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第10章 神造者とカミツクリ
第252話 そして宴の誘いに
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宴に同行するのをオレが拒否したところでテセルは静かに宣告する。
「いいかい。よく聞きたまえ。この僕は十六歳にしてこの街の神造者支部長の座を与えられるエリート中のエリートだぞ」
「はいはい。それは何度も伺いましたよ」
「そうすると、この僕に対して妻や愛人候補を紹介してくる相手が何人も出てくる可能性が高いのさ」
テセルはそう言って胸を張る。
相変わらずそのあたりは傲慢なヤツである。
「どうせテセルはここにそんなに長居する気は無いのですよね。二、三年かそこらで中央に戻るつもりなのでしょう? それを伝えれば相手も遠慮するのではないですか」
帝国中央から見れば辺境とはいえ、このバッド・ディール周辺地域において神造者の支部長が強い権力を有している事は分かっているが、それに紹介する女性は当然、地元の有力者の親族だろう。
テセルがここに骨を埋める気が無いのなら、一族の女をあてがってまで取り入ろうとはそうそう考えないはずだ。
「神造者もいろいろだ。辺境の赴任地で満足して、そこで一生過ごすような者も多い。そして僕が首都の神造者養成施設を優秀な成績で卒業したエリートだからこそ、何とかこの地に留まらせたいと考える連中もいるに違いないのさ」
なるほど。中央で選りすぐりのエリート同士が出世競争でしのぎを削るよりも、辺境の地で『お山の大将』になることを望む連中もいるということか。
そして地元にもそうなることを期待し、敢えてこの地に留まらせるようにいろいろと寄ってくる連中がいるのだろう。
出世競争から脱落した人間だとしても、辺境ではもの凄い名士だろうからな。
「そしてこの僕と繋がりさえ出来れば、神話の修正や精霊の扱いについて自分達に有利になるように要請する事も可能になるという寸法さ。だから神造者の有力者にコネをつけた上で、なるだけその地に留まるよう、妻をあてがおうとするのはよくある事なのさ」
「具体的にはどんな要請があるんです」
「農民達なら大地の豊穣を司る精霊の扱いを自分達の農地に優先させるよう陳情してくるなんて、帝国各地の恒例行事だし、アンブラール神の時にも言ったけど、有力者なら先祖を神の血族にするよう要求する事だって珍しく無い」
あのスケベ大神だけでなく、地位によっては他の神の子孫になりたい連中はいない方がおかしいだろうな。
それもやっぱり美女優先だろうから、下手をすると他の神にもオレの貞操が狙われかねないのか。
「もちろん僕たちはそういう声に左右される事無く公平に扱うべきだと教育されているが、そんな連中と結託したことで罪に問われる神造者も皆無ではないのさ」
有名大学を出たエリート官僚でも、ちょっとしたきっかけで道を踏み外して逮捕される人間は元の世界にいたけど、ここではそれは変わらないということか。
「だけど僕としてはいつまでもここに残る気は無いから、そういうしがらみはお断りしたい。だけど有力者のすすめを正面切って断るのも後々の事を考えると厄介だからね」
「それでこっちを同行させたいと?」
「ああそうだ。お前が横にいればよほど厚かましい相手でも無い限り、僕に女をあてがおうとは思うまい」
「こっちから見ればテセルの方がよっぽど厚かましいですけどね」
要するにオレは『虫除け』ということか。
いや。絶対にそれだけのはずが無い。
他にいろいろな下心が透けて見えているぞ。
「それだけですか? だいたいそれだったら、今度はこっちとの間に余計なしがらみがつくと思いませんか」
この返答に対してテセルは堂々と頷く。
「大丈夫。アルタシャならば一生、僕のしがらみになってくれて結構だよ。喜んで縛られようじゃないか」
「いっそ今すぐにでも、その首を縛って釣り上げた方が全てのしがらみから解放されて、素晴らしい気分になれるかもしれませんよ」
オレの皮肉に対し、テセルは動じる事も無かった。
「とにかくそういうわけなので、今度の宴では僕に同行することだ」
う~ん。確かにそんな席に出たら周囲からは『愛人』とみられるだろうけど、正直に言えばこの神造者支部でもとっくにそう評価されているに違いないので、今更の話だ。
このバッド・ディール市について情報を得るのなら、そういう席に出るのも格好の機会といえるかもしれない。
しかしそれには懸念もあった。
「だいたいそんな席に帝国の公式神話から離れた、イロールの信徒が参加して問題ないのですか?」
「だからそんな事はあり得ないはずだ。首都にもあの女神の神殿はあるし、聖女を側室に持つ神造者だっているのだぞ」
「でも繰り返しますけどワストリ副支部長は疑っているみたいですけどね」
「それならこっちも支部長として部下を説得すると、繰り返すだけだよ」
テセルが嘘をついているようには見えないし、そんな理由もないはずだ。
「分かりました。ただしあくまでも宴には同行するだけですからね」
「そうか。ありがとう。是非とも楽しみにしていてくれ」
オレがしぶしぶ了承したのを見て、テセルの方が楽しみにしているかのように笑顔を浮かべる。
しかし聖女教会を逃げ出してから、最初にやっかいになったテマーティン王子のところでは、そんなパーティに誘われてもかたくなに断っていたのに、今ではそこまで拒否する意識がない事は実感せざるを得ないな。
「いいかい。よく聞きたまえ。この僕は十六歳にしてこの街の神造者支部長の座を与えられるエリート中のエリートだぞ」
「はいはい。それは何度も伺いましたよ」
「そうすると、この僕に対して妻や愛人候補を紹介してくる相手が何人も出てくる可能性が高いのさ」
テセルはそう言って胸を張る。
相変わらずそのあたりは傲慢なヤツである。
「どうせテセルはここにそんなに長居する気は無いのですよね。二、三年かそこらで中央に戻るつもりなのでしょう? それを伝えれば相手も遠慮するのではないですか」
帝国中央から見れば辺境とはいえ、このバッド・ディール周辺地域において神造者の支部長が強い権力を有している事は分かっているが、それに紹介する女性は当然、地元の有力者の親族だろう。
テセルがここに骨を埋める気が無いのなら、一族の女をあてがってまで取り入ろうとはそうそう考えないはずだ。
「神造者もいろいろだ。辺境の赴任地で満足して、そこで一生過ごすような者も多い。そして僕が首都の神造者養成施設を優秀な成績で卒業したエリートだからこそ、何とかこの地に留まらせたいと考える連中もいるに違いないのさ」
なるほど。中央で選りすぐりのエリート同士が出世競争でしのぎを削るよりも、辺境の地で『お山の大将』になることを望む連中もいるということか。
そして地元にもそうなることを期待し、敢えてこの地に留まらせるようにいろいろと寄ってくる連中がいるのだろう。
出世競争から脱落した人間だとしても、辺境ではもの凄い名士だろうからな。
「そしてこの僕と繋がりさえ出来れば、神話の修正や精霊の扱いについて自分達に有利になるように要請する事も可能になるという寸法さ。だから神造者の有力者にコネをつけた上で、なるだけその地に留まるよう、妻をあてがおうとするのはよくある事なのさ」
「具体的にはどんな要請があるんです」
「農民達なら大地の豊穣を司る精霊の扱いを自分達の農地に優先させるよう陳情してくるなんて、帝国各地の恒例行事だし、アンブラール神の時にも言ったけど、有力者なら先祖を神の血族にするよう要求する事だって珍しく無い」
あのスケベ大神だけでなく、地位によっては他の神の子孫になりたい連中はいない方がおかしいだろうな。
それもやっぱり美女優先だろうから、下手をすると他の神にもオレの貞操が狙われかねないのか。
「もちろん僕たちはそういう声に左右される事無く公平に扱うべきだと教育されているが、そんな連中と結託したことで罪に問われる神造者も皆無ではないのさ」
有名大学を出たエリート官僚でも、ちょっとしたきっかけで道を踏み外して逮捕される人間は元の世界にいたけど、ここではそれは変わらないということか。
「だけど僕としてはいつまでもここに残る気は無いから、そういうしがらみはお断りしたい。だけど有力者のすすめを正面切って断るのも後々の事を考えると厄介だからね」
「それでこっちを同行させたいと?」
「ああそうだ。お前が横にいればよほど厚かましい相手でも無い限り、僕に女をあてがおうとは思うまい」
「こっちから見ればテセルの方がよっぽど厚かましいですけどね」
要するにオレは『虫除け』ということか。
いや。絶対にそれだけのはずが無い。
他にいろいろな下心が透けて見えているぞ。
「それだけですか? だいたいそれだったら、今度はこっちとの間に余計なしがらみがつくと思いませんか」
この返答に対してテセルは堂々と頷く。
「大丈夫。アルタシャならば一生、僕のしがらみになってくれて結構だよ。喜んで縛られようじゃないか」
「いっそ今すぐにでも、その首を縛って釣り上げた方が全てのしがらみから解放されて、素晴らしい気分になれるかもしれませんよ」
オレの皮肉に対し、テセルは動じる事も無かった。
「とにかくそういうわけなので、今度の宴では僕に同行することだ」
う~ん。確かにそんな席に出たら周囲からは『愛人』とみられるだろうけど、正直に言えばこの神造者支部でもとっくにそう評価されているに違いないので、今更の話だ。
このバッド・ディール市について情報を得るのなら、そういう席に出るのも格好の機会といえるかもしれない。
しかしそれには懸念もあった。
「だいたいそんな席に帝国の公式神話から離れた、イロールの信徒が参加して問題ないのですか?」
「だからそんな事はあり得ないはずだ。首都にもあの女神の神殿はあるし、聖女を側室に持つ神造者だっているのだぞ」
「でも繰り返しますけどワストリ副支部長は疑っているみたいですけどね」
「それならこっちも支部長として部下を説得すると、繰り返すだけだよ」
テセルが嘘をついているようには見えないし、そんな理由もないはずだ。
「分かりました。ただしあくまでも宴には同行するだけですからね」
「そうか。ありがとう。是非とも楽しみにしていてくれ」
オレがしぶしぶ了承したのを見て、テセルの方が楽しみにしているかのように笑顔を浮かべる。
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