異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

文字の大きさ
302 / 1,316
第11章 文明の波と消えゆくもの達と

第302話 思わぬ縁がこんなところで。

しおりを挟む
 オレが信仰の霊力を与えたことで、これまでは意識を維持する事も出来ないほど弱まっていた霊はこちらの質問に対して憤りを見せていた。

「そなたは『大いなる狼』と言ったのか。吾はそやつらと戦い、そして一度はこの地を離れる事になったのだ!」

 なるほど。この神像に宿った霊体は『二本足の狼』とは敵対していたのか。
 しかし自分の事も思い出せない程、弱っていたはずなのに敵の名前にはこれだけ強く反応するとはちょっと意外だ。
 まあオレだってこいつの言いたい事も分かるつもりだ。
 今は『侵略されている側』の『二本足の狼』だけど、かつては『英雄』に率いられて、他の地域を侵略し蹂躙して回っていたわけだからな。
 直接関係ないご先祖様の事である、テルモー達が追われるのを因果応報とまでは言わないが、悲しい事にあるときは被害者だった側が、別の場面では加害者になるのも世の中ありふれた話なのだ。

「答えろ。お前はやつらの眷族なのか」
「それだったらわざわざ敵である、あなたに力を与えたりしないでしょう。ただ話を聞きたいだけですよ」
「むう……分かった。そなたが男だったら、呪殺したかもしれんが、我慢しよう」

 今のあんたに人間を呪い殺す程の力は無いだろ。まあ何も知らない一般人を脅すぐらいには十分なんだろうけど。
 しかしオレが男だったら呪殺するって、コイツはこんな有様になっても肉欲が捨てられないのかよ。
 そういえば霊体になって、そういう欲望が消える場合と消えない場合があるな。オレが接してきた中では、一神教徒の霊体は人間的な欲望がなくなる傾向にあるな。
 たぶん自然の精霊に接する事が多いタイプの霊体は、そういう欲望をいつまでも残しているのかもしれない。

「それで彼らは何をして、どこに向かったのですか?」

 この霊体が事の顛末を詳しいところまで知っているとは思えないけど、当時の出来事について手がかりぐらいは得られるだろう。

「やつらはこの近辺の精霊をいくたりも滅ぼし、その後で自分たちの眷属を広めて、狩場を独占したのだ」

 その時は肉食獣の精霊同士で争って、狼の精霊が勝ったということらしい。
 野生動物の縄張り争いに近いものか。いや。人間同士の戦争だって、いろいろと大義名分はあるけど大して違うワケじゃない。

「その後、奴らは去って行ったが、残った眷族共はいつの間にかこの地に溶け込み、ありふれた自然精霊となっていったのだ」

 そこまでは当然と言えば当然か。地元の民衆だって、無数にいる自然精霊をいちいち区別なんかつけていないはずだ。
 だからこそ生前はシャーマンだったこの霊体も、力は得られなくとも消えてしまわない程度には地元の人間に敬意と畏れを抱かれていたらしいからな。
 だけどこれでは殆ど手がかりにも何にもならないと、少しばかり失望していたら、相手は思いもかけぬ事を口にした。

「それでやつらは、攻め込んだ先にていろいろなもの達と接し、また手を組んで、ドンドンその力を増やしていったのだ」

 これはちょっと驚きだ。『二本足の狼』はかたくなに他者と交わらないように見えたけど、勢力を拡大していた時期はそうでもなかったらしい。
 いや。テルモーに比べるとミキューは他者との関係にも柔軟な様子があったけど、それも過去の歴史が影響していたのだろう。
 しかし善悪は抜きにして、ずっと昔は英雄の元でそうやって勢力を増やしていた『二本足の狼』が、結局は細々と森で狩猟生活を営む事になったのは凋落と言うべきか、それとも狼の正道に立ち返ったのか。
 オレにはどっちとも言いがたいな。

「それで彼らはどういう相手と手を組んでいたんですか」

 その相手が何者なのか分かれば、いろいろと歴史的な事実もつかめるかもしれない。
 やっぱり記録が文書で残っているか否かでは、大きく違うからな。
 元の世界では歴史を文書で残す習慣の無かった地域では、百年ぐらい前の事でもよく分からない事も多かったらしい。
 そんなところではヨーロッパで言えばフランス革命だとかナポレオン戦争だとか、何年の何月何日にどんな大事件が起きたのかハッキリ分かっている時代の事ですら、よく分からないという事も珍しくはないそうだ。
 そのためにアフリカのある国では、植民地として支配していた国が分割統治のために『少数派の遊牧民は白人の血を引いていて、多数派の農民を支配していた』という嘘の歴史を広めたらすぐに単なる職業の違いでしかなかったのが別の民族という事になって『民族対立』へと発展し、そのため植民地支配が終わった後で悲惨な虐殺が起きてしまったと聞いた事がある。
 こっちの世界では人間よりもずっと長く存在している精霊がいるから、そこまでいかないかもしれない。
 しかしその精霊もまた知っている事が限定的で、立場毎に言う事が全く違うので、真実を探るのが難しい事に変わりは無い。
 そんなわけでちょっとした期待を込めて問うたのだが、その霊体の答えは意外というか、意外でないというか、両方が含まれたものだった。

「やつらが手を組んでいたなかで、もっとも大きな勢力は『ウルハンガ』と呼ばれるものに率いられた帝国だったな」
「ええ?!」

 少し前に関わり、別れた神の名をこんなところで聞くとはな。
 いや。冷静に考えればあのウルハンガの思想からすれば『二本足の狼』だろうが、何だろうが有益ならば手を組むのが当たり前か。
 あいつに再会したいとは微塵も思わないが、つくづく腐れ縁というものはあるものだ。
 しかしこのオレにとってその『腐れ縁』が、これだけで終わるはずもなかったのだ。
しおりを挟む
感想 104

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...