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第15章 とある御家騒動の話
第552話 ドズ・カムの町では既に……
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とりあえず出迎えの連中にはこちらに対する敵意は感じられないが、それでも今までの経験からいきなり攻撃してくる可能性は否定出来ない。
そんなわけでいつものように『調和』をかけて、暴力的な行動を封じつつ、ミリンサに話しかける。
「あの人達はお知り合いなんですか?」
「ええ。そうです」
そして先頭に立って近寄ってきた中年の男が笑顔でミリンサに頭を下げる。
「お嬢様。お久しゅうございます。すっかり大きくなられましたな。このカイセンも嬉しゅうございます」
「お出迎えありがとう。それで父上、母上、兄上はお元気か?」
「はい。皆様、お嬢様のご帰還を一日千秋の思いでお待ちでございました」
カイセンと呼ばれた迎えの男はミリンサの実家の使用人らしい。
娘を遠くの学校に進学させることのできる裕福な家だから、使用人ぐらいいても不思議では無いな。
そしてここでカイセンはオレの方に視線を向けてくる。
「ところでお嬢様、そちらのお方ですが……」
カイセンにはどこか緊張した様子が見える。
まあフードを被った怪しい相手が、大切なお嬢さんに同行していたら、心配になるのが当たり前か。
もちろんこのような場合、どんな風に返答すべきかは前もってミリンサに伝えてある。
「こちらは旅の途中で出会った――」
「名高き女英雄たるアルタシャ様でございましょう」
「え?」
オレとミリンサが揃って一瞬、絶句したところでカイセンは今度はオレに対して、うやうやしく頭を下げる。
「ご高名はかねてから伺っております。お嬢様がお世話になっていると聞いた時は驚きましたが、感謝の言葉を述べさせて下さい」
カイセンの態度を見る限り、オレの事を疑っている様子は無い。
だけどなぜオレがミリンサに同行している事を知っている?
まさか皇帝のウァリウスか、それとも聖女教会が前もって手を回していたのだろうか。
その場合はまたいろいろと厄介な事になりかねないぞ。
「なぜこの方のことをお前が?」
ミリンサもあっさりバラすなよと言いたいが、正直に言ってシラを切るのはオレもうまいとはお世辞にも言えないので仕方ないか。
「いえ。既に街では噂になっていますよ。それでお嬢様。本当に間違いは無いのですね?」
「もちろんだ。だがその噂の出所はどこなのだ?」
「さすがに……そこまでは我らも存じません」
むう。その言葉からすると少なくとも大っぴらに聖女教会なり帝国なりが触れ回っているワケではないらしい。
考えられる線としてはホーニリオの町で追っ手を振り切りつつ、デレンダの屋敷の宴に付き合わされていたあの時か。
もしも宴の中にいた連中に追っ手とまではいかなくとも、それと関係のある人間がいたのなら、オレとミリンサが同行していると、デレンダの屋敷の使用人から聞き出していた可能性が高いぞ。
それで追っ手の方がドズ・カムまで早馬でも飛ばしていたら、とっくに情報は伝わっていておかしくない。
仮に箝口令を敷いていたとしてしても、人の口に戸は立てられないから、噂として勝手に広まっている可能性は高いな。
しかし先ほど検問をしていた連中は『ろくでもない魔法使い』と言っていたが、それはオレの噂は信じずにあくまでも『差し向けた精霊を何度も撃退した魔法使い』を目当てにしていたのだろうか。
それとも噂を知った上で最初から『騙りの偽者』だと決めつけていたのか、はたまた『本物』だとしたら困るので追っ手を差し向けていた連中が教えていなかったのか。
いろいろな事があり得るが、今はそれどころではないな。
もっとも冷静に考えてみると、オレはこの町の領主が誰になろうと興味は無い。
たまたま見かけたミリンサの事が気になって同行していただけだ。
しかしここで何も分からないまま、引き下がるワケにもいかない。元の世界でも国によっては選挙が一歩間違うと流血の事態を招く国もあったからな。
この町の領主選挙がどうなるかぐらいまでは見届けてからでも遅くは無いだろう。
「もちろんアルタシャ様が普段はお忍びで旅をなさっておられる事は存じております。しかしご迷惑で無ければ、その名高きご尊顔を是非とも我らに拝ませていただけないでしょうか?」
おい。カイセンはもちろん他の出迎えの連中も『お嬢様』より、オレの方に興味津々に見えるぞ。
まあカイセン達にとってミリンサは久しぶりに帰ってきたとはいえ顔なじみになのに対し、オレの方は『たまたまやってきた有名人』ともなれば、そっちに注目するのは当然か。
今さらシラを切っても仕方ない。
オレがゆっくりとフードを取って素顔を晒すと、毎度のように一同は息を呑む。
なんかこの反応にもすっかり慣れてしまった気がするな。
「確かにお噂通りのお美しさ……しかしその黒髪は染めておられるのですか?」
「ええ……」
オレが曖昧に頷くと、ミリンサが小声で伝えてくる。
「差し出がましいようですが髪の色も戻していた方がよいのではないでしょうか? 余計な事を勘ぐられるかもしれません」
「分かりました」
オレは髪の『着色』を落とした上で、ミリンサと共にドズ・カムの町にようやく入る事となった。
そんなわけでいつものように『調和』をかけて、暴力的な行動を封じつつ、ミリンサに話しかける。
「あの人達はお知り合いなんですか?」
「ええ。そうです」
そして先頭に立って近寄ってきた中年の男が笑顔でミリンサに頭を下げる。
「お嬢様。お久しゅうございます。すっかり大きくなられましたな。このカイセンも嬉しゅうございます」
「お出迎えありがとう。それで父上、母上、兄上はお元気か?」
「はい。皆様、お嬢様のご帰還を一日千秋の思いでお待ちでございました」
カイセンと呼ばれた迎えの男はミリンサの実家の使用人らしい。
娘を遠くの学校に進学させることのできる裕福な家だから、使用人ぐらいいても不思議では無いな。
そしてここでカイセンはオレの方に視線を向けてくる。
「ところでお嬢様、そちらのお方ですが……」
カイセンにはどこか緊張した様子が見える。
まあフードを被った怪しい相手が、大切なお嬢さんに同行していたら、心配になるのが当たり前か。
もちろんこのような場合、どんな風に返答すべきかは前もってミリンサに伝えてある。
「こちらは旅の途中で出会った――」
「名高き女英雄たるアルタシャ様でございましょう」
「え?」
オレとミリンサが揃って一瞬、絶句したところでカイセンは今度はオレに対して、うやうやしく頭を下げる。
「ご高名はかねてから伺っております。お嬢様がお世話になっていると聞いた時は驚きましたが、感謝の言葉を述べさせて下さい」
カイセンの態度を見る限り、オレの事を疑っている様子は無い。
だけどなぜオレがミリンサに同行している事を知っている?
まさか皇帝のウァリウスか、それとも聖女教会が前もって手を回していたのだろうか。
その場合はまたいろいろと厄介な事になりかねないぞ。
「なぜこの方のことをお前が?」
ミリンサもあっさりバラすなよと言いたいが、正直に言ってシラを切るのはオレもうまいとはお世辞にも言えないので仕方ないか。
「いえ。既に街では噂になっていますよ。それでお嬢様。本当に間違いは無いのですね?」
「もちろんだ。だがその噂の出所はどこなのだ?」
「さすがに……そこまでは我らも存じません」
むう。その言葉からすると少なくとも大っぴらに聖女教会なり帝国なりが触れ回っているワケではないらしい。
考えられる線としてはホーニリオの町で追っ手を振り切りつつ、デレンダの屋敷の宴に付き合わされていたあの時か。
もしも宴の中にいた連中に追っ手とまではいかなくとも、それと関係のある人間がいたのなら、オレとミリンサが同行していると、デレンダの屋敷の使用人から聞き出していた可能性が高いぞ。
それで追っ手の方がドズ・カムまで早馬でも飛ばしていたら、とっくに情報は伝わっていておかしくない。
仮に箝口令を敷いていたとしてしても、人の口に戸は立てられないから、噂として勝手に広まっている可能性は高いな。
しかし先ほど検問をしていた連中は『ろくでもない魔法使い』と言っていたが、それはオレの噂は信じずにあくまでも『差し向けた精霊を何度も撃退した魔法使い』を目当てにしていたのだろうか。
それとも噂を知った上で最初から『騙りの偽者』だと決めつけていたのか、はたまた『本物』だとしたら困るので追っ手を差し向けていた連中が教えていなかったのか。
いろいろな事があり得るが、今はそれどころではないな。
もっとも冷静に考えてみると、オレはこの町の領主が誰になろうと興味は無い。
たまたま見かけたミリンサの事が気になって同行していただけだ。
しかしここで何も分からないまま、引き下がるワケにもいかない。元の世界でも国によっては選挙が一歩間違うと流血の事態を招く国もあったからな。
この町の領主選挙がどうなるかぐらいまでは見届けてからでも遅くは無いだろう。
「もちろんアルタシャ様が普段はお忍びで旅をなさっておられる事は存じております。しかしご迷惑で無ければ、その名高きご尊顔を是非とも我らに拝ませていただけないでしょうか?」
おい。カイセンはもちろん他の出迎えの連中も『お嬢様』より、オレの方に興味津々に見えるぞ。
まあカイセン達にとってミリンサは久しぶりに帰ってきたとはいえ顔なじみになのに対し、オレの方は『たまたまやってきた有名人』ともなれば、そっちに注目するのは当然か。
今さらシラを切っても仕方ない。
オレがゆっくりとフードを取って素顔を晒すと、毎度のように一同は息を呑む。
なんかこの反応にもすっかり慣れてしまった気がするな。
「確かにお噂通りのお美しさ……しかしその黒髪は染めておられるのですか?」
「ええ……」
オレが曖昧に頷くと、ミリンサが小声で伝えてくる。
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