魔王軍VS.王国軍・・・・??第三勢力出現!異端だと切り捨てられた田舎者、希少魔法で世界を変える

たま「ねぎ

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第1章:第43特別地区

+++第十五話:ヘルル・ガルーシャ

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 【十二年前:王国北西部の町グアランセー】
 
 ”
 (重い・・・・)
 大量の荷物を背負い、さらには手にも袋を下げる。これを持って明日から・・・・また三日間の帰路かあ。若手だからと駆り出されて、さすがに気が滅入りそうだ。
  
 (といっても・・・・)
 「隣を見ちゃうと、どうもねえ」
 視線を移すと、我らがオリーゼ村の村長が倍ほどの荷物を抱えて横を歩く。
 
 「――――なんじゃい、また泣き言か?それとも、もうすこし持つになったか?」
 「いやいや、どっちかって言うと前者前者・・・・。まだまだ、敵わねえな~って」
 男は、身振り手振りで懸命に火の粉を払う。
 
 「そうか、じゃあ早く超えてもらえるように、鍛錬を増やすかのお」
 (――――‼⁉)
 おいおい嘘だろ⁉
 
 「あ、はは。たんま、たんま・・・・。ええっと・・・・あ!そう言えば、セシルは⁇あいつも最近よく付いてくるよな?」
 「ふん。ほっとけ・・・・どうせあのチビじゃ大した労力にならん」
 
 (あれ――――効果なしか⁇)
 狭い世間で、親を早くに亡くしたセシル・ハルガダナには、村の人が一緒になって気にかけている。村長はその代表格で、彼を実の子のように可愛がっているのだ。
 
 (あいつのことを言えば、反応があると思ったけど・・・・)
 「村の将来のために、さ。あいつ、結構賢いし・・・・運動もできるじゃん?」
 
 (すまんセシル。ここは世のため俺のためッ)
 「いい‼あいつは好きにさせておく。ここで友達ができたらしくてな、すごくうれしそうじゃった」
 「・・・・!あ、そ、そう」
 そう言うことね。まあたしかに、村にはあいつと同年代・・・・いないからなあ。最近は遊ぼうってねだりに来ることも、すくなくなったけど――――そういうこともあるのか。
 
 「いいことじゃん」
 「ああ、だからそう言っとるじゃろ?」
 
 (・・・・はは)
 そう言いつつ・・・・爺さんも、なんかさみしそうだねぇ。ま、子離れは意外と早いってこった。
 ・・・・・・ん⁇
 ちょっと待てよ・・・・・?
 (て、ことは・・・・)
 
 「――――ここにいる間は、お前に手伝ってもらうしかないの。少し休憩したら、もう一往復行こうか?」
 「ひいいいいい‼」
 
 
 ・
 ・
 ・
 
 
 「・・・・⁇」
 「どうしたの、セシル?」
 「いや、なにか聞こえたような気がしてさ」
 
 友人の問いかけに、彼はそう素直に答えた。集会所の一角にある、稲床のフリースペース。そこに集まっていたのは、この辺りに多い獣人族をはじめ、魔人族や人間族の子どもたち。彼らグアランセーの住人達は一か月に一回、セシルがこうして下山してくるのを心待ちにしていた。
 
 「結局、今日も勝てなかったぜ~」
 「バーガーも強くなってたけど、俺も家で本読んだりしてるからな」
 子どもたちの話題の中心は、チェス。特に冬の時期は、こうして屋内で遊ぶことが多いのである。
 
 「でも、今日に関しては王者の座が危ないかもよ?」
 「――――はあ?」
 セシルは余裕の表情を崩さない。それでも彼の言葉に、内心少し驚いていた。
 
 「なにかあったんだ?」
 神妙な面持ちで、友人にそう問う。
 
 「テデスキだよ。この前お前に負けた後、すごく強くなったんだ」
 「へ、へえ・・・・」
 
 「その通りッ!いい?セシル、今日こそ決着をつけましょ?」
 
 待っていましたという表情で、彼女はもう一方の群衆の中から現れた。バーガーの言う通り、あっちで勝ち上がったのは【ジャンヌ・テデスキ】。彼女は自身気に腰に手を当て、深緑の長髪をさらさらとなびかせている。
 
 (いや、決着はついてただろ?)
 俺はそう思いながらも、目の前の少女に視線を合わせた。強くなった、ね・・・・たしかに、テデスキのセンスは俺も感じていた。自頭はおそらく相当良い。たしかに、強敵になりうるかもしれない。
 
 「まあ、そのくらいがちょうどいいよ。また号泣されても困るし」
 「ッ⁉あ、あのときは急におなかが痛くなっただけだから!別に悔しくて泣いたわけじゃないんだからね!」
 
 怒ったようにそう言った少女は、きれいな肌をピンクに染めた。
 「――――私の方が年上なんだから、そこら辺をわからせてあげる。先手をどうぞ、セシルちゃん?」
 「そっちこそ、今日は言い訳すんなよ」
 あからさまな態度に、セシルもつい乗っかっていく。すると、自然と周囲は盛り上がりを見せた。
 
 「おお!いいぞ、ジャンヌ!」
 「せ、宣戦布告だ・・・・!」
 「やべえよ、セシル」
 
 盤上に注目が集まる。
 「おもしれえ」
 
 ”
 
 
 *
 
 
 ――――あれ⁇任務からの帰り道。王都南西の駅で列車を下車し、私は第43地区までの道を歩いている。
 
 「なんでいま、あんな昔のこと思い出すんだろ?」
 
 (疲れているから?)
 そうかもしれない。最近あまり休めていないばかりか、今回は一か月長期遠征。

 「はあ、堪えたなあ」
 だからこそなにも考えず、一番幸せだったに違いない頃を思い出していたのかも。
 
 「あの子・・・・」
 セシル・ハルガダナ君やほかのみんなは、元気だろうか?結局一度も勝てなかったけど、すごく仲良くなれていた気がする。親の都合で、私が向こうにいたのは一年だけ。急な話でお別れも言えなかったのは、全部あのろくでなしたちのせいだ。
 
 無意識に表情を硬め、こぶしを握る。
 
 ”
 「―――――――ま、ママ?パパ⁇」
 
 「馬鹿な・・・・!あんな汚らわしいゴミ共と遊んでいたなんて・・・・‼」
 「だから私は反対だったのよ!仕事とはいえ、こんな場所すぐ離れましょう⁉いい、ジャンヌ?恥ずかしいからそのことは、周りに言っちゃ駄目よ・・・・絶対、約束だからね‼」
 
 「――――え?」
 (どうして――――?)
 私はいま・・・・そんな話、してたかな?私にとって、大切な友達の話だよ??
 
 ”
 
 (・・・・・)
 それからしばらくして、私はすべての縁を断ち切った。私は【ヘルル・ガノーシャ】で、ジャンヌ・テデスキはもう存在しない。
 でも―――――。
 
 「あ゛~~~!思い出しただけで、なんかむかついてきたわ!」
 一人でそう呟くと、彼女は茜莊のドアをちょっとだけ乱暴に開けた。
 
 「ただいまあ‼・・・・・・・って、あれ?」
 
 入ってすぐ違和感に気が付く。昼間の時間帯だというのに、二人が茜莊にいるのである。めずらしく、というか普通じゃこんなことあり得ない。
 「お帰り、ヘルル。さあさあ、こちらへどうぞ?」
 「まったく、なんの催し物かしら⁇」
 
 ノセアダに連れられるがまま、彼女は応接室の椅子に腰かけた。目の前の机には、チェスの盤面。もちろん、準備万端・・・・綺麗にセットされている。
 
 「これ、ね・・・・」
 まったくなんの偶然?みんなまでチェスなんて。
 「実は昨日、夕飯のときにチェスの話になってねえ?ヘルル強いから、疲れているところ悪いけど一回だけ・・・・勝負したいなって」
 
 (へえ、意外。ってか、二人でチェスの会話って・・・・!)
 やばい、考えられな過ぎて・・・・でも一周回ってあるかなあ。
 
 「まあ、一回だけならいいけど。でも前にフェルスとやったとき、正直手ごたえなかったのよね。もっとこう、テラーリオとかいるならわかるんだけど・・・・」
 「もちろん、今日の私たちには秘密兵器があったりするんだよねえ。まあまあ、とりあえずやってみようよ」
 「秘密・・・・兵器⁇」
 「そう、驚くんじゃないかなあ~?」
 
 (・・・・普通に気になる)
 さきほどまでの疲れは飛んでいった・・・・というわけにはいかないが。ここまで来たら、それを聞かずにいる方が気持ち悪い。
 
 「・・・・・いいわよ、ってことは相手はロッカかしら?」
 「いやいやご一驚。私はルールもあいまいなんだよねぇ」
 ノセアダがそう言うと、開いていた彼女の前の席にセイヤッタ・ミーナルスが腰かけた。
 
 「よおし!ばちこおい‼」
 (――――‼‼⁇)
 「ちょ、っとまったぁ‼⁉」
 
 「——――え?どうしたの?」
 「どうしたの?じゃないでしょうが!真剣にやらないなら部屋に行くわよ?疲れがないわけじゃないんだからね⁉」
 
 (その通りだよねぇ・・・・)
 正直、ノセアダも彼女たちを見てそう考える。しかしガルーシャの言葉に、セイヤッタは不満げに反論した。
 
 「失礼な、私は本気だよ!」
 「いや、だから・・・・それはわかってるけど。本気でやるやらないの話じゃなくて・・・・」
 
 「・・・・そっか」
 (・・・・⁇)
 「――——セイヤッタ?」
 
 「やっぱり、ヘルル・・・・私とはやりたくないってことなんだ?」
 「うッ!」
 彼女の悲しそうな表情に、ガノーシャの心は掴まれてしまう。まあ、たしかに普段の素行で決めつけるのは良くないか。セイヤッタとはやったことないし、弱かったらかわいそうだけど、瞬殺K.O.でいいわけだ。
 
 「ああ、わかった・・・・わかったわよ!じゃあ一回だけやりましょう?」
 「やったー!ちなみに私が好きなのはねー、これーっ!」
 そう言って彼女は、ナイトの駒を指さした。
 
 「はいはい、白(先手)でいいわよ」
 (行動からしても、初心者にしか見えないけど)
 ってことは、とりあえず・・・・最初の数では小手調べ。動きでだいたいわかるもん、格好つけて変な手を打ってきたら・・・・容赦なくそこを突く!
 
 (・・・・)
 相変わらず、セイヤッタはなにも考えていないような・・・・のほほんとした感じ。しかし――――。
 
 「―――ッ‼」
 すこしして、彼女はポーンを前に出した。
 (d4!”クイーン・ポーン”の盤面にしてきた!!)
 
 ”クイーン・ポーン”―――チェスで初手として最も有名な手のひとつ。もちろんそれは、プロにも使われるような一手である。
 
 ふうん、知ってるんだ?学校でやったとか⁇
 ううん、まだわからない。1/8で偶然動かしただけ、という可能性もある。王道だからこそ、返し手は多く存在するし・・・・どうなるか見てみようか。
 ガノーシャはそう考え、自分もポーンを前に進めた。
 
 ―――――――――――へえ、どう返してくるかとおもったら。
 
 盤面が進むにつれ、次第にガノーシャは引き付けられていく。こんなに面白いチェスは久しぶりだ、そう思っているのだろう。
 
 ――――――――――そっか、なかなかやるじゃない⁇
 ―――――――――ッ、くやしいけど、それもかなりいい手。
 
 ・
 ・
 
 って――――――――――――うそ、そこでそう打ってくるの――――――――⁉
 
 だめだめ、なに飲まれてるんだ!ガノーシャはいったん思考をリセットして、盤面だけを考えるが、うまくいかない。
 
 (まさかね――――)
 この子、かなりのやり手だわ!こんな才能を隠していたなんて。可愛くて、私よりもちょっと胸が大きいだけの・・・・”身体能力お化け”じゃなかったわけ。
 
 (ふうん、そう) 
 でも、私も負けないわ。第43番地区最強(自称)の名前・・・・簡単には渡さない!
 「いくわよ、セイヤッタ‼」
 
 ―――――ここで、ヘルル・ガノーシャは起死回生の一手を打つ。ルークを大胆に進め、一気に敵陣を突いたのだ。
 
 (本当は、私の手じゃないけど・・・)
 とっさに思い出したのは昔、セシル・ハルガダナが使っていた手である。ひとつだけ・・・・あそこに置かれると三手先で最悪詰みの可能性もある。しかし逆に言うと、それに気が付かれなければチャンスに代わる!
 
 って―――――――。
 (・・・・⁉)
 「―――うそでしょ?」
 しかし、セイヤッタはその考えをも読み切ったかのように・・・・最適手を選んだ。
 (初見で対応してくるの⁇それともすでに、誰かに教わっていた⁇)
 
 なんにせよ、このままじゃ―――――。
 (――――負け)
 
 「はあ・・・ここまでにしよう」
 ガノーシャの頭にその二文字が浮かんだとき、応接室の扉が鈍い音を立て開いた。現れた人物・・・・彼の外見容姿はもちろん変わっていた。背丈はすごく伸びていたし、顔立ちや髪型も大人っぽくなっている。だけどその振る舞いや雰囲気は、昔とあまり変わらない。
 そう。彼はこうして、芯のある表情で周りを引き付けるんだ。
  
 「え~、セシル君・・・・なんで止めたの~?私にはよくわかってなかったけど、ヘルルの焦る顔可愛かったのにな~」
 「そーだよお、勝ちたかったのにい!いきなりお終いだなんてさ・・・・・」
 
 そう言って、セイヤッタは通信の魔道具を腕から外した。もともとは王国軍内で不足が叫ばれている、希少価値の高い道具。
 こんなことに使うなんて、43部隊くらいだろう。
 
 「十分だろ。これ以上は、仲間内の冗談じゃ済まなくなる」
 「そっかあ、そうだよね・・・・ごめんヘルル・・・・」
 俺に続いて、セイヤッタは申し訳なさそうにそう言った。
 
 「はいっ!ということで、43部隊に新しく入った【セシル・ハルガダナ】君です!私からもごめんね?昨日話してたら、ちょっと悪い流れになっちゃって・・・・・・・・あれ?ヘルル?」
 
 (・・・・)
 「・・・え?う、うんごめん。ちょっと聞いてなかった」
 
 ノセアダの説明にも、ガノーシャは上の空だった。その理由はひとつだけ。
 (あっちゃ~、なに見とれてるんだ私!)
 久々の再開がまさか、こんな形になるなんて。どうしよう、こっちから言った方がいいかな?こいつ、変に格好つけるところあるし。きっと言い出せない――――って、んん⁉
 
 近づいてきたんですけど⁉
 もしかして、先手必勝・・・・的な?じゃあ待って、逆に私の心の準備が!
 
 (――――――――――ッ!)
 「―――――――はじめまして、セシル・ハルガダナです。ここに来てまだ一週間ですが、よろしくお願いします」
 「あ、う、うん!よろしくね、セシル・・・・く、、、、あれ?」

 (はじめ、まして――――――――⁇) 
 ちょっと待って、こいつもしかして―――――――。
 ――――――私のこと忘れてないか⁉⁇
 
 「・・・・・」
 「どうしたの、ヘルル?さっきからちょっと変だよ?」
 「ほらみろ、長旅の後にふざけるからだろ・・・・あれ、どうかしました?」
 
 セシルは一歩近づいて、自分の顔をまじまじと顔を見つめるガノーシャにそう尋ねる。
 「う、ううん?ちゃんと覚えとかないとな~、なんちって・・・」
 (なんちって、じゃねぇよぉ!)
 
 全然気が付かないじゃん!私は一瞬で思い出したのに⁉
 なんでだよ!髪型は少し短くなったけど、濃い抹茶色は変わってないし!
 あとほら、この髪飾り。地味だけど可愛いなって、あのときは褒めてくれたじゃない!子どもぽくなったけど、まだつけてるんだぞおお!
 
 「・・・・!」
 (あっ、気づいた⁇)
 「ああ、それ・・・・むかし知り合いも付けていた気がします」
 「へ、へえ・・・・」
 
 (安物だったのか、とか思ってそう!むかつくう‼)
 とはいえ・・・・そう、覚えてないの。ふうん?
 
 ・・・・なんか、いろいろありすぎてもう。
 頭がいっぱいなんですけど。
 「はあ、いいわ。今日はもう部屋に戻るから」
 
 「あ、うん。付き合わせてごめんね?」
 「それはいいよ。私も、久しぶりに楽しかったから」
 
 そういって立ち上がると、彼女は小さくあくびをしてからこちらを向いた。
 
 「でも、この生意気な後輩に一言だけいいかしら?」
 「――――え?」
 (いまなんて?)
 
 生意気・・・・聞き間違いか?そうに違いない、俺は今日至って礼儀深かったはずだ。
 
 「・・・・こちらこそ、はじめましてえ!よ・ろ・し・くお願いしますう‼」
 「・・・・!」
 彼女はすこしだけ、なぜか威圧するように挨拶をした。
 
 
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