異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

文字の大きさ
551 / 1,316
第15章 とある御家騒動の話

第551話 ひとまず目的地について

しおりを挟む
 見たところ小さな検問だが、こんな裏道でも見張りがいるとは。
 まあ相手がドズ・カムの町にいるのなら、当然ながら地元の利があるわけで町に向かう道は全部、封鎖されていても不思議では無い。
 ただ見えている相手は五人しかいないようだ。
 またあまり真剣に見張っている様子もないところを見ると、さほど気にはしていないらしい。これならここを突破するだけなら簡単だ。
 ただ面倒なのは相手がドズ・カムの町の関係者だと、危害を加えたらこっちが犯罪者と言う事にされてしまいかねない。
 そうすると相手が少数であるなら、ここはちょっとばかり黙ってもらうとしよう。

「ミリンサさんはここで隠れていて」
「どうするのですか?」
「わたしが何とかしますので、合図するまで待っていて下さい」
「……大丈夫なのですか?」
「もちろんですよ」

 そう言ってオレはゆっくりと検問に近づく。
 当然ながらフードをかぶって顔を隠しているオレを見ると、一斉に視線が注がれる。
 そして少し離れたところで警戒の声が飛んできた。

「おい。そこのお前、ちょっと止まれ」
「なんでしょうか?」

 オレがひとまず応じて足を止めると、相手は武器を構えつつ、こちらを警戒した様子を見せる。

「あの? どうかしましたか?」
「とりあえずそのフードを取って顔を見せろ」

 その要求は当然考えられたけど、顔を見るなら普通はもっと近くに寄ってからにすべきなのではなかろうか。

「別に構いませんけど、よろしければ理由を教えて下さい」
「その声は女か……」
「なんだと?!」

 待ち構える連中の間に更なる緊張が走る。
 もっともそれは以前に出会った連中のように『女の一人旅を格好の餌食』にするつもりがあるからなのか、また別の意図があるのかは分からない。

「それで理由は何ですか?」
「何でもろくでもない女の魔法使いが、ドズ・カムの町に向かっているそうだ。だから俺達が見張っているんだよ」

 どうやらオレの行動がかなり無駄に注目されてしまったらしい。
 ただこれだけではミリンサについてどう考えているのかは分からない。
 しかし相手が『魔法使い』を警戒しているとなると、詳しく聞き出すのは難しいな。
 オレの場合、どれだけの魔力があろうと、一度捕まって拘束されてしまったら圧倒的に不利になってしまうのだ。
 そんなわけでオレは『平静』カームの魔法を一人一人にかけていく。
 これで短時間は連中の意識を固定して、一切行動出来ないようにするのだ。

「おい? どうした――」
「なんだ? なにが起きて――」

 仲間が立ちすくんで動きを止めたのを見て、驚いた男もまた次々に動きを止める。

「まさかお前は――」

 最後の男がオレを睨み付けたところで、また動きが止まる。
 とりあえず他に動く相手がいないのを確認したところで、オレはミリンサを呼び寄せる。

「これでしばらくは大丈夫です。すぐにこの場を離れましょう」
「ありがとう……しかし……」

 どうやら検問していた相手の中にちょっとした知り合いがいたらしいな。

「とりあえず急ぎましょう。もうしばらくすればあの人達も正気を取り戻しますよ」

 何らかの精霊にでもイタズラされたと思ってくれたらいいけど、そんなに都合よくいくとは思えない。
 とにかく急いでドズ・カムの町に向かうしかない。

「もうしばらく先に進めば、ドズ・カムの城壁の町が見えてくるのですね」

 もともとミリンサ本人が罪人として追われているワケでは無い以上、いくら何でも城壁が見えているところで大騒ぎは出来ないはずだ。

「ええ。そうです……」

 ミリンサは不安そうだな。これだけ大がかりに追い回されたら当然というべきか。
 しかし本当にどんな理由があって、こんな大事になっているんだろう。
 これまでの情報を整理すると

・ドズ・カムの町では最近、領主が亡くなった。領主後継者は複数名乗り出ていて、後継者争いが起きている。
・次代の領主は市民である成人女性達の無記名投票で決まる。なお市民の女性はミリンサによると数にして数百人はいる。
・ミリンサはこの領主選挙に投票するため、ドズ・カムの町に向かっていて追っ手はその妨害なりミリンサを捕らえるなりしようとしている。
・追っ手は大勢の人間を駆り出し、魔法使いを何人も雇うだけの勢力である。
・候補者の一人はミリンサの幼なじみ(名前はアラズバン)だが、そのアラズバンを含めてミリンサ自身も個々の候補については詳しく知らない。
・ミリンサの実家はそれなりに裕福だが、歴代の領主とは殆ど関係が無く、市政には関わらない傍流の家である。
・ミリンサの票については実家が候補者達に売り込むだけの価値がある。またミリンサ自身も自分が追われる理由には見当がついている。

 う~ん。仮に市民の女性が数百人いる状況で、有力候補が一票レベルの差で争っていたとしても、ミリンサ一人をそんなに躍起になって追い回すよりも、元から町にいる女性達の票を固めた方がよほど確実な筈だ。
 それなのにここまでミリンサ一人に固執する理由は何なのだろう。
 ミリンサの実家は歴代の領主とは殆ど関係が無いのだから、他の投票人に大きな影響があるとも思えない。
 待てよ――今までオレは漠然と領主との関わりの深さの事を考えてきたけど、ひょっとしたら歴代の領主との関わりが薄い事にこそかえって何か意味があるのかもしれないぞ。

「ミリンサさん……ひょっとしたらあなたの実家が――」
「あ?!」

 オレがそこまで口にしたところで、ミリンサの小さく叫んで表情が一変する。

「どうしました?」
「どうやらもう大丈夫なようです。出迎えが来ました」

 見ると何人かの一団がこちらに近寄ってきていた。そしてミリンサもフードを外し、そこで何かに気付いた様子でオレに振り向く。

「すみませんが髪を元に戻してくれますか?」
「あ……分かりました」

 そういえばミリンサの髪はオレが魔法で黒く染めていたのだな。
 そしてオレ達はひとまずその出迎えという一団に合流するが、それがどんな結果を招く事になるのか分かるまでもうしばらくかかるのだった。

【後書き】
ちなみにドズ・カムの名前の由来はエルリックサーガにちょっとだけ出てくる地名です。
しおりを挟む
感想 104

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...