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第12章 強奪の地にて
第374話 コロニウスの真意とは
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しばしの後、人足と家畜が綱で引っ張るソリに乗ってオレと卵は村の中に進んでいた。
卵には一応、幌をかぶせて紋様が周囲からは見えないようにしている。
ただそのままにするわけにもいかないので、オレはソリに一緒に乗っていざという時にはその幌をすぐに取り除けるようにはしておいた。
道沿いに運んでいるから当然と言えば当然なのだが周囲から否応なしに好奇、そして好色な視線を注がれるのは気分がよくないが、ここは我慢するしかないだろう。
幸いにも心配していた襲撃は今のところは無かったが、ここで日が暮れてくる。
残念ながら卵を載せたソリは人間が歩くよりずっと遅い動きなのだから仕方が無いか。
そうすると卵は柵で覆われた囲いの中にいつの間にか運び入れられ、そこで引っ張っていた人足と家畜たちは去って行く。
「もうこれ以上の作業は無理ですね。この囲いの中に卵を置いておきましょう」
コロニウスは今までとは変わらずこちらに愛想良く話かけてくるが、いくら何でも手回しが良すぎる気がするぞ。
「それではアルタシャ様はこちらにいらしてくれますか? ささやかですが歓待の宴を用意させていますので」
「ご厚意には感謝しますけど、わたしはこの卵の元を離れるわけにはいかないのですよ」
「大丈夫です。この卵はこれから我らが守りますからね」
え? コロニウスはいま何と言った?
この言い方は今晩だけ守るという意味ではなく、今後ずっとここに卵を置いて守るという意味に聞こえるぞ。
「それはどういうおつもりですか? まさか約束を破る気ですか!」
オレは血相を変えて問いかけるが、コロニウスは全く動じる事は無かった。
「ご心配なく。約束したように危害を加える気もなければ、売る気もありません。ちゃんとここでドラゴンが生まれるまで守りますよ」
「え? ここでですか?」
「もちろん卵の間だけではありません。生まれたドラゴンの幼生も十分に育つまで我らが守りましょう」
あっさりコロニウスは言い切る。
それは間違いなく、最初からそのつもりだったからだ。
「ちょっと待って下さい。それには何年かかるか――」
「もちろんドラゴンが成長するまで、何年、いや何十年もかかるかもしれませんけど、それは覚悟の上ですよ」
しまった! オレは卵を破壊されることや、金に換える事ばかり考えていたけど、生まれたドラゴンを目当てにしている事は盲点だった。
精霊からドラゴンが親元に帰るだけで数年かかると聞いていたから、オレとしてはとてもやってられない長い期間だけど、この地にずっと留まっている領主だったら、それぐらいの時間をかけても十分に見返りがあるということか。
「もちろん生まれたドラゴンは丁重に扱いますとも。ちゃんと敬意を払い、この地と我らの守護者となってもらうつもりですからね」
もちろんコロニウスの言っている事は分からないでもない。
しかしこの世界でそんなことが可能だろうか。
ドラゴンが卵を川に流すのは、子供に試練を与えて戻ってきた強い子どもだけを育てるためだとしたら、人間ごときに利用される子どもは切り捨てるかもしれないし、逆に怒って攻めてくるかもしれない。
そこはオレには判断がつきかねる。
いずれにせよそのような事がドラゴン本来の生き方とはかけ離れているのは間違いないだろう。
オレはここで精霊の方に問いかける。
「一つ尋ねますけど、人間が生まれたドラゴンの子どもを育てる事は可能ですか?」
『それは可能だろう』
おお。それは意外だ。
いくら何でも人間の手に負えるとは思っていなかったからな。
『ただし数年の間だけだが』
「え? たったそれだけなのですか?」
『当たり前だ。成長したドラゴンが自分よりも遥かに小さく力も劣る存在に従うと思うか?』
言われてみればそりゃそうだ。
これが知性の無い獣ならいざ知らず、ドラゴンには相応の頭脳があるのだから、成長したら人間の言う事なんか聞くはずが無い。
しかし精霊の言葉はコロニウスに聞こえないので、ここはオレが代弁するしかないだろう。
「コロニウスさんの考えておられる事は分かりますよ。しかしドラゴンがそうそう人間の思うとおりに行動などしてくれません。危険極まり無いです」
「ご心配なく。私とて何の考えもなく、こんな事をしているのではありませんよ」
そう言ってコロニウスは何冊かの古びた書籍を持ち出してくる。
「ドラゴンについては私なりにいろいろと調べました」
「まさかその本にはドラゴンの飼い方が載っているのですか?」
「さすがに信憑性のある本にはそのような記述はありませんな」
コロニウスは少しばかり苦笑しつつ肩をすくめる。
「ですが東方ではドラゴンを崇拝して、自らの身をドラゴンと化す教団も存在するとか」
その話はちょっと前にライバンスでホン・イールから聞かされた事があるな。
「それだけでなく以前にドラゴンに滅ぼされた上流のロブ・エッグでもドラゴンを崇拝する教団が幾つも出来ているそうですな。私としてはこの卵、そして生まれた幼生を使って、本物のドラゴンの教団をつくるつもりなのですよ」
「そしてあなたがその教祖として、信者達を支配するわけですか……」
「決して彼らにも悪い話ではないでしょう。この地がドラゴンに守られて、発展すればきっといい事ずくめですよ」
うう。浅ましい欲に駆られて卵を金に換えるために攻撃してくる人間ばかり見てきたけど、コロニウスのような勘違いしている相手の方がむしろタチが悪いぞ。
しかしオレではここから卵を動かす事も出来ないのだ。
自ら虎口に飛び込んでしまった自分の迂闊さにオレは思わず唇をかみしめていた。
卵には一応、幌をかぶせて紋様が周囲からは見えないようにしている。
ただそのままにするわけにもいかないので、オレはソリに一緒に乗っていざという時にはその幌をすぐに取り除けるようにはしておいた。
道沿いに運んでいるから当然と言えば当然なのだが周囲から否応なしに好奇、そして好色な視線を注がれるのは気分がよくないが、ここは我慢するしかないだろう。
幸いにも心配していた襲撃は今のところは無かったが、ここで日が暮れてくる。
残念ながら卵を載せたソリは人間が歩くよりずっと遅い動きなのだから仕方が無いか。
そうすると卵は柵で覆われた囲いの中にいつの間にか運び入れられ、そこで引っ張っていた人足と家畜たちは去って行く。
「もうこれ以上の作業は無理ですね。この囲いの中に卵を置いておきましょう」
コロニウスは今までとは変わらずこちらに愛想良く話かけてくるが、いくら何でも手回しが良すぎる気がするぞ。
「それではアルタシャ様はこちらにいらしてくれますか? ささやかですが歓待の宴を用意させていますので」
「ご厚意には感謝しますけど、わたしはこの卵の元を離れるわけにはいかないのですよ」
「大丈夫です。この卵はこれから我らが守りますからね」
え? コロニウスはいま何と言った?
この言い方は今晩だけ守るという意味ではなく、今後ずっとここに卵を置いて守るという意味に聞こえるぞ。
「それはどういうおつもりですか? まさか約束を破る気ですか!」
オレは血相を変えて問いかけるが、コロニウスは全く動じる事は無かった。
「ご心配なく。約束したように危害を加える気もなければ、売る気もありません。ちゃんとここでドラゴンが生まれるまで守りますよ」
「え? ここでですか?」
「もちろん卵の間だけではありません。生まれたドラゴンの幼生も十分に育つまで我らが守りましょう」
あっさりコロニウスは言い切る。
それは間違いなく、最初からそのつもりだったからだ。
「ちょっと待って下さい。それには何年かかるか――」
「もちろんドラゴンが成長するまで、何年、いや何十年もかかるかもしれませんけど、それは覚悟の上ですよ」
しまった! オレは卵を破壊されることや、金に換える事ばかり考えていたけど、生まれたドラゴンを目当てにしている事は盲点だった。
精霊からドラゴンが親元に帰るだけで数年かかると聞いていたから、オレとしてはとてもやってられない長い期間だけど、この地にずっと留まっている領主だったら、それぐらいの時間をかけても十分に見返りがあるということか。
「もちろん生まれたドラゴンは丁重に扱いますとも。ちゃんと敬意を払い、この地と我らの守護者となってもらうつもりですからね」
もちろんコロニウスの言っている事は分からないでもない。
しかしこの世界でそんなことが可能だろうか。
ドラゴンが卵を川に流すのは、子供に試練を与えて戻ってきた強い子どもだけを育てるためだとしたら、人間ごときに利用される子どもは切り捨てるかもしれないし、逆に怒って攻めてくるかもしれない。
そこはオレには判断がつきかねる。
いずれにせよそのような事がドラゴン本来の生き方とはかけ離れているのは間違いないだろう。
オレはここで精霊の方に問いかける。
「一つ尋ねますけど、人間が生まれたドラゴンの子どもを育てる事は可能ですか?」
『それは可能だろう』
おお。それは意外だ。
いくら何でも人間の手に負えるとは思っていなかったからな。
『ただし数年の間だけだが』
「え? たったそれだけなのですか?」
『当たり前だ。成長したドラゴンが自分よりも遥かに小さく力も劣る存在に従うと思うか?』
言われてみればそりゃそうだ。
これが知性の無い獣ならいざ知らず、ドラゴンには相応の頭脳があるのだから、成長したら人間の言う事なんか聞くはずが無い。
しかし精霊の言葉はコロニウスに聞こえないので、ここはオレが代弁するしかないだろう。
「コロニウスさんの考えておられる事は分かりますよ。しかしドラゴンがそうそう人間の思うとおりに行動などしてくれません。危険極まり無いです」
「ご心配なく。私とて何の考えもなく、こんな事をしているのではありませんよ」
そう言ってコロニウスは何冊かの古びた書籍を持ち出してくる。
「ドラゴンについては私なりにいろいろと調べました」
「まさかその本にはドラゴンの飼い方が載っているのですか?」
「さすがに信憑性のある本にはそのような記述はありませんな」
コロニウスは少しばかり苦笑しつつ肩をすくめる。
「ですが東方ではドラゴンを崇拝して、自らの身をドラゴンと化す教団も存在するとか」
その話はちょっと前にライバンスでホン・イールから聞かされた事があるな。
「それだけでなく以前にドラゴンに滅ぼされた上流のロブ・エッグでもドラゴンを崇拝する教団が幾つも出来ているそうですな。私としてはこの卵、そして生まれた幼生を使って、本物のドラゴンの教団をつくるつもりなのですよ」
「そしてあなたがその教祖として、信者達を支配するわけですか……」
「決して彼らにも悪い話ではないでしょう。この地がドラゴンに守られて、発展すればきっといい事ずくめですよ」
うう。浅ましい欲に駆られて卵を金に換えるために攻撃してくる人間ばかり見てきたけど、コロニウスのような勘違いしている相手の方がむしろタチが悪いぞ。
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