異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第15章 とある御家騒動の話

第526話 同行者との会話から

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 いろいろと複雑な事情のありそうな相手だが、それでも同行するからには確認すべき点は幾つもある。

「あなたの目的地はいったいどこなんですか?」
「それは……この南にあるドズ・カムという街だ」

 オレはこのマニリア帝国の後宮にいた時、幾らかの書籍に目を通していて、賢者系の魔法でその知識を保持している。
 その名前の街は確か表向き帝国の傘下に入ってはいるが、あくまでも権威付けのため形式的にマニリア帝国皇帝を主君と仰いでいるだけで、半独立な勢力がひしめいている地域にあったはず。
 そうするとこの人を追っているらしい連中はそこの絡みだろうか。
 この地からだと常人なら徒歩で数日というところだが、仮に追っ手がいないと仮定しても女の身で一人旅をするのは大変だ。
 やっぱりいろいろと深刻な事情がありそうだな。
 もっともオレが後宮で得られた知識は、この国の過去の歴史関係が大半だったから、残念ながらそれほど詳しいワケでも無い。

「ただ申し訳ないが……私がその町を離れて既に数年経つので、いまの状況に関する詳しい説明は勘弁してもらえないだろうか?」

 これも全部嘘では無いだろうけど、何かを隠したい意識があって予防線を張っているのかもしれないな。

「それとあなたの事はどうお呼びしましょうか?」
「ではミリンサと呼んでくれればいい。逆に聞くがそちらはどう呼べばいいのだ?」

 むう。『アルタシャ』を名乗ったら面倒なのは確実だな。

「それでは『アル』と呼んで下さい」
「分かった。『アル』だな」

 偽名の更に偽名というのも面倒臭いし、あんまり考えていなかったから、超適当な短縮形でごまかすことにした。
 ミリンサと名乗った女性だが、これまでの態度からたぶんこの名前そのものは全くの偽名というワケではなく、姓を省略しているのだろうな。

「とりあえず今日のところは野宿をして、明日はあちらの町でいったん休みましょう」
「あ……ああ。分かった。しかし――」
「どうしました?」
「アルは見たところ私よりも若いようだが、この状況でどうしてそんなに落ち着いていられるのだ? 自分で言うのも何だが、私がいろいろと面倒をかかえていて、しかも話の肝心な部分を隠しているのは明らかだろう」

 普通だったらその疑問は当然と言うべきか。
 ひょっとするとオレも彼女の追っ手の一人で、友好的なフリをして近づき騙して捕らえようとしているのでは無いか、そんな疑念を抱いているのかもしれないな。
 いや。この世界ではロクでもない霊体や怪物が人のフリをして、出会った相手をかどわかし、自分の領域に引き込んで取って喰らうなんて事も決して『おとぎ話』ではないから、そんなおぞましい存在の化身かもしれないと警戒している事もありうる。
 しかし言葉であれこれ言っても通用しないだろうし、ここは強引に押し切るとしよう。

「この程度の事はしょっちゅうですからね。あまりに気にはなりませんよ」
「何だと? そんなバカな……」

 ミリンサはまたしても信じがたいと言わんばかりの表情を浮かべる。
 さすがにあっさりと言い過ぎたかな。
 彼女からすれば、オレは自分よりも年下なのに卓越した魔法使いで、報酬も当てにならないのに危険を承知で協力すると言っているのだから、そんな話を鵜呑みにする方がおかしいか。

「ミリンサさんもわたしが魔法使いだとご存じでしょう? そうするとこういう事に関わる機会はよくあるのですよ」
「本当にそうなのか? いや。分かった……」

 明らかに釈然としない様子だが、ミリンサは頷く。
 どちらかと言えば、今さらオレを疑っても仕方ないと諦めたのだろう。

「では寝ましょう。ミリンサさんも明日のために休んでいて下さい」
「ありがたいが……夜の番をしなくて大丈夫なのか?」
「それも魔法でどうにか出来ます」

 ドルイド系魔法を使えば、周辺のいる植物や動物を見張りにして侵入者があれば即座に警報を発する事が可能だ。
 絶対に安心とまでは言い切れないが、追っ手が昼間出会った程度の連中ならば十分に対処出来るだろう。

「本当に何でも出来るのだな」
「いいえ。これぐらいなら大した事はありませんよ。明日のためにゆっくりと休んでいて下さい」

 そこでミリンサが寝床に入ると、すぐに規則正しい寝息が聞こえてきた。
 どうやらかなり疲れていたようだな。オレも何度か彼女に『疲労回復」スタミナをかけていたが、心労の方には効果は無い。
 たぶんこれまで必死で追っ手をかわして来たのだろう。

 しかし毎度の事ながら困っている人を見かけて、ついつい安請け合いしてしまったが、いったいどんな事情があるのか。
 昨日出会った連中は、詳しい事情を聞かされておらず、恐らくはこの近隣の連中を金で雇ったのだろう。
 そうするとミリンサを追っている相手は、ただ一人を捕らえるために何十人もの人間を雇い入れるだけの存在と言う事になるし、逆を言えば彼女にはそれだけの事をする価値があるわけだ。
 ミリンサがそのあたりを語れないのは、事情がややこしいのに加えて、オレの事を信じ切れないのは間違いあるまい。
 仮に大きな権力なり富なりが関わっているのならば、今は味方をしているオレが裏切ることも当然、あり得るからな。
 今のオレはミリンサに負けず劣らず怪しい人間のはずだから、追われている身の彼女に『信じろ』と言って、ハイそうですかと納得するはずも無いか。
 とりあえず明日には見えていた町に入って、情報を収集すべきだろう。いくら何でもミリンサもそこまでは文句を言うまい。
 もっとも追っ手もあの町に入り込んでいる可能性が高いけど、それは覚悟の上だ。
 しかしこの時、ただの通過点のつもりのその町で思いもかけぬ出来事に見舞われる事をオレは全く予想していなかった。
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