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第15章 とある御家騒動の話
第525話 結局は首を突っ込む事に
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一応は人が通れる山道を離れ、藪と枝に覆われた山の中を強行軍しつつ、オレは同行しているフードの人に話しかける。
「とりあえずわたしの後について来てください」
「ああ……」
いろいろと疑問がわき出ている様子だが、逆らうこともなく相手はオレの後についてくる。
オレが通ったところは少しの間は藪や木の枝が避けてくれているので、足元に注意していれば通る事は難しく無い。
そして相手もすぐにそれには気づいたようだ。
「あなたはいったい何者なのだ? 先ほどからいくつも魔法を使っているようだが、普通ならばとてもその年齢で使えるものではないぞ」
「今はお互いの出自についてどうこう言っている場合ではありませんよ」
「う……分かった」
思った通り、相手も自分が何者なのか詮索されたくないようだ。
それについてはこちらも同じだから、なし崩しでお互いに正体を詮索しない事になったが、この人はいったい何者なんだろうか?
これだけ大勢の相手に追われるとなると、尋常では無いだろう。
ただ最初の検問の連中が何の事情も知らなかったところを見ると、通常のお尋ね者とは違うのは間違い無い。
まあ詳しい事を聞ける状況でも無いし、今は逃げる事を優先させるとしよう。
さっきの連中は合図の『烽火』の程度には魔法を使えたようだけど、ひょっとすると本職の魔法使いも同行している可能性もある。
オレのように野外行動用のドルイド魔法を習得している人間までいるとは思えないけど、注意するに越した事は無いだろう。
そんな事を考えつつしばらく進んでいると、背後から息も絶え絶えに声がかかる。
「申し訳ないが……少し休ませてくれまいか……」
「ああすみません。ちょっと急ぎすぎましたね」
オレは改めて『疲労回復』をかけるが、これまでの経験からこの魔法は同じ相手に繰り返し何度もかけると効果が弱まってくる事は分かっている。
追っ手もこちらを必死で探しているのは確実だけど、山の中を突っ切ってオレを追跡出来る相手はそうはいないはずだ。
そんなわけで少しずつ移動し、オレ達が山を二つほど超えたところで日が暮れてきた。
ひとまず『鷹の目』で周囲に追っ手がいないことを確認し、オレはようやく一息つく。
見たところこの山地を越えたところに結構大きな町があるが、今日のところはそこまでたどり着くのは無理だろうな。
「それではここで野宿をしましょう」
「ああ……ところであなたが何者なのか教えてくれまいか?」
「そういう事は人に尋ねる前にまず自分から教えるべきでしょう」
オレのこの質問に相手は押し黙る。
やっぱりいろいろと面倒な事がありそうだな。
「それでは質問を変えるが、どうして私を助けてくれたのだ? あなた一人だけで逃げるなど造作もなかったろう」
「ちょっとした気まぐれみたいなものです。気にしないで下さい。もちろん別に報酬もいりませんから」
「報酬も要求しないのか?」
オレにとってはこんなのはいつもの事だからね。
しかし相手は納得出来ない様子で首をひねっている。
「あなた程の魔法の使い手がそんな気まぐれで行動するものなのか」
そりゃまあそうだろうな。
この世界で本業の魔法使いは、厳しい訓練を受けてきた専門職の人間であって、そんな相手が出会ったばかりで、名前も知らない相手のためにホイホイ魔法を使って手助けをすけをする方がおかしい。
それにこれまでこの女性に見せただけで、オレの魔力がそこらの魔法使いよりずっと上なのは明らかだからな。
「ひょっとすると……あなたは私の手助けのために雇われたのではないのか?」
「いいえ。それは違いますよ。本当にあなたの事は何も知りませんから」
この言葉からすると、彼女を助けるべく腕の立つ魔法使いを雇うぐらいにその出自は裕福ということらしい。
そうすると財産を巡る骨肉の争いとか何とかいろいろありそうだな。
「そうか……」
どうにも釈然としない様子だが、そこで彼女は改めてオレに問いかけてくる。
「ひとつお願いしたいのだが、これからしばらく私と同行し、助力してもらえまいか?」
「それはつまり先ほどのような連中が今後もあなたを追ってくるのが予想出来るという事なんですか?」
「ああ……その通りだ……」
ここで相手はフードを取って顔を見せる。
改めて見ると年齢はオレよりやや年上で、十八歳ぐらいだろうか。
話の通り『金髪の美人』なのは間違い無い。ただぱっと見では凜々しい系の美人だが、ちょっとばかり頼りなさそうというか、そんな雰囲気が漂っている。
どうやらかなりの不安を感じているようだ。
「もちろんタダとは言わない。今は報酬として出せるものなど何も無いが、必ずあなたの満足できるだけの見返りを用意させてもらう」
「それでは事情を説明してくれますか?」
正直に言えば報酬などどうでもいい。しかしどういう事情があるのかは聞いておかねばならないだろう。
しかし相手は弱々しく首を振る。
「申し訳ない……詳しい事を話すわけにはいかないのだ」
まあ幾ら手助けしたとは言え、あったばかりの相手を無条件で信頼するワケにはいかないだろうからな。
そしてここで金色の頭を深々と下げて懇願してくる。
「事情も説明せず、自分の出自も明かさず、報酬も口約束だけ。それでいて危険が伴うのは確実なのに手助けをしろとは厚かましいにも程がある願いなのは分かっている。しかしどうしても私には行かねばならないところがある。だからそれまで同行してもらえまいか」
ああ。オレっていつもこんなややこしい事に巻き込まれるのが運命なんだな。
しかし乗りかかった船である以上、ここで見捨てるのも後味が悪い。
「分かりました。ただしその目的地についたらちゃんと全部説明してもらいますよ」
「おお! ありがとう! この恩義は忘れないぞ!」
また自分で面倒事に首を突っ込んでしまった事は自覚しつつ、それでもオレは嬉しげに笑った彼女の顔を見て心が安らいではいた。
「とりあえずわたしの後について来てください」
「ああ……」
いろいろと疑問がわき出ている様子だが、逆らうこともなく相手はオレの後についてくる。
オレが通ったところは少しの間は藪や木の枝が避けてくれているので、足元に注意していれば通る事は難しく無い。
そして相手もすぐにそれには気づいたようだ。
「あなたはいったい何者なのだ? 先ほどからいくつも魔法を使っているようだが、普通ならばとてもその年齢で使えるものではないぞ」
「今はお互いの出自についてどうこう言っている場合ではありませんよ」
「う……分かった」
思った通り、相手も自分が何者なのか詮索されたくないようだ。
それについてはこちらも同じだから、なし崩しでお互いに正体を詮索しない事になったが、この人はいったい何者なんだろうか?
これだけ大勢の相手に追われるとなると、尋常では無いだろう。
ただ最初の検問の連中が何の事情も知らなかったところを見ると、通常のお尋ね者とは違うのは間違い無い。
まあ詳しい事を聞ける状況でも無いし、今は逃げる事を優先させるとしよう。
さっきの連中は合図の『烽火』の程度には魔法を使えたようだけど、ひょっとすると本職の魔法使いも同行している可能性もある。
オレのように野外行動用のドルイド魔法を習得している人間までいるとは思えないけど、注意するに越した事は無いだろう。
そんな事を考えつつしばらく進んでいると、背後から息も絶え絶えに声がかかる。
「申し訳ないが……少し休ませてくれまいか……」
「ああすみません。ちょっと急ぎすぎましたね」
オレは改めて『疲労回復』をかけるが、これまでの経験からこの魔法は同じ相手に繰り返し何度もかけると効果が弱まってくる事は分かっている。
追っ手もこちらを必死で探しているのは確実だけど、山の中を突っ切ってオレを追跡出来る相手はそうはいないはずだ。
そんなわけで少しずつ移動し、オレ達が山を二つほど超えたところで日が暮れてきた。
ひとまず『鷹の目』で周囲に追っ手がいないことを確認し、オレはようやく一息つく。
見たところこの山地を越えたところに結構大きな町があるが、今日のところはそこまでたどり着くのは無理だろうな。
「それではここで野宿をしましょう」
「ああ……ところであなたが何者なのか教えてくれまいか?」
「そういう事は人に尋ねる前にまず自分から教えるべきでしょう」
オレのこの質問に相手は押し黙る。
やっぱりいろいろと面倒な事がありそうだな。
「それでは質問を変えるが、どうして私を助けてくれたのだ? あなた一人だけで逃げるなど造作もなかったろう」
「ちょっとした気まぐれみたいなものです。気にしないで下さい。もちろん別に報酬もいりませんから」
「報酬も要求しないのか?」
オレにとってはこんなのはいつもの事だからね。
しかし相手は納得出来ない様子で首をひねっている。
「あなた程の魔法の使い手がそんな気まぐれで行動するものなのか」
そりゃまあそうだろうな。
この世界で本業の魔法使いは、厳しい訓練を受けてきた専門職の人間であって、そんな相手が出会ったばかりで、名前も知らない相手のためにホイホイ魔法を使って手助けをすけをする方がおかしい。
それにこれまでこの女性に見せただけで、オレの魔力がそこらの魔法使いよりずっと上なのは明らかだからな。
「ひょっとすると……あなたは私の手助けのために雇われたのではないのか?」
「いいえ。それは違いますよ。本当にあなたの事は何も知りませんから」
この言葉からすると、彼女を助けるべく腕の立つ魔法使いを雇うぐらいにその出自は裕福ということらしい。
そうすると財産を巡る骨肉の争いとか何とかいろいろありそうだな。
「そうか……」
どうにも釈然としない様子だが、そこで彼女は改めてオレに問いかけてくる。
「ひとつお願いしたいのだが、これからしばらく私と同行し、助力してもらえまいか?」
「それはつまり先ほどのような連中が今後もあなたを追ってくるのが予想出来るという事なんですか?」
「ああ……その通りだ……」
ここで相手はフードを取って顔を見せる。
改めて見ると年齢はオレよりやや年上で、十八歳ぐらいだろうか。
話の通り『金髪の美人』なのは間違い無い。ただぱっと見では凜々しい系の美人だが、ちょっとばかり頼りなさそうというか、そんな雰囲気が漂っている。
どうやらかなりの不安を感じているようだ。
「もちろんタダとは言わない。今は報酬として出せるものなど何も無いが、必ずあなたの満足できるだけの見返りを用意させてもらう」
「それでは事情を説明してくれますか?」
正直に言えば報酬などどうでもいい。しかしどういう事情があるのかは聞いておかねばならないだろう。
しかし相手は弱々しく首を振る。
「申し訳ない……詳しい事を話すわけにはいかないのだ」
まあ幾ら手助けしたとは言え、あったばかりの相手を無条件で信頼するワケにはいかないだろうからな。
そしてここで金色の頭を深々と下げて懇願してくる。
「事情も説明せず、自分の出自も明かさず、報酬も口約束だけ。それでいて危険が伴うのは確実なのに手助けをしろとは厚かましいにも程がある願いなのは分かっている。しかしどうしても私には行かねばならないところがある。だからそれまで同行してもらえまいか」
ああ。オレっていつもこんなややこしい事に巻き込まれるのが運命なんだな。
しかし乗りかかった船である以上、ここで見捨てるのも後味が悪い。
「分かりました。ただしその目的地についたらちゃんと全部説明してもらいますよ」
「おお! ありがとう! この恩義は忘れないぞ!」
また自分で面倒事に首を突っ込んでしまった事は自覚しつつ、それでもオレは嬉しげに笑った彼女の顔を見て心が安らいではいた。
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