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第11章 文明の波と消えゆくもの達と
第301話 祠の神像に近づくと
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オレは物売りの男から聞いた、村はずれにあるという祠に向かう。
今までの経験からして、そういうところに行くとたいていロクでもない事に巻き込まれるので、ここは慎重に行動せねばなるまい。
森に入ったところで、ひとまず霊体を見る【霊視】の魔法をかけて、周囲の様子を伺うとする。
ここは小さいながらも森なので弱い自然精霊はあちこちに顔を出しているようだが、こちらが近づこうとすると、サッと隠れてしまう。
まるで小動物だな。
しかし強力な精霊は見当たらない。
人里近くに人間に敵対的で強力な精霊がいたら大事だけど、この世界ではどんなきっかけでそんな相手が出てこないとも限らないのだ。
そういえばこの帝国内では『廃神』と呼ばれる、公式神話に漏れた元神様がうろつくこともあるんだった。
まあその手の連中はとっくに神造者に退治 ―― 神造者に言わせると『帝国公式神話に再定義』 ―― されていると思いたい。
もっともここは開拓者の村であり、テセルとの初対面の時のように神話の修正が不十分という事もありうるだろう。
あのときの『廃神』のような相手がまた出て来たら、オレにはとっとと逃げるしか選択肢はないのだ。
何しろいつもいつもロクでもない目に遭ってばかりだからな、警戒をするに越した事は無いだろう。
そんな事を考えつつ森を進んでいると、すぐに祠が目に入った。
確かにさきほど出会った男が言っていた通り、半ば朽ちた祠だ。
ただ全く人の手が入っていないというわけではなく、ここで祀られている精霊をなだめるためにか、掃除と供え物ぐらいはしているようだ。
それはともかく神造者がここに来て、精霊をどうにかしたわけではないらしく、やっぱり帝国からは忘れられた存在らしい。
とりあえず覚悟を固めて、祠の中を覗いてみるか。
中に入っていたのは風化がかなり進んだ、粗末な石像だった。
おそらく石から像を造ってずっと野ざらしになっていたのを、大分後になってそれを覆うように祠がつくられたのだろう。
たぶん開拓者がうち捨てられた像を見つけたけど、その霊を恐れてひとまずなだめようとしたという感じだな。
一神教徒だったら容赦なく破壊していただろうけど、多神教だと自分達と異なる信仰に根ざす神様でも一応は敬意を払っておかないと、後で祟られるかもしれないという怖れの意識があるのだな。
石像は近くで見ると、人間の身体に何か口の大きな動物の頭がついているものらしい。
とりあえず襲ってこないかどうか、警戒を怠らないようにしよう。
オレは霊体ならかなり強力な相手でもどうにかなるけど、物理的な肉体を有している相手には弱い事はいままで何度も思い知らされてきたからな。
慎重にならざるを得ない。
しかし『霊視』で見たところ、ごく僅かな霊力しか残っていないようだ。
つまり過去、ある程度の崇拝を受けていたのは間違いないが、今では動き出すような力は残っていない ―― もしくは最初からない ―― ということになる。
まあ危険は無いかも知れないが、手がかりにもならないのも困るな。
RPGだったらこういう場合、都合よく神像が語りかけてきてくれるわけだが、残念ながら外れだったようだ。
ちょっとばかり落胆して、祠を離れようとしたところでオレの視界の片隅で、神像が立ち上がるように見えた。
なに? まさか襲いかかってくるのか?
反射的に身を固めつつ、よくよく見ると神像そのものは動いていない。
どうやら神像に宿っていた僅かな信仰の霊力が、オレに何かを語ろうとしているらしい。
おお! これは偶然なのか?
いや。いくら何でもそんな事はないか。
オレの身に宿る信仰の力を欲して、呼びかけてきているに違いない。
以前は朽ちかけた神像そのものが襲いかかって、オレの力を奪おうとしてきたけど、もうそこまでする力も残っていないのだろう。
とりあえずオレは神像に残った僅かな霊力の欠片に向けて話しかける。
「あなたは誰ですか?」
「……分からない……このままでは吾は意識を維持する事も出来ないのだ……」
うう。思った通りだけど面倒臭いな。
だけどこれだけ弱っているなら攻撃される事も無いだろう。
恐る恐る神像に手を当てると、相手にオレの魔力が流れ込むのが感じられた。
「おお……おお……これは!」
歓喜しているところ悪いけど、あんまり力を与えて襲いかかられても困るので、あんたの意識がハッキリしたところで終わらせてもらいますよ。
オレが手を引くと、今度はかなり残念そうな声が響いてくる。
「そこまでなのか?」
「お気の毒ですけど、これ以上はわたしと話をした後でお願いしますよ」
「むう。まあいいだろう。女にじらされるのは吾もそうイヤではないからな」
アンタ何か勘違いしてないか?
意識を取り戻したところで、いきなり色気を優先させているんじゃねえよ。
「改めて問いますけど、あなたは一体どなたですか?」
「吾はこの地の精霊の事を受けしもの。人の世にあってはシャーマンであり、死後はここで礼拝を受けていた」
なるほど。生前、高名だったシャーマンが死んだ後で祀られて、この地の精霊を纏める形で地元民から崇められていたというわけか。
こいつは敢えて言えば『精霊』というよりは『聖霊』に近いな。
「それでは伺いますけど、この地で『二本足の狼』が崇める『大いなる狼』という精霊について知っていますか?」
この問いかけに対し、いきなり神像は怒りを発する。
「もちろん知っているとも! あのもの達はこの地を蹂躙して、多くの獣や精霊を打ち倒して貪り喰ったもの達だ!」
それは朽ちた神像が立ち上がりかねないような怒気だった。
今までの経験からして、そういうところに行くとたいていロクでもない事に巻き込まれるので、ここは慎重に行動せねばなるまい。
森に入ったところで、ひとまず霊体を見る【霊視】の魔法をかけて、周囲の様子を伺うとする。
ここは小さいながらも森なので弱い自然精霊はあちこちに顔を出しているようだが、こちらが近づこうとすると、サッと隠れてしまう。
まるで小動物だな。
しかし強力な精霊は見当たらない。
人里近くに人間に敵対的で強力な精霊がいたら大事だけど、この世界ではどんなきっかけでそんな相手が出てこないとも限らないのだ。
そういえばこの帝国内では『廃神』と呼ばれる、公式神話に漏れた元神様がうろつくこともあるんだった。
まあその手の連中はとっくに神造者に退治 ―― 神造者に言わせると『帝国公式神話に再定義』 ―― されていると思いたい。
もっともここは開拓者の村であり、テセルとの初対面の時のように神話の修正が不十分という事もありうるだろう。
あのときの『廃神』のような相手がまた出て来たら、オレにはとっとと逃げるしか選択肢はないのだ。
何しろいつもいつもロクでもない目に遭ってばかりだからな、警戒をするに越した事は無いだろう。
そんな事を考えつつ森を進んでいると、すぐに祠が目に入った。
確かにさきほど出会った男が言っていた通り、半ば朽ちた祠だ。
ただ全く人の手が入っていないというわけではなく、ここで祀られている精霊をなだめるためにか、掃除と供え物ぐらいはしているようだ。
それはともかく神造者がここに来て、精霊をどうにかしたわけではないらしく、やっぱり帝国からは忘れられた存在らしい。
とりあえず覚悟を固めて、祠の中を覗いてみるか。
中に入っていたのは風化がかなり進んだ、粗末な石像だった。
おそらく石から像を造ってずっと野ざらしになっていたのを、大分後になってそれを覆うように祠がつくられたのだろう。
たぶん開拓者がうち捨てられた像を見つけたけど、その霊を恐れてひとまずなだめようとしたという感じだな。
一神教徒だったら容赦なく破壊していただろうけど、多神教だと自分達と異なる信仰に根ざす神様でも一応は敬意を払っておかないと、後で祟られるかもしれないという怖れの意識があるのだな。
石像は近くで見ると、人間の身体に何か口の大きな動物の頭がついているものらしい。
とりあえず襲ってこないかどうか、警戒を怠らないようにしよう。
オレは霊体ならかなり強力な相手でもどうにかなるけど、物理的な肉体を有している相手には弱い事はいままで何度も思い知らされてきたからな。
慎重にならざるを得ない。
しかし『霊視』で見たところ、ごく僅かな霊力しか残っていないようだ。
つまり過去、ある程度の崇拝を受けていたのは間違いないが、今では動き出すような力は残っていない ―― もしくは最初からない ―― ということになる。
まあ危険は無いかも知れないが、手がかりにもならないのも困るな。
RPGだったらこういう場合、都合よく神像が語りかけてきてくれるわけだが、残念ながら外れだったようだ。
ちょっとばかり落胆して、祠を離れようとしたところでオレの視界の片隅で、神像が立ち上がるように見えた。
なに? まさか襲いかかってくるのか?
反射的に身を固めつつ、よくよく見ると神像そのものは動いていない。
どうやら神像に宿っていた僅かな信仰の霊力が、オレに何かを語ろうとしているらしい。
おお! これは偶然なのか?
いや。いくら何でもそんな事はないか。
オレの身に宿る信仰の力を欲して、呼びかけてきているに違いない。
以前は朽ちかけた神像そのものが襲いかかって、オレの力を奪おうとしてきたけど、もうそこまでする力も残っていないのだろう。
とりあえずオレは神像に残った僅かな霊力の欠片に向けて話しかける。
「あなたは誰ですか?」
「……分からない……このままでは吾は意識を維持する事も出来ないのだ……」
うう。思った通りだけど面倒臭いな。
だけどこれだけ弱っているなら攻撃される事も無いだろう。
恐る恐る神像に手を当てると、相手にオレの魔力が流れ込むのが感じられた。
「おお……おお……これは!」
歓喜しているところ悪いけど、あんまり力を与えて襲いかかられても困るので、あんたの意識がハッキリしたところで終わらせてもらいますよ。
オレが手を引くと、今度はかなり残念そうな声が響いてくる。
「そこまでなのか?」
「お気の毒ですけど、これ以上はわたしと話をした後でお願いしますよ」
「むう。まあいいだろう。女にじらされるのは吾もそうイヤではないからな」
アンタ何か勘違いしてないか?
意識を取り戻したところで、いきなり色気を優先させているんじゃねえよ。
「改めて問いますけど、あなたは一体どなたですか?」
「吾はこの地の精霊の事を受けしもの。人の世にあってはシャーマンであり、死後はここで礼拝を受けていた」
なるほど。生前、高名だったシャーマンが死んだ後で祀られて、この地の精霊を纏める形で地元民から崇められていたというわけか。
こいつは敢えて言えば『精霊』というよりは『聖霊』に近いな。
「それでは伺いますけど、この地で『二本足の狼』が崇める『大いなる狼』という精霊について知っていますか?」
この問いかけに対し、いきなり神像は怒りを発する。
「もちろん知っているとも! あのもの達はこの地を蹂躙して、多くの獣や精霊を打ち倒して貪り喰ったもの達だ!」
それは朽ちた神像が立ち上がりかねないような怒気だった。
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