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第14章 拳の王
第509話 またしても化身となって
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目の前で今まさに殺し合いが始まりかねない状況で、しかもオレの力ではどうしようもない。
こうなっては出来ることはただ一つだけだ。
まったくもって望ましく無いけど、オレの守護女神を自称しているイロールの助けを呼ぶしか無い。
何しろあの女神は殆どこの世界との接点が無いらしいので、オレが呼ぶと――場合によっては呼ばなくとも――すぐにこっちと連絡を取りに来るからな。
どうもオレとの繋がりから、こちらの心を読むとまではいかなくとも、感情の動きぐらいは分かるらしいので、ピンチになったらこちらへの干渉を強めているらしいのだ。
『何か御用ですか?』
まだ呼んでないのに、オレの心にいつもの声が響いてくる。
どうやら以前と同じくオレの呼びかけを待っていたらしい。
まあいい。望みもしないのに無理矢理、精神に介入してくる『地獄の轟き』よりはマシと考えよう。
「状況を説明している暇はありません。すみませんが力を貸して下さい」
『いいですよ。分かりました』
相変わらずその辺りは大ざっぱだな。
まあ非常に不本意ながらオレはこの女神の信仰を広めるにあたって、大きな役割を『果たしてしまっている』けど、その貢献を考えれば十分にギブアンドテイクの関係だ。
そんなわけで力を借りるにあたって特にありがたいとも、申し訳ないとも思っていないが、その都度どうもあの女神の影響をより強く受けるようになっている感じがする。
しかしそれでも頼らざるを得ないのだから、薬物中毒かはたまたヒーローもので言えば『心身をむしばむパワーアップ』みたいなものだろうか。
そしてオレの身体に今までと同じく『何か』が流れ込んで来て、それと共に一気に視覚が切り替わる。
毎度の事だが女神の化身となったので、外見的には一気に成長して二十代前半程度になって背が高くなったのだ。
それと胸も成長するのはいつも通りだが、前よりも少し大きくなった気がするぞ。
いや。気のせいかもしれないし、化身になる都度、影響が微妙に違っているので、オレの姿もその都度変化しているのかもしれないな。
「なんだとその姿は?」
「やはりあなたが本物だったのですか」
「どうやら思った通りですね」
一触即発だった連中も皆、オレの方を注目してくれたお陰で、ひとまず戦いはストップしてくれたらしい。
まあオレの眼前で流血の惨事が引き起こされるのを避けるためなら、神の化身になるどころか裸踊りだってやってやるさ。
「な……まさか?!」
オレが賄賂を渡した役人は自分の目が信じられないと言わんばかりに呆然としている。
この姿を見ても『偽者が化けている』と言い張るのでもいいし、まあ『女神の化身から賄賂もらった』と思うならそれでもよし。
どっちにしても引いてくれるならそれでいい。
そしてオレ達の周囲に漂っていた『地獄の轟き』の霊体は一気にこちらに迫ってくる。
『おお……そなたの身を我らにゆだねよ……』
こっちはとっくに女神様にゆだねた身ですから、先客がいるのでそんな頼みには応じられません。
『あなたも見当はついているようですが、どうやら彼らは戦乱で犠牲となった人々の苦しみや憎しみ、悲しみの集まった存在のようですね……痛ましい事です』
オレの脳裏に響くイロールの声は確かに悲しんではいるんだろうけど、どこか遠い他人事のようにも感じられるな。
まあ千年存在してきて、戦乱を何度も目の当たりにし、理不尽な虐殺に接した事も一度や二度の話ではないのだろうからそう考えるのも仕方ないのだろう。
元の世界にいた時はオレ自身、外国での虐殺の話を聞いても対して気にもとめていなかったからそれに近い感覚なのかもしれない。
もちろん今のオレは少なくとも目の前でそんな事が起きるのを見逃す気はないけどな。
そしてオレの周囲はいつの間にか霊体の放つ魔力で覆い尽くされている。
「これはいったい何が起きているのだ?」
普通ならば霊体など感知出来ないはずだが、これだけ濃密なものとなったらミーリアの目でも霞ぐらいには見えるらしい。
だがオレ以外の人間はこれに触れたら一気に精神を破壊されてしまいかねない。
「だがこのままではあなたが危ない。ここは愚僧が――」
「ダメです! 近寄らないで! 危ないですから」
マクラマンやミーリアは慌てて駆け寄ろうとするが、オレは必死で止める。
「お願いですからここはわたしに任せて下さい!」
「分かりました。我が拳では残念ながらどうしようもない相手のようです」
さすがにビネースは司祭だけあって、どうやら自分の力の及ばない相手だと察すると見切りが早いらしい。
「とにかくわたしは大丈夫です!」
『お前の身があれば、我らは皆、もう一度この世で生きられる……』
オレの周囲にまとわりつき、脳裏に響く声はどうやらこの身を自分達の『器』にしたいらしい。
考えてみれば当然だが女神イロールにとって魅力的な器は、こいつらにとっても同様なのだ。
しかしそんな要求にオレが応じるはずがないだろう。少なくともこんな奴らに身体を与えるぐらいなら、まだ女にされた方がずっとマシだ!
こうなっては出来ることはただ一つだけだ。
まったくもって望ましく無いけど、オレの守護女神を自称しているイロールの助けを呼ぶしか無い。
何しろあの女神は殆どこの世界との接点が無いらしいので、オレが呼ぶと――場合によっては呼ばなくとも――すぐにこっちと連絡を取りに来るからな。
どうもオレとの繋がりから、こちらの心を読むとまではいかなくとも、感情の動きぐらいは分かるらしいので、ピンチになったらこちらへの干渉を強めているらしいのだ。
『何か御用ですか?』
まだ呼んでないのに、オレの心にいつもの声が響いてくる。
どうやら以前と同じくオレの呼びかけを待っていたらしい。
まあいい。望みもしないのに無理矢理、精神に介入してくる『地獄の轟き』よりはマシと考えよう。
「状況を説明している暇はありません。すみませんが力を貸して下さい」
『いいですよ。分かりました』
相変わらずその辺りは大ざっぱだな。
まあ非常に不本意ながらオレはこの女神の信仰を広めるにあたって、大きな役割を『果たしてしまっている』けど、その貢献を考えれば十分にギブアンドテイクの関係だ。
そんなわけで力を借りるにあたって特にありがたいとも、申し訳ないとも思っていないが、その都度どうもあの女神の影響をより強く受けるようになっている感じがする。
しかしそれでも頼らざるを得ないのだから、薬物中毒かはたまたヒーローもので言えば『心身をむしばむパワーアップ』みたいなものだろうか。
そしてオレの身体に今までと同じく『何か』が流れ込んで来て、それと共に一気に視覚が切り替わる。
毎度の事だが女神の化身となったので、外見的には一気に成長して二十代前半程度になって背が高くなったのだ。
それと胸も成長するのはいつも通りだが、前よりも少し大きくなった気がするぞ。
いや。気のせいかもしれないし、化身になる都度、影響が微妙に違っているので、オレの姿もその都度変化しているのかもしれないな。
「なんだとその姿は?」
「やはりあなたが本物だったのですか」
「どうやら思った通りですね」
一触即発だった連中も皆、オレの方を注目してくれたお陰で、ひとまず戦いはストップしてくれたらしい。
まあオレの眼前で流血の惨事が引き起こされるのを避けるためなら、神の化身になるどころか裸踊りだってやってやるさ。
「な……まさか?!」
オレが賄賂を渡した役人は自分の目が信じられないと言わんばかりに呆然としている。
この姿を見ても『偽者が化けている』と言い張るのでもいいし、まあ『女神の化身から賄賂もらった』と思うならそれでもよし。
どっちにしても引いてくれるならそれでいい。
そしてオレ達の周囲に漂っていた『地獄の轟き』の霊体は一気にこちらに迫ってくる。
『おお……そなたの身を我らにゆだねよ……』
こっちはとっくに女神様にゆだねた身ですから、先客がいるのでそんな頼みには応じられません。
『あなたも見当はついているようですが、どうやら彼らは戦乱で犠牲となった人々の苦しみや憎しみ、悲しみの集まった存在のようですね……痛ましい事です』
オレの脳裏に響くイロールの声は確かに悲しんではいるんだろうけど、どこか遠い他人事のようにも感じられるな。
まあ千年存在してきて、戦乱を何度も目の当たりにし、理不尽な虐殺に接した事も一度や二度の話ではないのだろうからそう考えるのも仕方ないのだろう。
元の世界にいた時はオレ自身、外国での虐殺の話を聞いても対して気にもとめていなかったからそれに近い感覚なのかもしれない。
もちろん今のオレは少なくとも目の前でそんな事が起きるのを見逃す気はないけどな。
そしてオレの周囲はいつの間にか霊体の放つ魔力で覆い尽くされている。
「これはいったい何が起きているのだ?」
普通ならば霊体など感知出来ないはずだが、これだけ濃密なものとなったらミーリアの目でも霞ぐらいには見えるらしい。
だがオレ以外の人間はこれに触れたら一気に精神を破壊されてしまいかねない。
「だがこのままではあなたが危ない。ここは愚僧が――」
「ダメです! 近寄らないで! 危ないですから」
マクラマンやミーリアは慌てて駆け寄ろうとするが、オレは必死で止める。
「お願いですからここはわたしに任せて下さい!」
「分かりました。我が拳では残念ながらどうしようもない相手のようです」
さすがにビネースは司祭だけあって、どうやら自分の力の及ばない相手だと察すると見切りが早いらしい。
「とにかくわたしは大丈夫です!」
『お前の身があれば、我らは皆、もう一度この世で生きられる……』
オレの周囲にまとわりつき、脳裏に響く声はどうやらこの身を自分達の『器』にしたいらしい。
考えてみれば当然だが女神イロールにとって魅力的な器は、こいつらにとっても同様なのだ。
しかしそんな要求にオレが応じるはずがないだろう。少なくともこんな奴らに身体を与えるぐらいなら、まだ女にされた方がずっとマシだ!
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