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第12章 強奪の地にて
第347話 久しぶりに流れてきたものは
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オレはバラストール神に対して、どのように誘いをお断りしつつ、周辺住民と折り合いをつけるように誘導しようかとちょっとばかり悩んでいた。
だがそこでバラストール神は急に怪訝な表情を浮かべ、あらぬ方向に目を向ける。
「どうかしましたか」
『うむ。上流から何かが来るぞ』
言われて見れば視線はこのロブ・エッグの廃虚を貫く川の上流を向いているようだ。
「なぜそれが分かるんです」
街の神様だったのならば、廃墟と化していてもその中で起きたことについて知っていてもおかしくはないが、川の上流のことならば川の神様は知っていても、バラストール神の管轄外のはずだ。
『もともと吾はこの川の中州に宿っていて、中州にあった小さな港の守護精霊だったが、その周囲に街が建設されて、吾は街の守護神となったのだ。だからかつての名残で川を流れるものを察知することまではできる』
それならやっぱりあんたはドラゴンの卵を察知して、信徒たちに教えていたんだな?
いや。まあ信徒の要望に答えただけだろうし、別にこの神様が何もしなくても見つかったのは間違いないから大差はないだろう。
しかしわざわざ『何かが来る』と言うのが、ただの船だったりする事はあり得ない ―― まさか?!
「もしや……その流れてくる物というのは、以前にもここに流れてきたものなんじゃないでしょうね」
『さすがに細かい事までは分からん。我が領域の外にある事に変わりは無いからな。だがこれだけ離れていても感じられる魔力を有するものは滅多にないな』
ええい。そんな回りくどい言い方をせずにもっとハッキリ言ってくれ。
「それはつまり……その流れてくるものは『ドラゴンの卵』なんじゃないんですか」
『ああ。間違いはあるまいな』
やっぱりそうか!
だけどいったいどういうことなんだ?
数年前にこのバラストール=ロブ・エッグにて川を流れてくるドラゴンの卵の略奪が行われていたので、ドラゴンは怒ってバラストールを滅ぼし、卵を川に流すのは辞めてしまったのではなかったのか。
このような場合は――
『卵を流すのはドラゴンの伝統なのでそれを復活させた』
『以前に卵を流していたのとは別の勢力のドラゴンによるもの』
『何年も眠っていたとかの理由で事情を知らないドラゴンがいた』
云々の理由が考えられる。
いや。今は原因を考えてもしかたない。
問題なのは人間達がそのドラゴンの卵を略奪すれば、莫大な富が得られる事を知っていると言う事だ。
もちろん人間も今ではそれがドラゴンの卵であり、手を出したら親ドラゴンの怒りと報復を招く事も分かっている。
しかしそれだけで手出しする相手が出ない事は誰にも保証出来ない。
オレはひとまずバラストール神に対し、慌ただしく頭を下げる。
「すみません! 今はお別れです!」
『そうか……名残惜しいな。また来てくれ』
はた目には暢気にも見える態度だけど、たぶんこの元神にとっては『領域外の余所事』であり、そこに信徒もいない以上、関心もないのだろう。
自分の街を破壊し、信徒を滅ぼしたドラゴンに対する怒りは有していたが、もはや守護神として守る相手もおらず、後はどうなろうと知ったこっちゃないのかもしれない。
「それでは失礼します!」
オレはバラストール神に別れを告げると、城壁の外の市場に向けて駆け出した。
さきほどの市場に足を踏みいれると予想通り大騒ぎになっていた。
多くの人間は右往左往しつつ、緊張にその顔を引き締めていた。
まるで天災が今にも降りかかりそうな雰囲気で、何か切っ掛けがあればパニックに陥りかねない様子だ。
しかし問題なのはそういう一般人ではない。
少し離れた広場の片隅では武装したグループ同士がにらみ合っていたのだ。
「おい! お前ら武器を持ってどうするつもりだ!」
「もちろん俺達はドラゴンの卵を余計な連中から守るんだよ」
「嘘をつくな! どうせ卵を独り占めして大もうけしようと思っているんだろう」
「それはお前達の方だろうが!」
うう。どっちもドラゴンの卵を略奪しようとしているようにしか見えません。
もちろん本当にドラゴンの卵を守ろうとしている人間もいるのは間違いない。
彼らの怒りを買ったらどうなるかは、この地にいる人間ならば誰もが身に染みていることだからな。
しかしドラゴンの卵を手に入れると、うまくすれば一生遊んで暮らせる金が手に入るのだ。
つまり『卵を手に入れ一儲けしてこの地をさっさと逃げ出せばいい、ドラゴンが怒り狂おうとその後の事は関係無い』と考えている人間は決して少なくは無いはずだ。
残念ながら欲に目がくらんだ人間の行動は、どの世界でも変わらず浅はかで、そして後先を考えない。
たぶんここから逃げ出そうとしている人間の多くも、そういう輩の行動を恐れてのものなんだろうな。
また欲ではなく、かつてバラストールを滅ぼしたドラゴンに対する復讐を考え、ドラゴン自身に手を出せないから卵を壊そうとする相手もいるかもしれない。
ただオレとすれば、何とかドラゴンの卵を穏便に通過させるしか選択肢はないのだ。
ドラゴンの卵が流れてくるという、川から離れる人の波と、川に押し寄せる人の波の両方が動く中、オレは川の方に向かう。
そしてこの時、オレの視界の片隅には先ほど別れた『ドラゴンの卵の殻でつくった槍の穂先』を持った男が、同じ方向に駆け出しているのが入っていた。
だがそこでバラストール神は急に怪訝な表情を浮かべ、あらぬ方向に目を向ける。
「どうかしましたか」
『うむ。上流から何かが来るぞ』
言われて見れば視線はこのロブ・エッグの廃虚を貫く川の上流を向いているようだ。
「なぜそれが分かるんです」
街の神様だったのならば、廃墟と化していてもその中で起きたことについて知っていてもおかしくはないが、川の上流のことならば川の神様は知っていても、バラストール神の管轄外のはずだ。
『もともと吾はこの川の中州に宿っていて、中州にあった小さな港の守護精霊だったが、その周囲に街が建設されて、吾は街の守護神となったのだ。だからかつての名残で川を流れるものを察知することまではできる』
それならやっぱりあんたはドラゴンの卵を察知して、信徒たちに教えていたんだな?
いや。まあ信徒の要望に答えただけだろうし、別にこの神様が何もしなくても見つかったのは間違いないから大差はないだろう。
しかしわざわざ『何かが来る』と言うのが、ただの船だったりする事はあり得ない ―― まさか?!
「もしや……その流れてくる物というのは、以前にもここに流れてきたものなんじゃないでしょうね」
『さすがに細かい事までは分からん。我が領域の外にある事に変わりは無いからな。だがこれだけ離れていても感じられる魔力を有するものは滅多にないな』
ええい。そんな回りくどい言い方をせずにもっとハッキリ言ってくれ。
「それはつまり……その流れてくるものは『ドラゴンの卵』なんじゃないんですか」
『ああ。間違いはあるまいな』
やっぱりそうか!
だけどいったいどういうことなんだ?
数年前にこのバラストール=ロブ・エッグにて川を流れてくるドラゴンの卵の略奪が行われていたので、ドラゴンは怒ってバラストールを滅ぼし、卵を川に流すのは辞めてしまったのではなかったのか。
このような場合は――
『卵を流すのはドラゴンの伝統なのでそれを復活させた』
『以前に卵を流していたのとは別の勢力のドラゴンによるもの』
『何年も眠っていたとかの理由で事情を知らないドラゴンがいた』
云々の理由が考えられる。
いや。今は原因を考えてもしかたない。
問題なのは人間達がそのドラゴンの卵を略奪すれば、莫大な富が得られる事を知っていると言う事だ。
もちろん人間も今ではそれがドラゴンの卵であり、手を出したら親ドラゴンの怒りと報復を招く事も分かっている。
しかしそれだけで手出しする相手が出ない事は誰にも保証出来ない。
オレはひとまずバラストール神に対し、慌ただしく頭を下げる。
「すみません! 今はお別れです!」
『そうか……名残惜しいな。また来てくれ』
はた目には暢気にも見える態度だけど、たぶんこの元神にとっては『領域外の余所事』であり、そこに信徒もいない以上、関心もないのだろう。
自分の街を破壊し、信徒を滅ぼしたドラゴンに対する怒りは有していたが、もはや守護神として守る相手もおらず、後はどうなろうと知ったこっちゃないのかもしれない。
「それでは失礼します!」
オレはバラストール神に別れを告げると、城壁の外の市場に向けて駆け出した。
さきほどの市場に足を踏みいれると予想通り大騒ぎになっていた。
多くの人間は右往左往しつつ、緊張にその顔を引き締めていた。
まるで天災が今にも降りかかりそうな雰囲気で、何か切っ掛けがあればパニックに陥りかねない様子だ。
しかし問題なのはそういう一般人ではない。
少し離れた広場の片隅では武装したグループ同士がにらみ合っていたのだ。
「おい! お前ら武器を持ってどうするつもりだ!」
「もちろん俺達はドラゴンの卵を余計な連中から守るんだよ」
「嘘をつくな! どうせ卵を独り占めして大もうけしようと思っているんだろう」
「それはお前達の方だろうが!」
うう。どっちもドラゴンの卵を略奪しようとしているようにしか見えません。
もちろん本当にドラゴンの卵を守ろうとしている人間もいるのは間違いない。
彼らの怒りを買ったらどうなるかは、この地にいる人間ならば誰もが身に染みていることだからな。
しかしドラゴンの卵を手に入れると、うまくすれば一生遊んで暮らせる金が手に入るのだ。
つまり『卵を手に入れ一儲けしてこの地をさっさと逃げ出せばいい、ドラゴンが怒り狂おうとその後の事は関係無い』と考えている人間は決して少なくは無いはずだ。
残念ながら欲に目がくらんだ人間の行動は、どの世界でも変わらず浅はかで、そして後先を考えない。
たぶんここから逃げ出そうとしている人間の多くも、そういう輩の行動を恐れてのものなんだろうな。
また欲ではなく、かつてバラストールを滅ぼしたドラゴンに対する復讐を考え、ドラゴン自身に手を出せないから卵を壊そうとする相手もいるかもしれない。
ただオレとすれば、何とかドラゴンの卵を穏便に通過させるしか選択肢はないのだ。
ドラゴンの卵が流れてくるという、川から離れる人の波と、川に押し寄せる人の波の両方が動く中、オレは川の方に向かう。
そしてこの時、オレの視界の片隅には先ほど別れた『ドラゴンの卵の殻でつくった槍の穂先』を持った男が、同じ方向に駆け出しているのが入っていた。
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