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第13章 広大な平原の中で起きていた事
第451話 神様の格と信徒の心情と
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とりあえずパップス神が一応は立ち直ってくれたが、本来の目的はこの神の悩み事の解消ではないので、オレは勢い込んで問いかける。
「それでは本当に信徒達にかけあってくれるのですね?」
「ああ。しかしその先の事までは保証出来んぞ」
それは当然だろうな。神様の言葉ですら、人間が聞き入れず、ひどい結果になるというのも神話ではしばしばある話だ――聞き入れたけどやっぱりひどい目に遭うこともよくあるけどな。
「残念ながら未来の事までは我にも分からんからな。そしてその結果が悪ければ、この地にいつまでも固執する理由もない」
それはオレが勧めた事でもあるけど、いきなり放り出されるのも困る。
「結果が出るまでどれぐらい待てますか?」
「残念だが、あまり待てないぞ。先ほど言ったように、我はもう長年、我慢し続けてきたのだからな」
この神様は自分の守護するパップスが遊牧民に攻め滅ぼされるような事になっても構わないとまで、思い詰めていたからな。
いったん前向きに考えてはくれたが、それでうまくいかなければ、やっぱりすぐにでも飛び出してしまうか。
「そうだな。どこまで我慢出来るかと言えば――」
オレは固唾を呑んでパップス神の言葉を待つ。
「一〇年か二〇年か。せいぜいそれぐらいだ」
「あ……ありがとうございます」
まあ神様だったら一年が人間の一日感覚でもおかしくはない。
しかしオレのちょっとばかりかすれた感謝の声を聞いて、パップス神は少しばかり気を悪くしたように見える。
「そなたにとっても僅かな期間だろうに、つまらぬ世辞は不要だぞ」
この言い方だとオレもパップス神と同等に思われているのか。
自分では今でも神様のつもりはないんだけどなあ。
「とにかく元のところに戻るがよかろう。後はそなた次第だ」
「それでは失礼します」
オレが別れを述べた瞬間、周囲の景色がいきなり切り替わった。
「アルタシャ様。いったいどうされましたか?」
「いきなり立ちすくんだので驚いたぞ」
「え?」
気がつくとヌリアやターダがオレの顔を心配そうにのぞき込んでいた。
どうやら先ほどパップス神に会っていたのは、オレの精神だけで身体はこの場所で動きを止めていたらしい。
以前にファーエンドやバラストールの街の神様と会った時とは、また違っているけど、こんなところにも神様毎の特色があるんだなあ。
まあ隠しても仕方ないので、正直に答えるとしよう。
「実はつい先ほど、パップス神に会ってきたんです」
普通だったらとても信じないどころか、信徒でも無いのにその神様の寺院でそんな事を口にしたら『冒涜』と受け止められるかもしれないな。
「まことですか?! いや……普通の様子ではないとは思っておりましたが……」
「なんだと? やはりアルタシャは凄いな」
驚きはしても、疑う様子がないのは『オレの人徳ゆえ』だったらいいなあ。
「パップス神は何と仰せだったのですか?」
ヌリアは特に興味があるようだ。まあ信徒でない事はターダ達と同じでも、この街に住んでいるのだから当たり前か。
しかし先ほどのパップス神との会話をそうそう他人に明かすわけにはいかない。
おまけにここはくだんの神の神殿だから、ウソをついたらパップス神にバレバレだ。
そうなるとやることは一つだけ。
これもいつもの事だがひとまず先送りだ。
「申し訳ありませんが、いまそれを明かすワケにはいきません。ご容赦ください」
「分かりました。あなた様のような偉大な英雄であれば、街の神程度であれば接するのは雑作もないのでしょうし、そこで何を話あったのかは我らが口を挟むところではありません」
「そうですか……」
ヌリアの言葉にちょっとばかり引っかかるところがあって、オレは曖昧な言葉を返す。
「どうされましたか?」
「いえ。何でもありません」
彼女に言わせればパップス神は『街の神程度』らしい。
どこかこの神を見下したところが感じられる。
ヌリアの崇拝する『白き貴婦人』ことイロールは大陸で広く信仰され、大国の政治にも影響を与えるほどの大女神だからな。
神の格でも、信者組織の規模でも圧倒的な差があるのは確かだろう。
しかしヌリア自身はあくまでも人間だし、もっと言えばオレが以前に何度か見かけた『聖女教会』の大寺院とは比較にならないちっぽけな社を預かっているに過ぎないわけで、少なくともパップス神を格下扱い出来るような立場ではないはずだ。
このあたりは元の世界で言えば『大企業の田舎にある支店長が、地元中小企業の社長に対してどこか見下した態度を示す』ようなものだろうか。
たぶん『定めし者』や、その実の息子である各部族の始祖を礼拝しにやってきた遊牧民達も似たようなものだったので、パップス神は嫌気がさしてしまったのだな。
普通の街の神様だったら、さほど気にしないかもしれないが、自分が『定めし者に拾われた捨て子』であって、血の繋がらない兄弟の子孫からしょっちゅう見下された態度を取られるのは辛いところなのだろう。
敢えて例えるなら普通に親から小さな店を受け継いだ店主だったら、大企業から格下扱いされても気にしないけど、親族が大企業のトップや重役になっていて、一応は『トップの息子』だけど血が繋がっていない自分がことある毎に比較され続けるようなものなんだな。
こういうところは残念ながら、オレにはどうする事も出来ないし、いま取り組むべき事はもっと別にある。
決意を固めてパップス神の神殿の奥に向かったところで、またしてもいろいろと面倒な事が起きるのだった。
「それでは本当に信徒達にかけあってくれるのですね?」
「ああ。しかしその先の事までは保証出来んぞ」
それは当然だろうな。神様の言葉ですら、人間が聞き入れず、ひどい結果になるというのも神話ではしばしばある話だ――聞き入れたけどやっぱりひどい目に遭うこともよくあるけどな。
「残念ながら未来の事までは我にも分からんからな。そしてその結果が悪ければ、この地にいつまでも固執する理由もない」
それはオレが勧めた事でもあるけど、いきなり放り出されるのも困る。
「結果が出るまでどれぐらい待てますか?」
「残念だが、あまり待てないぞ。先ほど言ったように、我はもう長年、我慢し続けてきたのだからな」
この神様は自分の守護するパップスが遊牧民に攻め滅ぼされるような事になっても構わないとまで、思い詰めていたからな。
いったん前向きに考えてはくれたが、それでうまくいかなければ、やっぱりすぐにでも飛び出してしまうか。
「そうだな。どこまで我慢出来るかと言えば――」
オレは固唾を呑んでパップス神の言葉を待つ。
「一〇年か二〇年か。せいぜいそれぐらいだ」
「あ……ありがとうございます」
まあ神様だったら一年が人間の一日感覚でもおかしくはない。
しかしオレのちょっとばかりかすれた感謝の声を聞いて、パップス神は少しばかり気を悪くしたように見える。
「そなたにとっても僅かな期間だろうに、つまらぬ世辞は不要だぞ」
この言い方だとオレもパップス神と同等に思われているのか。
自分では今でも神様のつもりはないんだけどなあ。
「とにかく元のところに戻るがよかろう。後はそなた次第だ」
「それでは失礼します」
オレが別れを述べた瞬間、周囲の景色がいきなり切り替わった。
「アルタシャ様。いったいどうされましたか?」
「いきなり立ちすくんだので驚いたぞ」
「え?」
気がつくとヌリアやターダがオレの顔を心配そうにのぞき込んでいた。
どうやら先ほどパップス神に会っていたのは、オレの精神だけで身体はこの場所で動きを止めていたらしい。
以前にファーエンドやバラストールの街の神様と会った時とは、また違っているけど、こんなところにも神様毎の特色があるんだなあ。
まあ隠しても仕方ないので、正直に答えるとしよう。
「実はつい先ほど、パップス神に会ってきたんです」
普通だったらとても信じないどころか、信徒でも無いのにその神様の寺院でそんな事を口にしたら『冒涜』と受け止められるかもしれないな。
「まことですか?! いや……普通の様子ではないとは思っておりましたが……」
「なんだと? やはりアルタシャは凄いな」
驚きはしても、疑う様子がないのは『オレの人徳ゆえ』だったらいいなあ。
「パップス神は何と仰せだったのですか?」
ヌリアは特に興味があるようだ。まあ信徒でない事はターダ達と同じでも、この街に住んでいるのだから当たり前か。
しかし先ほどのパップス神との会話をそうそう他人に明かすわけにはいかない。
おまけにここはくだんの神の神殿だから、ウソをついたらパップス神にバレバレだ。
そうなるとやることは一つだけ。
これもいつもの事だがひとまず先送りだ。
「申し訳ありませんが、いまそれを明かすワケにはいきません。ご容赦ください」
「分かりました。あなた様のような偉大な英雄であれば、街の神程度であれば接するのは雑作もないのでしょうし、そこで何を話あったのかは我らが口を挟むところではありません」
「そうですか……」
ヌリアの言葉にちょっとばかり引っかかるところがあって、オレは曖昧な言葉を返す。
「どうされましたか?」
「いえ。何でもありません」
彼女に言わせればパップス神は『街の神程度』らしい。
どこかこの神を見下したところが感じられる。
ヌリアの崇拝する『白き貴婦人』ことイロールは大陸で広く信仰され、大国の政治にも影響を与えるほどの大女神だからな。
神の格でも、信者組織の規模でも圧倒的な差があるのは確かだろう。
しかしヌリア自身はあくまでも人間だし、もっと言えばオレが以前に何度か見かけた『聖女教会』の大寺院とは比較にならないちっぽけな社を預かっているに過ぎないわけで、少なくともパップス神を格下扱い出来るような立場ではないはずだ。
このあたりは元の世界で言えば『大企業の田舎にある支店長が、地元中小企業の社長に対してどこか見下した態度を示す』ようなものだろうか。
たぶん『定めし者』や、その実の息子である各部族の始祖を礼拝しにやってきた遊牧民達も似たようなものだったので、パップス神は嫌気がさしてしまったのだな。
普通の街の神様だったら、さほど気にしないかもしれないが、自分が『定めし者に拾われた捨て子』であって、血の繋がらない兄弟の子孫からしょっちゅう見下された態度を取られるのは辛いところなのだろう。
敢えて例えるなら普通に親から小さな店を受け継いだ店主だったら、大企業から格下扱いされても気にしないけど、親族が大企業のトップや重役になっていて、一応は『トップの息子』だけど血が繋がっていない自分がことある毎に比較され続けるようなものなんだな。
こういうところは残念ながら、オレにはどうする事も出来ないし、いま取り組むべき事はもっと別にある。
決意を固めてパップス神の神殿の奥に向かったところで、またしてもいろいろと面倒な事が起きるのだった。
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