異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第16章 破滅の聖者

第589話 村を出たところで

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 ひとまずオレは村長から病の精霊を崇拝している連中のねぐらについて確認する。

「それで病の精霊を崇める連中についてですが、奴らはこの村から歩いて一日ほどのところにある古い廃虚に棲み着いているようです」
「その廃虚とはもともと何だったのですか?」

 この質問に対し、村長は小さく首を振る。

「残念ながら分かりません。ただ近隣のものは祟りがあると言って、近づいてはいなかったのです」

 この世界では崇拝されなくなった精霊や神、ないしその眷族が、弱まりながらも人間を恨んで暴れる事がしばしばある。
 そういう相手はところによってはシャーマンがなだめたり、他の神の眷族に加えたり、一神教徒なら自分達の道具として使役したりもするが、当然ながらそこからこぼれて落ちて力尽き消滅するまで暴れ回るものもいる。
 そんな存在がいたせいで、長らく普通の人間が近づかなくなり、そこにもっとロクでもない相手が居座ったというところだろうか。

「あとそのために近隣のごろつき共も集まっているようです」

 その手のごろつき連中は不潔な環境で病気にかかるのも多いだろう。だから病気の精霊を崇拝して、病を避けているのか。
 それともうまい汁を吸いたくて協力しているのか。
 たぶん両方だろうな。
 まっとうな社会から敵視される存在が、寄り集まってさらにタチが悪くなってしまった可能性が一番高い。
 ひょっとすると病の精霊とは別に、強盗の精霊なんかも礼拝されているかもしれないな。

「それ以外には周囲に大勢、病気を治してもらう事を望むものが集まっているようです。そんな忌まわしい精霊を崇拝するのはもちろん、生け贄を捧げる事など論外のはずなのですが……」
「その気持ちはわたしにも分かりますよ」

 自分や家族の身が危ういのに加えて、他に手が無いとなれば禁忌であろうとも、その病気を引き起こした相手の信者になるか生け贄を捧げてでも、どうにかしてもらいたいと思うのは仕方ないのだろう。
 もちろん放置するわけにもいかないが、いくら何でも話し合いでどうにかなる相手とは思えない。
 そうなるとオレがやるべき事と言えば、どこかのコネで連中を取り締まってもらうのが関の山だろう。

「あとこれは噂なのですが……」
「どうしました?」
「いえ……あくまでも噂でしかありませんが、連中は病に倒れたはずのものを周囲の農地で働かせているそうです」
「それは病気が治ったと言う事ではないのですか?」
「しかしそこで働いているものが戻ってくる事は無く、村の人間が面会を求めても会話すらできないそうです」

 それでは対価を『身体で払わせている』ということなんだろうか。
 いずれにしてもオレに今すぐ出来るのは大した事ではない。
 どれだけ称賛されていても、こういう場面では無力さを何度も思い知らされて来た事だ。

「残念ですが、彼らを今すぐどうにかする事は出来ませんが、あなた方がもとの平穏な生活を取り戻せるように最善を尽くしましょう」
「ありがとうございます。縁もゆかりもない我らに対し何から何まで……」

 そこまで感謝されるとちょっとばかりこそばゆい。
 それとあともう一つ聞きたい事がある。

「この近辺で『この世は苦痛に満ちているが、それだからこそ精一杯生きねばならない』という教えを広めている方々の事はご存じでしょうか?」
「聞いた事はありますが……この村にはそのような方がお越しになった事はありませんので詳しいところまでは存じません」

 まあそうだろうな。

「もしやそのお方はあなた様のお知り合いでしょうか?」
「いえ。ちょっとした興味があっただけです」

 そんなわけでオレは一晩をこの村で過ごし、翌朝に出ていく事となった。


 とりあえずオレとしては近くの町に出向いて、そこで聖女教会のツテでも使うしかないか。
 ひょっとするとあの出しゃばりなオレの守護女神イロールが、事前に連絡を入れているかもしれないけど、出しゃばりでも気まぐれで何をするか分からないから、あんまり期待はしないでおこう。
 しかしこのオレもはた目には、あちこち出しゃばって行動しているが、その真意がまるで分からないだろうから、そういう意味ではオレもあの女神に近しい存在となっているのか。
 うう。見た目だけでなく、内面でも影響が出ているのかもしれないぞ。
 しかしそこを問い詰めたくとも、相手が神界にいるのではどうしようもない。

「もし。そこのお方」
「え?」

 オレが振り向くとそこにいたのは、三十代と思しき男性だった。
 腰には剣をさしているが、身なりといい、体つきといい、明らかに農民ではないな。

「この近くで病気を治して回っておられる、旅の聖女様とはあなた様でしょうか?」
「ええ……その通りです」
「そうですか。それはよかった。それでは頼みを聞いていただけますかな」

 明らかに相手はホッとした様子だが、ひょっとすると別の村で病人を治療して欲しいという頼みだろうか。
 それを聞き入れるのはやぶさかではないが、病の精霊の信徒達への対応が遅らせるわけにもいかないので色々と面倒だな。
 しかし幸か不幸か、オレのこの心配は外れる事となる。
 周囲にはいつの間にか幾人かの武装した人間がゾロゾロと集まってきていたのだ。
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