異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第16章 破滅の聖者

第622話 誤れる信仰と正しい信仰と

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 彼らはザスターニックの信徒でありながら、メトゥサイラの導きで『正しい信仰に至った』とは、いったいどういう意味なのだろうか?
 この発言からして、少なくとも彼らは以前に話を聞いた剣神ザスターニックとは異なる教義を有しているのは間違いないらしい。
 ここは少々、危険が伴うかもしれないがその中身を尋ねて見るべきだろう。
 ただし面倒な事ではあるが、彼らが本当にメトゥサイラの導きを受けたとしても、その中身が額面通りとは限らない。

 以前に出逢った『物事は相対的に考えるべき』という思想の神だったウルハンガの場合は『正義は人の数だけある』との教えを有していたが、それを上っ面だけ聞いた結果、短絡的に『悪行も認められる』と歪んだ受け止め方をする連中が大勢いた。
 しかもウルハンガ自身はあくまでも思想が顕現した存在にすぎなかったので、そういう連中に対して頓着していなかったのだ。
 このため敵対する勢力からは『狡猾な手口で人間を悪に誘導する邪神』と見なされ、それを聞いてまた『自分たちの悪行を手助けしててくれる神』と思って崇拝するロクでもない人間が出てくるので、実際に邪神という側面も有しているという困ったことにもなっていた。

 それと同様に『この世界は苦痛に満ちているからこそ、死後の世界に安寧を求める事なく生きねばならない』と言っていたメトゥサイラの教えを都合よくねじ曲げて、たとえば『生きている間に、悪行でもなんでもやりたい事をやれ』なんて意味に受け止めている人間だっていてもおかしくはない。
 しかし連中も警戒している様子だから、ここはオレの方から少しばかり話を振るとしよう。

「すみません。先ほど見かけたのですが、少し離れたところでアンデッドを滅ぼしていたのはあなた方ですか?」
「その通りだ。ザスターニック神は勇気と誇りを重んじる。だからそのような意識など欠片も持たぬアンデッド共を滅ぼすべきと、我らに説いておられるのだ」

 そのあたりは神様の性格からすれば当然か。
 もっともアンデッドを戦士として使うのは、戦士の教団からすれば商売敵なので、見つけ次第滅せというのが本音でも不思議ではないけどな。
 しかしこれはたぶんザスターニックの普通の教義だろう。
 先ほどの話からすれば、もっと何か違う点があるはずだ。
 ここは警戒を解くためにも、ちょっとばかりおだててみよう。

「それは素晴らしいですね。これからもみなさんは是非ともその神様の尊い教えの通りに、汚らわしいアンデッド共を滅ぼし尽くして下さい」
「言われるまでもないことだ。この苦痛に満ちた世界を救わねばならないのだからな」

 むう。ここはやっぱり引っかかるな。
 オレが以前に聞いた限りでは、ザスターニックは戦闘での勇猛果敢な戦いを重んじるが、世界を救うなどというご大層な使命を唱えてはいなかった。

「あのう。差し支えなければ、あなた方の神はどのように世界を救うのか教えてくれないでしょうか?」
「そんなものは部外者のお前には関係ないだろう」
「我らは飾りで武器を持っているのでは無いぞ。危ないからとっとと失せろ」

 やっぱりどこか警戒している様子がうかがえるな。
 ただし敵対してくるわけでもないから、少なくともいきなり無防備の人間を攻撃するような悪行に手を染めているわけではないらしい。
 しかしこのままでは話が進まないし、ここはオレもメトゥサイラに関係があることを伝えて話を聞くべきだろう。

「すみません。先ほどあなた方は『メトゥサイラ』とおっしゃっておられましたね?」
「むう!」
「なぜその名を知っている?」

 明らかにオレの言葉に緊張が走る。まあメトゥサイラは官憲のお尋ね者でもあったし、大概は『あのお方』と呼ばれていた様子だからな。
 名前を知っていたら、敵か味方のどちらかとすれば、やっぱり敵だと考えて身構えるのが先になるのだろう。
 オレが『調和』をかけていなかったら、やっぱり切りつけてきたかもしれないな。

「わたしもメトゥサイラと直接会って話を聞いているのですよ」
「本当か?」
「もちろんです。メトゥサイラ本人がおられるなら、すぐにそれが分かるのですけどね」
「そうか。それなら話をしてもよかろう」

 オレの態度に相手は少しばかり考え込んだ様子を見せるが、こちらが武器も持たない一人だけであることから、ことさら敵視する必要は無いと思ったのだろう。
 リーダーらしい男がオレの前に来て話を始めた。

「今までの信仰はザスターニック神の本当の姿とは異なる誤ったものだったのだ」

 この世界では表向き同じ神を崇めていても、時代や場所によって違いはいろいろとあるのでその異なった信仰を『誤り』と断罪する事は何度も見てきた。
 しかし今までオレが見てきたのは『自分達の信仰こそが正しく、それ以外は誤り』だとするものだったのだ。
 だがどうやら今、オレの目の前にいるのは『自分達のこれまでの信仰は誤っていた』としてかつての教義を断罪しているらしいのだ。
 それはオレの経験からすれば、この世界では極めて珍しい筈だが、ひょっとするとそのように導いたのがメトゥサイラなのかもしれない。
 もしかするとそれがあの奇妙な少年の有する力の一端なのだろうか?
 そしてたぶんそれは彼らの人生を変えるだけでなく、この世界においても少なからぬ影響を与えるものではないかという気がしてきた。
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