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本編第一章:高二になりました、進級して早々に波乱の展開が続いております。
♤第四話:記憶のかなたにあったボランティア部がまさか再始動するなんて♤
しおりを挟む「お前に天海の世話係を任せる」
「―――は?」
帰り際、俺が教室を出る寸前での、先生の突拍子のない命令に思わず間抜けな声を出してしまう。
先生の言葉に、部活勢が去り、物静かな雰囲気著なっていた教室さえも一変する。
「なに、簡単さ。これまで授業に出れていなかった天海に、勉強を教えてやってくれればいい」
(おいおい勝手に話を進めないでくれよ)
担当科目が理系であったとしても、教師である以上最低限日本語が使えてほしいものだ。日にちにして約40日分の勉強をたった一週間で教えろと?
あまつさえそれが容易なものであるはずがない。
「ちょっと待ってくれよ先生、なんで・・・・あー、なんでこいつなんすか」
俺の前に、近くに座っていた男子が異議を唱える。俺の名前は完全に忘れられているようだが、そんなことはどうでもいい。ナイス質問だチャラ男君。
「榮倉がボランティア部の部員だからだ。」
先生はあくまで単純なライン作業をこなすように、淡々と話した。そういえば、そんなのもあったけな・・・。
ボランティア部は俺が一年のころ入った、というよりも復活させた部活だ。
時の卒業性が部を去ると同時に、部員がゼロになり一時廃部になっていたが、今は正式な部として活動中ということになっている。
と言っても部員は俺だけで、その俺も、たまに部室を使用するだけという状態なわけで・・・。
(正直完全に忘れてた。)
「・・・そう言えば、移動された彼山先生の後任って・・」
「ああ、私だ」
「まじですか」
「今後ボランティア部は積極的に活動していく」
(ま・じ・で・す・か)
いきなりどういう風邪の吹き回しなのかわからないが、これがその一歩というわけか。
「頼むっ!榮倉、その役変わってくれ!」
想定通りの言葉が、数人の男子から飛んでくる。
「って、言ってますが」
「お前たちはボランティア部じゃないだろう?」
「じゃあ、入りますよ!もちろん兼部はオッケーなんだろ、榮倉」
「あ、ああ多分な」
俺は一応先生の顔色も窺っておくが、特に否定をするそぶりはない。おそらくは大丈夫なんだろう。
むしろ、先生がボランティア部をアクティベートしたいのなら、基本的に部員が増えるのはいいことだろうしな。
・・・まあ、こいつら陽キャ軍団が部活に入ってきたら俺は速攻でやめるけど。
「それにしても、よくこんなめんどくさいこと引き受けるな」
「・・・お前こそ、どうかしてるぜ。最近はバラエティー番組にも出演してるし、インスタのフォロワーも10万人を超えてる人気モデルだぞ?彼女の神スタイルとご尊顔を特等席から眺めて、あわよくば・・・・って考えるのが健全な男子高生ってもんだろうが」
(そんなもんか?)
もちろん俺にも、そういう邪な男子高生の気持ちがないわけではないんだろうが、それでも、時間的拘束を考えためんどくささが数倍上回る。
「―――ちなみに部内恋愛は禁止とする」
「・・・わりい榮倉、この話はなかったことにしてくれ」
先生のまさに鶴の一声で発言を翻した彼らは、荷物をもって足早に部活へと向かっていった。
「・・・そういうわけだ、明日から頼むぞ榮倉」
「はいはい」
「はい、は一度だ」
「・・・はい」
(やればいいんだろ、やれば)
♢翌日の放課後♢
「―――ってわけだ、今日から一週間よろしくな」
「・・・ふうん、つまりきみは私を売ろうとしたんだ?」
「う、まあ見方によってはそうなるか」
「冗談だよ。それにしても君には迷惑をかけっぱなしな気がするね、勉強は苦手ではないから、嫌だったら無理しなくてもいいよ」
「いや、引き受けた以上仕事はこなすのが俺の主義だ。部活動なんだし、その辺は気にしないでくれ」
俺がそう答えると、天海は意外そうに目を丸くしたが、すぐにいつものクールな表情に戻った。
「・・・それで、私たちはどこに向かっているのかな」
「ボランティア部の部室だ。あそこなら集中して勉強できる」
俺は天海を連れ、本校舎二階から続く連絡通路を渡り旧校舎の三階へと歩を進めた。
突き当りにある部屋の前で立ち止まると、天海は不思議そうに辺りを眺めた。
「教職員、ひかえしつ・・?」
扉の上部に備え付けられたネームプレートの、かすれた文字を読み上げる。俺はポケットに手を入れると、職員室から持ってきた鍵で部屋の戸を開錠した。
「わあ」
部屋に入ると、天海は持ち前の薄いリアクションながら、感嘆の声を上げた。十二畳ほどの広さの室内に、中央には長机、その正面にはホワイトボードが敷設されている。
これだけ見れば立派な部室だろう。
「ははは、どうだ我がボランティア部室は!」
「・・・ソファーに、ベッドもあるんだ」
「もともと宿直の先生のための部屋だったらしいからな。物置状態だったこの部屋を整理するのは骨が折れた」
「確かに、ひとりじゃ大変だっただろうね」
押し入れに詰め込まれたガラクタの数々を確認し、天海はそう言った。
「おい、なんで一人だと決めつけてんだ」
「違うの?」
「いや、その通りなんだが・・・」
「やっぱりね」と笑みを浮かべながら天海は荷物を机に置き、ブレザーを椅子に引っ掛けた。
その彼女の正面に腰かけた俺は、リュックから取り出した教科書と問題集を広げる。
「―――え、もう始めるんだ」
「当たり前だろ、一週間しかないんだ。それとも勉強できない理由でもあるのか?」
「そうだね・・・私としては、もう少しこの部屋の探索をしたいなって」
「今日の分終わったらなー」
(そしたらその後一人で勝手に探索してくれ)
俺が問題集を開いて差し出すと、彼女はやっとペンを動かした。
少しずつ西に傾く夕日が、部室をオレンジに照らす。高校生だからと言って、「青春、青春」とはやし立てる輩のことを好ましいとは思わないが、確かに悪いものではないらしい。
もっとも、この状況を青春と言っていいのかというと、それは微妙なのかもしれないが。
*
「なるほど、忙しいからって勉強をおろそかにしてたわけじゃないみたいだな」
「まあ、合間合間でちょくちょくやってたからね」
自頭がいいというのもあるんだろう。解き方を知らない問題も、俺が教えるとすぐに理解する。
「これなら一週間もかからないな、時間あるし明日の分もやっとくか」
「・・・きみは悪魔かなにかなの?これ以上したら頭が爆発するよ」
机に頭を横たえた状態で、俺の決定に異議を唱える。
(これ以上やっても効率悪いか)
「んじゃ、この辺にしときますか」
俺は散乱した古典の教科書を集める。
よく考えればもう18時を回っているわけだし、試験前は21時まで学校が開いてるとはいえ、仮にもモデルを遅くに連れまわすわけにもいかないだろう。
「天海は電車か?」
「うん、八陵線。ミスター・スラントは?」
「俺は自転車で帰る。」
「そう。じゃあ駐輪場まで一緒に行くよ」
消し忘れや戸締りを確認し、俺はいつもより少し歩調を遅くして歩き始めた。彼女に合わせて電車で帰ろうとも考えたが、この時間であれば他の生徒もまだいるだろうし、危険ということはないはずだ。
「やっほ、み~や!と、ついでに右代も」
昇降口で靴を履き替えているところ、タイミングを見計らったかのように咲菜と出会う。
「こんばんは、咲菜。部活終わり?」
「そうなんだよ~~試合が近いからって、テスト前なのに明日も明後日も部活なんだよ~~助けてみや~!」
咲菜はそう言って天海に縋りついた。表情から察するに、本心からの嘆きというよりも、ただ天海に抱き着きたいだけという感じがする。
そんな彼女の頭をなでながら、天海はあやすように言った。
「じゃあ咲菜も部室においでよ。優秀な先生がいるから」
「絶対行く~」
「―――⁉」
(おい、ただでさえ大変なのに問題児を増やすんじゃない)
「ってか、お前らずいぶん仲がいいな」
「だってクラスメイトだもんね~」
(その理論だと、俺には咲菜以外のクラスメイトはいないということになるんだが・・・)
ぜひともその謎理論の拡散はやめていただきたいところだ。
それからの一週間はまさに地獄絵図となった。咲菜も合間に参加することになり、数学、国語、物理・・・それぞれの苦手科目を教えあい、ときには最終下校ギリギリになることもあったが・・・。
俺たち三人はなんとか、無事に中間考査の日程を終えた。
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