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第11章 文明の波と消えゆくもの達と
第312話 『二本足の狼』と同行する理由とは
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オレがテルモーと同衾し、それをミキューに見られていろいろもめた翌朝、オレ達三人と一匹はアカスタから聞いた廃墟に向かうこととした。
だいたいの場所は分かっているのだが、もちろんそこに行ったことはないため、何がいるか分かったもんではない。
そもそもオレの場合、こういう時に何事もなく簡単に問題が解決した経験など無いのだ。きっと今回も同じだろうという悲しい確信だけはある。
いや。それどころか向かう途中で何かあるかも分からない。
何しろどこに行っても、一般人は彼らを狩り出そうとするからな。
彼らの手助けをする人間はオレのような例外だけだ。
残念ながら『二本足の狼』もそれを囲む人間達も、互いに相手を『同じ人間』とは思っていないのでそこに容赦が入る余地などないのだ。
う~ん。この世界は少なくともオレの知っている範囲では、一般のファンタジーのようにエルフだとドワーフだと猫耳娘だのの、非人間の知的種族は存在しないらしい。
もちろんその手の伝説はあちこちにある上に、ライバンスの魔法学院で調べた時には『どこそこの女は横にワレメがついている』などという、無責任な話も特に珍しくはなかったようだ。
もっと言えば以前に出会った『第五階級』の連中はその思考の桁外れ具合では、普通のファンタジーのエルフあたりとは比較にならない程、非人間的だった。
しかしそれでもこの世界には、人間以外の知的生物は普通では見かけないほど希少 ―― ないし絶無 ―― な存在のはずだ。
しかしそれは広大な地域を見て回ってきたオレだから言える事であって、普通の人間であれば『狼に変身するあいつらは人に似た怪物だ』と教えられたら信じ込んでしまうのが当たり前なのだ。
言い換えると彼ら『二本足の狼』の事を知っている人間は、オレ達にとって全て敵と断言してしまっても過言では無い。
そしてそこまで考えたところで、オレがどうしてここまで『二本足の狼』に入れ込んでいるのか思い当たる事があった。
そうか。オレが結局はこの世界では『ただ一人の異邦人』であって常に聖女教会や、その他もろもろからの追っ手から逃げ回っているように、彼らもこの世界の大多数から逃げ回って生きている存在なのだ。
だから何というかちょっとした親近感を抱いているんだな。
もちろんそれはオレからの一方的なものであって、彼らにはまるで関係のない話でもある。
「本当にそこは私達ゆかりの場所なんでしょうね」
ミキューはちょっとばかり刺々しくオレに問うてくる。
やっぱりテルモーと比べるとまだオレを信頼はしていないらしい。昨晩、テルモーと一緒に寝ているのを見られてから、余計に態度が刺々しくなってきたような気がするぞ。
「おい。アルタシャも言っている通り、それはずっと前につくられたものであって、今はどうなっているのかは分からないのだろう」
「だから今から行って確認するんですよ」
テルモーとオレが一緒に説得すると、ミキューはやや不機嫌そうに顔を背ける。
ただ一緒に行動する事に文句はないらしいので、顔を見ただけでテルモーと殺し合いをしていた頃に比べれば大分マシになってくれたと言える。
「もちろん危険はあります。そこがつくられたのは大分、昔の話なので今はそこに何がいるのかは不明です」
「ならばどうしてそんなところに行くのよ?」
彼らにとっては『自分達の縄張り』とはあくまでも獲物を狩る場所であって、他の人間達とは異なり『土地』への執着があるわけではない。
そのあたりは放浪の狩猟民族なのだから当然と言うべきだろう。
だから『ゆかりの場所』と言われても、特にこだわりもなく、そこに向かう必然性も特に感じないと言う事らしい。
「俺は特に行く当てなどないからな。お前もそうではないのか?」
「それは……その通りよ……」
二人とも同族たる他の『二本足の狼』とは離れてしまっているし、別の同族がどこにいるのかもよく分からない状況だからな。
本来ならばそういうはぐれ者も他の部族に結構簡単に迎え入れてもらっていたようだが、開発が進んで他の部族も散り散りバラバラになってしまったので、行くところが無くなってしまったのだ。
そのために憎み合っていた二人が協力して、オレに同行する道を選択せざるを得なくなったのだから、何とも皮肉な話だな。
しかし目的地にたどり着いて、そこでどうにかテルモーとミキューが二人で暮らす事が出来たとしても問題が抜本的に解決するわけじゃない。
それでは人間社会に対抗するために彼ら『二本足の狼』が集まり、組織化し軍隊のように行動すればいいのだろうか。
たぶん過去にウルハンガと手を組んで、周辺地域を侵略したという『吠え猛るもの』も似たような事をしていたはずだから、彼らにも決して不可能ということはないはずだ。
もちろん今からそんな事に取り組むのも至難の業だが、問題はそれだけじゃない。
結局は彼らの生き様を捨てる事になるのだ。
それが元の世界でも広くあった『歴史の流れ』と言われたらその通りなんだけど、オレとしては今のテルモー達の生き様を尊重してやりたい。
自分でも身勝手かつ非現実的で、しかも独りよがりな話だとは分かっているが、それが今のオレの望みなんだ。
だいたいの場所は分かっているのだが、もちろんそこに行ったことはないため、何がいるか分かったもんではない。
そもそもオレの場合、こういう時に何事もなく簡単に問題が解決した経験など無いのだ。きっと今回も同じだろうという悲しい確信だけはある。
いや。それどころか向かう途中で何かあるかも分からない。
何しろどこに行っても、一般人は彼らを狩り出そうとするからな。
彼らの手助けをする人間はオレのような例外だけだ。
残念ながら『二本足の狼』もそれを囲む人間達も、互いに相手を『同じ人間』とは思っていないのでそこに容赦が入る余地などないのだ。
う~ん。この世界は少なくともオレの知っている範囲では、一般のファンタジーのようにエルフだとドワーフだと猫耳娘だのの、非人間の知的種族は存在しないらしい。
もちろんその手の伝説はあちこちにある上に、ライバンスの魔法学院で調べた時には『どこそこの女は横にワレメがついている』などという、無責任な話も特に珍しくはなかったようだ。
もっと言えば以前に出会った『第五階級』の連中はその思考の桁外れ具合では、普通のファンタジーのエルフあたりとは比較にならない程、非人間的だった。
しかしそれでもこの世界には、人間以外の知的生物は普通では見かけないほど希少 ―― ないし絶無 ―― な存在のはずだ。
しかしそれは広大な地域を見て回ってきたオレだから言える事であって、普通の人間であれば『狼に変身するあいつらは人に似た怪物だ』と教えられたら信じ込んでしまうのが当たり前なのだ。
言い換えると彼ら『二本足の狼』の事を知っている人間は、オレ達にとって全て敵と断言してしまっても過言では無い。
そしてそこまで考えたところで、オレがどうしてここまで『二本足の狼』に入れ込んでいるのか思い当たる事があった。
そうか。オレが結局はこの世界では『ただ一人の異邦人』であって常に聖女教会や、その他もろもろからの追っ手から逃げ回っているように、彼らもこの世界の大多数から逃げ回って生きている存在なのだ。
だから何というかちょっとした親近感を抱いているんだな。
もちろんそれはオレからの一方的なものであって、彼らにはまるで関係のない話でもある。
「本当にそこは私達ゆかりの場所なんでしょうね」
ミキューはちょっとばかり刺々しくオレに問うてくる。
やっぱりテルモーと比べるとまだオレを信頼はしていないらしい。昨晩、テルモーと一緒に寝ているのを見られてから、余計に態度が刺々しくなってきたような気がするぞ。
「おい。アルタシャも言っている通り、それはずっと前につくられたものであって、今はどうなっているのかは分からないのだろう」
「だから今から行って確認するんですよ」
テルモーとオレが一緒に説得すると、ミキューはやや不機嫌そうに顔を背ける。
ただ一緒に行動する事に文句はないらしいので、顔を見ただけでテルモーと殺し合いをしていた頃に比べれば大分マシになってくれたと言える。
「もちろん危険はあります。そこがつくられたのは大分、昔の話なので今はそこに何がいるのかは不明です」
「ならばどうしてそんなところに行くのよ?」
彼らにとっては『自分達の縄張り』とはあくまでも獲物を狩る場所であって、他の人間達とは異なり『土地』への執着があるわけではない。
そのあたりは放浪の狩猟民族なのだから当然と言うべきだろう。
だから『ゆかりの場所』と言われても、特にこだわりもなく、そこに向かう必然性も特に感じないと言う事らしい。
「俺は特に行く当てなどないからな。お前もそうではないのか?」
「それは……その通りよ……」
二人とも同族たる他の『二本足の狼』とは離れてしまっているし、別の同族がどこにいるのかもよく分からない状況だからな。
本来ならばそういうはぐれ者も他の部族に結構簡単に迎え入れてもらっていたようだが、開発が進んで他の部族も散り散りバラバラになってしまったので、行くところが無くなってしまったのだ。
そのために憎み合っていた二人が協力して、オレに同行する道を選択せざるを得なくなったのだから、何とも皮肉な話だな。
しかし目的地にたどり着いて、そこでどうにかテルモーとミキューが二人で暮らす事が出来たとしても問題が抜本的に解決するわけじゃない。
それでは人間社会に対抗するために彼ら『二本足の狼』が集まり、組織化し軍隊のように行動すればいいのだろうか。
たぶん過去にウルハンガと手を組んで、周辺地域を侵略したという『吠え猛るもの』も似たような事をしていたはずだから、彼らにも決して不可能ということはないはずだ。
もちろん今からそんな事に取り組むのも至難の業だが、問題はそれだけじゃない。
結局は彼らの生き様を捨てる事になるのだ。
それが元の世界でも広くあった『歴史の流れ』と言われたらその通りなんだけど、オレとしては今のテルモー達の生き様を尊重してやりたい。
自分でも身勝手かつ非現実的で、しかも独りよがりな話だとは分かっているが、それが今のオレの望みなんだ。
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