異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第15章 とある御家騒動の話

第521話 絡まれたので、絡みつけた話

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 いつの間にやらオレの周囲には何人も屈強そうな男が集まってきている。
 ざっと見ても十人はいるな。
 ただその中に少なくとも善意でオレを守ろうと思っている相手はいないようだ。
 ついでに言えば連中は女性を身体検査するのも、当然男達でやるつもりらしいが、もうここまで来ると何をやろうとしているのかは明らかだ。
 もしも『調和』を使って暴力的行動に出られないようにしていなかったら、とっくに集団でこの身は蹂躙されていたかもしれない。
 そんな事を考えていると、周囲のヒソヒソ話がオレの耳に届いてくる。

「これは思わぬ拾いものだな」
「俺がもらっていいか?」
「馬鹿野郎。楽しみはみんなで平等に分け合うに決まっているだろ」
「楽しんだ後は売り払えばさぞかし高値がつくぞ」

 おい! 全部聞こえているぞ!
 他に人の目が無いからって、また随分と勝手な事をほざいてくれるものだ。
 むしろオレの周囲に集まったせいで、本来の検問の任務は完全におろそかになっているじゃないか。
 まあ今のオレは連中にとっては『退屈で酷な山中での任務の最中、鴨がネギを背負ってやってきた』ようなものなんだろうな。
 相手がこの近辺に住んでいる普通の猟師なり農民だったりすれば、そこまでバカな事は考えないだろうと思いたい。
 とにかくこれ以上、連中の下卑た欲望の対象にされるのも真っ平なので、ここはとっとと逃げ出すに限るな。

 それに出来心だろうと何だろうと女を蹂躙し、売り飛ばすような真似をすればどんな報いがあるか思い知らせてやる必要もある。
 少なくともこの程度の連中を相手にいいように扱われるオレでは無い。
 そんなわけでゾロゾロついてきた連中の様子を確認したところで『植物歪曲』ワープ・ウッドの魔法を使う。
 そうすると周囲の木々やツタが、まるで動物のように急に蠢き出す。

「おい……これはどういうことだ?」
「いったい何が起きた」

 さすがに異変が生じている事ぐらいはすぐに気付いたらしく、連中は不安げに周囲を見回している。
 しかし男共が何か動きを見せる前に、ツタが伸び、草が蠢いて、その身体に次々に巻き付いていった。

「な、なんだ?」
「ひいい! 助けて!」

 さすがにこんなことは予想していなかったらしく、連中はパニックに陥っている。
 まあ幾ら魔法が存在する世界でも、山の中で周囲の植物が一斉に襲いかかりその身に絡みついてきたら怖いに決まっているか。
 そして男共が全員、動けなくなっている事を確認したところでオレは前に出て振り向く。
 その様子を確認して、連中は一斉に息を呑んだ。

「これはまさかお前の仕業か?!」

 ようやくオレがただの『小娘』では無い事を理解したらしいな。

「いったい何者だ?!」
「命だけは勘弁してくれ!」

 まあ命まで奪う気は無いけど、さっきの下卑た発言の数々にオレも少しばかり憤慨していたので、ここはちょっとばかりビビらせてやるとしよう。

「先ほどあなた方は随分と勝手な事を口走っていましたね。わたしの身体でお楽しみだとか、売り払えば高値がつくとか。そういう人達には相応の報いが必要ですよね?」

 この言葉を聞いて、奴らは愕然となる。

「いや。待ってくれ。それは誤解だ」
「こんな真似をしてただで済むと思うなよ!」

 弁解しようとするヤツはまだしも、開き直ってオレを威嚇しようとする男はもうちょっとばかり懲らしめてやってもいいよね?

「うがぁぁぁぁ!」

 男の足にツタが絡みついて、次の瞬間には引っ張り上げられ逆さづりになる。首を釣り上げなかっただけ、マシだと思ってもらおうか。
 それを見て周囲の連中には一気に恐怖の感情が広がる。

「あんた……もしかしてこの山の精霊か……」

 いいえ。ちょっとした通りすがりの『女神の出来損ない』でしかありませんよ。

「許してくれ。あんまり美しかったから、つい出来心で――」
「俺は黙っていただろ? 俺だけでも助けてくれ!」
「何だと! お前だってさっき――」

 ああ何とも見苦しい。
 こんな連中に関わっていい事など一度も無かったけど、今回も同じだな。

「今後はもう二度とあんなよこしまな事はしないと約束できますか?」
「もちろんだ!」
「絶対に悪い事など考えないから!」

 連中は一斉にオレの言葉に同意して、まるでちぎれんばかりに首を縦に振る。
 毎度の事だが命が助かるためなら、人間は何でも口にする。
 しかしこれだけビビらせておけば、もう同じ事を考えるのは躊躇するだろうと期待しておこう。
 あともう一つ確認しておく事がある。

「ところであなた方はここで何をしていたのですか? どうやら誰か女性を探していた様子ですけど」
「ああ……だけどそれはあんたとは違う。本当だ!」
「どんな人ですか? 名前は何というのです?」
「いや。金髪の若い女で、美人だって言われているんだ。だけど本当にそれだけしか聞いてない。名前も教えられていないんだ」

 え? それはもしかしてオレの事で、今は髪を黒く染めているから別人だと思っただけなのか。
 それとも無関係な相手の話なのか?
 まあいい。こいつらは詳しい事など知らないのは明らかだからな。

「それでは失礼しますよ。その植物はあなた方の身体に絡みついているだけですから、頑張れば自由になれるでしょう」

 まあどうにか動けるようになるまで、かなり時間がかかるかもしれないけど、それぐらいは苦労してもらうとしよう。
 そしてこの一件がいつものように、オレにいろいろと関わってくるのであった。
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