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第12章 強奪の地にて
第337話 過去に起きた事は
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ちょっと前にオレが関わった廃虚の名はバッド・ディールだったがロブ・エッグとは更に嫌そうな名前である。
いや。元の世界で『卵泥棒』と呼ばれた恐竜がいたけど、その理由は最初に化石が発見されたとき、卵の横にいたので『卵をエサにしている』と見られたからだった。
しかし後になって実はその卵は『卵泥棒』の卵であり、件の化石は『卵を守ろうとしていた』としていたにも関わらず、濡れ衣で『卵泥棒』とされてしまったという話があった。
ひょっとするとロブ・エッグも言いがかりなのかもしれないぞ。
そしてそんなオレの表情に気付いたのか、店の主人は諭すように話を続ける。
「断っておくが、もともとあそこはそんな名前じゃなかったんだぞ。一五年前にあの町が出来たときは――」
「待って下さい。あの廃虚は一五年前に出来た町なんですか?」
それだけの期間で城壁付きの町が一つ出来て、それで今では殆ど破壊されているってどういうことだよ?
しかも廃虚になったのは何年も前らしいから、とんでもない浮き沈みだな。
さっきのロブ・エッグというロクでもなさそうな名前に深く関係あるのは間違いないな。
「ああそうだ」
「そうするとあなたはそのロブ・エッグで何があったのかも見ているんですよね。いったいあそこでは何があったんですか?」
「お前さんはまったく向こう見ずだな……俺達は思い出すのも恐ろしいというのに……」
主人は本当に思い出すだけでも恐ろしいと言わんばかり、ブルッとその身を震わせる。
「もともとあの町はこの近辺が開拓されたときに、その中心として建設されたのさ。そのときはバラストールという名前だった ―― 今ではその名で呼ぶ奴は俺のようにずっと住んでいる人間だけだがな」
ここで男はチラと廃虚の方向に視線を向ける。もちろん建物の中だから、見えるはずも無いけど、十年かそこら前に繁栄していた時の事を想いだしているのだろうか。
「町が出来てすぐの事だ、あの河の上流から大きな丸いものが流れてきたんだ」
「丸いもの……卵のようなものだったんですか?」
ロブ・エッグという名前の由来がその『丸いもの』らしいな。
「俺も近くで直に見た事があるわけじゃないから、本当に卵の形をしていたかどうかは知らねえ。だが『丸いもの』は船ほどの大きさがあったけど、強い魔力を持った紋様が施されていて、近づくものを追い払う力があったから、町が出来る前からここに住んでいた連中は関わりになろうとしていなかったそうだ」
「つまりバラストールの町は違ったんですか」
「ああそうだ。結構激しい戦いになったそうだが、最後にはその魔力を抑えて『丸いもの』を町の中にある河に面した港に引き上げて解体したんだ」
河を覆うように町が出来ていたから、言ってみればその流れてきたものをその全力で迎え撃つ事が出来たということなんだろうな。
まあ幾ら凄い魔力で守っていたとしても、町そのもので立ち向かわれたらひとたまりもなかったということか。
「解体したそれは本当にスゲえものだったらしい。まず表面の紋様に込められた魔力は大したもんで、加工してつくった物品はそんじょそこいらの代物とは桁が違う力が秘められていたそうだ」
そういえば、さっき出会った槍の男が持っていた槍の切っ先が、金属ではなかったけどひょっとしたらその加工物だったのかな。
そうだとしたらやっぱり只者ではなかったという事になるぞ。
「中身のドロリとした液体の方はまるで神々の食事かと思えるほどの美味だった上に、喰ったものには大変な魔力を与えたそうだ」
外殻に強力な魔力が込められていて、内部のドロリとした液体は食べたものに凄い力を与えたって?
聞くだけでヤバそうな雰囲気がぷんぷん漂ってくるんですけど。
「しかも『丸いもの』はそれからも何度か流れてきてな。その都度、あそこでは町を挙げて迎え撃ち、拾い上げては解体していたんだ」
「あのう……それについて反対する人はいなかったんですか?」
「そりゃ中にはいたかもしれねえが、みんな目の色を変えていたからな。なにしろさっき言ったように魔力のこもった殻を加工したものは逸品として、目の玉が飛び出る程の値をつけてもお大尽達が目の色を変えて買い求めたそうだ」
主人の言葉にはかなり力がこもっている。
たぶんあの廃虚の事について恐れがあるのは確かにしても、やっぱり本人は結構話し好きで、誰かに話して聞かせたかったところもあるんだろうな。
「そして中身の方は『一口でいいから食べさせて欲しい』と大金を積んで懇願する貴族や大商人がひっきりなしにやってきていたさ。町の一角ではそんなお偉いさんに食べさせるための贅を尽くした料理を出す店が軒を連ねていて、そこでは一食で俺達の人生全てで稼ぐ金が吹っ飛ぶような料理が出ていたらしいぜ」
ここで主人は小さくため息をつく。
それにはどこか過去を懐かしむような、そして悲しむような、そんな雰囲気が漂っているように感じられた。
「そんなわけで『丸いもの』に関わるのは文字通り町の目玉となってな、噂が噂を呼び遙か遠方から『戦うためにやってきた兵士』だの『腕の立つ料理人』だのと大勢の人間が押しかけてバラストールの町はあっという間に大きくなり、俺たちもそれでかなり潤ったもんだったぜ」
なるほど。その『丸いもの』がらみが莫大な富を生み出す、一大産業になってしまったということか。
この村の建物が結構、立派なのもそのおこぼれに預かっていたかららしい。
だから警鐘を鳴らす人がいても、殆どは聞く耳もたなくなっていたんだろう。
元の世界でもいわゆる『バブル経済』で『こんなことをしていたら、近い将来に間違いなく破綻するぞ』と警鐘を鳴らす人間がいても、殆どの人間がそれに踊って破綻に突き進んでしまったという話は世界中にあったからな。
「そしてそんな事が数年続いたところで、その繁栄は一日で終わっちまった。いや。何もかもが滅んでしまったんだ」
ここで宿屋の主人は向かいの建物の屋根にそびえる飾りにチラと怯えた視線を注いでいた。
いや。元の世界で『卵泥棒』と呼ばれた恐竜がいたけど、その理由は最初に化石が発見されたとき、卵の横にいたので『卵をエサにしている』と見られたからだった。
しかし後になって実はその卵は『卵泥棒』の卵であり、件の化石は『卵を守ろうとしていた』としていたにも関わらず、濡れ衣で『卵泥棒』とされてしまったという話があった。
ひょっとするとロブ・エッグも言いがかりなのかもしれないぞ。
そしてそんなオレの表情に気付いたのか、店の主人は諭すように話を続ける。
「断っておくが、もともとあそこはそんな名前じゃなかったんだぞ。一五年前にあの町が出来たときは――」
「待って下さい。あの廃虚は一五年前に出来た町なんですか?」
それだけの期間で城壁付きの町が一つ出来て、それで今では殆ど破壊されているってどういうことだよ?
しかも廃虚になったのは何年も前らしいから、とんでもない浮き沈みだな。
さっきのロブ・エッグというロクでもなさそうな名前に深く関係あるのは間違いないな。
「ああそうだ」
「そうするとあなたはそのロブ・エッグで何があったのかも見ているんですよね。いったいあそこでは何があったんですか?」
「お前さんはまったく向こう見ずだな……俺達は思い出すのも恐ろしいというのに……」
主人は本当に思い出すだけでも恐ろしいと言わんばかり、ブルッとその身を震わせる。
「もともとあの町はこの近辺が開拓されたときに、その中心として建設されたのさ。そのときはバラストールという名前だった ―― 今ではその名で呼ぶ奴は俺のようにずっと住んでいる人間だけだがな」
ここで男はチラと廃虚の方向に視線を向ける。もちろん建物の中だから、見えるはずも無いけど、十年かそこら前に繁栄していた時の事を想いだしているのだろうか。
「町が出来てすぐの事だ、あの河の上流から大きな丸いものが流れてきたんだ」
「丸いもの……卵のようなものだったんですか?」
ロブ・エッグという名前の由来がその『丸いもの』らしいな。
「俺も近くで直に見た事があるわけじゃないから、本当に卵の形をしていたかどうかは知らねえ。だが『丸いもの』は船ほどの大きさがあったけど、強い魔力を持った紋様が施されていて、近づくものを追い払う力があったから、町が出来る前からここに住んでいた連中は関わりになろうとしていなかったそうだ」
「つまりバラストールの町は違ったんですか」
「ああそうだ。結構激しい戦いになったそうだが、最後にはその魔力を抑えて『丸いもの』を町の中にある河に面した港に引き上げて解体したんだ」
河を覆うように町が出来ていたから、言ってみればその流れてきたものをその全力で迎え撃つ事が出来たということなんだろうな。
まあ幾ら凄い魔力で守っていたとしても、町そのもので立ち向かわれたらひとたまりもなかったということか。
「解体したそれは本当にスゲえものだったらしい。まず表面の紋様に込められた魔力は大したもんで、加工してつくった物品はそんじょそこいらの代物とは桁が違う力が秘められていたそうだ」
そういえば、さっき出会った槍の男が持っていた槍の切っ先が、金属ではなかったけどひょっとしたらその加工物だったのかな。
そうだとしたらやっぱり只者ではなかったという事になるぞ。
「中身のドロリとした液体の方はまるで神々の食事かと思えるほどの美味だった上に、喰ったものには大変な魔力を与えたそうだ」
外殻に強力な魔力が込められていて、内部のドロリとした液体は食べたものに凄い力を与えたって?
聞くだけでヤバそうな雰囲気がぷんぷん漂ってくるんですけど。
「しかも『丸いもの』はそれからも何度か流れてきてな。その都度、あそこでは町を挙げて迎え撃ち、拾い上げては解体していたんだ」
「あのう……それについて反対する人はいなかったんですか?」
「そりゃ中にはいたかもしれねえが、みんな目の色を変えていたからな。なにしろさっき言ったように魔力のこもった殻を加工したものは逸品として、目の玉が飛び出る程の値をつけてもお大尽達が目の色を変えて買い求めたそうだ」
主人の言葉にはかなり力がこもっている。
たぶんあの廃虚の事について恐れがあるのは確かにしても、やっぱり本人は結構話し好きで、誰かに話して聞かせたかったところもあるんだろうな。
「そして中身の方は『一口でいいから食べさせて欲しい』と大金を積んで懇願する貴族や大商人がひっきりなしにやってきていたさ。町の一角ではそんなお偉いさんに食べさせるための贅を尽くした料理を出す店が軒を連ねていて、そこでは一食で俺達の人生全てで稼ぐ金が吹っ飛ぶような料理が出ていたらしいぜ」
ここで主人は小さくため息をつく。
それにはどこか過去を懐かしむような、そして悲しむような、そんな雰囲気が漂っているように感じられた。
「そんなわけで『丸いもの』に関わるのは文字通り町の目玉となってな、噂が噂を呼び遙か遠方から『戦うためにやってきた兵士』だの『腕の立つ料理人』だのと大勢の人間が押しかけてバラストールの町はあっという間に大きくなり、俺たちもそれでかなり潤ったもんだったぜ」
なるほど。その『丸いもの』がらみが莫大な富を生み出す、一大産業になってしまったということか。
この村の建物が結構、立派なのもそのおこぼれに預かっていたかららしい。
だから警鐘を鳴らす人がいても、殆どは聞く耳もたなくなっていたんだろう。
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「そしてそんな事が数年続いたところで、その繁栄は一日で終わっちまった。いや。何もかもが滅んでしまったんだ」
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