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本編第一章:高二になりました、進級して早々に波乱の展開が続いております。
♤第五話:ぼっちの俺がインスタなんて始めてもなんの意味もないだろう?♤
しおりを挟む「・・・なんだと?」
教室で、静かに俺はそう呟いた。変人と思われるのも癪なので、とりあえずその理由を話そう。
中間テストの後、モデルの仕事に戻った天海や、部活の大会が始まった咲菜をしり目に、俺はテスト休みを帰宅部らしく優雅に過ごした。
そして翌週の学活の時間、さっそく個票の返還が行われたわけだ。
総合の順位は先だって廊下に張り出されていたが、そちらにはそこまで興味はない。
今回の25位が示すように、俺の順位は大体50位~20位くらいで推移しており、大きな変動はないとわかっているからである。周りと比べ部活動で忙しいというわけでもなく、試験に向けて最低限の勉強はしたつもりだが、別に勉強に力を入れているわけではないため、一桁順位に入れるとは最初からから思っていない。
これに関しては、適正順位という感じだろう。
しかし、俺には入学以来一度も1位を譲ったことのない科目が存在する。それが、数学である。今回の試験で、俺は数学Ⅱ、数学Bでともに2位と僅差で王座陥落となった。
しかもその相手というのが・・・・
「まったく、まさに飼い犬に手を噛まれたって感じだよ・・・」
「・・・部室に来るや否やひどいな、きみは。そこは、よく頑張ったなって言ってほしかったところだよ」
「・・・別に?独り言だよ。まさか天海がいるとは思ってなかったからな・・・部室に忘れ物か?」
「ああ、そのことだけど、私もボランティア部に入部したんだ」
「―――はあ⁉」
「岩切先生が、部活には入っておいた方がいいって言うから」
「だからってなんでこの部に・・・」
「仕事との兼ね合いもあるし、なるべく迷惑のかからないようにしようと思って」
それは、俺になら迷惑をかけてもいいって意味でも変換できてしまうんだが、まさか違うよな?
(しかしまあ、どこかしらに入ることを考えれば、天海の状況を考えれば、ゆるゆるのこの部はベストマッチングだろうな・・・)
「一応、入部には部長の許可も必要なんだがなあ」
「うん、聞かれたからもらったって言っといた。まさかクラスのチャラ男くんはオーケーで、私は入れないなんてことないよね?」
「う、まだそのこと気にしてたのかよ」
「一生忘れないだろうね」
「・・・わかった、許可。許可するよ。特にやることなんてないだろうが、自由にやってくれ」
俺は部活や部室について軽く説明すると、戸棚から湯呑を二つ取り出しお茶入れた。
「・・・本当になんでもあるんだ」
「まあな。もともと物置だったわけだし」
「―――なんか秘密基地みたいでいいね」
秘密基地・・・子どもっぽい表現だが、なんだか嫌な気はしない。
(さて・・・)
俺はリュックの中からプリントを一枚取り出すと、適当に作業を始めた。
「なにしてるの?」
「古典の課題だよ。今日の六限で出されたやつ」
「ふうん、でもそれってたしか、提出一週間後じゃなかった?」
「まあ、やることもないしな・・・・」
(個室で咲菜以外の女子と二人きりとか、なに話したらいいかわからんし、絶対気まずくなるだろ)
その点、何か作業してれば、会話がなくても不自然じゃない。
「それもそうだね」
天海はそう言って目線を自分のスマホに移すと、しばらくして何か思い出したように「そういえば」と口にした。
「ミスター・スラントはインスタやってないの?」
「はあ?インスタ⁇」
俺がインスタなんてやってるわけがない。ラインだって高校に入ってしぶしぶ始めたっていうのに。
「なんだ、やってないんだ・・・じゃあ、今作っちゃおうよ」
「いや、いいよ・・・どうせ作ってもやらんだろうし」
「でも、クラスのみんなもやってるし・・・ゲームの情報とかも手に入るんだけどな」
「・・・それは、ちょっと魅力的ではあるな」
「よし、決まりだね。私が作ってあげるからスマホ貸して」
「あ、ああ」
なんだか激流に押し流されるかのように、話が進んでいく。
俺は、言われるがままに差し出された右手に、自分のスマホを置いた。天海はすらすらと流れるように画面を素早くタップする。
さすが有名なインスタグラマーといったところだろうか。
「・・・・・・よし、できた」
(・・・はや)
出来上がったアカウントの名前はミスター・スラント、アイコンは部室の写真に設定されている。
(投稿一件、〈新生ボランティア部始動〉か・・・まあこういうのも悪くないかもな)
「で?このフォロワー二人っていうのは、天海とあと誰なんだ?」
「それはどっちも私だよ」
「はあ?なんじゃそりゃ・・・・」
「いまどき、本アカと別アカくらい持ってるのが普通なんだよ。特に私の場合、ひとつは仕事に使ってるから」
そんなもんなのか・・・めんどくさい世の中になったな・・・。
「咲菜にもラインしといたから、あとでフォロー来ると思うよ?」
「あー、気が向いたらチェックしとくよ」
俺はそう適当に流すと、スマホをリュックのポケットにしまった。まあ、せっかく作ったし、たまに部活関連の投稿をするのもいいかもしれないな・・・忘れてなければ、の話だが。
その後、俺たちは部室のテレビにスイッチを繋げることに成功し、大画面でのテトリス対決が実現した。
もし、今日のハイライトを一つ投稿するとすれば、天海の加入というより、テトリスということになってしまうかもしれないな。
*翌日*
「ねえねえ、みやちゃん!昨日インスタでフォローしたミスター・スラント・・・?だっけ?あれって誰なの⁇」
別に会話を盗み聞くつもりはなかったが、席が近いということと、意図せず自分の話題が挙げられていることで、つい耳に入ってくる。
「――――もしかして・・・彼氏だったりして⁉」
別の女子がそういうと、クラスに「キャー」と歓声が上がる。
「そんなんじゃないよ・・・ただの友達」
「えー?でもみやちゃん、あっちのアカウントでは事務所とかモデルしかフォローしてなかったのに」
(―――そうだったのかよ・・・そりゃこうなるだろ)
まあ、友達が少ない俺に気を使ってくれたんだろうけどな。
その後も追及が続くかと思われたが、先生が入ってくると全員席について、なんとか騒動は収まったようだ。一限は総合か・・・えー、たしか今日は・・・・
「来週の校外学習について説明する」
チャイムが鳴り終わると、先生はそう言ってプリントを配り始めた。
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