異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第3章 出会ったのは王子様 立ち向かうのはアンデッド教団

第23話 墓場の決戦? そして……

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 テマーティンの背後にいたファザールがオレを預かる形になり、兵士達もまた改めて動き出す。
 確認したところではいまオレたちがいる場所は、ラマーリア王国首都、コルストの外れに位置する巨大な墓地区画だそうだ。
 もちろんここに葬られるのはある程度の社会的地位か財産のある人間だけだが、それでも町の一区画なみの広さはある。
 冷静に考えるとアンデッド教団の根城にはこれ以上ないほど相応しい場所だろう。
 そして兵士一同は、オレが逃げ出したばかりのカタコンベのすぐ近くに立っている石造りの建物を包囲する。
 本来はこの墓地の運営・管理のために建てられたのだろうが、いつの間にか『虚ろなるもの』達の拠点になっていたという寸法だ。
 そしてテマーティンは芝居がかった様子で、大きく声を挙げる。

「聞くがいい! 『虚ろなるもの』の信徒どもよ! このテマーティン・ラマーリアの名において、お前達を全員捕縛する! むろん抵抗するならば容赦はせん!」

 テマーティンの声と共に、兵士達は一斉に手に持ったたいまつを掲げつつ、ときの声を上げた。
 そしてその傍らでオレは正直に言って、あまりいい気分はしていなかった。
 テマーティンに恩に着せられそうな雰囲気なのはもちろんのこと、オレはそもそもこんな場にいたくないのである。
 常識的に考えて、ここにいる連中は『狂信者』であり、抵抗すること無く捕縛されるなどまず考えられない。
 間違いなく戦いになるだろう。
 そしてオレは確かに事件は好きだし、もちろん『虚ろなるもの』の連中に復讐もしてやりたいが、ワガママを言えば流血の惨事を目の当たりにはしたくない。
 つまりオレの感覚はまだまだ二一世紀における男子高校生のものであって、敵対しているカルト教団相手だから、幾ら殺しても構わないという気にはなれないのだ。
 そうだとも。ひょっとしたらテマーティンにときめいていたかも、などというのは錯覚に違いない!

 オレが自分に言い聞かせている最中も、テマーティンに率いられた兵士達は行動していたが、連中の多くはオレをあからさまに注視し、ひそひそと噂話をしている様子がうかがえる。
 たいまつの明かり程度では、オレの容姿など見えないだろうし、そもそも今から『虚ろなるもの』たちと戦おうという場面なのに、こっちを見ていてどうすんだよ!
 まあ大ざっぱに見てもこっちには数百人の兵士がいるし、相手はろくでもないカルト教団とはいえ、さっきオレが確認した通り、アンデッドの大軍を率いているとか、そういうわけでもないから普通に考えれば負ける道理がない。
 しかしオレは明らかに浮かれているテマーティンと、完全に注意がそれている兵士達を見て少々どころではない、いやな気分に胸をわしづかみにされていた。
 こういうのって明らかな『逆転負けフラグ』だよね?!

 物理攻撃魔法の使えないオレとしては、万一に備えて逃げる準備をしていた方がいいのだろうか。
 いや。少なくともテマーティンは公私混同の面はあるにしろ、オレを助けるために来てくれたわけで、いくら何でも見捨てるわけにはいかない。
 そして万が一にもテマーティンが重傷を負ったりしたら、俺が手当てせねばならなくなるかもしれない、としたらかなり困った事になりそうだ。
 なぜならオレの視界の片隅には複数の『金髪美女』の姿があるからだ。
 考えるまでもなく、相手が抵抗して死傷者が出た場合に備えて、同行している聖女達である。
 むろん彼女たちのトップである救貧院の院長が殺害された直後でもあり、その怒りに満ちた視線は『虚ろなるもの』達の方に向けられている。
 今のところ王子の『愛人』という事になっているオレなど眼中にないのは明らかだが、気付かれる可能性が皆無とは言えないわけで、こっちも内心では戦々恐々だ。
 だいたいオレはまだ正体がばれても、ここから逃げ出すという選択肢があるが、テマーティンは下手すれば王位継承どころでなくなるはずだろう。
 ひょっとするとそのスリルも楽しんでいるかもしれないが、そうだとしたらどこまで『火遊び好き』なんだよこの王子。
 なお聖女以外にも、いろいろな魔術師らしき連中がかり集められている。
 オレにとっては自分と聖女以外で『普通の魔術師』を見るのは初めての機会であり、いやいやながらも逃げ出さずにいるのは、それに対する好奇心が抑えられなかったという面もある。
 まあ穏便に終わってくれればそれに越したことは無いので、魔術が火を噴いて大惨事にまでならなくてもいい。
 オレは不安と僅かな期待、そして変わりつつある自分の感覚への困惑を混ぜ込んだ状態で、完全に兵士達によって包囲された『虚ろなるもの』のアジトを見つめていた。
 
 オレが不安を込めて見つめていると、兵士に包囲された建物の中が騒がしくなってくる。
 テマーティンの警告にくわえて、周囲がたいまつを掲げる兵士に包囲されている事に気付いたのだろう。
 言い逃れも逃走も不可能だと悟ったのか、中から何人か出てきたのが目に入った。
 そして出てきた連中から、動揺した問いかけが行われる。

「な、なぜ我らがここにいることが分かった?!」

 最初はシラを切ると思ったけど、あっさりと認めたな。
 まあここまできたら、いくら何でもごまかしようがないんだけど。

「簡単だ。私には女神の加護があるということだ」

 ここでテマーティンは、誇らしげに傍らのオレに視線を向ける。
 おいこら?!
 余計な事を言って聖女達に勘づかれたらどうするんだ!

「お前達が我が国で敬愛された人間を殺害し、その悲しみと追悼の感情が集まるこの墓地でよこしまな事を企んでいる事は分かっているのだぞ!」

 そう叫ぶとテマーティンは芝居がかった態度で、その指を突きつける。
 それは今さっきオレが伝えた事だろう。
 まあそれなりに見当はついていただろうし、何よりテマーティンは王族なんだから、部下達の前では格好をつける必要があるのは分かる。
 別にオレだって、そんなことで偉ぶる気は無い。
 だが今のテマーティンの一連の行動は、むしろオレに対して見せつける事を意図しているように思えてならない。
 まあ全く無関係の立場だったとしたら、結構格好いいと思ったかもしれない。
 そしてテマーティンの言葉を受けて、今度はファザールが降伏勧告を行う。

「さあ諦めて降伏しろ! そうすれば殿下の慈悲と法の庇護を与えてやろう。だが降伏せねば、不死者になる前に慈悲深き永遠の安息の地に行くこととなるぞ!」

 だがこれで降伏する狂信者がいるはずがない。
 すでに連中は何人も有力者を暗殺し、また王子の暗殺未遂も引き起こしているのだ、首謀者や実行犯は当然極刑だろうし、他の連中も重罪は免れまい。
 ここで諦めるような、物わかりのいい連中が狂信者をやっていられるはずが無いのだ。
 そして出てきた連中のなかから、さきほどオレを生け贄にすると言ったローブの司祭が姿を見せる。

「確かにここまでのようだな。我らの野望も完結か……」

 ここであっさり降伏勧告を受け入れるのかよ!
 多大な犠牲を出してまでお前らは自分たちの望む『永遠の命』を得るため、陰謀を目論んでいたんじゃないのか?!
 この時、オレの胸中には流血の惨事を目の当たりにするのはイヤだという事なかれ主義と、事件があっさり解決するのはちょっと拍子抜けだというゲーマーのサガが渦巻いていたのだ。

「ふん。おおかた高位のアンデッドでも造ろうとしていたのだろうが、儀式が完了しなければ意味はあるまい」

 テマーティンは少し安堵した様子でつぶやく。
 徹底抗戦されたら、兵士達にも犠牲は避けられないわけで、王子としては無事に事態が収拾されるに越したことは無いだろう。
 これで『虚ろなるもの』達を一網打尽に出来れば、当然テマーティンの功績になるわけで、次期王位継承者として国民へのアピールもばっちりだ。
 そして何よりテマーティンはこれまでかたくなに誘いを拒んできたオレもゲットしたつもりだろう。

「これは私とアルタシャ。我ら二人の功績ですよ。もっと誇って下さい」

 いや。オレは功績なんかどうでもいいんですよ。
 そりゃまあテマーティンの行為は『オレの救出』という点では空回りだけど、少なくともオレを助けるために、これだけ大勢の兵士をかり出したわけで、その気持ちはありがたく受け取りたい。
 だけどオレはその希望に応えられない。
 申し訳ないがオレはやっぱり『男の嫁』になる気にはなれないのだ。
 しかしこのままだとテマーティンは、今後もっとオレの露出を増やそうとするかもしれない。
 もうそろそろここも潮時かもしれないな。
 テマーティンには悪いけど、この件が片付いたらオレはこのラマーリア王国を引き払わせてもらおう。
 だがオレがテマーティンとファザールに対する別れの言葉を頭の中で考え始めた時、周囲にはいきなり高笑いが鳴り響いた。

「ふははははは! 確かに完結だ! いまこの場で我らの野望は完結するのだ!」

 兵士達によってジリジリと包囲の輪が狭まる中、さきほどの司祭がいきなり高笑いを始めたのだ。

「なんだと?!」
「愚か者め。我らが造ろうとしていたのがたかだか『高位のアンデッド』だと。はははははは!」

 いかにもおかしくてたまらないと言わんばかりに、ローブの司祭は腹を抱えていた。

「教えてやろう! 我らが造ろうとしたのは、アンデッドなどというちっぽけな存在ではない!」

 このとき男の笑いに連動したかのように、周囲の地面が揺れはじめる。
 地震か? いや違う。
 これは激しくイヤな予感がしてくるぞ。

「なんだと?! 負け惜しみはいい加減にしろ! みなのものすぐにそいつらを取り押さえろ! 抵抗するなら容赦するな!」

 ファザールが血相を変えて叫び、その声を聞いて周囲の兵士が突撃をかける。
 だがその瞬間、この『死者の楽園』が――否。地面そのものが吠え猛った。
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