異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第15章 とある御家騒動の話

第573話 コンラディンとの決着

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 コンラディンはオレの返答を受けて、明らかに困惑していた。
 まあオレも危害を加えられる事がしょっちゅう過ぎて、慣れてしまったせいで常人とは感覚がずれまくっていることは理解しているよ。

「あなたに対して一番に文句があるのは無関係な人を巻き込んだ事です。だからその件はしっかりと償ってもらいます」
「それは本心なのか?」
「当たり前ですよ。正直に言えば命を狙われた事は何度もありますけど、いちいち相手を恨んでいたらキリがありませんからね。わたしが望むのは先ほども言ったように、あなたがその努力と魔法の腕を正しく使ってくれる事を期待しているだけです」
「勝手な事を言っているが、お前のような小娘風情に手も足も出ないと蔑まれ、陰口をたたかれ続けた我の気持ちが分かるのか」

 ウァリウスは自分を担ぎ上げて利用しようとする貴族や将軍達に対抗すべく、オレを女神だの何だと持ち上げていたけど、それが面白くない連中からコンラディン達は
『宮廷魔術師などと威張っていたくせに、束になっても後宮にいた小娘一人に遥か及ばないのか』
とか何とか言われていたのは間違い無い。
 それで自信を喪失して辞めた魔術師もいれば、プライドを傷つけられた復讐のためにオレを狙うようになったコンラディンのような相手もいるというわけか。

「あなたのその気持ちが分かると言えば嘘になるでしょうね。しかしそれでもあなたはわたしを凌駕するために必死で研究を重ねたのでしょう? その情熱を正しい方向に注いでくれることを望むだけです」
「……」

 コンラディンは複雑な表情で押し黙る。
 そしてここでオレの方から疑問点を問うことにした。

「ひとつ伺っていいですか? どんな手段であなたはわたしがこのドズ・カムにいることを知ったのです?」
「魔法で我に連絡を入れてくる者がいるのだ。断っておくが、それが誰なのか我もハッキリとは知らん。仮に知っていても教えはせんがな」
「その相手が宮廷魔術師の地位を捨てたあなたの研究を手助けし、こっそりと援助をしていたのですね」
「そういうことだ」

 いったい誰なのかは知らないが、そいつは間違い無くコンラディンを手駒として、オレにぶつけるつもりだったのだろう。
 もちろん相手の思惑とすれば、コンラディンがオレを倒せばよし、もしも敗れたとしても手駒を一つ失うだけに過ぎないわけで、どう転んでも自分達は損をしないと判断していたに違いない。

「推測ですけど、あなたを援助していた相手は宮廷であなたを責めた人達と無関係ではないと思いますよ」
「そうかもしれん。だがそんな事は我には関係のない話というものだ」

 オレがコンラディンをあまり憎む気になれないのも、同情というよりは単に手駒として使われているのが丸わかりだからだ。
 コンラディン本人もそれは分かった上での事なのだろうけどな。
 そしてこの時、先ほどから随分とゆっくり近づいてきていた民兵達がコンラディンに手にした槍を突きつける。

「この男が先ほどからの騒ぎの元凶ですか!」

 民兵の一人が叫ぶが、その声は恐怖のために上ずっている。
 よくよく見ると突きつけた槍の切っ先も震えているな。
 あれだけ怪物の類を呼び出して暴れていたら、そりゃ兵士たちにすれば恐ろしい相手なのは間違い無い。
 それを言ったら下手をするとオレも同様の存在になりかねないはずだけど、そこは知名度と、あとはやっぱり見た目の差なんだろう。

「ええ。腕の立つ魔法使いですから、十分に気をつけて下さい」
「う……やっぱりそうですか……」

 オレのこの言葉に、民兵達には思った通りひるむの色が出る。
 しかしこのままでは下手をすると、怖れのあまりいきなりコンラディンを刺し殺してしまいかねない。

「ただし。この人には余力は残っていない様子ですから、今の内に魔法を使えないよう腕を縛っておけば大丈夫でしょう」
「分かりました……」

 そう言って民兵達はコンラディンを捕らえ、その腕を縄で縛り上げる。
 そして引っ立てられたところでコンラディンはどういうわけか、安堵した様子でオレに向き直る。

「口惜しいが……こうなって少しばかりだがホッとした……もう復讐のため、日々を費やす事もなくなると思うと……」
「あなたも罪を償ったら、あとはこれまでわたしを倒すために費やしていた努力をもっと別の事に向けて下さい。そうすればもう一度、地位や名声を得る事が出来るでしょう」

 オレがそう口にするとコンラディンは改めて息を呑む。

「お前が大陸に名を馳せる名声を得るようになった理由も分かった気がする……この我ごときとでは最初から見ている世界が違いすぎるのだな……」
「違いますよ。むしろあなたが自分の世界を狭めてしまっていたのです。だからこれからはあなたがもっと別の世界を見て下さい」
「もっと早くそれに気付きたかったな……何とも無駄な遠回りをしてしまったものだ」

 そういってコンラディンは民兵達に連れて行かれた。
 そして残った面々はオレに対して、いろいろと熱い視線を注いでくる。

「自分の命を狙った者まで、あのような暖かい言葉をかけるとは……」
「まさに女神様だ」

 周囲は口々に称賛するけど、オレにしてみれば障害を一つどうにか乗り切っただけで、そもそもこの町の問題は何も解決していないのだな。
 コンラディンに偉そうに説教した身だけど、自分が直面している事態をどうするか、頭を悩ませつつオレはドズ・カムの町に戻ることにした。
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