
「アリス、大きくなったね。顔を見せてごらん。ああ、母様にそっくりだ。きれいになったね」
「本当に?わたくし、お母さまに似ているの?」
「とてもよく似ているよ」
記憶の中の母は、いつも優しくほほ笑んでいた。
母に似ていると言われて、とても嬉しかった。
「お兄様もすっかり大人になられて、わたくし少し驚いています」
「最後にアリスに会ったのは、もう5年も前だからね。とにかく無事でよかった。あの女にひどい目に合わされたのだろう?気が付いてやれなくて本当にすまなかった」
「継母さまは、どうしているのです?」
「あの女は伯爵家から追い出すから大丈夫だよ」
聞けば、エヴァの犯した罪―アリステルへの毒物の投与、森への遺棄、御者の殺害、伯爵家の資金の使い込み、ハリソンへの殺害未遂など数多くの証拠がそろっているとのこと。
「父様を王都から呼び戻しているから、父様が帰り次第、すべての片が付く。さあ、家に帰ろう」
馬車に乗るよう促されて、アリステルは待って、と兄を止める。
「わたくし、レオンさんの馬で行きますわ」
「レオン?」
「紹介しますわ。レオンさん!わたくしの大切な人です」
レオンが礼儀正しく頭を下げる。
「ゼロか…。アリスを助けてくれてありがとう」
「レオンだ、兄上」
「そうだったね。僕のアリスの大切な人なのかい?」
ハリソンは美しい笑顔を作ったが、目が笑っていない。
冷気すら漂いそうだが、レオンはひるまず答える。
「俺にとっても、大切な人だ」
「レオンさん…」
アリステルがポッと頬を染める。ハリソンはその様子を苦々しく見た。
「レオンがアリスの大切な人なのはわかったけど、アリスには馬車に乗ってもらうよ。これまでどうしていたのか、話を聞きたいからね」
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