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第16章 破滅の聖者
第621話 出くわした妙な集団は
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メトゥサイラが何を考えているのかなど、今のオレに分かるはずも無いが、とりあえずこのまま人々を癒やし続けていれば、いつかは会えるだろうという見込みはあった。
いつもながら出たとこ勝負だけど、もうすっかり慣れてしまったよ。
しかし村々を回っていると、この近辺の住民の多くはあの少年を『聖者』として尊敬している事は確かなようだ。
それは病の精霊やアンデッドの脅威にさらされている人間はもちろん、そうでない人たちの間にも浸透しつつある事がオレにもハッキリと感じられた。
この世界の神様の多くは崇拝する事で何らかの御利益がある。
もちろん並の信徒にとっては直接的な利益はごく限られたものであって、殆どは同じ崇拝する事が自分達の共同体に入る事を意味する方が重要だ。
それ以外にも名高い英雄が神に近い存在として崇拝されているのは、オレ自身が経験している事だけど、こっちの場合は直接出くわした王子や皇帝などがいろいろな意図――むしろ下心――の元にやっているので一気に有名になってしまったのだろう。
そうすると神ではないので崇拝してご利益もなく、地域の共同体とも無縁であるにも関わらず、ついでに言えば何か凄い事をしたわけでもないのに、その弁舌だけで支持を獲得しているメトゥサイラはやはり何か特別な存在と考えるべきだな。
そんな事を考えつつ、細い道を進んでいると、ちょっと興味をそそるものがオレの視界の傍らに飛び込んで来た。
それは道の端に転がる、複数の死体というよりはアンデッドの残骸だった。
近づいて確認したところでは、いずれも徹底的にバラバラにされており、まるで『二度と蘇らないよう』にという思いが込められているかのように感じられる。
正直に言えばいかにアンデッドとはいえど、元は人間だった存在の残骸になど近づきたくもないのだが、こういう死体を見る事にもかなり慣れてしまったな。
この世界では当然ながら公然とアンデッドの存在を支持する勢力は無い。
だが残骸の損壊具合を見る限り、少なくともこれを成した相手は、通常とは違い特別にアンデッドを敵視しているように感じられる。
それが宗教的な意図によるものか、個人的な感情によるものかは分からない。
これが並のファンタジーならば『村人達に雇われてアンデッド退治をしている冒険者』などという場合もありうるが、残念ながらこの世界にそんなロマンな仕事をしている人間はまず存在しない。
それはともかくアンデッドを『生命への冒涜』と考える勢力も多く――聖女教会もその一つ――そのような教団が、国とは無関係にこの地域にアンデッド討伐部隊を送り込む事は当然考えられる。
ただしその連中がどこまでオレにとって『味方』と言えるかは分からない。
それどころか以前に出くわした『地界の太陽神 シャガーシュ』にように、場合によっては善意と良心に基づいて無辜の民衆を『庇護』の名の元に虐殺するような、とんでもない相手の可能性も否定出来ない。
極端な話『アンデッドが含まれているかもしれない』というだけの理由で、村を一つ焼き払い、住民を皆殺しにするような『アンデッド撲滅の狂信者集団』だってありうるのだ。
もしもこれを成した相手が、そんな連中だったとしたら、オレにとっては新たな『敵』ということになるぞ。
仕方ないのでここは連中の後を追うしかないだろう。
仮に狂信者集団だったとしても、オレならば安心とは言わないが、どうにか出来る自信はある。
少なくとも無辜の民衆が虐殺されるよりはずっとマシというものだ。
そしてしばらく後にオレはくだんの集団らしきものに出くわした。
見たところ相手は数人の戦士団らしい。
一応、遠目で確認したところではその機敏な動きはアンデッドでない事は確かなようだ。
その身なりからするとやはりどこかの国に属しているというわけではない様子だが、それ以上は近づいて確認するしかないだろう。
それでは暴力的な活動を抑止する『調和』をかけて話かけるとしよう。
「すみません。そこの皆さん。少しお話よろしいでしょうか」
「なんだ? 女か?」
「こんなところを一人でなぜうろついている?」
今のオレはいつものようにフードで顔がよく見えないようにしているから、やっぱり警戒されて当然だろうな。
この近辺でアンデッド教団が活動しているのを知っているならなおさらだ。
ただ近くで見たところでも、略奪目当てのごろつきではなさそうなので、そこは少しばかりホッとしたところだな。
「皆さんはアンデッドと戦っておられる戦士の方々とお見受けしましたが、どこの神様を崇めておられるのでしょうか?」
「我らは剣神ザスターニックを崇めし戦士だ」
記憶にあるが、その名は以前に出会った女戦士ミーリアの崇拝していた戦士の守護神だったな。
その神話によるとかの神は『世界で最初に剣を見いだし、その剣をもちいた相手が世界で初めての死者となったので、あらゆる人間は死すべき運命を背負うようになった』とされていて、信徒はそれを誇りにしているというちょっと物騒な神様だったはずだ。
ただし軽々しく武器を使う事は禁じられており、神と同じく誇り高いもののみが剣を振るう資格があるというちょっとばかり暑苦しい教義を持っていたはず。
まあ信徒が全員、教義を守っているとも限らないけど、それでも虐殺とかそっちの方面で無い事は確かなので安堵するところだろうか。
だがここで少しばかり気になる事が起きる。
「おい。気をつけろ」
妙な事にかのグループの一人は、答えた仲間を小突いて耳打ちしたのだ。
普通の人間にはもちろん聞こえないだろうが、強化されたオレの耳にはその中身が聞こえてきていた。
「我らはメトゥサイラの導きにより『正しい信仰』に至ったのだ。他の連中とは違うのだぞ」
なんだって?
聞き逃せない言葉を耳にして、オレは思わず硬直してしまうのだった。
いつもながら出たとこ勝負だけど、もうすっかり慣れてしまったよ。
しかし村々を回っていると、この近辺の住民の多くはあの少年を『聖者』として尊敬している事は確かなようだ。
それは病の精霊やアンデッドの脅威にさらされている人間はもちろん、そうでない人たちの間にも浸透しつつある事がオレにもハッキリと感じられた。
この世界の神様の多くは崇拝する事で何らかの御利益がある。
もちろん並の信徒にとっては直接的な利益はごく限られたものであって、殆どは同じ崇拝する事が自分達の共同体に入る事を意味する方が重要だ。
それ以外にも名高い英雄が神に近い存在として崇拝されているのは、オレ自身が経験している事だけど、こっちの場合は直接出くわした王子や皇帝などがいろいろな意図――むしろ下心――の元にやっているので一気に有名になってしまったのだろう。
そうすると神ではないので崇拝してご利益もなく、地域の共同体とも無縁であるにも関わらず、ついでに言えば何か凄い事をしたわけでもないのに、その弁舌だけで支持を獲得しているメトゥサイラはやはり何か特別な存在と考えるべきだな。
そんな事を考えつつ、細い道を進んでいると、ちょっと興味をそそるものがオレの視界の傍らに飛び込んで来た。
それは道の端に転がる、複数の死体というよりはアンデッドの残骸だった。
近づいて確認したところでは、いずれも徹底的にバラバラにされており、まるで『二度と蘇らないよう』にという思いが込められているかのように感じられる。
正直に言えばいかにアンデッドとはいえど、元は人間だった存在の残骸になど近づきたくもないのだが、こういう死体を見る事にもかなり慣れてしまったな。
この世界では当然ながら公然とアンデッドの存在を支持する勢力は無い。
だが残骸の損壊具合を見る限り、少なくともこれを成した相手は、通常とは違い特別にアンデッドを敵視しているように感じられる。
それが宗教的な意図によるものか、個人的な感情によるものかは分からない。
これが並のファンタジーならば『村人達に雇われてアンデッド退治をしている冒険者』などという場合もありうるが、残念ながらこの世界にそんなロマンな仕事をしている人間はまず存在しない。
それはともかくアンデッドを『生命への冒涜』と考える勢力も多く――聖女教会もその一つ――そのような教団が、国とは無関係にこの地域にアンデッド討伐部隊を送り込む事は当然考えられる。
ただしその連中がどこまでオレにとって『味方』と言えるかは分からない。
それどころか以前に出くわした『地界の太陽神 シャガーシュ』にように、場合によっては善意と良心に基づいて無辜の民衆を『庇護』の名の元に虐殺するような、とんでもない相手の可能性も否定出来ない。
極端な話『アンデッドが含まれているかもしれない』というだけの理由で、村を一つ焼き払い、住民を皆殺しにするような『アンデッド撲滅の狂信者集団』だってありうるのだ。
もしもこれを成した相手が、そんな連中だったとしたら、オレにとっては新たな『敵』ということになるぞ。
仕方ないのでここは連中の後を追うしかないだろう。
仮に狂信者集団だったとしても、オレならば安心とは言わないが、どうにか出来る自信はある。
少なくとも無辜の民衆が虐殺されるよりはずっとマシというものだ。
そしてしばらく後にオレはくだんの集団らしきものに出くわした。
見たところ相手は数人の戦士団らしい。
一応、遠目で確認したところではその機敏な動きはアンデッドでない事は確かなようだ。
その身なりからするとやはりどこかの国に属しているというわけではない様子だが、それ以上は近づいて確認するしかないだろう。
それでは暴力的な活動を抑止する『調和』をかけて話かけるとしよう。
「すみません。そこの皆さん。少しお話よろしいでしょうか」
「なんだ? 女か?」
「こんなところを一人でなぜうろついている?」
今のオレはいつものようにフードで顔がよく見えないようにしているから、やっぱり警戒されて当然だろうな。
この近辺でアンデッド教団が活動しているのを知っているならなおさらだ。
ただ近くで見たところでも、略奪目当てのごろつきではなさそうなので、そこは少しばかりホッとしたところだな。
「皆さんはアンデッドと戦っておられる戦士の方々とお見受けしましたが、どこの神様を崇めておられるのでしょうか?」
「我らは剣神ザスターニックを崇めし戦士だ」
記憶にあるが、その名は以前に出会った女戦士ミーリアの崇拝していた戦士の守護神だったな。
その神話によるとかの神は『世界で最初に剣を見いだし、その剣をもちいた相手が世界で初めての死者となったので、あらゆる人間は死すべき運命を背負うようになった』とされていて、信徒はそれを誇りにしているというちょっと物騒な神様だったはずだ。
ただし軽々しく武器を使う事は禁じられており、神と同じく誇り高いもののみが剣を振るう資格があるというちょっとばかり暑苦しい教義を持っていたはず。
まあ信徒が全員、教義を守っているとも限らないけど、それでも虐殺とかそっちの方面で無い事は確かなので安堵するところだろうか。
だがここで少しばかり気になる事が起きる。
「おい。気をつけろ」
妙な事にかのグループの一人は、答えた仲間を小突いて耳打ちしたのだ。
普通の人間にはもちろん聞こえないだろうが、強化されたオレの耳にはその中身が聞こえてきていた。
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