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第1章:第43特別地区
+++第十話:王国の異端者、ヤーマ・テラーリオ
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「――――聞いたか?例の奴が捕まったらしい」
「あー、あいつな。なんでも、逃げ切れないと思って自分から姿を現したって」
「知ってる!
その人、獣人・・・・それも小さな女の子に恋をした異常性欲者らしいわよ」
「まじか!気持ち悪りぃ、死罪だよ死罪。間違いない」
「人間の恥ね―――――――――」
・
・
「――――って、感じで。もうボロクソだよ、お前。どうだ?みんなに嫌われながら、ただ死ぬのを待つ感覚っていうのは?」
「そうだな・・・あえて言うなら悪くないよ。なにもしなくても三食毎日くるし、牢屋って言ってもなかなかきれいだ。なにより、温かいからさ」
「うぇぇ・・・・なんだよつまんない。もっと苦しめよ」
「それに俺は、まだ死ぬとは思ってないし」
「バーーーカ!!お前は死ぬ、殺されるんだよ!死罪確定、何回も言ってんだろ!?」
「はあ・・・・。っていうかあんた、俺の監視係ですよね?なにがなんでも当たり強くないですか??」
「当たり前だあ⁉僕はあの日地獄を見た、お前のせいだ!!」
「・・・・・?」
「これを見ろ!セシル・ハルガダナ!!お前にやられた左腕は、もう完全には治らない」
そう言って金髪の男【ジョージ・クルークス】は、俺を拘束する鉄格子に近づいた。
「ああ・・・・クルークスさん、あのときいたんですか」
「今更気づいたのかよ⁉もう一週間立つぞ⁉⁉」
気づいたっていうか。正直、まったく覚えてないとは口が裂けても言えなようだ。あのときは必死だったから、仕方がないと許しを請うか?
「いや。そうだな、あのときのことは一ミリも申し訳ないなんて思わない。あんたらのやったことに比べれば、軽いもんだろ」
「―――――殺す!!」
興奮してこちらを睨む彼だが、もちろんそんなこと出来やしないことはわかってる。
「まあ、仲良くしようぜ。話し相手がいないと退屈なんですよ」
「ふん!誰が」
「別に、どうせ死ぬ運命ならいいだろ?今日の夕飯はなんですか?毎食、食ったことないものばかりで楽しいんだよな」
「知るか!!」
会話のなかで落ち着き直し、席に戻ったクルークスは新聞を広げた。俺と話しても時間の無駄だと判断したのかもしれない。
(・・・?)
すると、俺の視界に人影が写った。地下牢の左端、地上とつながる部分である。セミロングの黒髪を揺らしながら階段を降りきると、女性は牢屋のセシル・ハルガダナに目を向けた。
「なあんだ、元気そうじゃないか」
大人びた風格で色気をまとう彼女は、淡々とそう呟くと少しだけ笑みをこぼした。
「!?あんた、何者だ??ここは関係者以外立ち入り禁止ですが!!!?」
「――――青年!!」
都合の悪いことを言いかけたクルークスに対して、彼女は<ずいっ>と顔を近づける。
「うわ!!な、なんだよ⁉」
柔らかな香水の香りと、つやのある唇が一気に近づくが・・・・・ここで惑わされてはいけない。彼は監視役として、いま一度心構えを作った。
「・・・・ふむ。その態度、おかしいな。きみは私を知らないのか?」
「え、ええ?」
侵入者の思いがけない発言に、困惑する。今日この時間に、セシル・ハルガダナとの接見予定などはないはずだが。
「この顔に見覚えは?」
「あ、ええと・・・・ですね」
(やめろ、そう言われると心配になる)
「私はヤーマ・テラーリオと言うが・・・・重ねて、本当に覚えはないか??」
クルークスの葛藤をよそに女性は、見間違いでなければどこか楽しそうに尋問を続けた。
(あーあ、これじゃ立場が逆だろう)
ま、俺はどっちでもいいか。どうせ、いたずらかなにかだろう。だいぶ嫌われてるようだしな。
「ほら、どうなんだね⁉」
「――――!!そう言えば、その名前聞いたことがあるような⁉」
「そうだ、それだよ!私はその――――ヤーマ・テラーリオ!では、きみは少し席を外しなさい。私は彼と話がある」
「は―――!了解しました!!」
どうやら決着がついたらしい。慌ただしく階段を駆け上がるクルークスを尻目に、女性は椅子を引きずって俺の前に現れた。
「よ、いしょっと・・・・。ははは、見た?あ、ほ。」
テラーリオと名乗った彼女は後方を指さして、勝ち誇ったような笑顔を見せる。
「・・・・何者です?あなた」
子どもっぽくからかうような仕草だが、女性にはやはり何処か大人びて落ち着いた雰囲気も感じる。
「くわえてこんな場所に、いったいなんの――――――」
「――――ちょっと、待った!」
「はい?」
「話す前に教えておこう。第43部隊の掟についてだ」
「はあ?第43部隊?いったい、なんの話ですか」
「ああ、だから待ちなって。女の話を聞けない男はモテないんだよ」
「・・・・」
「うん、なかなか聞き分けの良い」
頬杖を突きながら俺の顔を眺め、歯を見せ満面の笑顔を作る。
「じゃあ始めよう。まず一つ目、無断外泊は禁止とする。理由は、なにかあったとき面倒くさいから」
(なんの話だよ・・・)ガキの世話かなにかの話⁇いずれにせよ、いまの状況とはなんの関係もないはずだ。
「二つ目に、私の前でエガルットゥは食べないこと。理由は、臭いから」
「なんで!!エガルットゥうまいだろ!?」
「理由を話したでしょ?そして三つ目だ・・・私をおばさんと呼ばないこと。理由はうざいから」
(もう、意味がわからん)
途中、思わずこちらもツッコミを入れてしまった。しかし、またとんでもない狂人が来てしまった。これは、さっきクルークスさんの味方をしておいたほうが良かったらしい。こちらの冷ややかな視線も気にせず、女性はなぜか自慢げに話を進める。
「後はなにしてもいいんだよ。お酒を飲もうが、風呂場で歌おうが、第43部隊では全部自由。そう。私は亜人族を助けたって、なにも言わない」
「あー、はいはい。たぶんもうすぐ警備が戻るんで、それまでおとなしくしておいてくださいよ?」
(・・・・・??)
「ん・・・・‼⁇」
半ば聞き流していたが、彼女はいま、重要なことを言ったような気がする。目を見開き、俺は顔を上げてふたたび彼女の方を見た。
「あ、もちろんだけど、法律とか社会的責任のことは知らないよ?その場合、なにかあっても正当な理由がなかったら私は助けないからね~」
この人・・・・ふざけているようで、真剣な感じもある。わざわざ俺に話に来たのは、ガラムバトでの出来事についてだろうか?
「いったい、なにが言いたいんですか?そもそもまず、あなたは誰なのか教えてくださいよ」
「私は、【ヤーマ・テラーリオ】。元王国軍太極位で、いまは43部隊を指揮してる。非公式だけどね。まあ―――つまり、そう。きみをスカウトしに来たのさ」
相変わらず無茶苦茶だが、状況を知ったような口ぶり。これは真剣に相手をした方がいい。そう本能が告げてくる。
「スカウト・・・・その、43部隊にですか?」
「その通り、正式名称:王国軍直下第43特殊部隊は、人間族と亜人族の調和を模索するため部隊だ」
(調和⁇)
「さっきからあなたは、仮にも王国軍関係者が亜人を助けるだなんだって、戯言にもほどがあるんじゃないですか?」
そう、俺はあの町で惨劇を見たんだ。簡単に、もう人なんて信じられない。
結構強めに詰めたつもりが、テラーリオという女性は毅然と続ける。
「それがそうとも言えないんだよ」
「――!」
「王都郊外にある43地区では、ロワーヌ王国で唯一亜人族の存在が許可されているからね。黙認や諦めではなく、許可だ。さて、この意味が分かるかな?セシル・ハルガダナ君」
王国軍が、亜人族を――――?
「そんなことありえるんですか?」
「いやあ、まあ。疑う気持ちはわかるよ?」
しかしそれが本当だとすれば、俺の考えはすでに実践されていることになる。亜人族と人間族が対立していては、意味がない。戦うのではなく、共生の道を模索するべきだ。その考えを共有できるだけで、安心感が浮かんでくる。
「だとしたら、俺は、協力したい!」
「はは、威勢がいいね。嫌いじゃないぜ」
(目に光が戻った。期待通り、面白いやつだ)
「第43部隊の仕事は多岐にわたる。第43地区の治安維持、通常の王国兵としての職務に加えて、各種雑務も多い。誰にでも務まる役じゃないけからね。私はほかでもない、きみが欲しい」
「俺があのとき亜人族を守ったからか?」
「うん、と。それもあるんだけど・・・・きみ、頭おかしいから」
「・・・・は、はあ⁉」
ちょっと下手に出れば、こうだ。やはりいたずらか⁉
「いや、ごめんごめん。まじめな話なんだよ?でもさ・・・兵士候補で、王国軍に歯向かうまではギリギリわかるんだけど・・・・ッ、わざわざ死ぬために戻ってくるとか・・・・うはははッ、いやごめッ・・・・でもまじ、頭おかしいでしょッ!!」
堪えきれなくなった女は、腹を抱えて笑い出した。
"「―――――絶対後悔するぞっ!!」"
"ベクラマ"という組織のあいつにも、同じようなことを言われた。黙っていると彼女は、目尻の涙を拭い、ふたたび俺に目を合わせる。
「まあ、そういうやつを求めてるってこと」
「俺は、世間から見れば、おかしいのかもしれないですね」
「でしょ?はー・・・・じゃっ、決まりね」
「なにが決まりなんです?」
「だから、きみは私の部下ってことで。最初の約束、守ってね」
「ちょ!でも、まだいろいろ聞きたいことがあります」
「ああ。そういうのは、あとにしてくれる?このままだとどうせ死ぬんだから、いいでしょ?」
「まだ死ぬとは思っていません」
「ははは、死ぬよ?死ぬ死ぬ、決まってんじゃん」
(―――ッ!)
見透かしたみたいに言ってくれる!
「ですが!部下って言っても、俺は絶賛拘束されています。あなたも結局、王国軍ではないんですよね?じゃあどうにもならないのでは?」
「どうだろうね~」
《ガ、、、ヂャン!!!!》
「なんで!!??」
う、嘘だろ??
テラーリオという女性が鍵に手をかざすと、鈍い音を立ててそれが壊れ落ちた。
「はーい、これで自由の身だねえ」
「まじかよ。一応体裁上は、犯罪者を野に放っていることになりますよ?」
「ああ、それは平気。きみがそういう人間じゃないことはわかるし。もし暴走しても大丈夫。私の方が、百倍くらいは強い」
(・・・・!)
時間がないのか、最後は駆け足に会話を進め俺を黙らせた。反論はない。圧倒的な実力差がわかるからだ。こいつ、何者なんだ?
「ごめんごめん。この後は、外せない用事を作っちゃったからね。急いでるんだ。勘違いはしてほしくないのは、きみはまだ自由じゃないってこと」
「・・・・⁇そこは、あなたがなんとかしてくれたから、いまこうなっているのでは?」
「そんな都合のいい話、あるわけないでしょうが」
呆れたように表情を作ってから、今度は笑顔で語りかける。
「まずは、それを取り戻しに行かないとね」
*第十一話に続く
「あー、あいつな。なんでも、逃げ切れないと思って自分から姿を現したって」
「知ってる!
その人、獣人・・・・それも小さな女の子に恋をした異常性欲者らしいわよ」
「まじか!気持ち悪りぃ、死罪だよ死罪。間違いない」
「人間の恥ね―――――――――」
・
・
「――――って、感じで。もうボロクソだよ、お前。どうだ?みんなに嫌われながら、ただ死ぬのを待つ感覚っていうのは?」
「そうだな・・・あえて言うなら悪くないよ。なにもしなくても三食毎日くるし、牢屋って言ってもなかなかきれいだ。なにより、温かいからさ」
「うぇぇ・・・・なんだよつまんない。もっと苦しめよ」
「それに俺は、まだ死ぬとは思ってないし」
「バーーーカ!!お前は死ぬ、殺されるんだよ!死罪確定、何回も言ってんだろ!?」
「はあ・・・・。っていうかあんた、俺の監視係ですよね?なにがなんでも当たり強くないですか??」
「当たり前だあ⁉僕はあの日地獄を見た、お前のせいだ!!」
「・・・・・?」
「これを見ろ!セシル・ハルガダナ!!お前にやられた左腕は、もう完全には治らない」
そう言って金髪の男【ジョージ・クルークス】は、俺を拘束する鉄格子に近づいた。
「ああ・・・・クルークスさん、あのときいたんですか」
「今更気づいたのかよ⁉もう一週間立つぞ⁉⁉」
気づいたっていうか。正直、まったく覚えてないとは口が裂けても言えなようだ。あのときは必死だったから、仕方がないと許しを請うか?
「いや。そうだな、あのときのことは一ミリも申し訳ないなんて思わない。あんたらのやったことに比べれば、軽いもんだろ」
「―――――殺す!!」
興奮してこちらを睨む彼だが、もちろんそんなこと出来やしないことはわかってる。
「まあ、仲良くしようぜ。話し相手がいないと退屈なんですよ」
「ふん!誰が」
「別に、どうせ死ぬ運命ならいいだろ?今日の夕飯はなんですか?毎食、食ったことないものばかりで楽しいんだよな」
「知るか!!」
会話のなかで落ち着き直し、席に戻ったクルークスは新聞を広げた。俺と話しても時間の無駄だと判断したのかもしれない。
(・・・?)
すると、俺の視界に人影が写った。地下牢の左端、地上とつながる部分である。セミロングの黒髪を揺らしながら階段を降りきると、女性は牢屋のセシル・ハルガダナに目を向けた。
「なあんだ、元気そうじゃないか」
大人びた風格で色気をまとう彼女は、淡々とそう呟くと少しだけ笑みをこぼした。
「!?あんた、何者だ??ここは関係者以外立ち入り禁止ですが!!!?」
「――――青年!!」
都合の悪いことを言いかけたクルークスに対して、彼女は<ずいっ>と顔を近づける。
「うわ!!な、なんだよ⁉」
柔らかな香水の香りと、つやのある唇が一気に近づくが・・・・・ここで惑わされてはいけない。彼は監視役として、いま一度心構えを作った。
「・・・・ふむ。その態度、おかしいな。きみは私を知らないのか?」
「え、ええ?」
侵入者の思いがけない発言に、困惑する。今日この時間に、セシル・ハルガダナとの接見予定などはないはずだが。
「この顔に見覚えは?」
「あ、ええと・・・・ですね」
(やめろ、そう言われると心配になる)
「私はヤーマ・テラーリオと言うが・・・・重ねて、本当に覚えはないか??」
クルークスの葛藤をよそに女性は、見間違いでなければどこか楽しそうに尋問を続けた。
(あーあ、これじゃ立場が逆だろう)
ま、俺はどっちでもいいか。どうせ、いたずらかなにかだろう。だいぶ嫌われてるようだしな。
「ほら、どうなんだね⁉」
「――――!!そう言えば、その名前聞いたことがあるような⁉」
「そうだ、それだよ!私はその――――ヤーマ・テラーリオ!では、きみは少し席を外しなさい。私は彼と話がある」
「は―――!了解しました!!」
どうやら決着がついたらしい。慌ただしく階段を駆け上がるクルークスを尻目に、女性は椅子を引きずって俺の前に現れた。
「よ、いしょっと・・・・。ははは、見た?あ、ほ。」
テラーリオと名乗った彼女は後方を指さして、勝ち誇ったような笑顔を見せる。
「・・・・何者です?あなた」
子どもっぽくからかうような仕草だが、女性にはやはり何処か大人びて落ち着いた雰囲気も感じる。
「くわえてこんな場所に、いったいなんの――――――」
「――――ちょっと、待った!」
「はい?」
「話す前に教えておこう。第43部隊の掟についてだ」
「はあ?第43部隊?いったい、なんの話ですか」
「ああ、だから待ちなって。女の話を聞けない男はモテないんだよ」
「・・・・」
「うん、なかなか聞き分けの良い」
頬杖を突きながら俺の顔を眺め、歯を見せ満面の笑顔を作る。
「じゃあ始めよう。まず一つ目、無断外泊は禁止とする。理由は、なにかあったとき面倒くさいから」
(なんの話だよ・・・)ガキの世話かなにかの話⁇いずれにせよ、いまの状況とはなんの関係もないはずだ。
「二つ目に、私の前でエガルットゥは食べないこと。理由は、臭いから」
「なんで!!エガルットゥうまいだろ!?」
「理由を話したでしょ?そして三つ目だ・・・私をおばさんと呼ばないこと。理由はうざいから」
(もう、意味がわからん)
途中、思わずこちらもツッコミを入れてしまった。しかし、またとんでもない狂人が来てしまった。これは、さっきクルークスさんの味方をしておいたほうが良かったらしい。こちらの冷ややかな視線も気にせず、女性はなぜか自慢げに話を進める。
「後はなにしてもいいんだよ。お酒を飲もうが、風呂場で歌おうが、第43部隊では全部自由。そう。私は亜人族を助けたって、なにも言わない」
「あー、はいはい。たぶんもうすぐ警備が戻るんで、それまでおとなしくしておいてくださいよ?」
(・・・・・??)
「ん・・・・‼⁇」
半ば聞き流していたが、彼女はいま、重要なことを言ったような気がする。目を見開き、俺は顔を上げてふたたび彼女の方を見た。
「あ、もちろんだけど、法律とか社会的責任のことは知らないよ?その場合、なにかあっても正当な理由がなかったら私は助けないからね~」
この人・・・・ふざけているようで、真剣な感じもある。わざわざ俺に話に来たのは、ガラムバトでの出来事についてだろうか?
「いったい、なにが言いたいんですか?そもそもまず、あなたは誰なのか教えてくださいよ」
「私は、【ヤーマ・テラーリオ】。元王国軍太極位で、いまは43部隊を指揮してる。非公式だけどね。まあ―――つまり、そう。きみをスカウトしに来たのさ」
相変わらず無茶苦茶だが、状況を知ったような口ぶり。これは真剣に相手をした方がいい。そう本能が告げてくる。
「スカウト・・・・その、43部隊にですか?」
「その通り、正式名称:王国軍直下第43特殊部隊は、人間族と亜人族の調和を模索するため部隊だ」
(調和⁇)
「さっきからあなたは、仮にも王国軍関係者が亜人を助けるだなんだって、戯言にもほどがあるんじゃないですか?」
そう、俺はあの町で惨劇を見たんだ。簡単に、もう人なんて信じられない。
結構強めに詰めたつもりが、テラーリオという女性は毅然と続ける。
「それがそうとも言えないんだよ」
「――!」
「王都郊外にある43地区では、ロワーヌ王国で唯一亜人族の存在が許可されているからね。黙認や諦めではなく、許可だ。さて、この意味が分かるかな?セシル・ハルガダナ君」
王国軍が、亜人族を――――?
「そんなことありえるんですか?」
「いやあ、まあ。疑う気持ちはわかるよ?」
しかしそれが本当だとすれば、俺の考えはすでに実践されていることになる。亜人族と人間族が対立していては、意味がない。戦うのではなく、共生の道を模索するべきだ。その考えを共有できるだけで、安心感が浮かんでくる。
「だとしたら、俺は、協力したい!」
「はは、威勢がいいね。嫌いじゃないぜ」
(目に光が戻った。期待通り、面白いやつだ)
「第43部隊の仕事は多岐にわたる。第43地区の治安維持、通常の王国兵としての職務に加えて、各種雑務も多い。誰にでも務まる役じゃないけからね。私はほかでもない、きみが欲しい」
「俺があのとき亜人族を守ったからか?」
「うん、と。それもあるんだけど・・・・きみ、頭おかしいから」
「・・・・は、はあ⁉」
ちょっと下手に出れば、こうだ。やはりいたずらか⁉
「いや、ごめんごめん。まじめな話なんだよ?でもさ・・・兵士候補で、王国軍に歯向かうまではギリギリわかるんだけど・・・・ッ、わざわざ死ぬために戻ってくるとか・・・・うはははッ、いやごめッ・・・・でもまじ、頭おかしいでしょッ!!」
堪えきれなくなった女は、腹を抱えて笑い出した。
"「―――――絶対後悔するぞっ!!」"
"ベクラマ"という組織のあいつにも、同じようなことを言われた。黙っていると彼女は、目尻の涙を拭い、ふたたび俺に目を合わせる。
「まあ、そういうやつを求めてるってこと」
「俺は、世間から見れば、おかしいのかもしれないですね」
「でしょ?はー・・・・じゃっ、決まりね」
「なにが決まりなんです?」
「だから、きみは私の部下ってことで。最初の約束、守ってね」
「ちょ!でも、まだいろいろ聞きたいことがあります」
「ああ。そういうのは、あとにしてくれる?このままだとどうせ死ぬんだから、いいでしょ?」
「まだ死ぬとは思っていません」
「ははは、死ぬよ?死ぬ死ぬ、決まってんじゃん」
(―――ッ!)
見透かしたみたいに言ってくれる!
「ですが!部下って言っても、俺は絶賛拘束されています。あなたも結局、王国軍ではないんですよね?じゃあどうにもならないのでは?」
「どうだろうね~」
《ガ、、、ヂャン!!!!》
「なんで!!??」
う、嘘だろ??
テラーリオという女性が鍵に手をかざすと、鈍い音を立ててそれが壊れ落ちた。
「はーい、これで自由の身だねえ」
「まじかよ。一応体裁上は、犯罪者を野に放っていることになりますよ?」
「ああ、それは平気。きみがそういう人間じゃないことはわかるし。もし暴走しても大丈夫。私の方が、百倍くらいは強い」
(・・・・!)
時間がないのか、最後は駆け足に会話を進め俺を黙らせた。反論はない。圧倒的な実力差がわかるからだ。こいつ、何者なんだ?
「ごめんごめん。この後は、外せない用事を作っちゃったからね。急いでるんだ。勘違いはしてほしくないのは、きみはまだ自由じゃないってこと」
「・・・・⁇そこは、あなたがなんとかしてくれたから、いまこうなっているのでは?」
「そんな都合のいい話、あるわけないでしょうが」
呆れたように表情を作ってから、今度は笑顔で語りかける。
「まずは、それを取り戻しに行かないとね」
*第十一話に続く
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