異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第11章 文明の波と消えゆくもの達と

第332話 やはり『死んだ英雄だけが良い英雄』となりました

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 毎度の事ながらいろいろややこしい状況だけど、それでもオレは『吠え猛るもの』に対して改めて確認することがあった。

「ところでこちらからも一つ伺っていいでしょうか?」
『断っておくが吾が知っている事など、大したものではないぞ』
「それでも構いません。どうしても聞きたい事があるのです」
『分かった。いいだろう』

 オレが真剣に問いかけると、相手も小さく頷く。

「あなたがた『二本足の狼』において、自分の身を狼と化す派閥と、相棒の狼を得る派閥がありますよね」

 この『吠え猛るもの』はウルハンガの導きを受けたのならば、テルモー達の派閥抗争とは無縁の存在のはずだ ―― 是非ともそうであって欲しい。

『ああそうだ。それぞれに役割があるのだが、仲が良くなくて吾も困ったものだ』

 霊体は『困った』とは言っているが、どちらかと言えば苦笑いに近い態度だ。
 少なくとも同胞たちの命がかかっている問題に対する態度ではないな。

「あなたが生きていた時から、すでにあの両者は争っていたのですか? それにしてはあまり深刻に考えてはおられないようですけど」
『そんなことはないぞ。吾が同胞を率いている時も、しばしば連中は対立し、手柄や戦利品をめぐる争いなどしょっちゅうだった。そのために吾が指導者としてどれほど苦労した事か……思い出したくもないほどだ』

 なるほど。当時はまだテルモーとミキュー達の『二本足の狼』同士の対立は、あくまでも『仲間内のライバル』の域にとどまっていたのか。
 それはそれでまとめるのに苦労したかもしれませんけど、今その両者は人間達に圧迫されて青息吐息の状態でありながら、顔を見ると互いに殺し合いをするほどにまで険悪になっているんです。

『しかしそちらにいる者達の様子を見るとさほど深刻でもあるまい。仲間として共にこの地に来たのであろう?』

 まあ今のテルモーとミキューを見たら、そう思っても不思議では無いか。
 少なくともこの二人は一緒に旅をしてきたのは間違いないからな。
 しかしこの二人をここまでもってくるまで、オレがどれだけ苦労したか。
 たぶん『吠え猛るもの』が同族を率いて征服に乗り出したときの『爪の垢を煎じて飲んだ』分ぐらいは大変だったと思いますよ。
 自分達を追い回す『人間』という共通の敵がいた上で、何よりどちらも一人ずつだったからこそ、かろうじてどうにかなったのであって、もしも部族同士でやり合っていたら完全にお手上げでした。

「この二人はむしろ例外なんです。他のところでは出会った瞬間に戦いが始まるぐらいに険悪ですよ」
『むう……この地で活動していた時も、どちらかと言えば狼にその身を変じる者達は吾に従う者が多く、狼を友とする者達は吾に刃向かう者が多かった』

 そりゃそうだよな。狼を相棒として一緒に暮らしていたら、他の人間達と生活するのは何かと不便だ。
 狼に変身する能力を持つ側の方が、まだ支持しやすいか。
 テルモーの部族は『吠え猛るもの』が軍勢を率いて進撃していった事だけを憶えていて、いつの日か英雄が凱旋してくるという伝説を語り継いでいたけど、その伝説の渦中ではそっちの派閥の方がむしろ支持者だったというわけか。

 いずれにしても両者の確執は、たぶん『吠え猛るもの』を巡って対立したところで更に悪化して、完全に袂を分かつ結果になってしまったのかもしれない。
 しかしその場合、両者が共に対立の決定打になってしまった『吠え猛るもの』を英雄として語り継ぎ、互いの敵視だけを受け継いでいたと言う事になるな。
 俗に『良い英雄は死んだ英雄だけだ』という言葉があったと聞くが、ある意味で『吠え猛るもの』は道半ばにしてここで斃れたからこそ、同族達には英雄としての姿だけが残ったと言えるのかもしれない。
 まあオレが去った後で勝手に『女神』だの何だの、望みもしないのに崇拝されてしまうのも、オレ自身がいないので適当に自分達に都合のいい姿をでっち上げているのだろうと考えるとあんまり違いはないのかもしれないな。

「とにかく先ほど了承してもらったように、この地に彼らを棲まわせたいと思っています。他の霊体はどうですか?」
『心配せずとも、吾を含めて生きている人間をどうにか出来る程の力を持つものは、ここには残っておらんよ。何しろずっと前からたまにシャーマンが来て僅かに礼拝されるぐらいだったからな』

 この世界では崇拝もされないのに、強力な力を持っている存在は極めて希にしか存在しないからな。
 この廃虚にいる霊体達も同じだとすれば、オレにとっては一安心だ。
 オレが立ち去ってもテルモー達が襲われる心配はしなくて済むという事だから。

『ふう……我が同胞には声が届かず、部外者であるはずのそなたしか聞こえぬとは、吾も落ちぶれたものよ』
「いえ。むしろそれが普通ですよ」

 何しろイロール神の声がオレに届くようになったのが、望みもしないのに数多くの信徒を『獲得してしまった』後の事だからな。
 シャーマンのようにそれが本職ならばいざ知らず、テルモー達に声が届かないのはむしろ当たり前なのだ。
 しかしこれまで『隠されていた真実』に出会った事は何度もあったけど、誰も隠す意図など無かったにも関わらず、やっぱり真実とは勝手に歪んでいくものなんだな。
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