異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第15章 とある御家騒動の話

第522話 そしていつものように新しい出会いが

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 とりあえずオレは草やツルで身体を縛られた連中を藪の中に置き去りにして、元の道に戻ることにする。
 あの検問がいったい誰を見つけるためのものだったから、見張っていた連中にも分かっていなかったらしいが、当然オレである可能性を考えておかねばならない。
 まあオレはいく先々で目立ちまくっている上に、チャラーナ・イロールは時折、信徒に対してオレの動向を伝えているらしいので、ひょっとするとそのツテでウァリウスがそのような命令を下しか可能性もある。
 オマケにこのマニリア帝国は、もともと衰退期にあった上に、この二年足らずで二度も内戦があったのだ。
 地方の軍人や役人が中央の目が届かない事をいいことに、腐敗し私腹を肥やしていても何の不思議もない。
 それにウァリウスならオレの身柄をどうにかして押さえようと思っている相手が大勢いる事は知っているはずだから、あまり大事にならないようにオレを連れてくるように命じた可能性もある。
 しかしそれが伝言ゲームのごとく歪んでいって、あんな連中が幅をきかすようになってしまう場合もありうるな。
 あとそういうのとは無関係に、オレの偽者を追っていると言う事もある。万一にも本物だった場合も考えて『金髪で若い美女』としか教えていないのかもしれない。
 しかしどのみちそんな事を考えても答えが出るはずもなく、今はとっととこの場を離れるのが先決だな。
 もちろんオレの場合、野外行動用のドルイド魔法で木の枝や藪が避けて行ってくれるし、脚力も強化しているので、相手を振り切るには山の中を通った方がいい。
 しかし可能ならばちゃんとした道を通った方が楽なのは当たり前である。

 連中がオレの戒めから自由になって助けを呼ぶまでまだ時間はあるはずだから、その間に距離を置けばひとまずは安心だろう。
 そんなわけで元々通っていた道に戻ると、先ほど検問のあったあたりでフードを被った――つまり今のオレと似た格好の――相手が歩いていた。
 腰には剣をさしているが体型は華奢で剣士というにはちょっとばかり心細い。
 そして検問の跡を見て、ちょっとばかりおっかなビックリに周囲を見回しているようだ。

 ひょっとして、まさかと思うけど、さっきの連中が探していたのはオレでは無くこっちの相手だったのか?
 いや。気が早すぎる。
 全く無関係な相手かもしれないし、検問の奴らの不行状ぶりを見る限り、他にも通りすがりの相手に対して通行料をせびるとかロクでもない真似をしていたので、その評判が広まって緊張しているのかもしれないぞ。
 そして相手の方もオレに気付いたらしく、腰の剣に手を当ててこちらをじっと見つめているらしい。
 フードを目深くかぶったもの同士で睨みあうというのも、はた目には何とも滑稽な風景というものだな。
 ただ相手もオレが何者か計りかねているらしく、警戒はしているようだがいきなり攻撃してくる様子は無い。
 それでは『調和』をかけておいて、ひとまずこちらから話しかけるとするか。

「すみません。よろしければ少しお話いいでしょうか?」
「その声は女か……ここの見張りではないようだな」

 知覚力を強化しているオレの耳には少しばかり安堵した相手の声が聞こえてくる。
 思った通り若い女性のようだ。
 オレが女の身で、なおかつ丸腰だから少しは安心してくれたらしい。
 そして相手は剣から手を離し、オレに問いかけてくる。

「ここにいた連中がどこに行ったのか知らないか?」

 もしも自分が追われているという認識があって、この検問がそのためにあると想像がつくのなら誰もいないことを疑問に思うのは当然か。
 あとどうにか声色を変えて女である事を隠そうとしているみたいだけど、こっちにはバレバレですよ。
 ちょっとばかり無理をしている様子がうかがえるな。

「ここの人達なら先ほど顔色を変えて森の中に入っていきましたよ」

 肝心なところははしょっているけど嘘はついていないから、この説明で勘弁してもらいたいものだ。

「全員がか……むう……何かおかしいな」

 まともな検問だったら、よっぽどの事が無い限り全員が持ち場を離れる事なんてないだろうけど、何しろ女をかどわかして蹂躙し、その後で売り飛ばそうなんて考えるクズ連中だったからな。
 今回はオレが連中を懲らしめてやったけど、もしも彼女の方が先にここに来ていたらと思うと、他人事ながらゾッとするよ。

「まあいいだろう。感謝する」

 そう言って相手は歩き出そうとするが、ここでオレは呼び止める。

「ちょっと待って下さい。もしもこの道をこのまま進むおつもりなら、同行させてもらえませんか?」
「なぜだ?」
「大した事でも無いですけど、こちらはご覧の通り丸腰ですからね。武器を持った人と一緒だと少しは安心出来ます」

 本音はこの人の事が心配になったいうか、興味をひかれたからなんだけどね。
 しかし我ながら何かあると首を突っ込みたがる体質は変わらないな。

「……いいだろう。勝手にするがいい」
「ありがとうございます」

 オレはひとまず礼を述べる。
 フードを被って正体を隠した者同士で一緒というのは、はた目には何とも怪しいコンビではあるな。
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