異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第15章 とある御家騒動の話

第575話 大司祭の謝罪、そしてその意図

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 こんなところで頭を下げられてもオレとしてはどうしていいのか分からないが、ひょっとするとドロムはとんでもない事実を隠していたのだろうか?
 それともやっぱり何か誤解があるのか。
 いや。最悪の場合として『申し訳ありませんが、ここで死んで下さい』と言って攻撃してくるとか、そういう展開もあり得るのか?
 これまでロクでもない事ばかりだったので、すぐに悪い方向に物事を考えるようになってしまった気がするな。
 しばしの時間、緊迫した空気が流れる中、ドロムは頭を上げる。

「とりあえず何が『申し訳ない』のか教えて下さい。それを聞かないと何も答えようがありませんよ」
「先ほどアルタシャ様に対し、この町の司祭達があれこれと陳情させていただきました」

 まさかそんな件を謝っているのか?
 いや。ドロムはあくまでも『自分は無関係』という立場を取っていたはずだから、それで改めて無関係だと念を押しているのか。
 違うな。この謝罪は明らかにそういうものではないぞ。

「これまでの陳情の件についてはお忘れになって、アルタシャ様は領主選びの投票までお静かにお過ごし下さい」
「それは構いませんが……事情を説明して下さい」

 これまでのドロムは領主選びについてオレの口出しを望まないと言っていた。だからドロムの立場そのものに変わりは無い。

 状況を整理すると、今まで聞いた話では八人も領主候補者が乱立したため『候補者の関係者は投票出来ない』というルールから投票人出来るのが僅かな数になり、各候補者が二人ずつ投票資格のある人間を囲い込んだせいで手詰まりになっていたはずだ。
 ドロムが司祭達の陳情を黙認していたのは、オレに候補者を選ばせ、それで大司祭である自分が責任を回避して、次の領主を決めるというものだったろう。
 それで陳情の事を忘れろと言うなら、それが意味するものはなんだろうか。

「実はあの後で候補者達が話し合いをしているようで、そのために投票人も動き始めているのですよ」

 あ! そうか。なるほど。
 ようやく分かったぞ。
 要するにオレの発言一つで状況が変わる――と思ったからこそ、一部の候補者が先手を打ったと言う事らしい。
 推測だけどオレと対面して候補を売り込んだ司祭が、こっちの気のない態度から

『自分の推している候補をアルタシャは支持していない。きっと別の誰かを支持するつもりなのだろう』

と深読みしたのではないだろうか。
 そして候補者を推している司祭達にも当然、より近しい関係の相手はいるだろうから、他の司祭の話を確認してどちらも支持されていないと思った者同士が手を組んだに違いない。

 もちろんオレ自身はどの候補も押す気は無かったのだけど、司祭達はそれを知らないものだから、誰かに対する支持を明言されて、他の勢力が雪崩を打つ前に急いで行動に出なければ、と皆が一斉に動き出したのだろう。

 どうやらドロムの意図は真逆に外れたようで、一周回ってその意図の通りになったということか。
 そうするとさっきまでのコンラディンとの戦いで、オレが脇道にそれていた事が結果的には状況が動き出す時間を生み出した事になる。
 つくづく物事は分からないものだ。

 何にせよこれで今までの行き詰まり状態が解消されるのは間違い無い。
 それでドロムがオレに頭を下げて、先ほどの陳情の事は忘れろ――つまり口を挟まないように釘を刺してくる理由も明らかだ。
 もともとドロムは帝国との友好関係を構築し、その後ろ立てが必要だと考えてはいても、その帝国からの干渉はなるだけ避けたいという立場だった。
 それでも優先順位で言えば、領主が空位になってこのドズ・カムが混乱するのは更に望ましくないので、各勢力が同数ずつ投票人を囲い込んで手詰まりになっていた事から帝国からの干渉をある程度まで強めても安定を選ぼうとしたわけだ。
 しかし良くも悪くも状況が動き出し、少なくとも『投票で領主を選ぶことが出来ない』という最悪の事態は避けられる見通しが立った。
 そうするとここでオレが下手に介入して、帝国の影響力が大きくなるのは避けたいので、今はオレに対して黙っていて欲しいとなったわけだ。

「私が身勝手なことをお願いしているのは分かっております。しかしあくまでも領主は我らこの町の住民の手で選んだ方が、後々にも尾をひく事もなく、今後の帝国との関係にもきっと良い影響が生まれると信じております」

 ドロムの言葉は丁寧だけど、様するにここでは

『領主選びの先行きが不安だったので、さっきまでは各候補達が陳情するのを認めていたけど、幸か不幸かオレの存在が切っ掛けとなって投票で決まる見込みが出てきたので、もうよそ者は口出しせず黙っていてくれ』

と言っているわけだ。

 手詰まりの時は『私は反対したが、アルタシャ様のお言葉はこの通りだ』と言う事で自分の責任は回避し、状況が変わったら今度はあくまでも大司祭である自分の仕切りの元で領主が決まった事にして、己の権威を守ろうとする。
 そのためだったら、ドロムは今この場でオレに対して頭を下げるぐらいは何でも無いのだろう。
 やっぱりこの人も長年、この町で大司祭をやってきただけあって一皮むけば相当なタヌキだな。
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