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第5章 辺境の地にて
第90話 「女神の意志」を受けると
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オレが神の力を引き出すと、力尽きる直前だったこの身に猛烈な力がわき出す感覚が訪れる。
何というか『どこかの蛇口をひねる』だけで、信者の捧げた信仰心によって凄い力が引き出せる。そんな気がしてくるよ。
なるほど。これなら神様になりたくなる気持ちも分るよ。
だけどオレはやっぱり真っ平だ。
もちろん自分本来の姿とかけ離れた、今の『金髪・紫瞳の美少女』で崇められているのが第一の理由だけど、やっぱり人間としてどこかおかしい、受け入れ難い気がするのだ。
『あなたがためらう気持ちは分りますよ。このわたくしもかつては同じでしたからね』
「心配しなくてもやりますよ! ここで死にたくないですからね!」
オレはここで力を一気に解放し、そして眼前に迫り来る霊体の群れへと一気にたたきつける。
【おおおお! これこそ我らの求め続けたもの】
【まばゆい。すばらしい】
【ああ……いま手に届くところにある……】
霊体の群れはオレの放った魔力を受け、その光の中で見る見るうちにその数を減らしていく。
それは炎の中に自ら飛び込んでいく虫の群れを思わせる光景だった。
そして時間にして一分かそこらの後、まるで雲のごとくこのファーゼストの地に渦巻いていた霊体の群れは跡形もなく消えていた。
「これが……自分の力なの?」
オレは自分自身が行った事でありながら、眼前の出来事が信じられずしばし呆然と立ちすくんでいた。
あれほど苦労していた相手をまるで、掃除機で一掃するかのごとく造作なく消し去るなんて、オレ自身の力にちょっとどころでなくビックリだよ。
だけどやっぱり喜ばしい気はしない。
それはオレを導いた相手が、オレをこの女の身に変えた張本人だからという事も間違いなくあるだろう。
『そうです。よくやってくれましたね。これで彼らも救われるでしょう』
「あの……さっきの霊体はどこに行ってしまったんですか?」
オレは彼らを消滅させてしまったわけでないことは分っているが、それでもやっぱり心配になってくるじゃないか。
数多い霊体の『よどんだ崇拝』を引き受け続けた結果、オレは少しではあるが彼らの記憶を垣間見たのだ。
そのせいかオレは殺されかけたにも関わらず、彼らにちょっとは同情していた。
彼らの大半は地方の森や水源などをつかさどる精霊であり、地元の数十人から数百人程度の信者からの崇拝と敬意を受けて細々と暮らしていただけなのだ。
言い換えるとそれだけの崇拝があれば、彼らはあのように飢えて苦しみ、人々を襲う事にはならなかったのだ。
出来れば彼らが新たな循環を得て、満足できるだけの人生 ―― というか神生か ―― を送れるようになって欲しいと願わずにはいられなかった。
『大丈夫ですよ。彼らの大半はあなたの導きによって、我が領域に迎え入れました』
「え?」
『まだまだ不十分ですが、時間をかけて浄化する事で必ず我が眷属として、新たに人々に癒やしと平穏をもたらす事になるでしょう』
ちょっと待てや。つまりあんたがオレを助けたのは、単純な人助けでは無く、さっきのように『世界の循環』から離れた霊体を自分の眷属に引き込む意図があったからなのか。
さすが神様だ。どこまでも抜け目が無い ―― などと思っていたらまだまだ甘かった。
霊体達が残らず消え去ってしばしの後、周囲では一斉に歓声が上がったのだ。
「おお。あのお方が我らをお救い下さったぞ!」
「やはり女神様の顕現であらせられたんだ!」
「何と尊いことでしょう」
うわあ。またこの展開かよ。
いや。よくよく考えるとオレの方が違っている。
以前のオレは【陽光】で自分自身を輝かせていたんだが、今はそんな事をしていないにもかかわらず、この身は夜闇に鮮やかに浮かび上がっているのだ。
それは【陽光】によって直視するのも難しい程まばゆい、そして何より『ただまばゆいだけの輝き』では無い。
文字通り『神々しい光』を放って人々の前に姿をさらしていたのである。
これはマズいぞ。
このままではオレはこの地でも『女神の化身』として崇拝されて、やっぱり望みもしない、受け入れ難い姿が人々の記憶に刻みこまれることになる。
こうなったらやはり逃げ出すしかないか。
オレが決意を固めたところで、改めて女神の声が脳裏に響く。
『ここまでのようですね。わたくしも今後のあなたの働きには大いに期待していますよ。それでは――』
「ちょ、ちょっと待って下さい! どうしても聞きたいことがあるんです!」
意識に浮かび上がる、今のオレとそっくりの女神に対して必死に呼びかける。
せっかくまともに会話できるようになった以上、どうしても聞いておかねばならない事があるのだ。
『何でしょうか?』
「どうしてオレを……いえ。数多くの男子を女に変えているんですか! なぜそんな魔術をあなたは信徒に与えているんです?!」
『……』
オレのこの問いかけに対し、聖女教会の崇める女神イロールは少しばかり首をかしげ、困ったような微笑を浮かべ ―― そしてこう答えた。
『あなたはいったい何の事を言っているのですか?』
「え?」
女神の返答に対し、オレは惚けてそのまま立ちすくむしかなかった。
何というか『どこかの蛇口をひねる』だけで、信者の捧げた信仰心によって凄い力が引き出せる。そんな気がしてくるよ。
なるほど。これなら神様になりたくなる気持ちも分るよ。
だけどオレはやっぱり真っ平だ。
もちろん自分本来の姿とかけ離れた、今の『金髪・紫瞳の美少女』で崇められているのが第一の理由だけど、やっぱり人間としてどこかおかしい、受け入れ難い気がするのだ。
『あなたがためらう気持ちは分りますよ。このわたくしもかつては同じでしたからね』
「心配しなくてもやりますよ! ここで死にたくないですからね!」
オレはここで力を一気に解放し、そして眼前に迫り来る霊体の群れへと一気にたたきつける。
【おおおお! これこそ我らの求め続けたもの】
【まばゆい。すばらしい】
【ああ……いま手に届くところにある……】
霊体の群れはオレの放った魔力を受け、その光の中で見る見るうちにその数を減らしていく。
それは炎の中に自ら飛び込んでいく虫の群れを思わせる光景だった。
そして時間にして一分かそこらの後、まるで雲のごとくこのファーゼストの地に渦巻いていた霊体の群れは跡形もなく消えていた。
「これが……自分の力なの?」
オレは自分自身が行った事でありながら、眼前の出来事が信じられずしばし呆然と立ちすくんでいた。
あれほど苦労していた相手をまるで、掃除機で一掃するかのごとく造作なく消し去るなんて、オレ自身の力にちょっとどころでなくビックリだよ。
だけどやっぱり喜ばしい気はしない。
それはオレを導いた相手が、オレをこの女の身に変えた張本人だからという事も間違いなくあるだろう。
『そうです。よくやってくれましたね。これで彼らも救われるでしょう』
「あの……さっきの霊体はどこに行ってしまったんですか?」
オレは彼らを消滅させてしまったわけでないことは分っているが、それでもやっぱり心配になってくるじゃないか。
数多い霊体の『よどんだ崇拝』を引き受け続けた結果、オレは少しではあるが彼らの記憶を垣間見たのだ。
そのせいかオレは殺されかけたにも関わらず、彼らにちょっとは同情していた。
彼らの大半は地方の森や水源などをつかさどる精霊であり、地元の数十人から数百人程度の信者からの崇拝と敬意を受けて細々と暮らしていただけなのだ。
言い換えるとそれだけの崇拝があれば、彼らはあのように飢えて苦しみ、人々を襲う事にはならなかったのだ。
出来れば彼らが新たな循環を得て、満足できるだけの人生 ―― というか神生か ―― を送れるようになって欲しいと願わずにはいられなかった。
『大丈夫ですよ。彼らの大半はあなたの導きによって、我が領域に迎え入れました』
「え?」
『まだまだ不十分ですが、時間をかけて浄化する事で必ず我が眷属として、新たに人々に癒やしと平穏をもたらす事になるでしょう』
ちょっと待てや。つまりあんたがオレを助けたのは、単純な人助けでは無く、さっきのように『世界の循環』から離れた霊体を自分の眷属に引き込む意図があったからなのか。
さすが神様だ。どこまでも抜け目が無い ―― などと思っていたらまだまだ甘かった。
霊体達が残らず消え去ってしばしの後、周囲では一斉に歓声が上がったのだ。
「おお。あのお方が我らをお救い下さったぞ!」
「やはり女神様の顕現であらせられたんだ!」
「何と尊いことでしょう」
うわあ。またこの展開かよ。
いや。よくよく考えるとオレの方が違っている。
以前のオレは【陽光】で自分自身を輝かせていたんだが、今はそんな事をしていないにもかかわらず、この身は夜闇に鮮やかに浮かび上がっているのだ。
それは【陽光】によって直視するのも難しい程まばゆい、そして何より『ただまばゆいだけの輝き』では無い。
文字通り『神々しい光』を放って人々の前に姿をさらしていたのである。
これはマズいぞ。
このままではオレはこの地でも『女神の化身』として崇拝されて、やっぱり望みもしない、受け入れ難い姿が人々の記憶に刻みこまれることになる。
こうなったらやはり逃げ出すしかないか。
オレが決意を固めたところで、改めて女神の声が脳裏に響く。
『ここまでのようですね。わたくしも今後のあなたの働きには大いに期待していますよ。それでは――』
「ちょ、ちょっと待って下さい! どうしても聞きたいことがあるんです!」
意識に浮かび上がる、今のオレとそっくりの女神に対して必死に呼びかける。
せっかくまともに会話できるようになった以上、どうしても聞いておかねばならない事があるのだ。
『何でしょうか?』
「どうしてオレを……いえ。数多くの男子を女に変えているんですか! なぜそんな魔術をあなたは信徒に与えているんです?!」
『……』
オレのこの問いかけに対し、聖女教会の崇める女神イロールは少しばかり首をかしげ、困ったような微笑を浮かべ ―― そしてこう答えた。
『あなたはいったい何の事を言っているのですか?』
「え?」
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