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第16章 破滅の聖者
第592話 背後でうごめくものたちは
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とりあえずオレは足を緑に絡まれ動けなくなっている連中に対し、更に成長した草を伸ばす。もちろん足下から上がってくる緑の絨毯を見て、恐怖の叫びがあたりにこだました。
「ひぇぇぇ!」
「許してくれ! ホンの出来心だったんだ!」
「俺達はあいつに騙されていただけだったんだよ」
まったくいつも通りのワンパターンな対応だな。こういう輩はどこに行っても、変わらないものなんだな。
しかしそういう輩でも、武器を振るえば場合によってはオレを殺害だって出来るのだから警戒は怠れない。
「とりあえず武器を捨てなさい。イヤだというならこのまま皆さんは緑に呑み込まれ、この大地の肥料になりますよ」
実際にはこんな雑草を伸ばしたぐらいでは、動けなくするのが関の山だけど、何しろこっちに力が無かったら、蹂躙された上で売り飛ばされるところだったのだからな。
この程度のハッタリでビビらせるぐらいなら、まだまだぬるいところだ。
オレの場合は一人旅が当たり前だけど、これが普通の聖女だったら、こういうことがあるから常に護衛がつくわけなんだな。
「わ、分かった……武器は捨てるから許してくれ」
「ゆっくりと武器から手を離しなさい。妙な真似をすると、こんな程度では済みませんよ」
オレの脅しを受けて、連中は手に持った武器を地面に落とすので、いったん魔力の供給を切って植物が繁茂するのを止める。
「ひとつ聞きますけど、先ほど皆さんが『旦那』と呼んでいた人はいったい誰なんですか?」
「それは……」
「答えられないのは、やっぱりこのまま皆さん全員、ここで肥料になりたいという事ですかね。それならきっと大地の精霊も喜ぶことでしょう」
ここで一斉に血の気が引く音が響くように、ごろつき共の顔は青くなる。
「分かった。しゃべるから勘弁してくれ! 俺達は小娘ひとりを相手するのに協力しろと言われただけで詳しい事は知らねえんだよ!」
この必死な様子から嘘ではないらしい。
ただその『相手』というのが、その言葉の本来の意味とかけ離れているのは間違い無いけどな。
そしてまだまだ確認すべき事はある。
「あなた方はこのあたりで活動している病の精霊を崇拝しているのですか?」
オレのこの問いかけに対し、連中は必死で首を振る。
「ち、違う! 俺達はあいつらとは無関係だ!」
この『あいつら』との言い方からして、確かに崇拝はしていないかもしれないが、無関係というのは嘘だろうな。
恐らくは片棒を担いで、そのおこぼれに預かっているのだろう。
「それで皆さんが『旦那』と呼んでいたのは、どこの誰なんですか?」
「旦那……いや、あの野郎はここらではちょっとした顔でな、少しばかり恐れられているんだよ」
「いったい何者で、どうして恐れられているんですか?」
「それなんだが……」
ここで連中は何かを恐れるかのごとく周囲に目を向ける。
「どうしたんです?」
「勘弁してくれ。俺達も詳しい事は知らないんだけど、あいつに逆らうと……」
「どうなるんですか?」
「ああ……なるんだよ……」
ここで連中は震える手でオレの背後を指差した。そしてその先にはゆっくりとした動きで幾つもの人影が姿を見せていたのだった。
あれはまさか?
あのギクシャクとした、どこか不自然な動きはどう見ても普通の人間のものではない。
そしてオレの強化している視覚に写る、そいつらの顔には生気も無ければ、知性も感じられず、ただ虚ろに魂のない肉体がうごめいているようにしか見えない。
ここでオレは『霊視』を使って確認するが、思った通り新たに現れた奴らには霊魂が見えない。
つまりいわゆるアンデッド、それも『魂のない肉体が動いている低級なヤツ』という事だ。
それではあの『旦那』というのは、アンデッド崇拝教団である『虚ろなる者』の信徒だったのか。
以前に聞いたところでは『虚ろなる者』の宣教師は疫病が蔓延した地域で活動し、病魔に冒された人間に対し、その病気から解放されることを約束して魂を捧げさせ、低級なアンドッドに変えてしまうという事だった。
そうか。恐らく『虚ろなるもの』の教団は病の精霊の信徒と組んで、病気を広めさせることで、自分達の布教活動の助けにしているんだ。
そうやってアンデッドを増やす見返りとして、労働力として低級アンデッドを提供するとかそういう忌まわしい協力関係を構築しているに違いない。
先ほどの村で病の精霊の元に向かった人間が、その周囲で働いていると言っていたが、たぶん病状が進行していて衰弱が激しく、また代償を払えない人間の末路がそれに違いない。
そしてラマーリア王国の首都コルストで連中に大打撃をあたえた『アルタシャ』を当然、恨んでいてオレだと確認出来たのでアンデッドを使役して攻撃するつもりなんだ。
「ひえええ! 助けてくれ!」
ごろつき共は血相を変え、逃げ出そうともがいている。
恐らくはさっきの『旦那』はオレの正体を確認した上で、もしもただの聖女だったら、こいつらに捕らえさせ売り飛ばすつもりだったが、間違い無く『アルタシャ』だと確認出来たのでアンデッドの群れを差し向けてきたというところだろう。
これまでいろいろと恨みを買っては来たが、相手が『不死者』の教団であるからこそ、その恨みは下手をすれば永遠に続くかもしれないのか。
「ひぇぇぇ!」
「許してくれ! ホンの出来心だったんだ!」
「俺達はあいつに騙されていただけだったんだよ」
まったくいつも通りのワンパターンな対応だな。こういう輩はどこに行っても、変わらないものなんだな。
しかしそういう輩でも、武器を振るえば場合によってはオレを殺害だって出来るのだから警戒は怠れない。
「とりあえず武器を捨てなさい。イヤだというならこのまま皆さんは緑に呑み込まれ、この大地の肥料になりますよ」
実際にはこんな雑草を伸ばしたぐらいでは、動けなくするのが関の山だけど、何しろこっちに力が無かったら、蹂躙された上で売り飛ばされるところだったのだからな。
この程度のハッタリでビビらせるぐらいなら、まだまだぬるいところだ。
オレの場合は一人旅が当たり前だけど、これが普通の聖女だったら、こういうことがあるから常に護衛がつくわけなんだな。
「わ、分かった……武器は捨てるから許してくれ」
「ゆっくりと武器から手を離しなさい。妙な真似をすると、こんな程度では済みませんよ」
オレの脅しを受けて、連中は手に持った武器を地面に落とすので、いったん魔力の供給を切って植物が繁茂するのを止める。
「ひとつ聞きますけど、先ほど皆さんが『旦那』と呼んでいた人はいったい誰なんですか?」
「それは……」
「答えられないのは、やっぱりこのまま皆さん全員、ここで肥料になりたいという事ですかね。それならきっと大地の精霊も喜ぶことでしょう」
ここで一斉に血の気が引く音が響くように、ごろつき共の顔は青くなる。
「分かった。しゃべるから勘弁してくれ! 俺達は小娘ひとりを相手するのに協力しろと言われただけで詳しい事は知らねえんだよ!」
この必死な様子から嘘ではないらしい。
ただその『相手』というのが、その言葉の本来の意味とかけ離れているのは間違い無いけどな。
そしてまだまだ確認すべき事はある。
「あなた方はこのあたりで活動している病の精霊を崇拝しているのですか?」
オレのこの問いかけに対し、連中は必死で首を振る。
「ち、違う! 俺達はあいつらとは無関係だ!」
この『あいつら』との言い方からして、確かに崇拝はしていないかもしれないが、無関係というのは嘘だろうな。
恐らくは片棒を担いで、そのおこぼれに預かっているのだろう。
「それで皆さんが『旦那』と呼んでいたのは、どこの誰なんですか?」
「旦那……いや、あの野郎はここらではちょっとした顔でな、少しばかり恐れられているんだよ」
「いったい何者で、どうして恐れられているんですか?」
「それなんだが……」
ここで連中は何かを恐れるかのごとく周囲に目を向ける。
「どうしたんです?」
「勘弁してくれ。俺達も詳しい事は知らないんだけど、あいつに逆らうと……」
「どうなるんですか?」
「ああ……なるんだよ……」
ここで連中は震える手でオレの背後を指差した。そしてその先にはゆっくりとした動きで幾つもの人影が姿を見せていたのだった。
あれはまさか?
あのギクシャクとした、どこか不自然な動きはどう見ても普通の人間のものではない。
そしてオレの強化している視覚に写る、そいつらの顔には生気も無ければ、知性も感じられず、ただ虚ろに魂のない肉体がうごめいているようにしか見えない。
ここでオレは『霊視』を使って確認するが、思った通り新たに現れた奴らには霊魂が見えない。
つまりいわゆるアンデッド、それも『魂のない肉体が動いている低級なヤツ』という事だ。
それではあの『旦那』というのは、アンデッド崇拝教団である『虚ろなる者』の信徒だったのか。
以前に聞いたところでは『虚ろなる者』の宣教師は疫病が蔓延した地域で活動し、病魔に冒された人間に対し、その病気から解放されることを約束して魂を捧げさせ、低級なアンドッドに変えてしまうという事だった。
そうか。恐らく『虚ろなるもの』の教団は病の精霊の信徒と組んで、病気を広めさせることで、自分達の布教活動の助けにしているんだ。
そうやってアンデッドを増やす見返りとして、労働力として低級アンデッドを提供するとかそういう忌まわしい協力関係を構築しているに違いない。
先ほどの村で病の精霊の元に向かった人間が、その周囲で働いていると言っていたが、たぶん病状が進行していて衰弱が激しく、また代償を払えない人間の末路がそれに違いない。
そしてラマーリア王国の首都コルストで連中に大打撃をあたえた『アルタシャ』を当然、恨んでいてオレだと確認出来たのでアンデッドを使役して攻撃するつもりなんだ。
「ひえええ! 助けてくれ!」
ごろつき共は血相を変え、逃げ出そうともがいている。
恐らくはさっきの『旦那』はオレの正体を確認した上で、もしもただの聖女だったら、こいつらに捕らえさせ売り飛ばすつもりだったが、間違い無く『アルタシャ』だと確認出来たのでアンデッドの群れを差し向けてきたというところだろう。
これまでいろいろと恨みを買っては来たが、相手が『不死者』の教団であるからこそ、その恨みは下手をすれば永遠に続くかもしれないのか。
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